ガールズ&ボトムズ   作:せるじお

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第8話 『模擬戦』

 

 

 

 ――その日の朝、みほは珍しく寝坊をした。

 早寝早起きが体に染み付いているみほだが、昨日の晩に限っては柄にもなく夜更かしをした為だ。

 皆が部屋より帰った後、いざ眠ろうとベッドに入った所で、思うように寝付けなかったのだ。

 ミッションディスクだのATだのの事が色々と気になって、結局ベッドから飛び出してパソコンに向き合っていた。

 パソコンは優花里から借りっぱなしになっていた。好きなときに返して頂ければ、とは優花里の弁。

 コンバットプログラムを何度も何度も組み直しているうちに夜は更けて、最終的に寝たのが何時なのかも良く覚えていない。

 

「わ、わ、わ……」

 

 寝ぼけ眼を朝の光で無理やり開き、パンだの何だのとりあえず手近にあってパッと食べられるモノを適当に口につっこみ、もぐもぐとやりながら同時に着替えも済ます。

 折角作ったミッションディスクだけは忘れないようにカバンの中に入れ、それ以外は必要そうなものをとりあえず放り込んで慌てて部屋を飛び出――そうとして立ち止まった。

 

「……」

 

 棚の上に置きっぱなしだったアーマーマグナム。

 みほは数秒ほどじっとその大きな姿を見つめ、何も言わずむんずと掴みとると、カバンの中に押し込もうとして、入らなかったので仕方なしに腰に吊るすことにする。大洗の制服に馬鹿でかいアーマーマグナムとホルスターは不釣り合いなことこの上ないが、他にしようもない。

 

「行かなくちゃ!」

 

 大慌てで部屋を飛び出し、階段を降りかけて引き返し、忘れていた鍵を閉めてまた走る。

 腰に大きな鉄砲下げて朝の街を疾駆する女子高生の姿に、すれ違った人々は思わず振り返る。

 そんなことに気づく余裕もなく、みほは通学路をひた走るのだった。

 

 

 

 

 

第8話『模擬戦』

 

 

 

 

 

「会長。予定通り積み荷は到着しました。中身についても問題はありません」

 

 相変わらず干し芋をかじってばかりの杏会長に、河嶋桃はそう報告した。

 

「ヘビィマシンガン、ミッドマシンガン、ペンタトルーパー、ハンディロケットガン、GAT-40 アサルトライフル、ソリッドシューター、肩部用各種ミサイルランチャーにロケットランチャー、また連盟公認の弾薬一式……全て、既に倉庫へと搬入済みです」

「んー……お疲れ。見た感じ、どうだった?」

 

 報告を聞きつつ窓から外を見ていた杏会長は、オフィスチェアをくるりと回して桃のほうへと向き直る。

 

「あくまで外見上の話ですが、想定よりは遥かに状態が良いように思えました」

「つっても中古だかんね~。見た目はキレイでも中身はどうだか。ま、使ってみないと解かんないけど」

「それにしても良かったんですかね、武器を中古で済ましちゃうなんて」

 

 ここで、一人事務仕事をしていたらしい柚子が顔を上げて言った。

 

「試合中や練習中に暴発したら、やっぱりまずいんじゃ……」

「大丈夫、大丈夫。流石にそのレベルでやばいのは買ってない筈だし、せいぜい弾が斜めに飛んで当たんないぐらいだから」

「その時点で大問題ですよ!」

「とは言え、今の大洗には必要な一式を全て新品で揃える予算なんて無いぞ」

「てかこの話も、もう何回目だっけ~。言っても変わんない上に、ブツが届いた以上はもう手遅れじゃん」

「それはそうですけど……」

 

 心配そうに俯く柚子へと、杏会長は手のひらをヒラヒラと振って、安心しろと軽く笑った。

 

「じょぶじょぶ。その為に西住ちゃんを引っ張りこんだんだから。自慢の腕と戦術で何とかしてもらうよ。是が非でも」

 

 

 

 

 

 

 ――◆Girls und Armored trooper◆

 

 

 

 

 

 さて、何のかんの言っている内に時間は過ぎ、装甲騎兵道の時間がやってきた。

 履修者一同は件の倉庫の前に整列し、『教官』とやらの到着を待っている所だった。

 

