逃げる?違います。明日への前進です。   作:吹雪型

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これで暗い話は一端終わります。
中々話が纏まらないから難産ですた……


後日談

 

あの後、俺は居酒屋オカンに戻りそこで倒れた。そして次に目が覚めた時は病院?の様な所に居た。

 

「……おや?目が覚めたか。いやはや、こんなにも早く目が覚めるのは想定外だったな」

 

白衣を着た爺さんが居た。多分この人が治療してくれたんだろう。

取り敢えず身体を起こそうと力を入れるが………全身に途轍も無い痛みが走り顔を歪める。更に脂汗まで出た。

 

「これこれ、今は絶対安静だよ。全く、斬り傷や打撲だけじゃなく全身にダメージを受けてる。どんな戦い方をしたのやら」

 

医者は呆れ顔で言う。

 

まぁ、エイトブーストだけでなく無理してナインブーストまで使ったんだ。そりゃあ、身体壊すわな。

更に思い出したかの様に頭痛までして来た。

 

「さて、今の君の現状を伝えよう。まず、絶対安静。次に無理に身体を動かさない。最低でも1ヶ月は激しい運動は厳禁だ」

 

医者はそう言うと薬を出す。

 

「取り敢えず痛み止めの薬だ。本来なら注射にしたかったが、今の君の現状を考えると飲み薬にした方が良いだろう」

 

医者に手伝って貰いながら飲む………美人のナースお姉さんや美少女ナースにやって欲しかったな……。

 

「ふん!私も出来れば美少女に薬を飲ませたかったよ。勿論口移しでな!!」

 

「お巡りさん、この人です」

 

くだらないやり取りをしながら他の事を聞く。

そして分かった事はカーネスキ家は壊滅、更に他の金貸しも巻き込みながら死んだので殆どの借金回収が不可能になったらしい。

更に治安悪化の原因が根刮ぎ居なくなった為、現在帝都警備隊が指揮している。

 

そして、ゲンさんについては無理だったそうだ。

 

 

分かってた事だ。俺の手で……やったんだ。誰よりも理解している。

 

暗い雰囲気になったのを察したのだろう。医者は俺にこう言った。

 

「彼奴は今年一杯の命だった。何度も止めたがな。それに……彼奴の死に顔はとても穏やかだった。君のお陰だろう。だから気にやむ事は無い」

 

………ゲンさん。

 

「あの、一つお願いがあるんです」

 

俺は医者に無理を言う事にした。

 

 

……

 

集団墓地

 

ゲンさんは……そこに居た。墓石には確かにゲンと書いてあった。

 

「全く、連れて行かなきゃ暴れるとか変な条件を出すとは……しかも肩を貸せとか言うし……私も年なんだよ?」

 

医者が愚痴を言うが気にしない。

 

「………ゲンさん。御家族と会えましたか?俺は……もう大丈夫です。慣れてますから………」

 

…………言葉が出て来なくなった。でも続ける。

 

「ゲンさん……俺は優しい奴なんかじゃ無いですよ。俺は今の時代が嫌いだ。俺から全てを奪った今の世が大っ嫌いだ。だから……これ以上奪わせ無い為にも今の時代を潰すよ」

 

それに死んだ人達の事は忘れる事は出来無い。

だから……この時代をぶっ潰す!!!何が何でも、全てを利用して叩き潰す!!!

 

 

そして大量に出る犠牲も……覚悟の上だ。

 

 

 

「じゃあね、ゲンさん……さようなら」

 

俺はゲンさんに背を向けて歩き出す。もう二度と来無いだろう。いや、来れる訳が無いんだ。

 

 

 

 

シュウは墓地を背にを向けて歩く。自分の道を歩いて行く。例え……それが大罪人の道だとしても。

 

 

 

……

 

居酒屋オカン

 

「ミラさん居ます?」

 

「…おや?シュウちゃんじゃ無いか。身体は大丈夫なのかい?」

 

俺はミラさんに顔を出しに来た。そして何時も通りのミラさんの対応に少しホッとした。

 

「うん……いや、あんまり大丈夫じゃ無いかな。身体中痛いし、頭痛もするし」

 

「だから安静にしろと言うとろうに!」

 

俺の台詞に誰かがツッコムが無視する。

 

「そうかい。なら、ゆっくり身体を休めな。身体が1番大事だからね」

 

ミラさんは優しく言ってくれる。

 

「……ミラさん。ゲンさんをありがとう。俺が言えた義理じゃ無いけど」

 

「シュウちゃん。ゲンはね、あんたの事とっても大事にしてたんだよ。だからゲンが死んだのは……シュウちゃんを助けたかったんだと私は感じてるよ」

 

「……助ける?」

 

「そうさ。ゲンは無駄死になんてしない奴さ。だけど、シュウちゃんの為なら命だって張れたのさ。だから気に病む必要は無いんだよ」

 

………ゲンさん。

 

 

 

『シュウ……次で最後にするぜ。………そうだな、俺の攻撃を防ぎ尚且つ当てれたら………この黒刀をやろう。どうだ?乗るか?』

 

……………ゲン……さん

 

 

 

 

最後……あの言い方は最初の頃に言われた時に似てたな。だから何と無く周りが見える様になれた気がする。

 

………あぁ、そっか。わざわざ次で最後にする何て言ったのは俺の為だったのか。

 

俺の限界がもう直ぐだと気付いて………。

 

「………俺……ゲンさんの為にも生きるよ。だから………また此処に来ても良いかな?」

 

俺はミラさんに聞く。するとミラさんが優しく抱きしめてくる。

 

「勿論さ。何時もおいで。御飯作って待ってるからね」

 

「……うん」

 

若干目が熱くなったが我慢した。これ以上泣くと泣き癖が付きそうだ。

 

