ふう。やっと階段を登り終わった……。
やはり神社の階段は長い。私とレフミーユと…よし、全員……いない!?
――ま、まさか彼女まで彼らの襲撃に遭ってしまったというのか。なんていうことだ…。
っと、いらぬ不安が脳裏をよぎったがそういうわけではなかった。はしゃぎ回るレフミーユを追いかける余り、セプロノを置いてけぼりにしていただけだった。
「ふう、よかった…」
胸を撫で下ろす。
「何が良いです!置いてけぼり!」
「あ、ごめん。」
初めてセプロノが声を荒げ、少し驚いた。
「そういえば、クア、相変わらず出てこないよね。」
「そうだな。まずは事件を整理しないとなあ。」
「疑いたくない、私。クアを…」
「そうだね!」
「この事件には不可解な点がいくつもある」
「まず、手紙の中で[ネートニアー共]と書いているにもかかわらず造モーニ体を破壊するというケイトニアー殺しのやり方をしている。これは明らかに矛盾している。」
「手紙から察するに犯人はこちらの事情を余り分かってないようだ。」
「それにさあ!手紙なんでこんな血まみれなの!?もっと血に濡れないところに置かない普通!」
「手紙、書く時間、無いはずです。」
「確かに…それに。なぜファリシーヤを攻撃したんだ!?あいつは何かウルグラーダに関係したか?ウルグラーダを探しているのは俺達だろ!?」
「ヴァイユ、落ち着いて。」
「あ、ああ。すまん…」
思わず声を荒げてしまった。
「あと、[イェテザルから立ち去れ。]って、ここイェテザルじゃないし。」
『そして、クアが意味深な発言をした。「ウルグラーダ、ウルグラーダ・グリーザルフ……neitnaies var naicekyffès」と。』
「ウルグラーダのフルネームを知っていた。そして、neitnaies var naicekyffès、つまり…」
『…「嘘つきなネイトニアー」だね。』
「そう。でももしクアが奴らの手下だとして、こんな非効率的な方法をとるか?初めは誰を探してるか言わなかった。なのに彼はついてきた。しかも話しかけてきたのはクアの方からだった。[ie1, Lia-xu ha1-mie ma1-fa1-no?]こんなことを話しかける必要があるか?誰かを襲撃しようとしている人間は、リスクを避けるんじゃないのか?リパラインやユーゴック、ヴェフィスにも通じてるようだが、書記の家系だから何らおかしくは無いはずだ。突然流暢になったのは疑問だが…」
「あっ。」
「どうしたレフミーユ?」
「もしかして、クアはなにか勘づいたんじゃないかな?」
「え?」
「え?」
「あっ、えっと…なんというか…その…見てしまった、クアは見てしまったんじゃないかな?襲撃の様子を。それで今、追われてるのかも…。」
「だとすると、クアは無事なのか!?」
「やばい…かも。」
「クア、知ってるか。私たち、ここにいる。」
「それは大丈夫だと思う。ここに来ようと言ったのは彼だし。」
「ん?あれって…?」
「クアじゃない!?服も着替えて、民族衣装になってるけど!」
「!? 本当だ! クア!クア!」
「BAI YU! LEK MI YU! TEP LO NO!」
「やっと会えた…。何ともない?」
「わぇ何有りねぇ。しかど、わぁ追あらとー。」
「予想は、当たっていた…か。」
「ところでneitnaies var naicekyffèsってなんで言ったの?」
「あー、かぇデュイン旅ん折ん、会うた、故ぇ名ん知とー、てぇ、かぁわん奴らかー守る為ぇ嘘ゆーたぁ。」
「クアにとっても恩人…なんだね。」
「デュイン行ったこと、有るですか!?」
「それでヴェフィス語も。しっかし、ウルグラーダという人物はまさしく聖人だな。一体彼が何をしたっていうんだ?」
「うー、わぁ忘るとー。許せぇ。」
――謎が謎を呼ぶ。この事件はもっと詳しく調べる必要がありそうだ…。