 ――装甲騎兵道の教官が来る。

 その話自体は、最初のAT探しの時に桃の口から皆聞いていたので知っていた。

 しかしどんな人間が来るのか、どんなことをするのか、といった詳細についてはまるで何も知らされていなかった。

 

 予定の到着時間に遅れている、ということもあり、履修者一同はチームごとに今後の展開についての予想談義や雑談で盛り上がっていた。

 

「秋山さん、なんか今日えらい気合入ってるね」

「えへへ……今日から本格的な練習を始めると聞いたので、着てきちゃいました」

 

 沙織にしげしげと見つめられ、照れて髪の毛をわしゃわしゃと掻く優花里の身を包むのはカーキ色の『耐圧服』だった。いわゆるパイロットスーツの一種であり、装甲騎兵道においても、試合の会場や環境によっては着用を義務付けられている場合がある。水にも風にも炎にも雪にも真空にも負けない頑丈さと汎用性はボトムズ乗りの生命線とも言えたが、ややだぼっとした作りを操縦の邪魔と嫌って敢えて着ない者も多い。単純に値段が結構張るという理由もあるが。

 

「西住殿はお持ちではないんですか?」

「今はね。コレ、仕舞う時に結構かさばるから、実家に置いてきちゃって……」

「それはそうと」

 

 沙織の視線は、優花里から今度はみほへと移っていた。

 

「みぽりんのそれも凄いね。そんなの持ってるとまるでお巡りさんみたい」

 

 制服の上に掛かったホルスターと、その中の巨大な銃身を沙織は不思議そうに見ている。

 

「バハウザーM571、アーマーマグナムですね。ボトムズ乗りの最後の切り札です」

「え? これATやっつけられるの?」

「当たれば、だけどね。私も実際に撃破出来たの一回だけだし」

「むしろ、できたんだ、ホントに」

「すごいです! 対ATライフルならまだしもアーマーマグナムでなんて! さすがは西住殿です!」

「機甲猟兵の授業は前の学校だと必修だったから」

「……西住さん、ちょっとお借りしても良いですか?」

 

 会話に加わらず、じっとみほの腰のアーマーマグナムに注目していた華が、そんなことを言い出した。

 みほは即座に「いいよ」と返し、素早くホルスターから引き抜くと、用心金に指をかけてくるりと半回転。銃把を華へと差し出した。

 

「……」

 

 アーマーマグナムを手にした華は、じっと静かにそれを見つめている。

 沙織が不審に思い、顔を覗きこめば、口の端がかすかに釣り上がり、眼には危ない熱を帯びている。

 

「ちょちょちょ華華華!」

「……え? あ、何でしょう沙織さん」

「なんでしょうじゃないよもう……」

 

 そんな他愛のない雑談は、突如終わりを告げる。

 上空から響く大きな音に、一同の視線は釘付けになる。

 馬鹿でかい双発ジェットエンジンの轟音と共に雲を割って現れたのは、白い巨体の輸送機だ。

 

「C-1輸送機です! あれが来たってことは――」

 

 優花里が輸送機を指差し叫んでいる間に、尾翼下の貨物扉が開き、そこから次々と何かが吐き出されていく。

 正規軍を意味する薄紫色に塗り込められた機影は、背負ったパラシュートザックを次々に開き、学園艦へと向けて落下傘降下した。

 

「ラビドリードッグ……」

 

 みほはその機体の名を呟いた。

 補足するように優花里も興奮した声で叫ぶ。

 

「すごいです! 見てください西住殿! 最近導入されたばかりの新鋭機ですよ! しかも通常型ではなくてタイプSです! 武部殿、五十鈴殿解りますか! 左手が通常の腕に換装されて折りたたみ式のアイアンクローが外設されているのが見分けどころなんですよ!」

「あ、うん」

「はぁ」

 

 次々と、降着で衝撃をやわらげながら着艦を果たすのはみほと優花里の言う通り『ラビドリードッグ』の『タイプS』だった。スコープドッグに代わる次世代機として登場した高性能機で、みほも実際に動いている姿を自身の目で直接見るのは初めてだった。

 学園長の高級車を踏み潰しながら降下したラビドリードッグは全部で三機。

 正規軍らしい素早い動きで速やかに横一列に整列すると、隊長機らしい中央の機体のコックピットハッチが跳ね上がった。

 優花里と似たようなカーキ色の耐圧服に身を包んだパイロットは、一同の見守る前でヘルメットを外した。

 黒髪の、凛々しい美人顔が顕になる。

 

