ガールズ&ボトムズ   作:せるじお

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番外編 不肖・秋山優花里のAT講座

 

 

 みなさん、こんにちは。

 秋山優花里です。

 今回はこの場を借りて、原作ガールズ&パンツァーの戦車に代わり、私達の愛機を務めているロボット兵器、その名もアーマードトルーパーについて、さらにはその原作となる装甲騎兵ボトムズについての解説を行いたいと思います。拙い解説になるかもしれませんが、不肖、秋山優花里、任務は全力で遂行いたしますので、暫しの間お付き合い頂けると幸いです!

 

【ガールズ&パンツァーについて】

 

 まずはガールズ&パンツァーについての解説です。

 2012年から2013年にかけて放映された、原作を持たないオリジナルアニメーション作品です。

 比較的最近の作品であり、また今現在(2016年6月時点)で劇場版が今なお放映中ということもあって、見たことは無くても名前だけは知っている、というかたは多いのでは無いでしょうか。

 女子高生が戦車に乗って戦う……という、そこだけ聞けば些か突飛にも思える設定を、拘りぬいた、しかしそれでいて映像的なケレン味も忘れない圧倒的戦車描写と、スポ根や往年のホビーアニメを思わせる熱いストーリーで引っ張る、ハートフルタンク青春エンターテイメントですぅ! わたくし、秋山優花里も主人公たる西住みほ殿の乗機、『Ⅳ号戦車D型』の装填手を務めさせて頂いています!

 テレビシリーズは全12話……ええと、実際には諸般の事情で2回ほど総集編が挟まりましたけど、とにかくストーリー的には全12話で、それに本編ではカットされたアンツィオ高校戦を描いたOVAが一作、加えて現在も絶賛公開中の劇場版と、ストーリー自体は極めてコンパクトに収まっていますので、とても取っ付き易い作品ではないかと思います。TVシリーズ、OVA、劇場版と一通り眼を通した後に、本編とは違う視点で描かれたコミカライズ版、ノベライズ版、さらには本編後の世界を描いたスピンオフ作品『リボンの武者』などの書籍での展開に触れてみるのもおすすめです!

 とにかく本作については、口で内容を語るよりも、実際に本編を見ていただくのが一番良いように私は思います。DVDもレンタルショップで取り扱っていますので、気になったら迷うこと無く全速前進ですぅ!

 ……ちょっとCMが露骨すぎましたでしょうか。つ、次に行きましょう!

 

【装甲騎兵ボトムズについて】

 

 次は装甲騎兵ボトムズについての解説ですね。

 装甲騎兵ボトムズは1983年から1984年にかけて放映された、ガールズ&パンツァー同様、特定の原作を持たないオリジナルアニメーション作品です。

 本作はいわゆる『ロボットアニメ』、つまりロボットを物語の中心に据えたアニメーション作品の一つで、劇中にはアーマードトルーパー、通称ATと呼ばれるロボットが多数登場します。

 TVシリーズは全52話と、一見、ガールズ&パンツァーとは対照的な長編アニメと映りますが、実はストーリーは『ウド編』『クメン編』『サンサ編』『クエント編』の4部構成になっていて、各部あたりは約13話と、1部辺りのスパンはガールズ&パンツァーとそう大差なくて、4クール1年の作品としては比較的取っ付き易い部類になっています。

 『ミリタリーロボットアニメの金字塔』と称されることの多い本作ですが、実はTVシリーズ終了後にリリースされたOVAシリーズはともかく、TVシリーズ本編ではミリタリー色が強いのは全4部のうち『クメン編』のみだったりします。鉄の軋みとその臭い、閃光と硝煙、ほのおのにおいしみつて、『むせる』……そんな殺伐として無情な戦場の現実を描いた作品と時に誤解される本作のメインテーマはずばり、『主人公キリコの自分探し』であり、『ヒロイン・フィアナとのラブロマンス』なんです! 意外に思われるかたも多いかもしれませんが、実は主題歌でも『盗まれた過去を探す』『砕かれた夢を拾い集める』と、割りとダイレクトにメインテーマが歌われているんですよね。それにしても『砕かれた夢を拾い集める』という部分には、私、何となく西住殿のことを考えてしまいますね! ……すみません、解説に戻ります。とにかく、恋愛に定評のある武部殿から見ても大満足間違い無しなラブストーリーは必見です! ロボットアニメの大御所ということで、TVシリーズは置いてあるレンタルショップも多いので、ガールズ&パンツァーと合わせてレンタルしてみるのも良いかもしれませんね。

