逃げる?違います。明日への前進です。   作:吹雪型

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ダークヒーローはカッコいいのさ

【大将軍 死す!】

 

この報はたちまち帝国全土に駆け巡り大きな衝撃を与えた。

更にシスイカンも革命軍に奪われる形となり帝国軍の士気はガタ落ちする。

趨勢を見ていた有力者達も、ナジェンダの予想通り反帝国を掲げ次々と蜂起。

今まさに大兵力が丸裸の帝都に迫りつつあった。

 

しかし、革命軍には悪い事も続く。革命軍本隊も大打撃を受けただけで無く、ナイトレイドのマインが意識不明の重体。そして…ナジェンダを庇ったラバックも重症を負った。

更に帝具パンプキン、クロースティールを失う形になる。この知らせは帝国にも知らされる事になり、帝国軍は若干の士気向上する形となってしまった。

 

side ナイトレイド

 

マインとラバックが戦力として抜け、正面から戦えるメンバーはタツミ、レオーネ、アカメの3人にまでになっていた。

 

「ラバック、平気か?」

 

「まあ……な。暫く……安静にしてるわ」

 

ラバックはナジェンダを庇った結果左腕と左脚を失う事になった。クロースティールを使いブドーの攻撃を防ぎナジェンダを守った結果だ。

 

「すまん……ラバック」

 

「ナジェンダさん……俺は………ナジェンダさんを守れて……よかった。だから……出来れば感謝の言葉の方が……嬉しいぜ」

 

ラバックはナジェンダを安心させる様に言う。

 

「ああ、そうだな。ラバック…ありがとう」

 

「へへ……嬉しいね」

 

ラバックはナジェンダの言葉に素直に喜ぶ。

 

「マイン……お前がブドーを仕留めてくれたから此処までこれた。だから、今はゆっくりラバックと一緒に休め」

 

「……………」

 

マインはパンプキンにより精神エネルギーを使い切り植物状態となっていた。

 

「マイン戦いが終われば皆で迎えに行くぞ……な」

 

「ああ…………その時は結婚してくれ。マイン、愛してる」

 

そう、ボリック暗殺後の帰還中にタツミとマインは付き合う事になっていた。

そして、卒業までしていたのだ!←

 

こうして、マインとラバックは後方の革命軍本部に向かい治療に専念するのであった。

 

ブドー大将軍との戦闘により様々な傷跡を残された形となったナイトレイド。しかし、最終局面までもう僅かな時間しか残されていない。

 

side out

 

side シュウ

 

「そうか……ナイトレイド2人が重症又は死亡か」

 

ブドー大将軍を失い、更にシスイカン陥落した事により直ぐに革命軍は来ると思っていたが一旦退いた様だった。向こうもかなりの損害を受けたみたいだからな。

 

「それと、反乱軍の動向ですが一体となって帝都を包囲するようですね」

 

「やはり全軍揃うのを待ってるのでしょうか?」

 

「恐らくそうでしょう」

 

俺たちイェーガーズは反乱軍の今後動向を予想していた。

 

「功を焦って前に出てきた軍から叩こうと思っていたが、しっかりと統制が取れているな」

 

「こっちを少しでも侮ってくれるとやり易いんだけどね」

 

「それは無いだろうな。どんな形であれ1000年以上帝国は維持し続けた大国だ。然もその本山を攻め込む訳だ。俺が反乱軍だったらキチンと足並み揃えて確実に潰すよ」

 

敵の総大将は優秀だな。キチンと理解した上で来てる訳だからな。

それぞれが意見を出し合い今後の対策をする。しかし、帝国を見限る兵士は後を絶たない状況ではこの先厳しい物となるだろう。

 

(まあ……どの道帝国には滅んで貰う事には変わらない。ただ……出来ればフリーになりたかったがな)

 

仕方ないと割り切る。それに、今はエスデス軍所属の身。頑張って生き残りますかね。

 