「こんにちはー!」

 

 顔から来る印象そのままの、凛々しい元気な声で彼女は言った。

 

 

 

 

 

 

 ――◆Girls und Armored trooper◆

 

 

 

 

 

 ――いきなりだが、模擬戦をすることになった。

 何を唐突にと人は言うかもしれないが、しかしこっちにとっても唐突だったのだ、とみほは思う。

 

『ATは人型のメカ。つまりは五体の延長。操縦は感覚でマスターすればノープロブレムよ!』

 

 とは教官であった例のラビドリードッグの操縦者、蝶野亜美一等陸尉の言葉だが、確かにそんなことを母も言っていた気もするが、そんないい加減で良いものだろうか、甚だ疑問、というのがみほの正直な気持ちだった。

 

「まずは各分隊ごとに役割を決めて。今回は分隊長だけでいいわ」

 

 蝶野教官の言葉に従い、各チームで相談が始まる。

 とは言え、前に分隊編成を決めた段階で、誰が隊長をやるかはある程度相談が済んでいたので、どのチームも簡単な確認程度のみで終わっていた。旧バレー部で占められたB分隊などは、すでに自機ATへと向かっている。

 

「じゃあみほりんが隊長ってことで」

「はい。じゃあ今日はよろしくおねがいします」

「よろしくおねがいします」

「よろしくおねがいします、西住殿!」

 

 正直に言えば、みほは分隊長をやるのに余り乗り気ではなかった。

 去年の全国大会の苦い過去が、スッと脳裏に蘇ってくる。

 しかし、この場で分隊を仕切れるのは自分だけであろうとも正しく認識していた。

 

「役割分担が済んだ分隊から、ATに乗り込んで! さぁ始めるわよ!」

 

 教官に急かされ、残りの分隊も割り当てられた自機へと走る。

 みほはパープルベアーへと乗り込もうとして、ATを前に戸惑っている様子の沙織と華に指示を飛ばした。

 

「乗り込んだら、前に付いている操縦桿を起こして、レバーを立ててください!」

「わ、わかった!」

「やってみます!」

 

 既に乗り慣れた優花里はともかく、沙織と華には細かいレクチャーが必要だろう。

 みほは2人が操縦桿を起こし、レバーを立て終えるのを待って、ようやく自機へと乗り込んだ。

 

「武部殿、五十鈴殿、次はゴーグルを装着して、ケーブルを繋いでください」

 

 今度は優花里は2人へと指示を出す。

 ゴーグルのレンズの色が赤から青へと変われば、機体と同期が済んだ証拠だ。

 ハッチが締まり、沙織のブルーティッシュ・レプリカと、華のスコープドッグは立ち上がった。

 

『う、うわぁ! ホントに立った!』

『その景色が……視界が高いです』

 

 無線を通して、2人の驚く声が聞こえてくるのを聞いて、みほは自機を立ち上げる。

 優花里もそれにならい、パープルベアーとゴールデンハーフスペシャルも沙織、華に隣り合って並んだ。

 

「みなさん、聞こえてますか?」

 

 改めて無線のチェックをした。問題はないだろうが、一応念のためだ。

 

『みぽりん! き、聞こえてるよ』

『こっちも大丈夫です』

『こちら秋山! 問題なしです!』

 

 よし、問題はない。ならばセカンドステップだ。

 

「それじゃあ、ミッションディスクを挿入してください。挿入口は右側にあります」

『右側、右側……あった!』

『西住さん、もう何か先に入っているようですが……』

「それは自動車部が入れてくれた既成品だと思います。イジェクトボタンを押して、取り出して、それはしまって置いてください」

『出して、しまって』

『入れ終わりました』

『西住殿、こっちも完了です』

 

 さらにサードステップ。

 

「通常、ATは無線上では互いにコールサインで呼び合います」

『コールサイン?』

『アダ名のようなものでしょうか?』

『戦闘中に、互いを識別するための暗号名みたいなものです』

「しかし、今回はこの分隊で戦う初めての試合となります。ですので分かりやすさを優先して名前で呼び合うことにします。いいですか?」

『わかったよ』

『わかりました!』

『了解です!』

 

 返事を聞きながら、みほは周囲を見渡した。

 パープルベアーのステレオスコープ越しに、倉庫中の様子がはっきりと見える。

 センサーは快調。最初に動かした時、完全に壊れていたとは信じられないほどに綺麗だ。

 他のチームも、何とか立ち上がるところまでは行ったらしい。

 ATはミッションディスクの助けもあり、比較的直感的操作でなんとかなる乗り物だ。

 だからこそ軍事民用の区別なく広く普及しているのだ。

 

『全機の起動を確認。上出来よ。それじゃあ、次は武器選びね』

 

 ザザザと微かなノイズと共に、蝶野教官の声が耳に飛び込んできた。

 それにしても、何と言った? 武器選び?

