「認めよう、ナツキ・スバル。卿がメイザース卿の名代、並びにエミリアからの正式な使者であると。この交渉の場において、卿と私の間で交わした内容は、そのままエミリアと私の間で交わされたものであると」
その頭を掻きながらのスバルの言葉に、室内の空気が一変する。
それまであくまで会談の場を見定める体でいたクルシュが姿勢を正し、一度だけ静かに目を閉じると、ゆっくりとその鋭い眼光をスバルに浴びせたのだ。
「──っ!」
風が吹いた、と錯覚するほどの威圧を前に、僅かに脅えが生まれる。
暴力的な威圧感にならば、嫌になるほど触れさせられた。
それに比べればクルシュの眼光には、こちらを怯え竦ませるような負の感情の一切がない。あるのは背筋を正させ、弛んだ思考を引き締めさせるような威光だけだ。
正面に立って臨むだけで、これほど人間は圧迫されるものなのだ。
クルシュは今、狙ってスバルを威圧しているわけではない。彼女は純粋に、それまでの私人としてのクルシュから、公人としてのクルシュ・カルステンへと意識を切り替えただけのこと。つまり、カルステン公爵家の当主が放つ威圧そのものが、これほどの力を持っていることの証左である。
これが、このルグニカ王国で今もっとも、王座に近い女傑の姿──。
鳥肌が浮かぶような感嘆の中、佇むスバルの方へと手を差し伸べ、クルシュは始まりを告げた交渉の火蓋を自ら切ってみせる。
「すでに聞いているはずだが、改めて問おう。私とそちらの従者……レムとの間での交渉は、採掘権の分譲などを含めた上で合意には至っていない。その点は重々、承知しているはずだな?」
「……ああ。だいぶ難航しているってのは聞いてるよ。んで、条件自体も十分互いの利益になるものだってものも把握している」
「そうだ、ただこの取引自体の時期と、取引相手。この二つが絡むと事態は別物となる、特に今回の場合は取引き相手側の問題が大きい。王選の対立候補。ましてやハーフエルフ……半魔の誹りを受けるエミリアとの取引きだ。後々のことを考えても、慎重にならざるを得ない」
「────」
「……意外だな、怒りに身を任せて行動するかと覚悟はしていたが、少なくとも己の感情を律する術はあるようだ」
「ここにいるのが俺とアンタだったらそうだったかもしれねぇが、背負っているものがあるんだ、堪えるさ」
精いっぱいの言葉でクルシュの言葉に応じる。
今ここで無様に暴れるのは簡単だ。だがその先に未来はない。
であれば、この怒りとエミリアへの想いは、スバルの心の中でとどめておくのが当たり前になる。
「では、改めて問おう卿は我らに対して何を切れる?」
「――――」
言葉を吐き出そうとして、スバルは己の喉が詰まるような感覚にわずかに驚く。
緊張と不安が胸中で膨らみ、踏み出そうとするスバルの喉を塞いだのだ。
一度、息を吸い、改めてこれから口にしようとしている内容を反芻する。未だに見当違いの的外れ、そんな言葉である可能性すら否めない。
だが、もう事態は動いている。止まることはできない。
そう己に言い聞かせてスバルは、口にした。
「同盟締結に向けて、うちから差し出すのは採掘権と……とある情報だ」
「……情報?」
それを耳にして、クルシュは自身の長い髪に触れながら言葉の先を促す。
まだ、判断はされていない。ここからが、正念場。
「聞かせてもらおうか。卿の口にするそれが、こちらを動かせるものかどうか」
髪に触れていた手をこちらへ差し出し、クルシュはスバルの言葉を待つ。
自然、足と指にかすかな震えが生じた。武者震いなんてことは当然ない、普通の恐怖だ。
だが、今の自分には、
「スバルくん」
隣にはレムがいる。
「スバル」
隣にはアリシアがいる。
『スバル』
そして、自分が描く未来にはエミリアを見据えている。
