逃げる?違います。明日への前進です。   作:吹雪型

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ブランはブラートの偽名にしてます。
まぁ多少繋がりがありますけどね。


旅の話とシュウの考え

シュウの身に悪寒が走った日の夜、タツミとブランさんとで夜食を食べながらシュウは今まで旅をして来た事を面白ろ可笑しく話していた。

 

「いやー、北方要塞は中々壮観な場所だったな。後、ヌマさん…あ、ヌマ・セイカって言う王族に拉致られるとか訳わかんなかったなぁ。まっ!2年ぐらいで逃げ出したがな!」

 

「へぇー、何か北方要塞スゲェ所だったんだなぁ」

 

「スゲェなんてもんじゃ無いよ!王族も民も互いの存在を誇りに思ってたしな!……ま、それでも負けちゃっただけどね。出来れば再戦したかったけどな。……勝ち逃げしやがって」

 

「………えと」「…………」

 

タツミとブランさんは沈黙するが、

 

「まっ!自分達が選んだ道だ。仕方ない事さ。俺がどうこう言って解決する訳じゃ無いしな!」

 

特に気にする事無く話始めるシュウ。

 

「そうか。当人達が納得してるなら良いがな」

(この切り替えの良さ。若干16歳でこんな風になるか?アカメでも此処までの切り替えは出来ねぇぞ)

 

ブランは内心帝国の影響が此処まで出るのかと悲観する。

 

「その後は東へ向かい、そして南へ行ったんだがな。その時に戦闘民族の仲間になったわ」

 

「え?何で仲間になったんだ?」

 

タツミが当然の疑問をぶつける。

 

「何か相手が無駄にテンション高かったから、俺も同じ様にテンション上げたら仲間になった。きっとシンパシーを感じたに違い無い!」

 

いや、シンパシーって。2人が微妙な顔をする。

 

「と言っても南の状況は知ってると思うけど、壊滅しちゃったからね。俺は壊滅する前に逃げた訳さ。最初は見送りなんて無かったけど、俺を何度も小馬鹿にしてた奴が見送りに来てこのククリナイフをくれたのさ」

 

そう言ってククリナイフを見せる。焚き火に煌めくククリナイフは今でも新品同様に見える。

 

「因みに全員じゃ無いけど、他にも見送りに来てくれた時は泣いたなぁ。でも泣き顔を見せるのは恥ずかしいから走って行ったけどな!……とは言うものの、バレてる気がするけどね」

 

「ほえー、じゃあそのククリナイフくれた奴はどんな奴がだったんだ?」

 

「フード被って赤い仮面つけてる奴だったよ。もう無茶苦茶速くてさ、俺の今の戦闘スタイルのモデルでもあるよ」

 

「はぁー、そいつもすごい奴だったんだな」

「…………」

 

タツミは感心していたが、ブランは黙ったままだ。しかし、

 

「…………シュウ、お前悔しく無いのか?」

 

ブランは聞くべきでは無いと分かっていながら聞いてしまう。

 

「悔しい?……あぁ、北方要塞と南の部族壊滅された事?仕方ないと思ってるよ。だって結果は分かりきってた事なのにその道を進んだのは彼らだ。ただ、当時は悔しいと感じたのは確かだね。何せ、自分の力不足を実感した瞬間だしね。それからはもっと強くなら無いといかんなと思ったよ」

 

しかし、随分とあっけからんと言ってしまうシュウ。その姿は実に自然体だ。

 

「……そうか」

(仲間の死を何とも思って無い訳では無い。しかし、余りにも軽過ぎる)

 

「その後西に向かったんだがな、錬金術とかで中々面白い国だったよ。因みにな、その国に居た時なんだがな中々可愛いお姉さんと知り合いになれたのだよ!どうだ!羨ましいだろう!」

 

胸を張るシュウ。

 

「因みにホッペにチューを貰ったんだぜ〜。羨ましいだろう!」

 

更にニヤけ顔になる。

 

「何だよ。別に付き合ってるわけじゃないんだろう?」

 

タツミが1発で確信を突く。

 

