インフィニット・ライジング 外伝 願い星   作:アドゥラ

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やはり以前までのスピードは維持できませぬ。
内容てきにR-18にいきそうになるのをどうにかぼかしたりして表現しています。


NEXT EPISODE.02

 数年前の顛末を少しだけ語ろう。

 英さんたちの尽力もあり、結果的にヘルヘイムは月へと押し上げられて地上には食べてもインベスになる植物はなくなった。もっとも、毒性は残っているため食べるのはおすすめしないそうだが。

 月の緑化も数年たてば大きな話題に上ることもなくなりつつある。話題に上がっても、スレイプニル後身の組織が調査を行っているぐらいか。

 しかし、姉とその旦那は調査には参加していないようなのが気にかかる。

 

「あの二人のことだから、何か別にやるべきことがあるのだろうが……」

 

 今現在、この周辺で活動をするために用意した拠点から空を見上げている。緑化した月があたりを照らし、以前とは月見もおもむきが変わった。

 あの3バカから聞いた情報をもとに、人身売買組織を調べていたが、やりかたもエグく、掴まった人たちも筆舌にしがたい状態だ。

 まったく虫唾が走る……自分にそんなことを言う資格はあるのだろうかとも思うが、流石にこれは怒りを抑えられない。

 まず私は、捕えられた人たちをどうにか解放し、逃げられるようにルートを確保することにした。すぐに行動を移しても人数が多すぎる。このままでは命を落としてしまうだろう……さすがに命を落としてしまったら私にはどうすることもできない。

 だからこそ、心苦しいし情けないことだがまずは準備を整えることにした。

 その一つがこの拠点だ。食料と寝床を用意して数日はここにいられるようにする。大勢での移動は何かと大変であるし、病気や怪我の治療を行う必用もあるだろう。

 あまり使いたくない手だが……いざとなったらあの人たちに頼る必要もあるかもしれない。私の右手にある紐の形をしたものを使えばすぐに連絡を取れるのだろうが……

 

「詮無き事、か」

 

 いや、あの人たちもやるべきことがあるはずだ。今、この場で私自身に出来ることをしないうちから頼ってどうするのだ。

 まだやれることをやりもしないで逃げるなど許されない。

 

 ◇◇◇◇◇

 

 夜が明けた。

 脱出径路にまだ不安は残るが、事態を解決するまでに籠城もできるぐらいの食料やスペースは確保できた。

 サクラハリケーンのエネルギー残量も確認を済ませたし……さて、出発するか。

 

「砂ぼこりもひどい……視界には気をつけねばな」

 

 この付近には砂漠があるからか、ここまで砂ぼこりが運ばれてきているようだ。

 言うほどでもないが少し場所を移動したとたんに視界をふさがれるということもあるだろう。用心には越したことはない――今回はそこまででもなかったようで、すぐに目的地の付近にやってきたが……どうやら奴らも行動を起こしているようだ。

 大きな黒いトラックが見える。どうやら誰も中には入れられていないようだが……近くで誰かが争うような声だ聞こえてくる。どうやら仕事中みたいだな。

 

「……流石にここまで来て見て見ぬふりもできないか…………」

 

 サクラハリケーンをロックシード形態へと戻し、息をひそめて奴らの近くへと進む。あたりには瓦礫も多く、なんとか身を隠せるが……あまり近づきすぎてもいかんな。

 視界を確保して、どのような状況なのか確認してみると――どうやら男たちと女性が争っているようだ。会話が良く聞こえないが、どうも男たちがどこかの村を襲い、女性一人が運悪く逃げ遅れて捕まったらしい。いや、そもそも瓦礫が多いと思ったがこの場所が村だったのだろう。

 男たちが破壊したのか、元々こういう貧困層が住んでいる地域なのかはわからないが……女性もストールのようなものを羽織っていてわかりにくいが、ベリーダンス衣装を着ている。

 …………女性についての判断はつかないが、男たちの表情と単語単語でなんとなく事情は分かった。いわゆる、集団で女性一人を無理やりどうにかしようとしている類の話のようだ。

 女性もその方面には詳しいタイプらしく、上手いこと言葉と退路を作るように動いていて追い詰められないようにしている。

 

『まったく、こんなことしなくてもそういうことをしてくれる人はいるでしょうに、どうして無理やりなんてするのかしらねぇ』

『知らねーのかい? 男ってのはそういう方が燃えるもんなのさ』

『嬢ちゃんよぉ、手馴れている風だがさっきから指先が小刻みに震えているぜ。やっぱ内心怖いんだろうなぁ……へへへ、俺たちもその方が燃えるけどよ』

 

