逃げる?違います。明日への前進です。   作:吹雪型

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ラブコメです

イェーガーズはボリック暗殺を防ぐ事が出来ないまま帝都に帰還する事になった。

今回の件はイェーガーズ…と言うよりエスデスとシュウの間に確執が生まれるのは必然に思われていた。エスデスの奥の手をナイトレイドが知っていた事、そしてその奥の手はシュウにしか見せていない事。

更にボルスの死を偽り報告したシュウは流石に不味いと判断していた。遅かれ早かれ逃走する事を決めていた。

そしてシュウは逃走を図ろうとしたものの……

 

「あの……そろそろ抱きしめるのは「ダメだ」………oh」

 

帝都に帰還中もそうだし、戻ってからもずっと一緒に居る状態なっていた。

エスデスは馬鹿ではない。寧ろ頭の回転は速い方だ。なので誰が情報を漏らしたのかはわかってる筈。しかし、それを分かった上での行動だとすれば将として失格だろう。だが、恋する乙女にそんな事は関係無い!

更に四六時中くっ付いてるエスデスとシュウを見てヤキモチを焼くセリューも混ざり、更に場が混沌と化してしまっていた。

 

因みにボルスの妻子は家には居らず、家の中はもぬけの殻状態であった。帝都警備隊は捜索したものの見つける事は出来ず、人攫いにあい行方不明になったと判断し現在その繋がりのある組織を洗い出し中らしい。

 

(ボルスさん……やっぱりアンタは優しすぎるよ)

 

そんな風に内心シュウは思いつつ、エスデスに抱き締められながらこの状況をどうするか考えるのだった。

 

side シュウ

 

イェーガーズ本部 執務室

 

俺は今首輪に鎖が繋がった状態でランさんとチェスをしていた。

 

「で、鎖は外してくれないんですよね?」コト

 

「隊長命令ですからね」カタ

 

「しかし…ランさんは違うと信じてますよ!」コト

 

「すみません。私もまだ死にたくありませんから」カタ

 

そう、エスデスさんは再度イェーガーズに対し鎖を付けるよう指示を出したのだ。

 

「ですよねー」コト

 

「そうなんです」カタ

 

「………本当……如何してこうなった」コト

 

「確かにシュウくんだけに集中してるのは可笑しいですね」カタ

 

表向きの理由はボリック暗殺を防げなかった為。でも本当の理由はナイトレイドとの繋がりがある可能性があるからだろう。

 

「やれやれ、参りましたな」コト

 

「まあまあ、鎖だけで済んで良かったと思えば良いのでは?」カタ

 

確かにそうだよなぁ……そして、負けそう。

 

チェスに集中してると扉が開いた。誰が来たかと思えばセリューさんが来た。

 

「あ、あの…シュウくん、ちょっと良いかな?」

 

「勿論良いですよ?」

 

「えっと……その」チラ

 

チラッとランさんを見るセリューさん。それを察して席を立つランさん。

 

「私も大丈夫ですから。はい、セリューさんこれ鎖です。それではシュウくん」

 

ランさんはそう言って席を外した。ヤダー空気読める男とかス・テ・キ///

 

「それでね…時間あるかな?」

 

「ありますよ」

 

と言うか今は暇なのよね。

 

「じゃ、じゃあ!明日…わ、私と一緒に、帝都の見回りに行かない?///」

 

何故か顔を赤くするセリューさん。

 

「勿論良いですよ。明日ですね。何時頃行きます?」

 

「えっと…じゃあ10時頃に行こう!」

 

「分かりました。じゃあ10時に此処で待ち合わせで良いですか?」

 

「うん!じゃあ明日ね!それじゃあ、私準備があるから!」

 

そう言って直ぐに部屋を出て行ったセリューさん。

 

「………あ、久しぶりに1人になれたわ」

 

そんな風に考えながら再びチェスに目を向けるのだった。どうすればこの状況から逆転できるか考える為だ。

 

 

次の日、俺は通常通りの格好をする。ただ、武器に関しては黒刀とククリナイフとL85だけにしている。

 

「シュウくん、お待たせ」

 

「あ、セリューさ…………よく似合ってますよ」キリッ

 

其処にはワンピース姿のセリューさんが居た。緑色をベースにしたワンピースにアクセサリーに腕輪とペンダントをしていた。そして靴はヒールを履いてより大人っぽい雰囲気が出ていた。

 

「あ、ありがとう///じゃあ、行こっか///」

 

そう言って手をチョロっと出すセリューさん。

勿論握ります!いや、握らせて頂きますとも!!!

