ガールズ&ボトムズ   作:せるじお

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第52話 『取引』

 

 

 

 

「はい……ええ……そのように……」

 

 ダージリンの手の中にあるのは、ダイヤル式の古風で、かつ優雅な電話機である。

 性能的にはお世辞にも優れているとは言えないだろうが、反面、そのデザイン性はそのままインテリアとして使える程である。そして何より、ダージリンの持つ雰囲気と良く合っている。つまり『様になっている』のだ。

 オレンジペコは改めて、我らが隊長殿は見た目だけなら正統派かつ瀟洒(しょうしゃ)な美少女であると思う。

 ただし、その中身はストレートに見目麗しい容姿と違って、とても一筋縄ではいかないのだが。

 

「それではおねがい致しますわ。ええ……よしなに。ごきげんよう」

 

 ダージリンは受話器を置いた。チン、と鈴のような金属音が鳴り響く。

 オレンジペコは少し間をおいてから聞いた。

 

「それで、何のお話だったんですか?」

 

 オレンジペコはダージリンと誰が何の話をしていたのかを知らない。

 彼女が部屋に入った時には、もう既に随分と長く話し込んでいる様子であったから。

 しかしオレンジペコは察していた。どうも自分たちに関係のある話であるらしいと。

 一年生にしてダージリンの副官に選ばれるだけあって、オレンジペコはダージリンの気心を知り尽くしている。

 

「ちょっとした商談。お相手は風まかせの吟遊詩人といった所かしらね」

「……はいぃっ?」

 

 時々ダージリンはこういう要領を得ないことをのたまう。

 オレンジペコはかなり察しの良い少女ではあるのだが、それでも時々ダージリンが何を言っているのかが解らない。

 しかも、ダージリン自身ペコが解らないのを承知で言っているふしがあるからたまらない。

 それを証拠に、ダージリンはにこやかに微笑んでいる。ペコを見つめながら、にこやかに微笑んでいる。

 取り敢えず、無視して話を先に進めることにする。

 

「商談と言いますと、以前にお話していた新型ATの一件ですか?」

「いいえ、それとはまた別件よ。大洗に関することで少し、ね」

「大洗? またみほさんに妙なちょっかいでもかけるおつもりですか?」

「まぁ、だいたいそんな所かしら」

 

 ダージリンは西住みほという少女をいやに気に入っているらしい。少なくとも自らファンを公言する程度には入れ込んでいる。オレンジペコ自身、あの西住みほという少女は応援したくなる何か不思議な魅力を持っているとは思うが、それにしてもダージリンの執心っぷりはなかなかのものだ。トーナメントのブロックも違うにも拘らず、ましてや世間では全くのノーマーク、冷やかし程度にしか見られていなかった大洗の試合を全戦、わざわざ出向いて観戦しているのである。確かにその行動の有様はまるでアイドルの追っかけだ。

 

「彼女の方も、そろそろ途方に暮れているころでしょうから」

「途方に暮れる? みほさんがですか?」

「ええ。……『決して屈するな。 決して、 決して、決して』」

「チャーチルですね。第2次世界大戦の時の」

「彼女もまた、いかなる状況を前にしても屈せず、戦う道を選ぶでしょう。それが、新たなる母校の為ならば、かつて追われた古巣を相手取ることであったとしても」

 

 ダージリンは、目の前のテーブルにおかれたカップを手にとった。

 中身の紅茶で少しばかり唇を潤すと、その視線を窓の外へと向けた。

 今はまだ天気は晴れだが、彼方には雨を孕んだ黒雲がじわじわ迫るのが見える。

 

「決勝戦は、大洗女子学園と黒森峰女学園の対決です」

「理由は異なれど、共に負けられぬ二校の対決……それは同時に、姉妹の対決でもあるわ」

「みほさんと、姉にして高校装甲騎兵道最強と名高い西住まほの対決……」

「ねぇペコ。どうせ見るなら――」

 

 ダージリンがペコのほうへと向き直った。

 

「万全、あるいはそれに近い条件での対決が見たくはないかしら。西住流姉妹対決という絶好のカードを」

 