暫くするとウェイブが戦力差について悲観するもエスデスさんが一蹴する。そして窓の外を見せ兵力差はどうにでもなる事を教え安心させる。

 

(でも、貴女も戦う人だ。つまり…氷騎兵を操る集中力がお座なりになる。兵力差は無いと思って行動しないと俺死ぬわ)

 

確かに氷騎兵は強い。直ぐに直るし普通に硬い。しかし……操る人は指揮官では無い、武人だ。

 

(誰だったな?前世の記憶で、指揮官には指揮官の、兵士には兵士の戦いがある……て言ってた人が居たな)

 

つまり……指揮を放棄する指揮官は無能以外何者でも無い訳だ。

 

(個では無双を誇るかも知れない。けど……結局潰される)

 

俺はどうやってエスデスさんを生かせるか考える……が、何も思い付かない。

 

(それどころか……牢屋で考えた時に色々気付いたんだよな……自分の気持ちに。良し!決めた!)

 

「俺……この戦いが終わったら……自分の気持ちに決着を付けるんだ!」

 

「お?如何したんだシュウ。改まって何かするのか?」

 

ウェイブが聞いてくるが秘密だ。

 

「まぁな。兎に角、俺なりに頑張るよ」

 

「……そうか。なら、先ずは帝都のパトロールにでも行くか!」

 

俺はウェイブの誘いに乗る事にする。

 

「あ!なら私も行きます!」

 

「キュウ!キュウ!」

 

「ウェイブが奢ってくれるなら」

 

セリューさんにクロメちゃん、コロも続く。

 

「私は少し報告書を纏めて来ます」

 

「なら私は残った兵士達の士気を上げつつ、隊の整理をする。帝都内部は任せたぞ」

 

そう言って2人は席を外したのだった。

 

 

……

 

どう考えても結局帝国は滅びる未来しか見えない。例え帝国が勝とうとも国の内部はズタズタだし、多数の犠牲が出た中で上手く税を回収出来るとは思えない。

反乱軍と言えども、元は自国民なんだからな。

つまり、勝っても負けても帝国衰退は確実。なんだかんだ言いつつ目的は達成出来そうで良かったかな。

 

今後の事を考えつつ皆と帝都内をパトロールしている。帝国は滅びる。なら、より確実に滅んで貰いたいものだ。

 

暫く考えながらパトロールしてると………皆と逸れてた。

 

「あれ?……また俺迷子?いやいや、場所は知ってるから迷子じゃねえし!」

 

それに俺は成長している。その場から離れない方が良いのだ!つまり、近場の喫茶店に入って皆を待てば良いのだ!

 

暫く喫茶店でのんびりしてると相席に誰か座った。

 

「?……あ、チェルシーさん。久しぶり!」

 

まさかチェルシーさんに会えるとは!いやー、本当に久しぶりな感じがするなぁ。

 

「っ!久しぶりじゃ無い!すっごく心配してたんだよ!なのに喫茶店でのほほんとしてるし!」

 

怒られました。聞けばタツミとラバックは革命軍本部近くに転移したらしい。

 

「そっか。彼奴らは無事だったか……この借りは大きいから必ず返してねと伝えて欲しい」

 

「そんな事より!シュウくんは今何してるの!然も…その格好……」

 

まあ…突っ込まれると思ったけどさ。

 

「うん。あの後処刑かエスデスさんに付くか選べと言われてね。詭弁だが、帝国には意地でも付きたく無いからエスデス軍に入隊してイェーガーズに所属する事になったんだ。この格好はケジメだね」

 

「ケジメって……シュウくん………このままだと私達……」

 

チェルシーさんは言い淀む。

 

「分かってる。だけど安心して欲しい。俺は俺なりに動く予定だ。無駄に革命軍と戦闘はし無いよ」

 

「…………本当?」

 

「本当だよ」

 

「本当に本当?」

 