『頼んだぞ、相棒』
スバルを信じ、支えるシャオンが背後にいる。
だから立っていられる。
ナツキ・スバルは英雄でいられる、たとえそれが張りぼてで、一時的なものであろうとも。
そう考えると、僅かばかりに、本当に少しではあるが心が軽くなり、言葉はすんなりと出てきた。
「──白鯨の出現場所と時間、それが俺が切れるカードだ」
□
時刻は少しさかのぼる。
スバルが白鯨の出現時間を正確に知ることができたのは、いくつもの偶然が積み重なった運命の悪戯によるものだった。
基本的に運命の悪戯が引き起こす事態は、スバルにとっての致命的な状況を呼び起こす機会が多いのだが、今回に限ってはそれが良い方向へと働いた。
「クルシュ嬢が白鯨を討伐する、だからそのために白鯨の出現に関する時間と場所を交渉にか。そして信憑性を得るために携帯電話を魔獣探知機として扱って、ねぇ」
「有効なカードだ、切り時は今だと思う。それにそいつは今まで役には立たなかったが、俺の記憶が正しければ十分な効果を出してくれると思う」
異世界というなかで、携帯電話が映し出す時間は純粋な意味で指標にはなり得ない。だが、今回ばかりは、それは大きな意味を持っているのだ。
暗がりの竜車の御者台で地図を確認するために明かりを探し、見る機会を得たのは本当に運命の悪戯だと思う。
「……まぁ大幅なズレはないとは思う。それで、時間の問題はわかった、なら場所は?」
「あの巨体だ、霧が出てさえなけりゃ目に入らねぇってのはないと思う。フリューゲルの大樹周辺だろう」
リーベンスの発言通りなら、確かに彼女と出会った周辺。つまりはフリューゲルの大樹の周りにいるのだろう。
次に、
「クルシュ嬢が白鯨の討伐について考えている、所謂根拠はどこからだ?」
「最初に妙な感じを覚えたのは、鉄製品――つまるとこ、武具が高値で売買されてるって話を聞いたときだ」
「鉄製品」
それは一度目の世界で、二度目の世界で、三度目の世界で知り得た情報の数々。
それら小さな点と点が結ばれ、線になる。
「それまで二束三文だった武具やら防具やらを大量に集めてるところがある。それがクルシュさんのとこだってのは、行商人から聞ける」
「確かに俺も戦争の準備でもしているのか、なんて話は聞いたが」
事実、クルシュは戦争の準備をしていたのだとスバルは読んでいる。
その相手が人間ではなく、強大な魔獣である点が彼らとの考えの違いだ。
「自分の領地じゃなくて王都で武器をかき集めてる。なにかあるんじゃないかって、そう考えるのは必然だ。王国に対しての戦争するのかと思ったが、そんな暴挙に出る理由がねぇし、そんな人間じゃないことぐらい俺だってわかる」
「ああ、王城内で見た印象も同じだ」
向かい合う人が大きいのなら、それを見誤らない程度に見る目はあるつもりだ。
クルシュほど、遠目から見ても人物像がぶれない人間もそういるまい。誠実、高潔、それらの単語を具現化したようなありように、そんな疑問など抱けるものか。
「王選でほぼ単独トップをひた走るクルシュさんなわけだが、その人気自体は全てのものからじゃない」
「アナスタシア嬢のところにいた時も話は聞いたよ、商人連中からの受けはそんなによくないって」
資金はあるところから引っ張るのが一番利に適っているのだ、事実シャオンが同じ立場でも税収が重くかけるだろう。
そうなれば必然商人からの受けは悪くなる。
「そこで俺はこう考えた。クルシュさんはそういう人を上っ面だけで判断するような連中は好かないと思うが、そんな連中でも味方につけなきゃならないこともある。そうなると、そんな連中の評価を好転させるにはどうすりゃいいか……」
「人の上っ面の悪い話で判断するなら良い話で塗り替えろと。なるほどな」
スバルの言葉の最後を引き取り、結論を述べる。