 

【アーマードトルーパーについて】

 

 装甲騎兵ボトムズという作品のもうひとり、もとい『もうひとつ』の主人公とも言えるのがアーマードトルーパー、略してATと呼ばれるロボット兵器です。全高は4メートル前後の一人乗りの人型ロボット兵器で、ロボットアニメに登場するメカとしてはかなり小柄な部類となります。ちなみに装甲騎兵ボトムズ、のボトムズの部分は、このATあるいはその操縦者に対しての別称より来ています。劇中でも『ボトムズ乗り』という単語が何度か登場していました。

 アーマードトルーパーというロボットの第1の特徴として挙げられるのは、とにかく『ありふれた存在』であるということです。例えばキリコが愛用する機種『スコープドッグ』は数千万機もの数が量産され、百年戦争――百年戦争というのは、ボトムズの作品世界『アストラギウス銀河』を二分する、超大規模な戦争のことです――終結後は、余ったスコープドッグが大量に民間に放出され、街のゴミ捨て場にも残骸が大量に放棄されているほどです。実際、ボトムズ本編でもキリコがゴミ捨て場からATの残骸を拾い集めて、町工場程度の設備で一機組み立てるシーンがあったりするんですよ! ボトムズの監督を務めた高橋良輔氏がインタビューに答えて言うには『ATというメカはジープを意識して考えた』だそうです。なるほど、確かにこの手軽でありふれた姿には、戦車よりも、戦闘機よりも、装甲車や軍用車に近いものを感じますね。

 ATは何よりも生産性と機動力を意識して作られた兵器でして、そのために装甲や生命維持装置は必要最低限のものしか搭載していません。ガールズ&パンツァー本編、もといOVAでアンツィオ高校が使っていたCV33の装甲は一番厚い部分で14mmですが、スコープドッグの最大装甲も同値の14mmということからも、いかにATという兵器が生産性と軽さを意識した兵器かということが、おわかりになるかと思います。ただCV33とATの大きな違いはその火力で、スコープドッグが標準装備としているGAT-22 ヘビィマシンガンの口径は30mmと、手持ちのマシンガンと言いつつ機関砲並の口径と火力を有しています。さらに対艦用のオプション装備ロッグガンに至っては、小惑星の硬い岩盤を撃ち射抜くほどの出力を持っていますので、例え装甲は薄くとも、その攻撃能力はとても頼りになると私、断言できます。それに手持ちの火器がなくとも、アームパンチという最後の武器が備わっていますし。火薬の力で拳を撃ち出す訳ですから、そのパンチはATの装甲をへこませるぐらい強力です! あと、機種にもよりますけど足裏に搭載した車輪、グライディングホイールによる『ローラーダッシュ』で、ATはCV33に引けをとらない速力も持っています。軽快で走破性も高く、二本足のお陰で段差を超えるのも簡単です。装甲の薄さばかりが取り上げられがちですが、こうして見てみるとATも中々良い物だって、みなさんご理解いただけたでしょうか。

 

【ATの操縦法について】

 

 ATの操縦法は、M4シャーマン同様に極めて簡単です。

 操縦システムは前後に動く二本のレバーに、左右のペダルのみで行います。ただし二本のレバーについては、それぞれに指の位置に対応した5つのボタンが備わっていまして、このうち親指を除く残り4本に対応したボタンを『バリアブルコントローラー』と呼びます。基本的には脚部を左右のペダルで、腕部を二本のレバーで動かす訳ですが、ミッションディスク――ATの挙動をプログラムしたデータディスク――を合わせて使うことで、ある程度の動きはオートで行うことができます。他にも、音声認識によるオート操作も可能で、ボトムズ本編でもキリコが『バルカンセレクター』と叫ぶ姿が見られました。これはヘビィマシンガンをフルオートにする音声コードですね。他にもコンバットプログラムと言って、ミッションディスクに予め入力しておいた動作をオートで発動し、マニュアルでは難しい操作を繰り出すことも可能です。ガールズ&ボトムズの劇中においても、西住殿が幾つか技を繰り出していましたね。いやぁわたくし! 西住殿のあの動きには――(以下略)。

 

【ATの主な機種について】

 

 ATにはかなり多くの機種があるので、ここでは主な機種、おおまかな分類のみについて述べさせていただきます。その、あの、わたくし、自分の好きな話題に関しては、止まらなくなってしまいますので……とにかく始めます!

