緊張で掌が汗まみれなのが、手袋をしていても解る。
激しい動悸に首筋の血管すら激しく脈打ち、緊張に頭はバクバクだ。
念入りに曇り止めを塗っておいたから、ヘルメットのフェイスガードが息に曇ることこそないが、狭いヘルメット内に自分自身の生暖かい呼気が充満して何とも気持ちが悪い。
適度な湿気はお肌に良いとは聞くが、こうも蒸すならむしろ髪の毛に悪いのではなかろうか。
耐圧服用のヘルメットは適度に大きいので特に髪対策はいらなかった為に軽くゴムでまとめてきた程度だったが、こんなことならば多少は何か工夫をしてくれば良かった――。
「やだもー!」
――などと現実逃避をしている場合ではない。
次々と飛んで来る銃弾を必死に逃れながら、沙織の駆るスコープドッグレッドショルダーカスタムは並び立つ廃家屋の隙間を次々と駆け抜ける。
敵は20機余り。廃屋が目眩ましの役割を果たしてくれているとはいえ、銃弾砲弾は薄い壁を易易と貫通、あれではまるで盾にはならないだろう。つまり一歩でも止まれば、そこに集中砲火を喰らっておしまい、ということだ。
重たいロケットポッドにミサイルポッドは既にパージ済みで、それに加えてのアイスブロウワーの効果で動きはいつもより素早い。それでも20の銃口に狙われている現状に対しては気休めにしかならない。
「この! この! この!」
ヘビィマシンガンでとりあえず反撃を――しようにも残弾が乏しいので左腰のガトリングガンでお茶を濁す。
近い間合いならば撃破判定も十分に出せる一品だが、この距離では文字通り
でも問題はない。沙織はターレットを回転させ、精密照準カメラへとセンサーを切り替える。
左腰のSSMミサイルの照準器と連動しているために、カメラを自分を追うプラウダ機へと向ければ、FCSが働き自動でロックオンがかかる。だがミサイルに残弾はない。バイザーモニターの下の端には『EMPTY』の赤文字が点滅している。
(3267458……)
しかし沙織が見ていたのはロックオンマーカーが描き出す、敵機の座標を意味する数列のほうだった。
試合場の地図データと、ATが背負った『MCA-626』火器管制コンピューターををリンクさせ、ロックオンされたATの現在位置座標を割り出す。沙織はプラウダのATから狙いやすい動きの鈍い一機を選び出す。
だが実際に狙うのは沙織ではない。沙織は無線機へと向けて叫んだ。
「3267459!」
瞬間、プラウダATの一機が横合いから殴りつけられでもしたかのように吹っ飛び、雪煙あげて倒れると同時に白旗を揚げた。それに驚いたか動きが止まった別のチャビィーも、やはり横合いからの一撃に機体をくの字に曲げて吹っ飛ぶ。
彼女らの隣にある廃屋の壁には、穴が開いていた。
大きな大きな穴が二つ。
砲声が響けば、穴は三つに増えた。
慌てて散開するプラウダATのなか、やはり初動が遅かった一機が吹っ飛んで白旗を揚げた。
「ナイス華!」
『沙織さんも続いてください!』
「りょーかい!」
温存していたヘビィマシンガンをここぞとばかりに撃ちまくる。
追うものは、今や追われるものだ。
退いて態勢を立て直そうとしたファッティーが一機、新たに撃破される。
これで5。残りは15。
(まだ15!)
そうまだ15機もいる上に、麻子たちが相手をしているエクルビスも健在だ。
沙織が囮になっての華との連携攻撃も、最初の不意討ちが終わればもう通じまい。
だが華がこちらでの戦いに集中すれば、村の外、塹壕のなかで必死に戦う味方への援護は不可能になる。
(15機が何よ! みんなやっつけちゃうんだから!)
