私の愛しい愛しい出来の悪い教え子   作:ジト民逆脚屋

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よくあるクズオリ主を目指してみました。


狐の化かし

俺の名は『井村 謙吾』転生者だ。事故で死んだと思ったら、『インフィニット・ストラトス』の世界に生まれ変わることになった。その際に、特典としてダブルオーライザーをモデルにした専用機や身体能力、その他諸々を受け取った。

俺の狙いはただ一つ、このインフィニット・ストラトスの世界でハーレムを築いてウハウハな人生を送ることだ!

原作では織斑一夏に惚れているヒロイン達を俺に惚れさせる。その為には、織斑一夏が邪魔だ。

奴は実力も無い癖に、皆を守るとか抜かしていた。ならば、それを逆手に取ってあいつをボロクソにこき下ろしてヒロイン達を奪ってやるぜ!

俺の計画は順調だった。特典の精神操作もありセシリアとの一騎討ちで男としての格の違いを見せつけ、鈴とのクラス代表戦では乱入してきた無人機を歯牙にもかけぬ活躍で、鈴と箒の二人を同時に助け織斑に己の無力さを教え込み、シャルロットは男装をいち早く見破りフランス政府とデュノア夫人の目論見を打破し織斑には自分の無知さを刻み込んだ。

ラウラは一番簡単だった、VTシステム以前に織斑には敵意しか持ち合わせていなかったから、奴のあることないことを吹き込み感情のベクトルを操作、システムが発動すれば織斑を囮にラウラを華麗に救出し、自分には誰も守れないし助けられないという事実を叩き付けた。

 

そして、臨海学校で止めを刺した。

銀の福音撃墜任務の前に、織斑を呼び出し奴の心の奥にある根拠の無い拠り所をへし折った。その時の奴は無様の一言に尽きた。自分の実力の無さを棚上げにして、自分は誰かを守る、助けると言い張って聞かなかった。だがそれも、長続きはしなかった。自分が友と思っていたヒロイン達に正面から自分を否定され、自分の間違いを指摘された。中でも二人の幼馴染みに否定されたのが、よほど堪えたようだ。

それからの奴は、すっかり落ち込み以前の明るさは無くなっていった。実に笑えたよ。

脇役となったピエロは端に引っ込んだ、モブの連中は奴を心配しているようだが、それも直に終わる。あれだけ、奴の無能を見せたんだ。

ヒロイン達を満足するまで味わったら、次はモブの連中だ。先ずは、のほほんさんこと布仏本音を落とす。それから、モブも全員食ってやる。

主人公は俺だ。俺がこの世界の中心なんだ。これから先は俺の天下、その筈だった。

 

 

あのキツネ女が現れるまでは

 

 

最終目標である更識姉妹に近付こうと布仏に近付いたが、あの普段のノロマはどこに行ったのかという動きで避けられ、一番手っ取り早い接点を得られない。精神操作をしても、まるで効果が無い。

そうこうしている間に、織斑が更識姉妹と接触していた。どうやら、姉の織斑千冬に自分を鍛え直して欲しいと頼みこんだらしいが、教師であり実の姉である立場から自分は無理だ。と断られ、更識姉妹を紹介されたようだ。

ピエロがまだ足掻くのか、今度という今度は完全にへし折ってやる。

息巻いて織斑と更識姉妹がいるアリーナへ向かったが、そこにいたのは更識姉妹ではなく、原作では見たこともないキツネのような女だった。どうやら、更識楯無が紹介した二年の専用機持ちのようだ。

打鉄に近い見た目の機体を身に纏い、薙刀を舞を踊るように軽やかに振るい織斑を叩きのめす姿はかなり良かった。

多少、目が細すぎるきらいがあるが、あの体は実に良い。奴も俺のハーレムに加えてやる。そう決めて、早速行動に移すが、結果は散々だった。

無害を装い、奴に近付くがヒロイン達が肝心なタイミングで邪魔に入るし、精神操作も何故か奴にはまったくもって効果が無い。ならば、更識姉妹からと標的を変えるも、これも効果が無い。

今まで上手くいっていた、その筈なのに!あのキツネ女の目は俺をピエロの様に見ている。

あまりやりたくはなかったが、腕ずくで言うことを聞かせてやろうと、模擬戦を挑み勝ったら俺の女になれと条件を付けた。最初は渋っていたが、断れば織斑を標的にするとも言い加えれば、あっさりと了承した。

 

「これも、私の愛しい教え子の為よのぅ」

 

とか、抜かしてやがった。舐めやがって、今の内に愛しい教え子とやらと語らいやがれ。勝負が終われば、話なんて出来なくしてやる。

勝負が始まり、途中までは俺の圧勝だった。いや、最初から俺は圧倒されていた。

俺の刃は面白い様にキツネ女を切り刻み、後は止めを刺す。それだけだった筈なのに、奴のやけに耳に残る喉奥で笑いが聞こえたと思ったら、ズタボロになっていたのは俺だった。

 

「コココ、狐を相手に正直に正面から挑む阿呆がおるとは、愉快よ愉快、コココ」

 

訳が分からなかった。俺は奴を切り刻んでいた筈、なのに切り刻まれているのは奴ではなく、俺だった。

 

「狼にも成れぬ駄犬が、狐の化かしに敵うものかよ」

 

その言葉と溜め息を聞き、俺は自分に薙刀が降り下ろされるのをただ見ているの事しか出来なかった。

訳が分からない、俺は今立っているのか座っているのか、今見ているのは嘘か真か、上か下か、右か左か、もう何も分からない。

ただ分かるのは、この狐は危険だという事だけ。

この日を境に、俺は自分から織斑に関わるのを辞めた。織斑だけではない、更識姉妹やモブの連中とも下手に関わろうとすれば、あの笑いが聞こえてくる。あの喉奥で笑うやけに耳に残る笑いが。

 

「駄犬、狐は家族を守る生き物ぞ。貴様ごときが私の教え子に手を出そうなどと、片腹痛いぞえ?」


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