 

 みほの疑問への答えはすぐに出た。

 校庭の真ん中へと、最初に教官と一緒に降下してきたラビドリードッグが、二機がかりで何か大きなモノを運んできたのだ。細長い、大型の貨物コンテナーだ。二機がそれを地面に降ろし、レバーを引けば蓋が開く。

 

『わぁ~』

『武器がいっぱいです』

『宝の山です! 私興奮してきました!』

 

 コンテナーの中身はAT用の銃火器だった。みほはそのラインナップを素早く品定めする。

 

(ヘビィマシンガン、ソリッドシューター、ペンタトルーパー……。良し。一通り欲しいのは揃ってる)

 

 品定めを終える頃には、蝶野教官から新しい指示が無線に乗って届いた。

 

『各分隊。欲しい武器を取りに行くこと。早いもの勝ちだから、遅れると余り物よ』

 

 聞くや否や、みほはペダルを踏んでローラーダッシュで駆け出した。

 優花里も少し遅れてみほに続き、他の分隊からもATに慣れてきた者はまっすぐに走りだす。

 

『み、みぽりん!? 待って!?』

「2人の分は私が取ります! 待機して!」

 

 それだけ言ってみほは武器コンテナへと一番乗り。ヘビィマシンガンを二丁取ってクイックターン。

 優花里とすれ違えば、彼女の方はと迷うことなしにソリッドシューターへと飛びついた!

 

『ソリッドシューター! 頂きました! ヒャッフゥッ! 最高だぜぇぇぇぇぇぇ!』

 

 最高に最低野郎なテンションになりながら、ついでとばかりにハンディロケットガンも掴んでUターン。

 彼女の機体はトータス系の足回りを使っているため、ターンピックは使えないのだ。

 

「華さんはこれを使ってください」

『みぽりん!? 私のは!?』

「武部さんの機体は右手に最初から武器がついてますので」

『あ、そうだった! ……んも~焦って損した』

 

 沙織のAT。高級機ブルーティッシュドッグ、を見た目だけ模したレプリカ機は右手がマニピュレーターではなく固定兵装のガトリングガンになっており、おまけにアイアンクローまでついている。

 武器を選べないぶん汎用性には劣るが火力は高く、また大型グランディングホイールが備わっているためスピードも速い。無論、オリジナルの機体にはスペックでは遠く及ばないが。

 

『あの、西住さん』

「華さん? どうしました?」

 

 華のスコープドッグは、みほにヘビィマシンガンを差し出されても、彫像のように固まって動く気配が無かった。

 

『持ってきてくださって、ありがたいのですが……これ、どうやって受け取れば……』

「あ、そっか。華さん。右の操縦レバーを前に倒してもらえますか」

『はい。あ、上がりました!』

 

 メルキアカラーに塗られた腕が、ゆっくりと持ち上がるのがみほにも見える。

 

「次に、右、左の順でペダルを踏んで、足を動かして向きを調整します。手の部分がヘビィマシンガンの近くに来たら、あとはミッションディスクがオートでやってくれます」

『えと、右、左、と……あ! うまくいきました!』

 

 華のスコープドッグの手はまるで人間の手のようになめらかに動き、パープルベアーよりヘビィマシンガンを受け取っていた。ゆくゆくはマニュアル操作でもできるようになって欲しいが、今はこれで充分。

 

「ね、華さん。簡単でしょ?」

『いえ、西住さんが昨日の夜頑張ってくださったから』

「ううん。これぐらいの動きは、既成品のプログラムでもできることだから」

『それでも、お礼を言わせてください』

 

 みほには、スコープドッグの無機質な三連ターレットの向こう側で、華が微笑むのが見えたような気がした。

 

 

 

 

 