 そう言うダージリンの顔は、あからさまに何かを企んでいる顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 第52話『取引』

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――その少女はいつも、轟と共にやってくる。

 床板を踏み鳴らすドタドタという異音は徐々にその大きさを増し、走る勢いには床のみならず壁までもが揺れているような錯覚をもたらす。

 バーンという効果音と共に扉を外れるかと思う勢いで開いて、赤毛の少女は姿を現した。

 

「 お よ び で ご ざ い ま す か ー ダ ー ジ リ ン さ ま ー !」

 

 登場早々の大音声に窓ガラスはビリビリと震え、オレンジペコは大声に脳みそが驚いて目の前に星が散る心持ちだった。来訪せし赤毛の少女、ローズヒップの後ろからやや遅れて追いついてきたアッサムは、思わずこめかみに手をやって頭が痛そうな様子だった。ローズヒップのマナーの指導は彼女の担当だが、一向に粗忽(そこつ)な調子が治る様子はない。しかしダージリンは気にしない、というかそんな粗忽な彼女がお気に入りらしい。ローズヒップの大声もどこ吹く風で平然と、優雅に紅茶を味わっている。

 

「出かけるわよローズヒップ。飛行機の操縦、お願いできるかしら」

 

 ダージリン直々のご指名に、ただでさえ高いテンションはもはや爆裂寸前らしい。

 小躍りする勢いで「やったですわー」とローズヒップは快哉をあげる。

 

「ダージリンさまとおでかけですわー! 嬉しいですわー! 最高ですわー!」

「落ち着きなさいローズヒップ。喜ぶのは良いけれど、その調子じゃスカートが捲れちゃうじゃないの、はしたない」

 

 実際に踊り出しそうなローズヒップをアッサムが窘める。

 その調子は先輩というよりも落ち着きのない妹を相手にした姉のようですらある。

 そんな二人の様子にダージリンはニヤニヤかつ上品にと器用に笑い、そんなダージリンの様子にオレンジペコが今度は頭が痛そうであった。

 

「例の飛行機の準備をして下さいなローズヒップ。30分後には出発するわよ」

「了解ですわダージリンさま! リミッター外しちゃって全速力で準備いたしますですわー!」

「ちょっとローズヒップ!?」

 

 現れた時と同じ、否それ以上の俊足というか爆走ですっ飛んでいったローズヒップの背中を、アッサムが慌てて追いかける。二人の姿が余りにおかしかったのか、ダージリンは堪え切れずクスクスと笑い出した。

 ダージリンが声を出して笑うというのは珍しい。現状一日の内で共に過ごす時間が一番長いオレンジペコでも、ダージリンが声を出して笑うところは余り見た記憶が無い。そういう珍しい彼女を見ることができるのは、決まってローズヒップ絡みの時だった。

 

「全く……」

「あらアッサム、戻ってきたのね」

「速すぎて追いつけたもんじゃないわよ……」

 

 疲れた様子ながら優雅な立ち居振る舞いは崩さない。

 流石は聖グロリアーナの三年生にして、ダージリンと数少ない対等な立場のアッサムだ。

 オレンジペコの隣に座る姿も優雅で、様になっている。

 

「それで?」

「それで……何かしらアッサム」

「とぼけないでよダージリン。わざわざローズヒップまで引っ張り出して何を企んでいるの?」

 

 アッサムがジト目で訊いてくるのにも、ダージリンは涼しい顔だ。

 ただ一言、こう返すだけだった。

 

「ひとりの少女の一ファンとして行動するまでのことでしてよ」

 

 

 

 

 

 

 ――◆Girls und Armored trooper◆

 

 

 

 

 

 

「いやぁ~まいったねぇ~」

「どうすればいいんだ……」

 

 杏が相変わらずの全然深刻じゃない声色で深刻そうに言って頭を掻けば、傍らの桃はと対照的に彼女なりの『できる女』の仮面を脱ぎ捨ててお先真っ暗な様子だった。

 みほはと言えば顔にこそ出さないが内心は同じ気持だった。

 

(どうしよう……どうすれば……)

 