相手は昨年の優勝校、こっちは実質素人集団。
ましてや自分たちは『特別な存在』なのではない。
――みほが嘘をついているなど、最初から気づいていた。
それでも承知で、敢えてそれに乗った。
今この瞬間を乗り切るために、例えそれが幻にすぎないとしても。
それを信じて――いや、その幻を掲げるみほを信じて戦うしか無い。
昨日も、今日も、明日も、硝煙に閉ざされて見えない。だからこそ、友を、切れぬ絆を信じて。
「行くよ華! 早くみんなを助けないと駄目なんだから!」
『手早く行きましょう。明日のためにも!』
第48話『急襲』
雪の戦場で闘いを繰り広げる大洗とプラウダ。
ぶつかり合う両校の有様を、高台から見下ろす人影が三つ。
古の武将のようにどっかり堂々と座すれば、折りたたみ椅子も床机が如し。
先を切りそろえた黒い長髪に、黒い背広にワイシャツ姿の凛とした女性だ。その相貌は鋼のように冷たく硬く、なかなかの美人さんであるにも拘らず、視線は触れれば切れそうな程に鋭い。
装甲騎兵道家元、西住しほ、その人である。
「……無様」
その横顔そのままな冷たい言葉が、その唇からは紡ぎ出される。
「包囲され、追い詰められたのみならず、自機を失い機甲猟兵にまで身を落とすとはね」
声色は飽くまで平淡で冷静沈着と聞こえるが、しかしその瞳には隠しきれぬ怒りの炎が燃えている。
みほは単に我が娘というに留まらない。みほは西住流家元第一番の高弟なのである。
その事実は黒森峰より他校へと移ろうとも変わりはない。少なくとも世間はそう見る。
世間が何をほざこうがしほからすれば一切合切知ったことではないが、それでも手塩にかけて育てた筈の高弟が公衆の面前で無様を晒すのは見ていられない。
「……」
しほは無言のまま、スックと床机より立ち上がった。審判に提言するためである。
もはや勝敗は決したに等しい。少なくとも、例え逆転で勝ちを拾おうとそれは西住の流儀ではない。
そんな勝ちに意味は無い。ならば、直々に引導を渡してやるのが師であり母たる者の務めだ。
「待ってください」
傍らから呼び止められた。
背筋を正し、黒森峰の制服に身を包んだ少女である。
顔立ちはみほに似ているが、雰囲気はまるで違う。
鋼のように冷たく固い空気を身にまとった姿は一見してしほと母娘と解る有様だった。
黒森峰装甲騎兵道部隊隊長、西住まほ。みほの姉である。
「試合はまだ終わってはいません」
似たところの多い母娘同士である。言いたい旨を伝えるにはこれで十分だった。
「……」
しほは黙したまま床机へと戻った。
そして二人黙ったまま、黙々とみほたちの試合の様子を見つめている。
(――気まずい!)
堪らないのは間に挟まれた逸見エリカだ。
彼女はと言えば先のくだりの間も、正面を向いたまま冷や汗まみれで身じろぎ一つできていなかった。
隊長に「大洗の試合を観戦に行く」と言われた時は、まぁみほの戦いっぷりでもちょいと見物してやるか、ついでに優花里の様子も見ておきたい、程度の心づもりだったのだが、まさか西住流家元ご本人まで居るとはまったくの予想外であった。しかも、何故か自分の席はしほとまほの間だ。
家元が隣というだけでも緊張するのに、ましてや日常的に張り詰めた空気に満ちたしほとまほの二人の間に入るのである。正直、生きた心地がしない。畏まり切ったエリカは試合の様子も頭に入ってこないしで、もう何がなんやら解らない有様だった。
(隊長……)
救いを求めるようにまほの方へと視線を送ってみるが、まほはと言えばただただ一直線、みほたちの試合を真剣に観戦している。しほのほうをこっそり窺い見れば、視線に感づかれたか、しほと眼が合いそうになるのを慌てて正面へと目線を戻す。
(もしかして)
妹の試合を妹と現在進行形で母娘喧嘩中の母と二人きりで見に行くのが気まずいから、もしかして自分は体よく盾役にされてしまったのでは?