「我慢しなくて良いんだぜ?寧ろ我慢は身体に悪いと医者として言わせて貰おう」(キリッ)

 

変なオッサンがなんか言ってるが無視だ無視。

 

「それじゃあ、ミラさん……行ってきます!」

 

「ええ、いってらっしゃい。身体に気をつけるんだよ」

 

俺は頷いてミラさんに背を向け歩く。

今も俺が見えなくなるまで見守ってくれてる。

だから歩く。力強く、しっかりとした足取りで歩く。身体中が痛いけどミラさんを安心させる為に歩く。

 

……

 

「シュウくん。そんな歩き方すると身体に響くだろう?どれ、私が肩を貸そう。なーに、気にすることは無いよ。私は医者だからね!」

 

「おいこらテメー、空気読むや。今まだ後ろにミラさんが見てるだろ!」

 

「いやいや、だからと言って患者に無理させる訳にはいかないよ。ささ、遠慮するな」

 

……こ、この野郎。

 

「お前友達居ないだろ」

 

「は!居るし!めっちゃ居るし!ああー、この後も予定が「患者は友達じゃ無いぞ」………お、お前なんか嫌いだ!」

 

「子供かあんたは!」

 

ギャーギャー言いながら歩いて行くシュウを見てミラはホッとしたのであった。

 

 

………

 

 

シュウが医者と戯れてる時、帝都警備隊とイェーガーズがカーネスキ邸の調査を行っていた。

 

side イェーガーズ

 

「ほう、これは中々の惨状だな」

 

「はい、カーネスキ邸の殆どの死体は半分にされてます。また大広間の上座に居た死体はバラバラにされてました。その死体は皮膚の表面を斬られた後バラバラされたと思われます」

 

エスデスがランの報告に耳を傾ける。

 

「しかし…どれも刃物による死体か。ナイトレイドとは別口かも知れんな」

 

「如何やら闇金同士の抗争が有った様です。生き残った者は女性や家使いが殆どで、戦闘力の無い者達のみでした」

 

この情報を聞くと尚更ナイトレイドとは別口の可能性がでた。ナイトレイドはその職柄目撃者は全員始末するからだ。

 

「ふむ、今回は無駄足だったかも知れん」

 

「まだ他の場所でも戦闘が有ったそうです。もう少し調べてみては?」

 

しかし、エスデスは首を横に振る。

 

「このカーネスキ邸の奴らを殺した奴には興味はあるが後は残りカスだけだろう。その辺は帝都警備隊に任せる」

 

「分かりました」

 

エスデスとランはカーネスキ邸を後にして残りのメンバーと合流する。

 

「お前達、如何だったか?何か情報を得たか?」

 

「隊長!お疲れ様です。このカーネスキ邸の所に鬼神のゲンと呼ばれてる人がいたそうですが死体は今の所出てきて無いとの事です」

 

「鬼神のゲン…?……あぁ、昔帝国軍で暴れてた奴だったか?面識は無いが中々強いと聞いている。是非手合わせ願いたいものだ」

 

セリューの言葉に頷くエスデス。その時警備隊の人達が話をしていた。

 

「すいません、武器の置く場所って何処でしたっけ?」

 

「ん?あぁ、そこの馬車だよ。なんだ、まだ武器落ちてたのか?」

 

「はい、ショットガンとサブマシンガン。後は刀とククリナイフが一本づつです」

 

この台詞を聞いたイェーガーズ達。何とな〜く視線を移す。

 

「隊長ー!ククリナイフもう一本追加です。いやー、屋根の上に刺さってたから取るのに時間が掛かりましたよ」

 

「よし、じゃあ片づけ「ちょっとその武器全部見せてみろ」?エ、エスデス将軍!は、はい只今!」

 

警備隊の隊長と隊員は直ぐに武器を見せる。

 

「……なあ、このサブマシンガンとショットガン……それにククリナイフ……」

 

「これってもしかして……」

 

「シュウのだね」

 

ウェイブ、ボルス、クロメが言う。

 

「隊長…セリューさん?大丈夫ですか?」

 

「…………」「…………」

 

ランが2人に声を掛けるものの返事は無い。そして、

 

「今直ぐ全ての死体の身元を確認しろ!!今直ぐだ!!私達も確認する!!」

 

「はい!隊長!!」

 

2人は猛ダッシュで死体を確認しに行った。

 

「シュウの奴死んだとかバカの事すんなよ!」

 

「私も行くよ!」

 

「…………」ポリポリ

 

「やれやれ、困りましたね」

 

他のメンバーも確認しに行くので有った。

 

 

……

 

全ての死体を確認したがシュウの死体は無かった。

 

「ふむ、この抗争にシュウが参戦していたのは間違い無いだろう。ラン、セリュー、お前達はもう少し範囲を広げてこの抗争に関わる事を調べ上げろ」

 

「了解です」「了解しました!」

 

2人はすぐさま行動に移した。特にセリューからは気迫が漲っていた。

 

「さあ行くよ!コロ!絶ッッ対にシュウくんを見つけるんだから!」

 

「キュウウー!!」ズリズリズリー

 

そして他のメンバーにも指示を出していくエスデス。

そして、空を見上げる。雨上がりでとても気持ちの良い青空が広がっている。

 

(シュウ……お前は絶対に逃さん。必ず捕まえてみせる。お前の為に奥の手も開発した。だから待っていろシュウ!!)

 

エスデスは必ずシュウを捕まえる事を改めて誓うのであった。

 

 

side シュウ

 

ゾクッ!!!!!!

 

「………フッ、もう慣れたぜ」キリッ

 

「独り言ですか?何か悩みがあるなら相談にのりますよ?私は医者ですから!」(ドヤ顔)

 

(この医者本当にKYだよな!)

 

side out

 


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