「そ、そりゃあ、相手も立場ってもんが有るんだよ。あ、そうそう、丁度その国に居た時に首斬りザンクと出会ったよ」

 

かなり大きな事を言うシュウ。その瞬間ブランの目が見開く。

 

「首斬りザンクだと!出会ったって……シュウ、お前ザンクを如何した?」

 

「……殺したよ?だってチェルシーさん殺そうとしてたし。あ、チェルシーさんがさっきチューくれた人ね」

 

これもあっさりバラしてしまう。多分信じて貰えないのと、時間も大分経つから大丈夫だろうと思っているんだろう。

 

「なあ兄貴、首斬りザンクって誰?」

 

タツミが話しについて行けずブランに聞く。

 

「首斬りザンクは帝具使いの辻斬りだ。以前は帝国の首斬り役人だったが、辻斬りに堕ちた男だ」

 

ブランが簡潔にザンクについて話す。

 

「しかし、ザンクとの会話はちょっと楽しかったな。奴の帝具についても多少は予想出来てたから尚更楽しかったな。因みに、ザンクの奴は干し首コレクションを常に持ってるらしくてな、何か正解すると貰えたみたい。因みに俺は拒否ったけどね〜」

 

「干し首コレクション……うげっ」

 

タツミは顔を歪める。ブランは眉間に皺をよせる。

 

(此奴……間違いない。ヌマ・セイカの言ってた愛弟子だ。………しかし聞いている人物像とかなり違う。いや、違い過ぎる。噂が一人歩きし過ぎてる?それだけ民衆は期待してるのか?)

 

「まあ、倒したと言っても俺も気絶しちゃったから引き分けかな。後、ザンクの帝具は他の奴に回収されたから無いよ。スペクテッド欲しかったなぁ。あの帝具があれば合法的に色々覗き放題だったのになぁ〜。……ハァ〜」

 

最後にそこそこ重い溜息をつく。やはり覗き放題に未練があるらしい。

 

「何か分かんねえけど、元気出せよ!首斬りザンク倒した時点でお前やっぱり強いじゃん!」

 

「え?そう?そんなに煽てても飴しか出せないぜ?ほらよ」

 

互いにじゃれ合うタツミとシュウ。しかし、シュウは更に爆弾発言をする。

 

「あ、後は最近のやつだとナイトレイドのシェーレとマインと戦ったわ」

 

その瞬間、タツミとブランは目を見開き沈黙するが内心……

 

((こ、此奴かシェーレとマインが言ってた奴かー!!!!))

 

と。

 

「あの時はヤバかったなぁ。何がヤバいって?帝具使い同士の連携攻撃とか半端なく死ぬかと思ったわ。俺帝具持ってないんだよ?」

 

そう言いながら若干不貞腐れる。

 

「よ、良く生き残れたな。で、戦った時の感想はまだ無いのか?」

 

ブランが話の先を急かす。

 

「ん?そうだな。狙い目はマインだったな。ただ、マインを狙ったとしてもシェーレが邪魔するのは必然。なら、先に護衛のシェーレの動きを止めるまでだったよ。無理に殺す必要は無い。それに、シェーレはマインに甘いと感じた。だから嘘をついてシェーレの動きを止めて耳元でマグナムの銃声をプレゼントしたのさ。……シェーレさん耳大丈夫かな?」

 

戦った状況を簡潔に話すシュウ。そしてシェーレの耳の心配をする。

 

「ああ、それなら大丈夫だよ。手先の器用な仲間が居るからな。直ぐに治療出来たよ」

 

タツミが大丈夫だと伝える。

 

「そっか、なら良かったよ。鼓膜破れただろうから一生失聴だなんて後味悪いからな」

 

そしてホッとするシュウ。

 

「「「………………………………」」」

 

沈黙する3人。

 

 

 

 

「タツミ1つ聞いても良い?お前今……大丈夫って言ったよな?……何で知ってるの?」

 

取り敢えず聞いてみるシュウ。

 

「えっと………そのー………………」

 

沈黙するタツミ。その横で頭を抱えるブラン。

 

