逃げる?違います。明日への前進です。   作:吹雪型

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ねえ、知ってる?実はまだ原作6巻辺りの話なんやで?










マジちくわー( ¯•ω•¯ )


時代は喜劇を望む

side シュウ

 

ゲンさんの稽古を始めて1ヶ月が過ぎた。その間に居酒屋オカンに行ってご飯をご馳走になったり、刀の扱い方を細かく教えて貰ったりしていた。

中でもゲンさんには奥さんと息子さんが居るらしく自慢された。奥さんは奥ゆかしく綺麗な人で、息子さんは俺と同じか少し上だと言う。

ただ、昔帝国軍にいた時ヘマをしてしまい離れ離れになってしまったらしい。

 

中々ゲンさんも波乱な人生を送ってるなぁと思ってしまった。

 

ついでに自分の過去話もした。親が死んだ事、仲間や家族と呼べる者達はもう半分以下しか居ない事など。

それを話したら女将さんのミラさんに抱き締められた。……何となく母親を思い出してしまい少し鼻の奥がツンとした。

ゲンさんもゴツゴツした手で頭撫でてくるもんだから……余計に泣きそうになった。

 

そんな風に稽古をして、終わったら一緒に居酒屋オカンに行ってご飯を食べる。いつもご馳走してくれるので嬉しい。そして、何より……家族みたいな感じが良かった。

 

ずっと続けば良い……そう思ってしまう。信念、復讐、執念……今は、今この時だけは全てを忘れる事が……俺の望みだ。

 

 

……

 

 

「……い、おい!」

 

「え?あ……何ですか?」

 

少しボーとしていたようだ。

夜の護衛をしていると声を掛けられる。

 

「おいおい、しっかりしてくれよ。今頭がお前を呼んでるから呼びに来たんだよ」

 

「そうなん?ふーん、じゃあ行くよ。此処の持ち場は誰が?」

 

「俺がやっとくから行って来い」

 

同僚に持ち場を任せて頭の所に向かう。

 

トントン

 

「シュウです」

 

「おう、入れ」

 

扉を開けると他の年配の方々がいた。その中に頭は上座に座っていた。

 

「まあ、座れや。お前を呼んだのは……もう直ぐ俺たちは戦争をする」

 

頭はそう言った。……何となくそう思ってたので特に驚かない。最近銃とか弓矢、剣買ってるし。

 

「其処でだ、お前には此処で俺たちの護衛をやって貰う。何が何でも俺たちを守れ!以上だ」

 

頭はそう言うと別の人と話し始めた。

軽く頭を下げて出て行く。飴を出して口に含みながら考える。

 

(戦争…ねぇ。唯の抗争じゃん。ま、この辺に強い奴の話は聞か無いし大丈夫だろ……強いて言うならゲンさん位かな?でもゲンさんは暇人らしいから関係無いか)

 

俺は特に気にせず部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

運命がゆっくりと動き出す。

まだ……誰も気付いていない。

 

 

 

 

 

 

 

……

 

………

 

アレから2週間が過ぎた。ゲンさんとの特訓は相変わらずハードだが強くなってる実感がある。

因みにエイトブーストまで後一歩ぐらいだと思う。しかし上手く行かない。実戦での使用は今は無理だ。代わりにセブンブーストは大分慣れてきた為余裕と言ってもいいだろう。

 

しかし、相変わらずゲンさんの攻撃はエグい。ゲンさん直伝の刀術は殆ど模倣も出来てるし打ち合いなら互角か一歩劣るぐらいだろう。だが、殺気の乗らない攻撃が中々に対処が難しいのが現状だ。

 

「くぅー!また負けた……悔しい!」

 

俺は地面に倒れながら言った。

 

「まだまだ動きが青いんだよ……いや、動き自体は問題ねぇか。後は俺のフェイントに気を付けりゃ教える事は無くなるぜ」

 

ゲンさんは嬉しそうに笑いながら言う。

 

「……そっか。もう直ぐ……終わっちゃうのか」

 

声に出してしまった。お互い分かっていた事だ。

 

「スゥー………フゥー………これが最後の別れじゃねぇんだから心配すんな。またオカンで飯でも一緒に食えば良いさ」

 