 考えは堂々巡りで答えが出てこない。

 古巣の黒森峰のことはなまじよく知っているが為に現実がハッキリと見えてきてしまう。

 それが辛い。頭のなかの現実のイメージが邪魔をして、良い考えが出てこないのだ。

 

「改めて見ると……ひどい……」

「ボロボロ……」

「ズタボロ」

「これじゃまるでスクラップだよぉ~」

「泣き言言わないで! みんなで一生懸命修理すれば何とかなるよ! ですよね、隊長!」

 

 あや、桂利奈、あゆみ、優季も絶望的な調子で言うのを、梓が窘めつつみほへと聞いた。

 しかし梓の問いにしても、『大丈夫だと言ってほしい』という願望が声色に滲み出ている。

 つまる所、根っこの気持ちは梓もあや達と同じということだ。

 

「……」

 

 みほは梓の問に即座に答えない。

 どう答えていいものか、みほは珍しく判断がつかない。

 かろうじて小さく、「大丈夫だよ」と返すのがやっとだった。

 

「矢尽き刀折れ」

「当方に余剰兵力なし」

「そこで潔く戦死せよ……か」

「……銀河英雄伝説?」

「いや、ワーテルローのウェリントン」

「ナポレオン戦争は守備範囲外だ」

「ナポレオン三世なら詳しいぜよ」

 

 歴女チームはと言えば相変わらずだが、しかし彼女たちにすら元気はあまり無い。

 

「……こんな時も根性だ」

「そうですねキャプテン!」

「根性ですねキャプテン!」

「根性で全機修理しましょうキャプテン!」

 

 バレー部はさすがと言うか、典子の号令一下、全員が奮い立っている様子である。

 みほにはその姿が好ましく頼もしい。しかし現実を見れば、バレー部の燃える姿すら空元気に見えてしまう。

 

「ゴモヨ、パゾ美! なにぼさっとしてるのよ! 修理に取り掛からないと次の試合に間に合わないじゃない!」

「わかってるけど、そど子」

「私達のATももう駄目かも」

「駄目じゃないわよ! 変える所を変えればちゃんと動くわよ!」

 

 空元気なのはそど子も同じで、ゴモヨ、パゾ美を叱咤激励する様子には無理が見て取れる。

 

「……うう」

「ゆかりん、元気出して!」

「そうですよ。そもそもこの子は優花里さん自らが作ったAT。もう一度、一緒に作り直せば良いじゃないですか」

「そうそう! 華の言うとおりみんなで作れば良いんだよ!」

「私も手伝うぞ。まぁできることは限られているだろうが」

 

 すっかり沈みきった優花里を、沙織、華、麻子が励ましている。

 みほは一旦、堂々巡りを思考を断ち切って優花里のもとへと歩み寄った。

 

「私も手伝うから。みんなで直そうよ」

「西住殿」

「みぽりん」

「みほさん」

「大丈夫なのか。西住さんは秋山さんのATにだけ構っている訳にはいかないだろう」

「それを言ったら麻子もじゃない」

「沙織もな」

「……よく考えたら私もですね」

「でも西住殿のATのほうが最優先じゃないと……」

 

 優花里に言われて、みほは改めて愛機、パープルベアーの様子を仰ぎ見た。

 無人機だから構うまいとばかりに、満載された爆薬に焼かれながらも何とか原型を保っているのは、流石はカーボン加工のお陰だろう。しかしもはや試合に用いることは不可能なのはひと目で明らかだった。

 焼け焦げ、ねじれ千切れた両手のないパープルベアーは完全にスクラップだった。

 もともとサビだらけの中古であったにも拘らず、ここまでよく頑張ってくれたものだが、もう戦い続けることはかなわない。

 そして、多かれ少なかれ大洗のATはみほのパープルベアーと似たような状況にあった。

 去年の優勝校プラウダ。

 その巨豪を打ち負かした代償は余りに大きい。

 武器弾薬の損耗もそうだが、それ以上に深刻なのはATの状態だ。

 激戦区に身を起き続けたあんこうチームのATはいずれも損傷が酷く、沙織や華のスコープドッグは修理すればまだ使えるだろうけれども、優花里のゴールデン・ハーフ・スペシャルに麻子のブルーティッシュ・レプリカは完全にお釈迦だ。