「お前……まさか……………ナイトレイドに入ったのか?」

 

まさに、確信を聞いてしまうシュウ。

 

「あ、兄貴!俺やっちまったよ!どうしよう!」

 

「落ち着けタツミ。こうなったら話すしかねぇ。……シュウ、俺達はナイトレイドなんだ。そして、俺はナイトレイドのブラートだ」

 

辺りが沈黙する。焚き火の木が爆ぜる音だけが響く。そしてシュウが口を開いた。

 

「そっか、タツミはナイトレイドに入ったんだな。就職おめでとう!良かったな無職にならなくて!」

 

場違い過ぎるコメントだった。

 

「え!?いや、まぁそうだけど。驚かねえのか?俺、暗殺稼業ナイトレイドに入ってる事にさ」

 

「何で?お前が選んだ道だろ?なら、後悔する事なく行けよ。もっとも、どんな道を選んでも結局後悔するだろうけどな!あっはっはっは!」

 

全然気にして無いシュウ。そんな態度にブラートは唖然としてしまう。だからつい聞いてしまう。

 

「シュウ、お前今の帝国をどう思う?」

 

ブラートは神妙な顔で聞いてくる。

 

「似た様な質問を以前された事あるけど、人権関係と治安維持が全然駄目。文字や計算関係の教育はどの地方も大差無い。それぐらいかな?」

 

シュウの答えは以前と変わらない。それぐらいしか思ってないのだろう。だが、ブラートは納得出来てない。

 

「罪無き人が死刑台に送られる。一部の人だけが私欲や贅沢を満たす。殺戮や虐殺すら容認する国なんだぞ!お前の恩師のヌマ・セイカや、南の戦闘民族もその欲の為に皆殺しにされたんだぞ!!それで、何とも思ってないのかよ!!!答えろシュウ!!!!」

 

ブラートは吠える。シュウに今の帝国の現状を再度問う。

 

「…………ま、仕方ないんじゃない?だってヌマさん達や南の民族も滅びの道を自分達で選んだんだ。もっと上手くやれば良かったんだ。帝国に虐げられてる連中と連絡をしっかり取っていれば、来たる時に一斉発起すれば良かったんだ。要は大局を見据える事が出来なかった。ただ、それだけさ」

 

しかし、シュウは実にアッサリとした感想だった。そして更に続く。

 

「それに、帝国はもう長くは無いよ。反乱軍との戦いに勝とうが負けようが帝国は滅びるしか無いのさ。知ってます?大衆とは怠惰で無責任で臆病な存在何ですよ?そんな存在が強大な力を持つ帝国に反旗しつつある。いや、もう反旗している。それがどれだけ危険な事か帝国は理解していない。だから帝国は終わりなのさ」

 

シュウはそう言って言葉を切る。その言葉にブラートは言葉を失う。

 

「シュウ、お前……結構考えてるんだな」

 

タツミが感心した様だ。

 

「当たり前です。考える事は人にとって素晴らしい武器なのさ。だから俺は考え続けるのさ。さて、この話は終わりだ終わり。次ばタツミの話をしてくれよ」

 

「え?俺の話?うーん、特に面白くないぜ?」

 

「構わねえよ。お前の剣技は何処で習ったとか、故郷はどんな所か教えてくれよ」

 

「そうだなぁ、まず………………」

 

タツミとシュウは話し始める。それを静かに聞くブラート。しかし、ブラートはまだ納得して無いのか少し険しい顔をしていた。

 

「あ、因みに次はブラートさんの話をして下さいね。せっかく百人斬りのブラートに会ったんだ。何でナイトレイドに入ったのか知りたいし」

 

シュウはブラートに昔話を求めた。ブラートは驚いた顔をしつつも、「あぁ、良いぜ」と了承したのだった。

 

 

 

 

こうして男3人の昔話は若干のしこりを残しつつ盛り上がったのだった。




感想の返信なんですが、出来るだけ返信したいのですが仕事の都合疲れて無理な時もありますのでご勘弁を。
え?小説は書いてる?それはそれ、これはこれ!

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