 え、ATにはおおまかに分けてH級、M級、L級の三区分があります。これは機体の全高と重量による分類で、H級はヘビー級を、M級はミッド級、L級はライト級の略です。殆どのATはM級もしくはH級で、L級のATは1機種しか存在していません。具体的に名前を挙げれば、

 

 H級……スタンディングトータス、ダイビングビートル、ベルゼルガなど

 M級……スコープドッグ、ファッティーなど

 L級……ツヴァークのみ

 

 となります。

 基本的にはM級は汎用型、H級は重火力型あるいは特機型、L級は機動型と見ることができますね。

 機体の普及率、という意味ではスコープドッグ、スタンディングトータス、ファッティーの三機種が三大ATと呼ぶことができると思います。いずれも機体のバリエーションに富み、湿地用、雪原用、山岳戦用、そしてバトリング用など、想定される戦場に合わせたカスタム機が多数存在しています。

 あとH級をベースに独自ルートをとった機種もありまして、マーティアル――アストラギウス銀河で最大の勢力を誇る宗教組織です――の聖地アレギウム防衛用に設計されたエルドスピーネや、そのカスタム機であるオーデルバックラーがそうですね。ガールズ&ボトムズ本編では聖グロリアーナの機体として活躍しました。他にもクロア星という惑星で独自に開発された、オクトバというちょっと一風変わった機種もあったりします。オクトバについては、開発元のクロア星が戦火で惑星丸ごと消滅してしまったので、残念ながら現存機が僅かになってしまい、今では見かけることも稀になってしまったのですけど。

 

【ATのギミックについて】

 

 アームパンチ、ローラーダッシュについては既に解説を済ませていますので、今度はそれ以外のギミックについて触れていきたいと思います。

 

・ターンピック

 これはATの方向転換に使う装置ですね。人間で言う所の踝の辺りに装着されていて、地面へと向かって杭を打ち込みます。ここを支点にローラーダッシュをすることで、急速旋回が可能になるわけです。整備が足りなかったり、パーツが劣化していたり、あるいは地盤が硬すぎたりするとうまく機能しません。ですが、硬い地面にターンピックを刺さらないのを承知で打ち込むことで、機体をわざとスリップさせるという運転技法も、あったりするんですよ。

 

・三連ターレットレンズ

 スコープドッグ系統のATのセンサーは、標準カメラ、広角カメラ、精密射撃カメラと、機能の違う三つのカメラがひとまとめになっていまして、その場その場に応じて回転させ、使い分けています。ちょうど顕微鏡のレボルバーを倍率に合わせて回転させるのと同じです。これを三連ターレットレンズと言います。そう言えば、戦車の砲塔を回転させる部分も、ターレットリングと呼びますね。次回予告の中でも『回るターレットから、キリコに熱い視線が突き刺さる』という一節が見られるように、ATの顔とも言えるギミックになっています。とは言え、実は回転するターレットレンズを持っているのはドッグ系ATのみで、トータス系やビートル系、ベルゼルガ系、それにラビドリードッグやツヴァークも3つのカメラが1組になっている点では同じですが、ドッグ系と異なり回転はしません。西住殿が使っているパープルベアーや、エルドスピーネのカメラは2つ、ファッティーを始めいわゆる『バララントAT』はすべてカメラが一つのみです。ブラッドサッカー、ストライクドッグといった次世代H級ATは4つのカメラが一体化した複合センサーを備えています。これはオーデルバックラーも同様ですね。カメラひとつとっても、ATにも実に個性があるということですね! ちなみに、ATのセンサーは機内でパイロットが装着するゴーグルと有線で連結されていて、カメラの視界はそのまま操縦手の視界に投影されるという、中々に画期的なシステムをとっています。操縦時のスリルも抜群ですぅ!

 

・降着

 ATは全高が4メートル前後と、立ったままではコックピットの位置が二メートルより上になってしまい、乗り込むのに不便です。そこでATには『降着』と呼ばれる足を折りたたむ機構が備わっています。これを使えば機体を格納するときにスペースもとりませんし、乗り込むのも楽で一石二鳥です。降着の方式はギルガメスとバララント、アストラギウスを二分する各陣営の機種ごとに異なっていて、ギルガメス系は足を後ろに、バララント系はちょうど体育座りの要領で足を前に折りたたみます。マーティアル系のATには降着機能がありません。ドッグに格納している時も立ったままで置いてあるようです。劇中の描写を見るに、ちょっと乗りにくそうでしたね。

 

