留姫「今回もデュエルなしよ。」
駆「さぁ、今回は一気に3人の新キャラが登場!」
留姫「そのうち2人は転生者。今回は主にその2人の転生者についてよ。」
駆「それでは、第37話、スタート!」
駆side
「アカデミア内での大会なんてあったんだね。」
「そうよ。」
文化祭から2週間後の休日。
セキュリティでの仕事が夕方に終わった俺は、留姫と一緒に海岸を歩いていた。
なぜ海岸かって?気まぐれだよ。
「しかも個人戦と団体戦・・・団体戦もあるなんて思わなかったよ。」
「でしょうね。団体戦は約1年後にあるWRGPのルールと同じよ。」
「まじか。つまり3対3の団体戦?」
「そうよ。」
「メンバーは?」
「期末試験の結果が帰ってきてから決めるんだけど・・・まぁ私たち5人でしょうね。」
「ですよねー。」
だって俺ら5人が実技の成績が圧倒的に上だもん。
「個人戦は中等部内で予選があるわよ。トーナメントで。」
「トーナメントなんだ。」
「そうよ。ただ、ベスト8までしか決めないけどね。本選に行けるのは16人。ベスト8に入ったら本選の1回戦に。ベスト16だと小等部の代表8人との予備戦を勝たなきゃいけないわ。」
「だからベスト8まで決めるんだね。」
ちなみに高等部も出れるのは16人らしい。
「予選のトーナメント表は2学期の中間と期末の総合成績によって決まるわ。」
「だから2学期のテストは皆の目の色が違うんだね。」
「そうよ。」
そりゃ重要だよな。順位が上なほど本選に行ける確率が高まるんだもん。
「団体戦は予選ないの?」
「小等部3年だけあるわ。小等部3年は1クラスしか出れないから。小等部4年以降は全クラス出れるわ。」
「そうなんだ。」
ちなみに各学年3クラスずつあるよ。
「で、団体戦は1回戦が終わった後敗者復活戦があるわ。枠は2枠。」
「あぁ、全体で28クラスあるから1回戦で勝ち上がれるのは14クラスだから2枠か。」
「まぁそうね。後アカデミア杯全体の特徴としては直前まで対戦相手がわからないことね。」
「え?」
「アカデミア杯は1回戦終わった後2回戦の組み合わせ抽選、2回戦終わった後3回戦の組み合わせ抽選という風になってるのよ。」
「へぇ、それは面白そうだね。」
「個人戦の予備戦だけは小等部vs中等部になるよう設定されてるけどそれ以外は全く関係なく抽選されるから初戦から高等部vs高等部が普通にあるわ。」
「いきなり優勝候補同士の激突もあるわけか。」
「そうよ。」
なるほどね・・・やべぇ、すげぇわくわくしてきた!
そんなこと話してると、海岸に佇む1人の女の子の姿を見つけた。
「あの子・・・1人で何であんなところに・・・」
「どうしたんだろう?声かけてみる?」
「そうね・・・ちょっと心配だし。」
と言ってると、
「きゃあああああああああああ!」
いきなり叫びだした!ってか悲鳴だよねこれ!?
「留姫!」
「分かってる!」
俺たちはすぐにその女の子の元へ走った。
「君、大丈夫?」
「何があったの?」
しかし俺たちが声かけても悲鳴は続く。
「香澄ちゃん!」
その時、別の方から声がした。
声がした方向を見ると、男子と女子が1人ずつこちらに駆けてくるのが見える。
この子の知り合いかな?