 ……まったく下種な。しかし今飛び出したら他の捕えられている人を救出する時間ができるかどうか…………やつらが通信機を持っている可能性がある以上、あまりうかつな行動はできない。

 しかし、私自身は動かなければと今にも体が動きそうで――

 

『嬢ちゃん――――こういう事になれているからって自分だけ囮になるとはいまどき見上げた根性じゃねぇか……もっとも、他の奴らは別働隊が捕まえているころだろうがよぉ……かわいそうになぁあんな小さい子たちまで世の男たちの慰み者になるんだからよ』

『――ッ』

 

 ――その言葉と、彼女の今にも泣きだしそうな顔を見て決心がついた。

 ああ……悩んでいる暇などなかった。後のことは後で考えよう。今やるべきことはただ一つ。

 

 

 

 

「お前らのような下種をぶちのめして、捕えられた人も全て救出するとしようか」

【ブラッドオレンジアームズ! 邪ノ道オンステージ!】

 

 

 体中にロックシードから供給されるエネルギーがいきわたり、私自身の体の特性とも相まって更に力を高めていく。通常の人間では不可能な速度と正確さをもって男たちの意識を刈り取っていき、女性とおそらくはリーダー格……一人だけ、少々できる(・・・)奴が残った。

 

「――コイツ、どこから!?」

「あ、あなたは……」

「何。ただの通りすがりさ――時間が無いからな。道案内はそこの彼女にしてもらう。お前はとりあえず寝てろ!!」

 

 男はライフルかマシンガンか……何か武器を使ってきたが、そんなものは効かない。別働隊と言っていたが、そちらが本命でこいつらも女性を捕まえるために残った少数。銃弾は弾かれてあらぬ方向へいってしまう。

 跳弾が女性に当たってもまずいな、とっとと倒そう。

 

「ば、化けも――――ガツ!?」

「生憎。私は化け物だよ……さて、他の人はどこに行ったかわかるか?」

「え、ええ……でもなんで助けてくれるの? 何も関係ないでしょう」

「たしかにな。だがここで逃げだしたら……」

「……?」

「家族に、顔向けできないからな」

 

 ◇◇◇◇◇

 

 場所は変わり、村から逃げ出した人々は絶体絶命と言っていいほどに追い詰められていた。

 男たち――奴隷商とでも言うべき彼らは、まず最初に陽動を担っていた少数のメンバーで村を襲った。その後、本隊が逃げた人々を取り囲むように動いていたのだ。

 見事にその策がはまり、こうして人々はもう逃げられるような状況ではなくなってしまった。

 

「お、おかーさん……」

「絶対に守るから……あなたたち、こんなことをして許されると思っているの!? 絶対に神の裁きが下りますよ!」

「生憎と、こちとらこの稼業を順調に続けられていてねぇ――こいつは神に許されてるってことだよなぁ!! この前も上玉がいてよぉ……そいつ、どうなったと思うよ。グハハハハハ!!」

 

 こんなことが許されていいはずもない。

 みな、こんな奴らがのうのうと生きていることが信じられない。自分たちは貧しいながらも皆で助け合って生きてきた。だからこそ、自身の欲だけを優先させるこいつらが同じ人間に思えない。

 これではまるで悪魔か、化け物ではないか……

 

「さてと――さて、観念して捕まってもらおうか――――アガッ!?」

「ぼ、ボス? ……ボス! しっかりしてください!!」

「ダメだ気絶してやがる……これは、ゴム弾? いったいどこから!?」

 

 

 

 

 

「英さんに貰った装備……あの人は変なところで用意周到だな。鎮圧用の試作品を渡された時はどうすればいいかとも思ったが、なかなかに使い勝手がいい。非殺傷性も申し分ないな」

 

 あんな奴らでも命を奪うのは寝覚めが悪いしとぼやき、箒はライフルを格納する。彼女の右手には姉からもらったIS《紅椿》が装着されており、荷物の多くを量子化して格納している。

 そこから取り出したのが、鎮圧用のスナイパーライフルである。

 

「あなた……一体何者なの? ISも持っているし、どこかの国の国家代表?」

「どちらかというとテロリストに近いが……あまり気にするな。これは姉からの誕生日プレゼントさ」

「なんか色々とツッコミどころがあるんですけど……」

「まあ言いたい気持ちもわかるが――あんまり気にしていると、シワができるぞ」

「できないわよ!! これでも色々気を使ってるし! それにまだ私は18よ!」

 