「本当に本当だよ。てか、無限ループになるから此処までで」

 

「…………うん、分かった。シュウくんを信じるよ」

 

お互いしんみりとしてしまった。

 

「チェルシーさん。この戦いが終わったら伝えたい事があるんだ」

 

「え?伝えたい事?」

 

「うん。全てが終わったら必ず言いたいんだ」

 

俺は真剣に言う。

 

「……それって、今じゃダメなの?」

 

「ダメだね。全てが終わってからじゃ無いと意味無いしね」

 

暫くの間沈黙する。

 

「ん、分かった。仕方ないから待ってて上げよう!有難く思いなさい!」

 

「うん。助かるよ」

 

ちょっと明るい雰囲気になる。

それからお互いの近況を話して解散する事になった。

因みに心配掛けた罰で飴を100個程要求されたから喜んで生成しました。

 

「さて、自分の気持ちにもケジメをつけ無いとな。例え最低と言われようとも……これが俺の気持ちだからな」

 

紅茶を飲みながらそう呟いた。

 

因みにチェルシーさんと一緒に居たのをウェイブ、クロメちゃんにバレて、セリューさんへの口止めを要求されたので喜んで奢らせて頂きました……畜生!彼奴ら遠慮無く注文しやがって!

更にセリューさんとコロも合流して俺はメニュー表を見て追加注文するのだった。

 

 

……

 

ブドー大将軍が倒された弊害はかなり大きな物となっていた。

現在、敵の1部隊が攻めて来た。そしてその対応にエスデスさん一人で行く事になった。

つまり、宮殿は手薄になったと考えて侵入する者が現れた訳だが………。

 

「クッ!此処にも敵か!」

 

「しかし、ヌマ様の仇!取らせて頂く!」

 

……やっぱり見た事ある格好だし、何よりヌマさんを知ってる人だった。

 

相手の攻撃を避ける。ただ、それだけ。

 

「こいつ……足止めか?だが、何故?」

 

多少冷静になった様だ。

 

「お前ら、こっちに来い。此処にいたら死ぬぞ」

 

「何を言う!元より覚悟の上「無駄死にしたらヌマさんは喜ぶのか?」っ!貴様ヌマ様を知ってるのか?」

 

「兎に角、攻めるなら革命軍と一緒に攻めた方が良い。単身で攻めても……ヌマさんや南のバン族の二の舞だぞ」

 

兎に角この人達は逃がす。今しかチャンスは無い。

 

「………貴様は……何者だ」

 

1人が聞いてくる。

 

「何者だって構わ無い。ただ…知り合いを殺したく無いだけさ」

 

「………っ!貴様、まさか!」

 

「兎に角こっちに来い!早く逃げ無いと他のイェーガーズが来るから!」

 

俺はそう言って侵入者を逃した。ただ…1人だけ俺をずっと見ていたけど何も言わなかった。

 

侵入者を逃し、他の侵入者を探すがもう片付いた後だった。仕方ないとは言え……悲しい物がある。

 

「さあ……もう直ぐ戦争だ。誰もが望む戦争だ。その時に思いっ切り戦うと良いさ」

 

帝国時代終焉の戦争だ。

 

 

……

 

あの後ウェイブがアカメを取り逃がしたらしい。しかし、特に罪になる訳では無く不問になった。

だが、ウェイブの様子が少し変な気がする。

 

因みにエスデスさんに皇帝から慰労でご馳走が届けられたが………多過ぎるのでイェーガーズ全員で食べる事になった。

 

「あれ?クロメちゃんは?」

 

真っ先に食べると思っていたが居ない。

 

「クロメなら任務に向かった。闇の部隊の一員として召集がかかった。反乱軍の陣に要人暗殺へ向かったのだろう」

 

「「「「ッ!!」」」」

 

「断る事も出来たが、クロメ自身が望んでな」

 

皆あまりの事に呆然としてしまう。

 