「香澄ちゃん大丈夫?」
女子のほうが女の子をなだめるように抱きしめると女の子の悲鳴は止んだ。
「すいません、何かご迷惑をかけたみたいで。」
「いえいえ、気にしないでください。」
「あんな悲鳴聞こえたら助けるわよ普通。」
「でも一体何があったんですか?周りには俺達しかいなかったし、悲鳴上げた時、俺たちはまだ遠いところにいたから何が原因でこうなったのか・・・」
「・・・どうするこよみちゃん?」
「・・・この際事情を話して協力してもらったほうがいいんじゃないでしょうか。私達ではもうどうすることもできないみたいですし。」
「・・・そうだな。あの、とりあえず、うちに来てもらえませんか。事情はそこで話します。」
「分かりました。いいよね留姫?」
「異論はないわ。」
「すみません、お茶しか用意できなくて。」
「いえいえ、用意してくれるだけでも助かります。」
かくしてこの2人の家にお邪魔した俺と留姫。さっきの少女もここに住んでるようだ。
「そういえば自己紹介がまだでしたね。俺は山岸駆と申します。デュエルアカデミアに通う中等部1年生です。」
「同じく中等部1年の加藤留姫よ。よろしく。」
「俺は高等部1年の八神森司。よろしく。」
「高等部1年、灘こよみです。」
高等部1年ってことは・・・アキさんと同じ学年か。
「さっきの女の子は大久保香澄と言って山岸さんと加藤さんと同じ中等部1年生です。」
あ、俺たちと同じ学年か。
「えっと・・・どこから話したらいいんだろう・・・」
「・・・香澄さんは単刀直入に言うと両親が1か月前に自殺して塞ぎこんでるんです。」
「両親が自殺!?」
それはまた・・・
「アカデミアも休学してて、俺たちが何とか励まそうとしてるんだけどなかなか心を開いてくれなくて・・・」
「私達じゃもうどうしようもできないんです。」
「そうなんですか・・・」
両親が自殺した・・・か・・・それは辛い・・・
「香澄さんの祖母にもどうしようもできないので・・・」
「さっきの悲鳴は?」
「原因はわかりません。香澄さんが口を閉ざしたままなので。」
「そっか・・・」
「あの、お願いです。どうにか香澄さんの心を開いてくれませんか?」
「って言われても・・・」
「大丈夫、駆ならできる。」
「おいおい・・・」
「駆は私の心を開いてくれた実績があるから。」
「あれはほぼ遥ちゃんじゃん・・・」
「確かにそうだけど、駆の存在も大きかったのよ。」
「そ、そう・・・」
「あの・・・加藤さんも何か・・・」
「えぇ、八神さんと灘さん、夏休みにあったフォーチュンカップは見た?」
「あ、はい。テレビでこよみちゃんと一緒に・・・あ!もしかして・・・」
「そうよ。私達、2人とも出てたわ。」
「準優勝者が山岸さんで加藤さんはベスト4・・・」
「えぇ、で、私がその時なんて呼ばれたか知ってる?」
「確か・・・第2の魔女・・・」
「そうよ。でもその魔女から解き放ってくれたのがここにいる駆、そして駆の妹の遥ちゃんなの。」
「そうだったんですね。」
「それはともかく、大久保さんの心を開けるかどうかはまだ全く未知数です。ましてや大久保さんとは全く面識がありませんし。できる限りのことはやりますが、それでも大久保さんの心を開ける確率は低いです。それでもいいですか?」
「構わないです。とにかく俺たちはあの子を救いたい。俺たちは居候の身ですからその分できる限りのことはしたいんです。」
「・・・そこまで言われちゃ、断るわけにはいけないわね。」
「元々断るつもりはなかったけどね。」
「よかった・・・お願いします。ただ今は寝てるので起きるまでここで待ってもらっていいですか?晩飯は用意しますので。」
「それは構わないんですが晩飯までいただいていいんですか?」
「大丈夫です。こっちが頼んでるのでこれぐらいはやらないとと。」
「分かったわ。じゃあ母さんにメールしなきゃ。」
「俺も遥ちゃんに連絡しなきゃ。」
「母さんにOK貰ったわ。」
「俺も遥ちゃんに事情は説明した。」
「じゃあ・・・どうしましょうか?」
「えっと・・・1つ聞いてもいいですか?」
「はい、何でしょうか?」
「さっき居候の身って言ってましたけど・・・何かあったんですか?」
「それは・・・俺達、気づいたらこの家の前で倒れてたんです。」
「気づいたら?それ以前の記憶がないってこと?」
「・・・はい。」
気づいたら・・・か・・・
「倒れてた私たちを香澄さんの祖母が救ってくれたんです。それからここで居候として暮らしてるんです。」
「そうだったんですね。」
「私と同じね。」
「え?加藤さんもですか?」
「留姫でいいわ。私も家の前で倒れてたのを母さんに救ってもらって、今は本当の家族みたいに接してくれてるわ。」
「それだったら俺もかな。俺も居候の身だし。」
「山岸さんもですか。」
「駆でいいですよ。」
「じゃあ俺も森司でいいですよ。」
「私もこよみで構いません。」
結局全員じゃねぇか。
「しかし全員が居候の身ですか・・・珍しいですね。」
「・・・で、お2人とも。」
「どうしました?」
「もしかして転生者ですか?」