ゲンさんは何でも無いかの様に言う。そうだよな…

 

「そうだよね!だったらゲンさんに認めて貰える様に頑張るよ!」

 

「おう、その意気だぜ」

 

俺もゲンさんもお互い笑顔になる。しかし…

 

「シュウ坊、急で悪いんだがなこれから3日間位会えそうにねぇんだわ。多分オカンにも行けねぇ。すまねぇな」

 

ゲンさんは申し訳無さそうに言う。

 

「……何かあったの?」

 

「まあ、ちょっと野暮用がな」

 

理由を聞いてみたが曖昧に返された。多分教えてはくれないだろう。

 

「……うん、分かった。じゃあ、また3日後にオカンで何時もの時間に会おう!」

 

俺はなるべく明るく声を出す。

 

「おう。じゃあ俺は先に上がるぜ。シュウ坊は如何する?」

 

「もう少し型の練習をするよ」

 

そう言いながら背を向けて陽炎を構える。多分情けない顔してるだろうし。

 

ポン グシャグシャ

 

ゴツゴツした手が頭を撫でて来た。

 

「お前は偉いな。頑張れよ」

 

そう言って去って行った。

 

「………良し!先ずは初手の型から復習だ!」

 

俺はゲンさんに教えて貰ったり技を思い出しながら陽炎を振るった。

 

side out

 

 

 

side ゲン

 

ガラガラガラ

 

「まだ準備中……ゲン?珍しいわね。何時もより早いじゃ無いか。……アンタ遂にボケちまったかい?」

 

ミラが何時もの様に悪態を付く。

 

「……ミラ、お前さんには色々感謝してる」

 

「……アンタ、本当にボケちまったのかい?」

 

失礼な奴だ。まあ、その方が気が楽だがな。

 

「先日医者に身体を診て貰った。………長く無い…とな」

 

以前から医者にはキセルを辞める様に言わ続けていた。だが、辞めれなかった。このキセルは妻からの贈り物だからよ。

 

「ま、自業自得なんだがな…スゥー……フゥー……」

 

「ゲン、アンタ…その事をシュウちゃんは知ってるのかい?」

 

ミラがシュウ坊の事を聞いてくる。

 

「スゥー………フゥー………いや、知ら無えな。だが、遅かれ早かれこうなってた」

 

シュウ坊……すまねえな。

 

「俺はそろそろ帝都を出る。まぁ、最後のご奉公と言ったところかね?」

 

「ご奉公…?アンタ、あのボンクラに「もう良いんだ」!何が良いんだい!?アンタの妻子はあのボンクラに殺されたんじゃ無いか!!なのに……何で……アンタは………」

 

ミラは感情を露わにして俺に問い詰める。

 

「スゥー……フゥー……、妻と息子が死んで……俺は何もかもが如何でも良くなっちまったんだ。いや、報いを受けたんだと感じた。軍人時代に色々暴れ回って…悪さして……無実の奴だと分かっていながら殺して来た。妻が出来て、そして初めて息子が産まれた時……俺は今までトンでも無い事をし続けてきた事に気付いた。そして、恐怖したんだ。……だから、コイツは当然の報いなのさ」

 

そう、散々好き放題やった奴の報いだ。今更良い子ちゃんぶったって意味は無え。

 

「じゃあな、ミラ。達者でな……それと、3〜5日程店を閉めとけ」

 

俺はそう言ってミラに背を向けて出て行った。

 

「………バカ。アンタは本物の大馬鹿野郎だよ!!!」

 

side out

 

 

……

 

side シュウ

 

そろそろ抗争があるという事で、俺は鍛冶屋にいた。マグナムのオーバーホールと言った所だ。

このマグナム、1級危険種の亜種を素材にしてる為こう言ったしっかりとした店に見て貰う必要があるのだ。

 

店員にマグナムを見せどうかと聞いたら、

 

「うーむ、珍しい素材ですので少し時間が掛かります。大体5日間程掛かります。あ、値段は此方になります」

 

…仕方ないか。ま、マグナム無くてもMP28とイサカが有れば平気だろう。

そう思い俺は鍛冶屋にマグナムを預けたのだった。

 

 

……

 

「あれ?オカンが閉まってる。ミラさーんいますかー?」

 