 

こうして俺たちは帝都見回りという名のデートに行くのだった。

 

 

……

 

そして俺達がやって来たのは、ホストに行くきっかけになったお洒落な喫茶店だった。

 

「じゃあ、俺はこの紳士の……まあ、後これで良いや」

 

「なら私はこの貴婦人の午後の優雅な時間とミルクティーで」

 

この喫茶店、メニューもお洒落にしてるつもりなんだろうな。でも、内容分からないよ……。

 

暫く待っているとケーキと紅茶にミルクティーが来た。

 

「そう言えば、イェーガーズに入ってからこんな風に話すのは中々無かったから少し新鮮ですね」

 

「う、うん。でも、初めてシュウくんに会った時は迷子だったからね。まさか、そこからイェーガーズに繋がるなんて全然想像出来ないよ」

 

確かにそうだよなぁ。

 

「ははは!まあ、イェーガーズに入ったお陰でセリューさんと会えたのは良かったですよ」

 

「ふえ!///い、いきなり……そんな…恥ずかしいコト……///」

 

俺の台詞に顔を赤くするセリューさん。いかんいかん。ついホスト時代の癖が……。

 

それから少しお喋りしながら喫茶店を出て、帝都のメインストリートに来ていた。

 

「ねえねえ!この服とかどうかな?」

 

「似合ってますよ。と言うか、セリューさん可憐何ですからこの服も似合いそう」

 

「か、可憐///」

 

それからウインドショッピングをしたり、セリューさんの元同僚達に出会い「セリューを宜しく頼む」と握手されながら言われ「分かりました!絶対に泣かせません!」と言ったらセリューさんに同僚諸共ビンタ喰らったりした。

 

楽しい時間はあっという間に過ぎて行った。気が付けば夕暮れになっていた。

 

「シュウくん!コッチに来て下さい!」

 

「分かりました!何処までもついて行きますよ!」

 

手を握られながらとある古びた教会に来た。その教会に入りそのまま上に向かっていく。

そして……

 

「シュウくんにこの景色を見せたかったから……」

 

「おお!これは綺麗ですね」

 

夕暮れのオレンジ色が帝都の街を染めている。そして空も薄い紫色でまるで、ファンタジーの世界だ。

 

「私、小さい時良くこの景色を見てたんです。辛い時や悲しい時。そんな時に見ると何となく楽になったんです。でも、帝都警備隊に入ってから……全然見に来てなかったんです」

 

「そっか……此処はセリューさんにとって大切な場所なんだね」

 

「うん……。私……シュウくんに会えて本当に良かった。だって、あのままシュウくん出会わなかったら……きっと何も考えずに悪を殺してたと思う。ううん、殺してた。だけど……相手の信念を感じたりする様になったら色々変わったの」

 

「セリューさん……」

 

「本当に色々シュウくんには助けられてるの……だからシュウくん……私はシュウくんが好きです///」

 

その瞬間セリューさんは俺にキスをした。

一瞬なのか…それとも長くキスをしたのか良く覚えてない。ただ、夕日はすっかり隠れてしまっていた。

 

「じゃあ……帰ろっか」

 

「えっと……俺は……その」

 

「シュウくん。私、隊長もシュウくんが好きなのは知ってる。だからシュウくんも真剣に考えて欲しいの。そして……結論が出たら教えて……私、待ってるから」

 

「………分かりました。真剣に考えます」

 

「うん…」

 

そう言いながら手を差し伸べて来た。だから握り返し、そのままイェーガーズ本部まで戻ったのだった。

 

side out

 

 

……

 

帝都警備隊 詰所

 

「緊急!緊急案件です!」

 

「如何した!何があった!」

 

1人の隊員が息を切らして全員に言った。

 

「セリューが……セリューが……教会の所で恋人とキスしてた!!!」

 

一瞬の静寂…そして、

 

「「「「「な、何だってー!!!」」」」」

 

「やっぱり今日決めると思ってたわ」「くそ!マジかよ!あの恥ずかしがり屋のセリューが」「今日はめでたいな!よし!飲もう!」「俺も付き合うぜ?」「あ、私も!」

 

こうして帝都警備隊全員にこの話が伝わり、更に街中の住民にもそれが伝わり、セリューが街を見回る際に至る所でおめでとうと言われる事になった。

この件に関してセリューは顔を真っ赤にして街中に言いふらした帝都警備隊に対しコロをけしかけるのだった。

 

 

……

 

「キュウ〜」

 

因みに今日のコロはセリューの部屋でお留守番でしたとさ。

 


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