 ウサギさんチームのトータスは一見損傷は酷いが、まだ修理すれば使えなくもない。

 一方カメさんチームやヒバリさんチームはダメージが少なく見えて一個一個の損傷の度合いが深い。おそらくはノンナの高速徹甲弾に撃たれたがためだろう。これならばパーツをまるごと交換したほうが余程良いぐらいだ。同様の理由で、バレー部のファッティーも外見から来る印象に反してコンディションはガタガタだ。

 歴女チームは左衛門佐とおりょうのドッグタイプの損傷が甚大で、エルヴィン・カエサルはまだ大丈夫だろう。

 

「……何とか修理自体は間に合いそうだね」

「まぁもとが頑丈に出来てるからね、ストロングバッカスは」

「プラウダ戦で改善点も見えてきたし」

「今度こそドリフトドリフトォッ!」

「まぁそれも、他の仕事が済んでからなんだけどね~」

 

 自動車部のストロングバッカスは元が頑丈だけに見た目ほどダメージは大きくない。 

 だが彼女らが直さねばならないのは自機だけではないのだ。

 いかにスーパーマンもといスーパーウーマン染みた彼女たちであっても、決勝戦までの限られた期間で大洗の損傷機を全て修理するのは手も時間も足りない。

 

 ――つまりこのままでは、大洗女子学園は戦わずして黒森峰女学園に敗れるということ。

 

 「……」

 

 試合中は無我夢中だったから何とかなった。

 だが準決勝戦を乗り越え、一息ついて落ち着いたからこそ、見えてくる過酷な現実。

 勝たねば廃校。だが、このままでは戦わずして廃校。

 絶望的な状況を、冷静な心情で受け止めねばならない。

 皆の上に、黒い不安の雲が広がっている。

 空気は沈み、顔まで俯く。

 みほは飽くまで視線を落とさず、この状況の打開策を考えるが――考えがまとまらない。

 

(どうしよう……)

 

 どうしよう。

 どうする。

 どうすれば。

 考えても答えが出ないなら、後は体を動かす他ない。

 

「とにかく――」

 

 修理に取り掛かりましょう。みほがそう言おうとした時だった。

 ――不意討ちの着信音。

 

「!?」

 

 鳴っていたのは桃の携帯電話であった。

 桃は慌てて電話に出た。

 

「あ……はい、はい。その節はどうも……はい」

 

 知っている相手であったらしい。

 たださほど親しい相手でもないのか、その返事は硬く形式的だ。

 

「……え?」

 

 桃の硬い表情と声が、崩れた。

 

「いつ? ……今からぁ!? そんないきなり――え? え? え?」

「かーしまぁ~落ち着きなよ。一体何が――」

 

 急に慌てだした桃へと杏が話しかけるが、そんな杏の言葉も突如止まった。

 杏は空を見ていた。みほたちも天窓から空を見た。彼方から、鉄の塊が音の壁、空気の層を裂く唸りが聞こえた。

 

「外です!」

 

 みほが駆け出せば、みなもそれに続いた。

 格納庫の外、校庭へと一同は飛び出す。

 青い空を見れば、ジェットの轟音がいずこからか響き渡り、しかもその轟を増している。

 

「見て!」

 

 沙織が指差す方を皆は見た。

 最初は空に浮かんだ染みのように見えたそれは、瞬く間に正体を明らかにした。

 四発エンジンを搭載した航空機である。白がかった青に塗られた機体はかなり大きい。

 

「アレギウムの連絡艇です! 何でこんな所に……」

 

 優花里が言ったとおり、アレギウムで使用される連絡艇であるが、塗装が違う。

 アレギウムのものは褐色の入った赤色の塗装の筈だ。

 連絡艇はみほたちの頭上を駆け抜けるとターンし、機体を斜めに傾けてその側面を見せた。

 

「あれって……」

「聖グロリアーナ!」

 