(反乱軍にはアカメが居る……つまり、暗殺対策はされてるんじゃ無いか?今から援護に向かう?いや、そもそもクロメが何処に居るのか分からん)

 

考えるも手詰まりだ。クロメちゃん………死ぬんじゃ無いぞ。じゃ無いとデザート食べちまうからな。

 

……

 

………

 

クロメちゃんは無事に戻って来た。しかし、少し落ち込んでる様子だ。多分仲間が沢山死んだのだろう。

因みにクロメちゃんのケアはウェイブがやる事になった。

 

「………なあ、あの2人さ………付き合ってるの?」

 

「え?……ど、如何なんでしょうね?」

 

「いやいや、如何考えてもあの甘酸っぱい空気は付き合ってるでしょう!」

 

俺はランさんにそう言う。

 

「確かにこの前も良い雰囲気でしたからね。恐らく付き合っては無いでしょうが、互いに想ってる感じでしょうね」

 

何あいつら!いつの間に青春なんて送ってんの!…………あ、俺もか←

 

「ま、静かに見守りますか」

 

「そうですね。変に関わると痛い目にあいますからね」

 

俺達はそう言いながら解散した。

 

……

 

暫く外を見ていた。すると……誰かが外に出て行くのを見た。

 

「アレは………クロメちゃん?」

 

こんな時間に何処に?

 

「仕方ないな。バレ無い様に着いて行くか」

 

暫く後を追うと帝都近郊のギヨウの森に入って行った。

 

「ああ、そうか。クロメちゃんも決着をつけに行ったのか」

 

何となくそう思った。止めに行くのが正しいのかも知れん。だが、あの姉妹の間に割って入る権利は俺には無い。

 

「なら戻るか。願わくば……姉妹が無事に生き残れる様に」

 

祈るしか出来そうに無かった。

 

……

 

俺は王宮に戻りクロメちゃんが戻って来るのを待つ為に外で待っていた。すると、ウェイブが此方に走って来た。

 

「シュウ!!クロメを見なかったか!?」

 

「………見たよ」

 

「本当か!?何処に行った?」

 

「その前に一つ聞きたい」

 

俺はウェイブに聞く。

 

「クロメちゃんは良く言ってたよな。姉と決着をつけたいと。なら、邪魔をするのはヤボってもんだろう?」

 

「そんなの間違ってる!!!」

 

…………ウェイブ。

 

「姉妹で態々殺し合う必要は無い!!!そうだろう!!!なら、俺は止める!!!」

 

「それは仲間としてか?」

 

なら言わない。絶対に言わない。

 

「いや……違う」

 

違う?なら、一体……

 

「俺はクロメが好きだ!!!だから止める!!!」

 

………………………そうか。

 

「なら、仕方ないな。クロメちゃんなら彼方に向かったよ。帝都近郊のギヨウの森に向かった。彼処は誰も近付かないけど建物があったからね」

 

「助かる!」

 

ウェイブはそのまま、グランシャリオ・リヴァイブを身に付け向かって行った。

 

「俺には止める権利は無い。だが、ウェイブ……お前になら有る。好きな女を救く権利がな。惚れた女ぐらい救って来いよダークヒーロー」

 

そう呟き俺は部屋に戻った。

 

 

……

 

翌日、ウェイブとクロメは戻って来なかった。

そしてイェーガーズは2人の捜索に当たる。俺はギヨウの森にまで行く。

 

「コレは……八房か」

 

間違い無いクロメの帝具八房だ。それと……ある錠剤を拾った。多分強化薬だろう。

 

「………もしかしたら必要になるかもな」

 

俺は落ちてた物を拾いポケットに仕舞った。出来ればこんな物には頼りたくないがな。

 

「ウェイブ…………フェクマの借りはチャラだからな」

 

俺はそう呟いてイェーガーズ本部までゆっくりと戻ったのだった。

 

 

 

イェーガーズ 残り4人

 




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