・パイルバンカー

 既にガールズ&ボトムズ劇中に何度も登場しているパイルバンカーですので、改めて説明は必要ないかもしれませんが、念のため。これは主にベルゼルガ系に搭載されてる接近戦用の特殊兵装です。圧縮空気や火薬、あるいは電磁カタパルトを使って鉄杭を加速させ打ち出し、相手のATの中のパイロットを直接狙うという、なかなかに物騒な武装です。普通はベルゼルガ系が左腕に装着するシールドと一体化していますが、一部のスコープドッグはシールドを介さない、簡易式のリニアパイルバンカーを装備していたりしますね。後々のロボットアニメにも強い影響を与えた、極めてエポックメイキングな兵装なのですが、実はTVシリーズでは2回しか使っていません。パイルバンカーを有名にしたのはむしろ、スピンオフのOVA作品『機甲猟兵メロウリンク』で主人公を務めたメロウリンク・アリティー伍長ですね。彼は何と対ATライフル――対物ライフルのような大型ライフル銃です――の先に銃剣のようにパイルバンカーをとりつけ、それでATに生身で挑むという離れ業をやってのけました。いやぁ人間、頑張れば何でもできるものなんですね!

 

【バトリングについて】

 

 ガールズ&ボトムズ本編でも既に、名前だけは何度も登場しているバトリング。これもまたパイルバンカー同様、ボトムズという作品が生み出した極めてエポックメイキングなギミックなんですよ。内容は簡単『ロボット同士のバトルを見世物にする』というものです。劇中でのキリコの言葉を借りるなら『噂には聞いていた。俺と同じ戦場帰りのあぶれ者が、裏の世界で賭けの対象となってコンバットを見せている』となりますね。ロボット同士が戦うのはロボットアニメでは極当たり前のことですが、それをプロレスやボクシングのように見世物にしてしまうというのは、当時としてはとても画期的な発想でした。実はボトムズという作品も当初は『キリコが街々を巡ってバトリングをしていく』という内容で放映する筈だったと、みなさんご存知でしたか? しかし企画の段階では物語に対する比重がとても大きかったバトリングですが、実際のTVシリーズ本編では話のメインとして扱われるのは僅かに第4話『バトリング』の1エピソードのみ。余り大きな扱いとは言えませんでした。しかし模型誌とのタイアップで始まったスピンオフ小説『青の騎士ベルゼルガ物語』やOVA『ビッグバトル』などでバトリングは作品のメインに取り上げられ、後続のクリエイター達に強烈な印象を残しました。このバトリングのようなロボット同士のコンバットが見世物になる作品は、フルメタル・パニックやフロントミッション、そしてアーマードコアシリーズと、たくさん挙がります。

 話を戻しますが、バトリングには大きく二種類ありまして、『ブロウバトル』と『リアルバトル』の2つです。

 『ブロウバトル』はAT同士が火器を持たず素手で殴りあう、まさにプロレス、格闘技といった感じです。ただ、見世物性を重視しているのかキリコをして『あそこ(戦場)に充満していた息詰まるばかりの殺気、ビリビリしたあの張りが無い。ここには、馴れ合った穏やかさすら感じられる』とか『所詮、遊びだ』などと(くさ)されてしまっていますね。ただ、遊びと言ってもAT同士、鋼鉄の塊の殴り合いな訳ですから死者も頻発する危険なゲームには違いありません。

 もうひとつの『リアルバトル』、これはゲームの名を借りた『実戦』と言っても過言ではありません。ボトムズシリーズではむしろこちらが登場するほうが多いですね。以前、カエサル殿に教えていただいた、古代ローマの剣闘士を思わせる命がけのゲームです。実戦同様、参加するATは自由に武装し、会場は実弾が飛び交います。時には流れ弾が観客席に飛び込んで死傷者が出ますが、観客は『これもバトリングの醍醐味』とむしろ面白がってるぐらいでして、まぁ非常にアクティヴというかなんというか、アストラギウス銀河の住人たちのたくましさを良く表したエピソードといえるかもしれません。

 

 

 

 いささか長くなってしまいましたが、ここまでご静聴いただき、本当にありがとうございます。

 わたくし、話しっぱなしだったので喉乾いてしまいました。このまま話すとまさに『むせる』ですね。

 他にも解説するべきことができたら、またみなさんとこの場でお会いしましょう。

 それでは、パンツァー・フォー! ……じゃなかった! すいません、いつもの癖です。

 と、とにかく、また今度ーっ!

 

 


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