「改めてエミリアとクルシュの同盟に関して、エミリア陣営から差し出せるのはエリオール大森林の魔鉱石採掘権の分譲と、白鯨出現の時間と場所の情報だ。どう思う、シャオン」
確かにスバルが述べた推測に近い考えが全て当たっているのであれば、同盟は成り立つかもしれない。
だが、
「……問題は山ほどあるぞ。実際の討伐にかける戦力はどうする見たと思うが──あれの討伐にはリーベンス以上の戦力が必要だと思う。すると、必然あの女に対して割ける戦力は大幅に減るだろう」
それではそもそも同盟を組む意味がなくなってしまうだろうし、なにより白鯨の討伐のみ力を貸すという話になりかねない。
しかしシャオンの不安を読んでいたかのようにスバルは、
「お前の話を聞いたうえで判断すると、あの女自体はそこまで脅威ではないんだ、シャオン。おまえがいるならな」
スバルはその根拠を口にする。
「―――――」
その根拠を聞き、確かに、シャオンの持つ能力ならば可能かもしれないと考える。
生物の塊である彼女にならばシャオンは確かに特攻として十分だろう。
「だが、たぶん俺の能力でも完全に仕留めきれはしないだろうし、そうなった場合は──白鯨がこっちに来る」
追い詰めすぎればリーベンスは白鯨を呼び寄せる術がある。
そうなればシャオンの死は避けられない物となる。その後の運命は今まで何度も見てきたとおりの惨劇にしかつながらない。
魔女教に惨殺されるか、白鯨に消滅させられるかの違いぐらいだ。
「だから、リーベンスと俺らが一定の距離を取りつつ、かつ白鯨がそっちに向かう余裕がない事態にすればいいわけだ。つまり」
スバルが遠まわしに告げる作戦。それはつまり、
「所謂、リーベンスに対しての囮になるってことか」
何の気無しにシャオンがそう口にする。
スバルは罰が悪そうに顔をしかめながらも、認めた。
「……ああ、そうだ。ついこの間やったばっかだろ」
「ごめんて」
明らかな棘のある言葉は前回の世界でのやり取りが原因だろう。
思い返したように謝罪をするもスバルのこめかみには青筋が浮かんでいる。
「絶対に許さねぇし、今回もお前を利用する俺が何より許せねぇ……今回のこの陽動で生きて帰ったらチャラにしてやる」
「はは怖い怖い……”アレ”を使うタイミングは?」
「時間に関しては大丈夫だろう? お前も俺と同郷って設定でなら持っていておかしくないアレを使えば」
「なるほど? タイマーでも使えばタイミングはつかめるはずだ」
「それで、肝心な応援だがあまり多いと勘付かれる可能性は高まる。少数精鋭が望ましいが」
「ああ、それに関しては安心しろ……互いに実力を保証する二人の応援が駆けつけるだろうからよ」
忌々し気に言うスバルの様子はまるで、想像するのも嫌だとばかりに嫌悪感を表情に出している。
その様子を見れば、応援というのがいったい誰を指すのかシャオンにも予想できた。
「なら、戦力としては十分だろう」
「ああ、お前は信じて、タイミングで合図をすればいい」
そう言うスバルは親指を立てていつもの、いやいつもよりも自信に満ちた目でシャオンを見る。
その様子にシャオンはポカンと口を開け、笑う。
「……スバル」
「あんだよ?」
「たくましくなったな、素直に、誇らしい」
「……まだまだだよ」
僅かに耳を赤くしてそう答えたのだ。
□
──出所不明の携帯電話そのものが、交渉に有用な武器になり得る。
事前に予想していた通りクルシュとの交渉はこの携帯電話もとい、ミーティアによって何とか続いている。
白鯨に関する切り出し方も怪しい部分はあったが、打ち切られることはない。
ただ、それでも綱渡りの交渉であることは変わらず、クルシュの目は警戒を解いていない。