返事が無い。けど気配はある。

 

「……まあ、自分空気読めるし?1人になりたい時もあるか」

 

そう思い俺は別の飯屋に行く事にした。途中何度も居酒屋オカンが見えるまで視線を送った。

 

 

 

……

 

………

 

それから3日後、遂に抗争が始まった。

外の天気はどんよりとしており、何時雨が降ってもおかしくは無かった。

 

「おい、シュウ!お前は此処で頭達を守れよ!オレ達はカーネスキ派の連中を叩き潰して来るからよ!」

 

「ん、いってらっしゃい。あ、序でにパン買ってきて」「買わ無えよ!」

 

何故かプリプリ怒りながら出かけて行った皆様方。

やれやれ、下らん抗争に巻き込まれるとか……(゚⊿゚)ツマンネ

 

しかし……

 

「此処の守り……結構な使い手が多い気がするな。いや、確かに先遣隊の方が多いけど…それにしては多いよな?」

 

首を捻って考えてると頭が他の連中にも聞こえる様に答えを言った。

 

「お前ら!カーネスキ派には『鬼神のゲン』が居る。だが、此方にも多数の使い手を用意して向かわせた。だが、最悪な時は貴様らにも闘って貰う!金は払ってるんだ!頼んだぞ!!」

 

………鬼神…の……ゲン…?

 

(いやいや、まさか。偶々同じ名前なだけさ。だって、ゲンさんは暇人だって言ってたし………だけど、此処ら辺でアレだけの使い手が居るか?)

 

俺は嫌な予感がした。そして…空を見上げる。

 

まるで……あの日の様な天気だと思った。そう、父親が死んだ日もこんな天気だったと。

 

side out

 

side ゲン

 

「……来たか」

 

俺はそう呟くと前へ歩く。周りの下っ端もそれに追従する。

 

「貴様が『鬼神のゲン』か!我が名は「良いから来いよ」!貴様、武人としての誇りは無いのか!!」

 

何やら下らねえ事をほざいてる奴がいるが……

 

「そう言うのは試合でやりな」

 

そう言いながら一瞬で近づきソイツを叩っ斬った。

 

「ば、馬鹿な!『隼コタロウ』が、ああもアッサリと!」

 

敵さんのリーダー格の奴が動揺してるが知ったこっちゃ無い。

 

「死にたくなけりゃ逃げな。俺は無視しといてやるよ」

 

そう言って敵に斬りかかった。

 

 

 

……

 

………

 

「良くぞやったぞゲン!褒めてつかわす!その勢いのまま手勢を半分連れてゴミ掃除をして参れ!ハッハッハッハッーーー!!!」

 

そう言ってカーネスキは屋敷に戻って行った。

俺は歩き出す。その後ろに他の連中が追従する。

 

 

……

 

「き、来たぞ!」「先遣隊は殺られたのか!」「頭達に報告を!」「敵襲!敵襲!武器を持て!!」

 

敵さんの屋敷からワラワラと出てきた。やれやれ、これで終わりかね?

 

「良し!ゲンよ!先に斬りかかれ!我々はその援護をする!行け!!」

 

知らねえ奴が命令してくる。まあ、如何でも良いさ。サッサと終わらせて殺るだ………ッ!

 

「……ゲン………さん?」

 

…………俺の目と耳が遂にイカれたのだろうか。いや、イカれてた方がマシだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

…………シュウ坊。お前……何で其処に居るんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時代の闇が2人を引き合わせる。

殺し殺される戦場で引き合わせる。

その喜劇を見たいと言わんばかりに……。




『鬼神のゲン』
ゲンが帝国軍に居た時に異民族側から付けられた通称である。
反抗するものは容赦無く、又帝具使いも退けた事もある。その戦い方は圧倒的で一対一なら敵無しであった。
また、味方の損害も省みない戦法も取るため部下からも恐れられていた。その為敵味方共に恐怖を与え続けていた。
尚、その味方の犠牲が高い為帝国軍から査問が行われるなど通称通り鬼の様な生き様であった。

『隼コタロウ』
隼の様に速い速度で移動する事を得意とし軽量のサーベルを使う。剣術は並程度だが、素早い移動速度により敵を翻弄させる。
尚、ゲンにより一刀両断される。

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