 ――◆Girls und Armored trooper◆

 

 

 

 

 

『全分隊、武器の確保は終わったわね。さぁいよいよ試合の始まりよ! 各機にMAPデータを送るから、それに従ってスタート地点へと移動して! さぁ急いで!』

 

 一年生主体のD分隊が出遅れて、余り物部隊になってしまったりといった展開はあったが、一応全機が手持ちの武器を持つことができていた。それを見計らい、蝶野教官は全機へと一斉にMAPを送信する。

 

『わ、なんか映った!?』

『視界に被さって見にくいです……』

「華さん、一度ゴーグルと機体の接続を切って、操縦桿のモニターを見てください。タッチパネルになってるので、手で地図も動かせます」

 

 ゴーグルに直接ATのカメラの視界を投射する方式は、馴れればなかなかに便利なものでも、初めのうちは誰でも戸惑うのが普通だ。そういう時は、ゴーグルを一旦外して間を開けるのが一番の解決法だった。

 みほは手早く開始位置を確認すると、分隊の全機に告げた。

 

「A分隊、全機移動を開始します! 私が先頭を走るので、ついてきてください」

『わかった! みぽりんに付いて行く!』

『わかりました』

『了解です、西住殿!』

「出撃!」

 

 みほがローラーダッシュを始めれば、沙織、華、優花里の順で追従し走りだした。

 速度はかなり緩めだが、最初から全速で飛ばせば自分や優花里はともかく、沙織や華は木にぶつかるかバランスを崩して転がるか、いずれにせよろくな事にならない。

 

『これ思ったより狭いし暑苦しい~。シートがぶるぶる揺れるし』

『鉄臭いですね。それに油の臭いも。あと音が思った以上に大きいですね』

『でも、それが良いんですよ~』

 

 無線で呑気に雑談などしながら、一行は進む。

 ミッションディスクの助けもあるものの、思った以上に沙織も華も危なげなくATを操縦しており、みほは少しホッとした。沙織はダングで通学しているし、もともと運転慣れしているとは思っていたが、華も予想以上に筋が良い。この分だと、もう少しスピードを上げても良いかもしれない。

 

 などと、つらつら考えているうちに、所定のスタート地点へと一行はたどり着いていた。

 

「全機、停止」

 

 みほが止まるのに続いて、残りの三人も静かに停止した。

 みほはハッチを開けて、自分の眼でも周囲の地形を確認する。

 良し、間違いはない。

 

 しばし待てば、蝶野教官より再び通信が入った。

 

『全機スタート地点に着いたようね。ルールを説明するわね』

 

 説明されたルールは極めて簡単だった

 自分たちの分隊以外を全て撃墜せよ。単純明快なバトルロイヤルだ。

 

『装甲騎兵道は礼に始まり、礼に終わるの。全員、一旦ハッチを開けて』

 

 指示に従い、みほたちもハッチを開いた。そしてその場で立ち上がる。

 

『一同、礼!』

「おねがいします!」

 

 四人揃って、礼を済ませれば、いよいよその時が来た。

 

『それじゃあ、試合開始!』 

 




おまけ:簡易版AT武装図鑑


【GAT-22 ヘビィマシンガン】
:30mm口径。装弾数120発。ギルガメス軍では最も一般的なAT用の装備。
:ショートバレルバージョンがある。

【GAT-19 ミッドマシンガン】
:装弾数は少ないが、ヘビィマシンガン比べ小型で取り回しに優れる。
:劇中では主にダイビングビートルが装備。

【GAT-49 ペンタトルーパー】
:ステンガンの様な見た目のハンドガン。
:各種弾薬を使える汎用火器……と設定上はなっているが、劇中だとまんまマシンガンとして描写されていた。

【HRAT-23 ハンディロケットガン】
:4つの銃口からロケット弾を機関銃のように連射できる。命中率は良くない。
:設定上の装填数11発だが、劇中だと明らかに数十発連射している。

【GAT-40 アサルトライフル】
:ベルゼルガ専用火器。クエントセンサー搭載で命中精度に優れる。やや高価な特注品。
:専用とは言っても、他のATでも普通に使用できる。

【SAT-03ソリッドシューター】
:電磁カタパルト式無反動砲。いわゆる『バズーカ武器』。
:レールガンらしいのだが、劇中ではバックブラストが出てる場面もあるので良く解らない。


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