「つまり、卿はこう言うわけだ。──このミーティアが白鯨の接近を報せる『警報石』のような役割を果たすのだと」
「まぁ、そんなものだ……警報石ってのは知らないけど」
クルシュの問いかけに対してスバルは笑みを僅かに浮かべて応える。
それを受け取ったクルシュは、少し考えた後にラッセルに対して目を向ける。
「白鯨の接近に際し、その存在を報せる魔法器……か。目利きはどうだ、ラッセル・フェロー」
「正直なところ、お手上げですね。魔法器に関しては個体差が大きく、同一のものが出土することも稀です。複製法まで確立されている対話鏡などは、あくまで例外の中の例外ですから。……したがって、この魔法器の使い道の真偽については難しい」
自分の知識にない道具への判断を聞かれ、しかしラッセルは根拠のない推測を口にすること避ける。現状、ラッセルの立場はいまだスバル側にもクルシュ側にもよって立っているわけではなく、あくまで善意の第三者の立場にある。
交渉の推移は彼自身の立ち位置にも大きく影響するのだ。自然、スバルとクルシュのどちらに与するのが自分の利になるのか、見極めの最中である彼の目は厳しい。
「そうなると、真偽のほどを確かめる手段は見当たらなくなるな。それでは卿の主張を鵜呑みにすることは難しい、だが────」
彼女はそう言うと改めてスバルへと目線を向け直す。
琥珀色の双眸が確かにこちらを射貫く、が決して目を逸らさない。
――もう、目は逸らさないのだ。
「にわかに信じがたいが──嘘は、言っていないな」
と、クルシュはスバルに対して僅かに、本当にわずかではあるが顔を崩した。
その彼女の言葉を聞き、スバルは露骨な安堵が表情に出ないよう苦慮しつつ、心の内では拳を固く握りしめてガッツポーズを取るのを堪えられない。
ミーティアもとい携帯電話のその機能に関して、スバルが口にしたのは法螺だ。事実を知るものや、スバルと同じ世界出身のものから見れば妄想だと馬鹿にされて終わる、そんな法螺。
しかしスバルはこの悪状況を、懸命な言葉選びと話題の誘導で誤魔化し切った。
クルシュの質問に対し、スバルは一度たりとも確実な嘘偽りを述べていない。
携帯は魔獣の存在に対して手当たり次第に鳴るような道具ではないし、メール機能すら無精していたスバルはその機能を使いこなせているわけでもない。
嘘を言わずに切り抜けられない場面は沈黙と話題のすり替えで誤魔化した。
「ま、まるで相手が嘘言ったかどうかわかるみたいな言い方だな」
「クルシュ様には嘘が通用しないの。『風見の加護』がついているからね」
「……なんて?」
かまをかけるつもりでのスバルの物言いに、本人ではなく彼女の騎士であるフェリスが得意げに答える。
スバルはクルシュが以前の世界で口にした、『嘘を見抜く能力』に関して、あくまで彼女の眼力の確かさによるものであるとばかり思っていたのだが、どうやら別のものがあるらしい。
「風を見るということは、目には見えないものを判断材料とするということだ。自然、私の目には相手の取り巻く『風』が見える。嘘偽りを口にするものの下には、当然ながらそういう風が吹くものだ。――が、卿にはそれが一切なかった」
「へ、へえ、そうなんだ。それは知らなかったなー」
「動揺の風が吹いているぞ、ナツキ・スバル……交渉の場で私の風見の加護を知らないのは不公平も甚だしいからな」
あっけらかんと言ってのけるクルシュの人の悪さに、スバルは内心の動揺を隠し切れないままひきつった笑みを浮かべる。
相手の言葉の真偽を否応なく見抜ける加護、一種の反則技だ。
スバル自身の死に戻りも一種の反則技ではあるが、この加護に関しては交渉という『言葉』で争う場面では死に戻りすらもある意味上回る極悪な手段となり得る。
ともあれ、