まほの冷たく揺るがない表情からは、エリカは何一つその真意を読み取ることはできなかった。
――◆Girls und Armored trooper◆
迫り来る鉤爪を、掠めるか掠めないか、そのぎりぎりの間合いで避ける。
お返しとばかりに右腕部のアイアンクローで仕掛けるも、これは体よく躱される。
「……ッ!」
すれ違いざまにパイルバンカーが来る!
予測と同時に行動、アイスブロウワーの塹壕構築機能を起動、雪の地面に膝まで埋めて『車高』を下げる。
ビンゴ! 機体の直上を鉄杭が通りすぎるのを感じながら、即席の壕を駆け抜け、勢いそのままピョンと雪上へと躍り出た。
「……」
――流石にしんどいな。
麻子は胸中でそう呟いた。
眠たげな眼は今はハッキリと見開かれ、長い髪の毛が逆立つかと自分で思うほどに緊張が全身の神経を漲っている。装甲騎兵道の試合においてはいつも常に無い緊張を味わい、眠気は吹き飛んでしっかりと意識を覚醒させてきたが、ここまで頭がクリアになったのは初めてのことだった。いや、そうなっていなければ自分はとっくに撃破されていただろう。麻子が全神経をATの操縦に駆使してなお、ギリギリの所で動きに付いて行くことができる……。それぐらいに、相手のエクルビスの挙動は素早い。
――麻子はATというマシンをそこそこ気に入っている。まるで五体の延長であるかのように、この鋼の五体は己の意のままに操ることができる……他のマシンには無いそんな独特の操作感がATには備わっているからだ。
そこに加えて麻子は類まれなる操縦センスの持ち主でもある。五体の延長どころか己の五体そのもののように自然に動かすことができるのだ。動かしていて楽しくない筈もない。
「……」
だが今の麻子には操縦の妙を楽しんでいる余裕など一欠片もない。
大洗随一、否、全国レベルで見ても有数の操縦技量を持つ冷泉麻子をしてこう断言せざるを得ない。目の前のエクルビスのパイロットの技量は、自分とは『次元が違う』と。
いや、どの学校の一番操縦の巧い選手を連れて来ても、その制動の見事さにおいては目の前のエクルビスに勝つことはできないだろう。『己の五体そのもののように』、などではない。『己の五体』そのものだ。それぐらいに相手のATは動きが自然体で、気持ちが悪いぐらいに人間染みている。
全身全霊で相手しなければ、攻撃を凌ぐことすらおぼつかなくなるだろう。
「……」
ATの操縦は二本のレバーと二つのペダルで行う。
ミッションディスクのサポートによるオート操作もあるが、麻子はこの機能をオフにしていた。
マニュアルであればこそ、直にATに触れている感触を得られる。だが、あのATの動きに比べれば、自分はまるで手袋を嵌めてでもいるかのようだ。完全にATの挙動を己のものにしている。そうでなければあんな動きはできない。
(……やはり西住さんの予想通りか)
みほはこの試合で真っ先にこのエクルビスと交戦した。
一瞬の攻防の中で、みほのパープルベアーは為すすべなく両手をもぎ取られてしまったと見える。
しかし西住みほというボトムズ乗りの本領は単純な操縦技量やAT格闘能力などにあるのではない。類まれなる戦術眼と分析力、そして土壇場で見える心の芯の強さである。
あの僅かな立会の中でも、みほは確かに相手の『正体』の一端を掴んでいた。
――『これは推測ですけど。相手の隊長機はこちらのATとは根本的に操縦システムが違います』
みほが言うには、対決の最中、ATのバイザー部を開いてアーマーマグナムでの攻撃を試みたらしい。その時だ。単に一矢報いるだけのつもりが意外にも、相手は驚いた様子であたかも人間のように肩をビクッと震わせ、一瞬、動きを止めたというのだ。
――『噂だけは聞いたことがあるんです。ATを脳波でコントロールする新型の操縦システムのことを』