 機体側面に描かれていたのは、聖グロリアーナ女学院の校章であった。

 機体は再度みほ達の頭上を通り抜けた後、機体後部のハッチを開いた。

 そこから、降着状態のATが次々と吐き出されていく。

 連絡艇とはワイヤーで繋がれ、同時にパラシュートを展開する。

 二段重ねで機体は急速に減速し、折りたたんでいた脚部を展開、ワイヤーをパージしつつ着地する。

 勢いに若干地面を滑るが、短めの轍を描いてターンを決めれば機体は止まった。

 降下してきたのは3機。

 いずれも同様の軌道で着陸を果たし、横一直線に素早く並ぶと、ターレットを動かして何かを探す。

 隊長機らしいAT――カメラの構造が異なる――とみほは目があった。

 ATはすぐさまみほめがけて駆け寄ってくる。

 

「!」

 

 後ずさるまもなく、AT三機は距離を詰め、みほのすぐ手前で急速停止。

 戦列にはまるで乱れが見られない。良い腕だ。

 

「バウンティドッグ!」

 

 優花里がATの機種名を叫んだ。

 バウンティドッグ。山岳地帯や高地を攻略するために造られたスコープドッグのカスタム機。

 大型ラジエーターの搭載、ダブルターンピック、大型グライディングホイールの装備といった改良点があるが、一番の特色は左手に備わったワイヤーウィンチだ。

 背部のミッションパックと一体化したそれは、先端にフックが備わり、それを射出することができる。

 両足のダブルターンピックと併用することで、余程の悪路でもない限り、ノーマルのドッグには登攀(とうはん)不能な場所も踏破することが可能だ。ATの使い勝手としては、ドッグ系よりもむしろエルドスピーネなどに近い。

 

「何? 何なの!?」

 

 突然の事態に、沙織などは戸惑いの声を上げているが、みほは冷静だった。

 冷静にバウンティドッグの動きを見て、そして予測していた。この奇妙な来訪者の正体を。

 その見事な操縦技術かつ、聖グロリアーナ所属といえば独りしか居ない。

 

(……やっぱり)

 

 みほの予測は当たった。

 ハッチを開いて優雅にバウンティドッグから跳び降りたのは、英国近衛兵めいた赤いATスーツを纏った、金髪碧眼の少女。聖グロリアーナ女学院装甲騎兵道チーム隊長、ダージリンだ。

 続けて、副官オレンジペコに、やはりダージリンの相方のアッサムがATから降りる。

 VTOL機能を用いて校庭に着陸した聖グロリアーナ連絡艇からは、見慣れぬ赤毛の少女がかけ出してくる所だった。

 ヘルメットを外しつつ、ダージリンはみほへと微笑みかけた。

 

「みほさんお久しぶりですこと。そして大洗のみなさん、ごきげんよう」

 

 そして得体の知れない笑みを添えて、こう言った。

 

「急に押しかけて御免遊ばせ。でもわたくしたち、皆様と取引をしにまいりましたの。大洗に損はさせませんことよ」

 

 

 

 

 

 

 ――◆Girls und Armored trooper◆

 

 

 

 

 

 大洗の一同がダージリンに気を取られていたなか、ただ独り、紗希だけがそれに気がついた。

 彼女は振り返った。今しがた後にしてきた格納庫、無人のはずの格納庫から、不思議な音色が聞こえてくる。

 紗希は知らぬがそれは、カンテレという珍しい弦楽器が奏でる音色だった。

 

 

 

 






 その口から紡がれる言葉の一つ一つに、無限の謎を秘めた少女。
 香る紅茶にカンテレが唱和し、謎は謎を呼び混乱を呼ぶ
 みほは戸惑い、杏は乾いた笑いを漏らし、桃は思わず怒鳴り叫ぶ
 だが二人の風変わりな少女は、そんなことは知らぬとばかりに己が流儀を貫き続ける
 話に収集をつけられるのは、果たして誰か。

 次回「会談」。ただ、風だけが知っている





【聖グロリアーナ連絡艇】
:孤影再びでテイタニアが搭乗していたアレギウムの連絡船と同じ機種
:四発エンジンのジェット機風だが、実は星間飛行もできる超高性能機
:大型の機体で、内部には数機のATを格納可能



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