 嘘、だろ……箒は愕然とした。しかも実年齢なら私よりも年下ではないかとも思う。半オーバーロード化してから時間の感覚が分かり難くなっており、しかも世界中旅していたので今が何年の何月何日かもあやふやなのだ。

 それでも、たまに日本に帰って調整しているので何とか年齢と時間を把握しているのだが……実は箒、実年齢ならもう日本でお酒を飲んでもいい歳なのである。

 

「いかん。話がそれた――一気に助け出すから、お前はこの鳥が案内するルートで皆を連れていけ」

 

 箒は懐からストレイチアガジェットを取り出し、起動させたうえで女性に預ける。

 

「ちょ――いきなりこんなの渡されてもこまるんだけど!?」

「いいから言う通りにしろ。これから奴らのアジトにも向かって助け出さないといけない人もいるからな」

 

 そう言って、箒は狙撃地点に使っていた場所――小さなビルの屋上から飛び降りようとしたが、それを止められる。

 

「待って! 貴女、名前は?」

「……箒だ。お前は?」

「リリアナよ」

「良い名前だな」

 

 微笑みと共に、それだけを告げて箒は今も混乱している男たちのところへ飛び降りていく。彼女の肉体はこの程度の高さは物ともしない。

 怪我はするだろうが、スカイダイビングをパラシュートなしで行っても死にはしないレベルだと、以前言われたこともある。もっとも、それは完全なオーバーロード連中を基にした基準らしいのでどこまでが本当なのかは箒も知らないが。

 

「だ、誰だ!?」

「なに――ただの通りすがりさ。変身!!」

 

 男たちの腰に見覚えのある錠前が見えた。数は多くないが早々に決着をつけるためにも、すぐさまその姿を鎧武者へと変えていく。

 赤色の果実と二つの刀。

 ほどなくして決着はつく。力の差は圧倒的であった。

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 日も暮れて、そろそろあたりも暗くなるだろう。

 

「こんなところに随分と設備の行き届いた建物があるなんてね」

 

 リリアナは箒が用意したという場所に驚いていた。

 あの後、気味の悪い怪物たちが出てきたが箒はすぐに切り伏せて、男たちも無力化してしまった。その後、彼らのアジトへと向かったらしいが……リリアナは村のみんなを連れて逃げることで精いっぱいで、少々気が滅入っている。逃げ出してよかったのか。彼女一人に任せてしまって自己嫌悪に陥っているのだ。

 

「……はぁ」

「リリアナ! 向こうから車のライトが近づいてきている!」

「――なんですって!?」

 

 見張りを買って出てくれていた青年から連絡が入る。

 すぐさま外へ出ると、確かに車が近づいてきているようだ――まさか、奴らがこの場所をかぎつけたのか? そんな最悪な予想がすぐさま出てくる。

 結局、私たちは逃げられなかったのか。そんな言葉が頭に浮かんできたが――――その心配は杞憂であった。

 トラックが数台、こちらにやってくるが……そのトラックを先導するかのように白いバイクに乗ったアジア系の顔立ちの女性が目に入る。彼女にしがみついて道案内をさせられたときに乗ったから嫌でも覚えている。あのスピードでよく走れるものだと言いたかったが。

 それ以上に……まさか本当に有言実行してしまうとは思ってなかった。いったいどうやったのか気になるところではあるが、きっと彼女一人で大立ち回りを演じたのは間違いないのだろう。その姿はまさに幼いころに憧れた――――

 

「り、リリアナ……どうする?」

「安心して……彼女は私たちを助けてくれた人よ。後ろのトラックは捕まっていた人たちね」

「まさか!? 確かに強かったが一人で奴らに捕まった人たちを助け出したっていうのか!?」

「ええ……信じられないことだけど――目の前で見せられたら信じないわけにはいかないわね」

「いったい何者なんだ……彼女は」

「そうねあえて言うなら――」

 

 陳腐で月並みな言葉だけど、こういうべきだろう。

 どこからともなく現れて、絶望的な状況から助け出してくれる人の名。

 それはまさに――

 

「ヒーロー、かしらね」

 

 




Vシネの方はあまりチェックできませんで、感想とかを見て色々と整理している状況です。
ただ一つ言いたいのは――照井君、キャラ崩壊。

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