麻子もみほと同じ結論へと達していた。
相手のATのあのレスポンスの速さは、意識とATを直結でもさせなければ出すことは不可能だ。
麻子もまた一流のボトムズ乗りだからこそ解る。
(それなら速さ勝負で勝てないのも納得だ)
ATの操縦は二本のレバーと二つのペダルで行う。
ミッションディスクのサポートによるオート操作もあるが、それでも肝心の部分は操縦桿を用いる。
つまりパイロットが思考し、レバーやペダルを動かし、それに従ってATが動くというプロセスがアーマードトルーパーの操縦プロセスであるということ。つまりボトムズ乗りが考えてからそれがATの動きに反映されるまでは、若干のタイムラグが存在するということ。
それは僅かな、本当に僅かな時間に過ぎない。
しかし腕利きのボトムズ乗り同士の戦いとなれば、その一瞬の差が勝敗を分かつ。だからこそ相手の動きを読んでの偏差攻撃であったり、ATにオートで行わせるコンバットプログラムが重要になってくる。
(そういうのも、相手には関係ないわけだ)
理屈は解らないが、とにかく相手は脳波とAT駆動系を連結させることで、操縦プロセスを一段階省略することができる。こっちが3手必要な所を相手は2手で済む。機動力で勝てないのも道理だ。
(……だがその強みが弱点にもなる)
みほは言っていた。
アーマーマグナムを不意に突きつけられた時、相手は驚いた様子であたかも人間のように肩をビクッと震わせ、一瞬、動きを止めたのだと。
そこに、勝利へと繋がるヒントがある。
――◆Girls und Armored trooper◆
「ちょこまかちょこまかと……やるじゃないの、無名の弱小校のボトムズ乗りにしては」
正直カチューシャは驚き、素直に感心していた。
大洗女子学園などこれまで聞いたこともないぽっと出の学校だ。
例の西住流家元の娘の妹のほうならばともかく、他は正直取るに足らない連中であると見くびってもいた。
それがどうだ。この新型の操縦システムを搭載したエクルビスとも、かろうじてながら互角に渡り合っている。
ちょこまかと逃げまわり、20の僚機とは気づけば完全に引き離されていた。
「褒めてあげるわ。このカチューシャをここまで手こずらせたことを……」
鼻の頭に汗が滲んできたことを感じる。
ヘルメットの下で浮かべた強気の笑みと言葉とは裏腹に、内心ではカチューシャは若干の焦りを覚えていた。
この新システムは素晴らしい。まるで本物の手足のようにATを動かす事ができる。しかも考えただけで、だ。
だが皮肉にも、この手足をろくに使わなくてもATを自在に動かせる装置は、普通に手足を使ってATを操縦する場合よりも、遥かに大きな負担を体にかけるのだ。つまり短時間で酷く疲れる。
試合中、カチューシャがお昼寝休憩を挟んだのもそれは別に彼女の我儘ではない。
インターバルを挟まなければ、むしろ相手に利することになるからだ。
意識とATが連動しているが為に、疲労の影響もより露骨に表に出る。
(とっととケリをつけて味方と合流しないと)
隊長としての体面もあるが、何よりもカチューシャ自身のプライドの問題で、特機を駆りながら弱小校の無名エースに数を頼んで勝ったなどとみっともないことはできない。故に応援は呼ばない。ここで、自分自身でコイツは撃破する。
「……」
深く考える必要はない。
ただ歩こうと思えばATが鋼の足で歩み、走ろうと思えばグライディングホイールが回る。
カチューシャが闘志を込めれば、雪を蹴り飛ばして黒い巨体は駆けた。
相手のブルーティッシュドッグも合わせてこちらへと向けて雪面を滑る。
アイスブロウワーを用いたスキーのように華麗な蛇行機動。普段なら翻弄もされるかもだが、今のカチューシャには余りにスローな挙動に過ぎない。