「今の卿の態度はどうであれ、口にした内容に虚偽はない。少なくとも、卿が魔獣の脅威を事前に察する手段を持ち合わせている、という根拠にはなるだろう」
高潔な相手に騙しを仕掛ける点にスバルは罪悪感を抱くが、表面上にその内心の痛みは微塵も出さない。根本的な部分で偽りをぶつけるつもりではない、というのが言い訳にもならないことを理解しているからだ。
互いに立場を明確にし、交渉の場面で相対すると割り切ったのだ。
ならば切れる手札を、相手に良く見えるよう切る方法を選ぶことに、罪悪感など持ってはならない。ましてや、『嘘』をつき切る覚悟もないなど無礼千万。
「ミーティアの効果に関して、信じてもらえるか?」
「同盟の成立も、それも早計だな。ことは王選の今後──ひいては、王国の未来を左右するかもしれない判断だ。軽率には行えまい」
ここで口説き落とせれば、というスバルの目論見はさすがに流される。
白鯨の出現情報──そこに最低限の信用は得たようだが、あくまで笑い飛ばさずに継続して話題に使ってもらえる程度のレベル。
その信頼度を持ち上げ、スバルの望む答えを引き出すには──
「――なぁに辛気臭そうな顔しとるん?」
「ふぇ?」
いつの間にかその女性は、アリシアの後ろにいた。
彼女はアリシアの頬をこねくり回しながらも、その柔らかな面立ちを意地悪げにゆるめて笑っていた。
「アナ! いきなりなにしてんの! てかいつのまに!」
怒鳴られ、仕方なく離れたその女性は己のウェーブがかった薄紫色の髪にそっと指を通した。
腰まで届く柔らかな髪は綿毛のようで、おっとりとした顔立ちは自然と他者へ安らぎの感慨を与える、そんな彼女の名は――アナスタシアだ。
「呼んだのは自分やないの。それより笑顔笑顔、商人たるものそんな陰鬱そうな顔してたらあかんよ?」
「アタシは別に商人じゃないから!」
「なら訂正、女の子ならもっと笑顔を見せたほうがええよ? ほらなんならとっておきの……」
「やめよう、てかやめて? あれ話したらアタシもあれバラすからね? ダイスキヤキひっくり返し事件」
「おおこわいなぁ、なら胸かさまし事件を――」
「ぐっ!」
ニッコリと笑うアナスタシアにアリシアはまだ何か言いたげだったが、渋々押し下がる。
スバルが知らないだけで彼女達の間では見えない秘密、あるいは何かがあるのかもしれないが、スバルにも推し量れない。
しかし、
「……はぁ、もういいっすよ。それで、空気をぶち壊して、遅れた登場して、どうするんすか」
「空気を入れ替えただけやないの? ほら、煮詰まってたみたいやし」
アナスタシアの煮詰まっていた空気というのは間違っていない表現だ。
あのままでは無駄に時間が過ぎていく、最悪交渉の打ち切りも考えられていたのだからこちらとしては助かるイベントだ。
しかし、その空気をぶち壊してさらに剣呑な雰囲気へ昇華させたのも事実であり、特にそれが顕著に表れていたのは、
「何故、卿がいる──アナスタシア・ホーシン」
クルシュの警戒心だ。
スバルに向けていた威圧、本人は意識はしていないだろうがその圧よりも重いものがアナスタシアへと向けられる。
しかし、彼女の視線を難なく受け流しアナスタシアは襟元を軽く触っているだけだ。
そして、からかうように答えた。
「簡単な話やと思うけど? 親友に呼ばれたらすぐに向かうんは……ま、それは嘘なんやけど……商人として」
そこにいるのは一人の商人。
浮かべている笑みは変わっていない。しかしそれを形作る瞳の奥は油断ない輝を有している。
外見は無害で誰にも安心を与えるような少女、対してその内側は強欲の化身。
「そのミーティアのお話、そして白鯨の討伐戦について、ウチも混ぜてもらってええ? って話」
王選候補者が一人、アナスタシア・ホーシンがそこにいた。
書いてて思いましたがスバルってヒロインぽいですね