私の愛しい愛しい出来の悪い教え子   作:ジト民逆脚屋

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猫の願い

「そう、分かったわ。引き続き調査を続けて」

 

部下からの報告、それを聞きとある報告書に目を通す。

『連続集団殺人事件』この類を見ない被害者を出しているこの事件、件数そのものはそう多くはない。

そう、事件件数だけは。

問題なのは、被害者の数だ。

1人ずつではなく集団で、しかも最低でも5~6人の集団を殺害し続けている。一番多かった人数で十人を一度に殺害、その中で体格が良かったり顔が良かったりした男女は、まるでいたぶって遊んだ様に殺されていた。

全ての事件で同じ事が起きている。警察は、体格や顔といったものに劣等感を覚えている者の犯行だと踏んでいるが、私はそうは思わない。

 

ISに乗っている私だからこそ分かる。アレは生身の人間に出来る所業ではない。

明らかに、IS若しくはEOSを使っている。そうでなければ、人間をミンチにするなんて出来はしない。

それに、おかしいのだ。僅かではあるが、『何かを試した』様な痕跡が残っていた。

この犯人は、明らかに何らかの目的を持って殺人を行っている。

しかし、EOSもISも使えば必ず足が付く。

その筈なのに、未だに尻尾の先すら見えない。

 

「はぁ、厄介な事極まりない」

 

これだけなら、良かった。被害者遺族の方々には申し訳無いが、学園の生徒会長と対暗部用暗部組織の長という私の立場上、私が守るべきは学園の生徒と国家の安全の2つ。

それ以外は切り捨てる。それが私の役割。

だから、学園の外で起きた殺人事件など私個人が関与する事ではない。

この情報さえ、無ければ。

 

「いったい、何が目的なのかしら」

 

この犯人は、学園に近付いて来ている。犯行現場を辿り行き着いた結論がこれだ。

しかもだ、こいつは警察の捜査線を何とも思っていない。

普通、警察の捜査線を避ける様に犯行を行うのが、こういった輩のセオリーだ。

だが、こいつはそれを無視して犯行を行っている。

まるで、蟲だ。退く事を知らない百足、手口の残虐性からも人間ではなく蟲と言われた方がしっくりくるイカれた奴だ。

そのイカれた殺人鬼が学園に何の用があるというのか、奴はじわりじわりと学園に近付いて来ている。

先日の事件では、とうとう学園の目と鼻の先にまで近付いて来た。

更識の情報網でも、こいつを見付けられていない。謎が多すぎる。

 

「…………」

 

嫌な予感がする。こいつだけではなく、私の親友の様子が最近おかしい。

あれではまるで、一夏君に形見を遺そうとしているみたいじゃない。

 

「霧絵ちゃん」

 

気のせいよね?貴女が、一夏君を好きなのは皆が知ってる。勿論、私も知ってる。

出来が悪いと言いながらも、一夏君を何よりも誰よりも可愛がって、愛している事を皆知ってるのよ。

だから、お願い

 

「貴女は一夏君と幸せになるべきなのよ」

 

諦めないで、彼の隣に居てあげて。

彼は、貴女が居なくなったら、きっと壊れてしまう。

それは私達には、どうにも出来ない。

だからお願い。

 

『猫よ、私にもしもの事があったら、私の愛し子を宜しく頼むぞえ』

 

例え夢だとしても、そんな事を言わないで。

貴女は一夏君と幸せになるのよ。

 

明後日には、一夏君の巣立ちの試験が始まる。

どうか、どうかお願いです。

神様なんて何の役にも立たない物は信じてないけど、祈らずにはいられない。

 

「何も、何も起こらないで」

 

どうか、二人の新たな歩みを見守って。




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……だいじょうぶ、まかせて

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