彼我の距離は見る間に縮まる。
カチューシャは左手で相手に掴みかかるイメージを思い描いた。
エクルビスの左手が、三本鉤爪が蠢きぐわっと広がり、掴みかかる形をとった。
振りかぶった体勢のまま、カチューシャのエクルビスは突っ込む。
対する相手は僅かに膝を曲げて腰を沈めたばかりで、工夫らしい工夫もなく突き進むばかり。
破れかぶれになったか? いや、相手は無名ながらエースだ。そんな筈はない。
「!」
相手の右手が回転する。
ガトリングガンが備わった右手をまっすぐに伸ばし、ぐるんぐるんと下から上に腕を回したのだ。
その勢いそのまま、ガトリングガンの先端を雪に叩きつければ、回転の勢いもそのまま雪が跳ね上げられ、その向かう先はカチューシャのエクルビスだ。
目眩まし! だがカチューシャには相手の動きがつぶさに見えていた。
だからこそ、見てから反応できた。
「無駄よ!」
胸部機銃が雪を弾き飛ばし、その壁を貫いて向こう側のブルーティッシュドッグの装甲へと叩きつけられる。
相手は咄嗟に右手でガードしたようだが、それで完全に右腕部はお釈迦だ。
隙を逃さず、カチューシャはブルーティッシュドッグの右肩を掴み、力いっぱいに引っ張った。
引きちぎれる右手。相手は足掻き残った左手のアームパンチを繰り出さんとする。
「無駄なんだから!」
今度はパイルバンカーの一撃!
これに関しては実に奇妙な操作感だった。
『手首を折り曲げたあとに、中指を伸ばす』ような感覚とでも言えば良いのだろうか。
とにかく普通ならばありえないイメージに連動して、AT故の人体とは異なる構造のギミックが起動、左手首が折れ曲がり、パイルバンカーの鉄杭が打ち出される。
アームパンチの拳に当てられたパイルバンカーは、拳もろとも相手の左手をも粉砕した。
「トドメよ!」
カチューシャが叫んだと同時に、背後で廃屋の一つが爆発した。
カチューシャは驚いた。驚いて体がびくりと震え、思わず振り向いた。
背後の廃屋は爆発炎上していた。ただ爆発炎上していただけに過ぎなかった。
「バカね! そんなのひっかかるわけないわよ!」
カチューシャは即座に正面へと向き直ったが、そこには半壊し、殆ど戦闘不能になったブルーティッシュドッグが倒れているのみ。
果たして相手は背後より、炎をくぐり抜けて姿を現した。
「……ッッッ!」
猛烈な勢いのタックル!
見覚えがあるその機影は、先の前哨戦でもカチューシャ目掛けて体当りしてきた不埒者だ。
両手での反撃は相手に勢いを見るに間に合わない。
カチューシャは地面を蹴って跳んだ。
相手の頭を背を軽々跳び越え、くるりと宙に舞う。
このまま相手のバックをとって、反撃を――。
「あ」
目があった。
相手の、突っ込んできた奇妙なニコイチAT、ゴールデンハーフスペシャルの背中にロープで体を括りつけた、一人の機甲猟兵とだ。
(あ……まず……)
機甲猟兵、西住みほが手にしたアーマーマグナムの銃口は、まっすぐコッチに向いている。
逆さまの景色のなか、銃口とみほの視線だけがまっすぐだ。
固い決意を込めた視線に、カチューシャの体は中空で射竦められた。
ただでさえ自由のきかぬ空中で、カチューシャの意識は一瞬、自分を狙うみほへと捕らわれた。
――新型操縦システムの弱点。それは驚きや恐怖といった感情すらも、ATへと反映してしまうこと。
不意討ちに驚き、みほの視線に竦んだカチューシャの視界に、アーマーマグナムの銃弾が突き立ち、罅割れた。
勝ち残った事が幸運とは言えない
それは次の地獄へのいざないでもある
プラウダの悪鬼が目覚め、極寒のブリザードと化して襲いかかる
迫り来る苦境が、廃校の予感が、お前達はいらないと呻きを上げる
だが少女たちは叫ぶ。希望を掴むために叫び続ける
次回、『射線』 スコープを覗き、赤き怒りと対す