「「!?」」
「・・・図星ね。」
その反応だけで十分です。本当にありがとうございました。
「ど、どうして・・・」
「どうしたも何も・・・僕も転生者ですから。」
「「え?」」
「ついでに私も転生者。」
「「えぇ!?」」
驚いた後、顔を見合わせる森司さんとこよみさん。
「・・・あっちが打ち明けた以上、私達も言うべきですかね先輩。」
「だな・・・駆さんの言う通り俺たちも転生者だ。」
「やっぱり・・・」
その後、4人で転生者ならではの話をしたよ。
具体的には前世では何をしてたかとか、森司さんとこよみさんの2人も前世の時から付き合ってるみたいなので、前世の時の恋愛話とか。
いやー、楽しいよ。
こよみさんは結構な美少女だが、常に眉間にしわが寄っていて、目つきも鋭いが、それは幼少時代からの偏頭痛と近眼の賜物らしい。
長い付き合いである森司さんには他の人には睨まれてるようにしか見えない目つきでもそれがそうじゃないというのが分かるらしい。
こよみさんが森司さんのことを先輩と呼んでるのは前世では森司さんのほうが1コ上だったかららしい。2人が出会ったのは森司さんが高3の時、つまりこよみさんが高2の時。それから森司さんは大学受験で失敗し、一浪してある大学に入学したところ偶然にもこよみさんと再会。同じオカルト研究会というサークルに入り、その大学生活の中で両想いということがわかり、付き合うようになったと。
こよみさんがオカルト研究会に入った理由は子供のころからの知り合いに誘われたから。森司さんは最初はこよみさんがいるからと仮入部したが、森司さんにはなんと霊感があるらしくその霊感がこのサークルでは役立つと思って正式に入部したらしい。さらに言えば、こよみさんは霊に狙われやすい体質らしく、その霊から守るためとも言ってた。
学年が同じになったと思ったらこっちの世界では同い年。これは俺と留姫にも当てはまる。それもあって、完全に俺たち4人は意気投合した。
互いにラインのID教えあって追加し、4人のグループラインも作るほどだ。
でも本来の目的を忘れてはいない。
晩飯の時間、大久保さんとその祖母も一緒になって食べた。
その時から少しずつ大久保さんに話しかけてる。
最初は何の反応もしてくれなかった。
けどある話題を出したときから変化が出てきた。
それは俺の過去。
俺の家族は殺されていてもういない。殺されたのと自殺と違いはあれど、家族を失った苦しみや悲しみは俺も理解できる。
そのことを話すと、俺に対してだけは少し心を開いてくれた・・・かな。まだ喋ってはくれないけど、明らかに俺に対してだけは表情が違った。
さすがに泊まるわけにはいかないので帰ろうと思ったとき、明らかな変化があった。
「・・・明日も来て。」
ただその一言だけぼそっと俺に喋ってくれた。これに祖母も森司さんもこよみさんも驚いたと同時に感激したらしい。
両親が自殺してから喋ったことはなかった大久保さんが俺に対してだけは徐々に心を開くようになっている。
同じ苦しみを知ってるからこそ分かることがある。
「どうやら私の出番はないみたいね。」
「かもね。」
「明日も行くの?」
「そのつもり。本人に直に言われちゃったしね。」
「まぁそうよね。」
「後、明日は遥ちゃんも連れて行こうかなと思ってる。」
「遥ちゃんを?」
「うん。遥ちゃんもあの子と同じ苦しみや悲しみを知ってるから。」
「そうね・・・遥ちゃんは人の心を開くの得意そうだし。」
「留姫の心を開いたのも遥ちゃんだしね。」
「えぇ・・・私もついていっていい明日?」
「勿論。」
そんな会話をしながら俺たちは帰宅した。
駆「以上、第37話でした。」
留姫「そして今日のゲストはこの2人よ。」
森司「えー、八神森司です。よろしくお願いします。」
こよみ「灘こよみです。よろしくお願いします。」
駆「この2人はホーンテッド・キャンパスっていう青春ホラー小説のキャラで、作者が好きなキャラなんで出しちゃいました。」
留姫「作者は現時点で10巻まで読んでるわ。今現在出てるのが10巻までだけど。」
森司「転生者になるなんて思いもよらなかったよ。」
こよみ「そうですね。」
駆「勿論、この2人も今後デュエルするのでお楽しみに!」
森司「それよりも今は香澄ちゃんだな。」
留姫「心配はいらないと思うわよ。駆なら何とかしてくれるわ。」
こよみ「駆さんにだけ心を開き始めてますしね。」
駆「任せて!(まぁ俺より遥ちゃんのほうがいいんだけどね)」
こよみ「それにしても・・・お2人ともお似合いのカップルですね。」
留姫「そっちもお似合いよ。」
こよみ「ありがとうございます///」
森司「完全に女の子同士で会話をはじめたな。」
駆「女子はそういうもんですよ。僕たちだけで次回予告やりましょう。」
森司「そうだな。」
駆「さて次回は言わずもがな香澄の心を開く回だよ。」
森司「駆さんの妹が来て状況は急転!」
駆「人の心を開くのが得意となってる遥ちゃんが香澄の心を開く!」
森司「タイトルは『少女の覚醒!黒斧の輝石騎士降臨!』です。」
駆「それでは次話もお楽しみに!」