暗殺者がHunter×Hunterに転生   作:ジュースのストロー

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8. キルア

「ゴン、遅かったじゃんか。」

 

「ごめんねキルア。少し話し込んじゃって。」

 

嫉妬かな? 自分だけ仲間外れにされて怒ってる。相変わらずキルアお兄ちゃんは格好付けたがりだなぁ。素直になれば可愛いのに。

 

『僕もいるよ。』

 

「分かってるよ。」

 

『じゃあ話しかけてくれても良いのに……。』

 

「うっせ!」

 

ガーーン!! キルアお兄ちゃんにこんな酷い扱いを受けたの初めてだ。地味にショック。

 

「キルア……そんな事言わなくても……。」

 

ゴンに後光が見える。そっか……ゴンって天の使いだったんだ。知らなかったよ。

 

「だって……」

 

そのまま1人でブツブツ小声で文句を言い始めてしまったキルアお兄ちゃん。聞こえないと思ってるんだろうけど、私もゴンも五感が発達してるので内容が分かってしまう。

「犬ってミケしか知らないからこんなに可愛いのは初めて見た。」「ゴンじゃないから可愛がりたい何て言えないし……。」

キルアお兄ちゃん!! ゴンと目を合わすと綺麗にウインクをしてくれた。ありがとう、シバ行っきまぁす!!

 

「うぉっ!」

 

触れる事は出来ないけど、オーラを動かしてお兄ちゃんの肩に飛び乗る。着地地点が揺れているので操作するのが難しいが、これもお兄ちゃんのため。そして同じ様に操作して、あたかもお兄ちゃんに擦り寄ってる様に見せておいた。

 

「何だよ、くすぐったいなぁ。」

 

触れてないからくすぐったくはない筈なんだけど、お兄ちゃんの声が嬉しそうで良かった。ゴンも微笑ましそうに見ている。あと自分もやって欲しいって思ってるな。今やるとお兄ちゃんが嫉妬しちゃうからやらないけど、後でね。

 

重さも勿論ないので、そのまま居座る事にする。ちょうどゴンとお兄ちゃんの間に来る様に肩を移動して3人でお話をする。今この空間を写真に収めたい。

 

「あれ? 先は階段みたいだね。」

 

「げっ!? じゃあスケボー使えねぇじゃん!」

 

やっとマラソンの終わりが近付いて来たか。別に疲れはしないけど景色が全く変わらないのでここまで長かった……。この長さで無口なギタラクルとずっと一緒だったらと思うと泣けてくる。早目に離れると決断しておいて本当に良かった。

 

まだまだ階段の頂上は見えない。ここを抜けたらヌメーレ湿原か。そしたら絶をしながら一定の距離で付いてきているイルミお兄ちゃんと合流した方が良いかな? 発信機があるから大丈夫だとは思うけど迷いでもしたら後で凄いお仕置きが待ってそうだ。

 

「おっ、出口が見えて来たぜ!」

 

「やったー! あまり疲れてはないけど早く外に出たいよね!」

 

ゴン達の純粋な言葉が怖い。今の発言でどれだけ周りの受験者の心を折ったんだか……。

 

『折角だからゴールまで競争しようよ!』

 

お兄ちゃんの肩から降りる口実にそんな事を言ってみたら、思いの外2人共ガチで驚いた。

これは勝つべきか負けるべきか……。ゴンは鋭いから態と負けたら気付かれそうだし、僅差で勝つ位が丁度良いかもしれない。キルアお兄ちゃんの肩に乗ってたから体力が余ってたという言い訳もある事だし。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

『2人共残念だったね♪』

 

「ちくしょう……犬に負けた。」

 

「キルア、犬じゃなくて精霊だよ。」

 

さてさて1次試験もここで折り返し。ここはヌメーレ湿原である。シャッターはまだ閉まる気配はないけど時間の問題だろう。クラピカとレオリオ頑張って!

 

「そもそもお前って体力っていう概念が存在すんのか?」

 

『失礼な、僕を何だと思ってるのさ。確かに触れないし物も食べられないけど体力位あるよ!』

 

「えっ、ご飯食べないの?」

 

『霊力を吸収は出来るけど、何せ触れないからね……。僕は基本的に神聖な空気を吸ってればそれがご飯になるよ。』

 

勿論デタラメである。

 

〝が、ガガ、ガガガ……〟

 

「シャッターが閉まり出した! ……クラピカとレオリオ大丈夫かな?」

 

「落ちたら落ちたでそこまでのやつだったってだけだろ。」

 

「まぁその通りだけど……折角仲良くなったんだし、一緒に合格出来たら良いなぁ。」

 

暫く2人と1匹?でシャッターを眺める。するとクラピカが顔を出し、ギリギリ閉まるか閉まらないかのタイミングでレオリオもやって来た。

 

「良かった……。」

 

レオリオは息を整えるのに集中してて気付かなかったが、クラピカとか目があったのでお互いに手を振っておいた。受験者が多いのでとても合流するのは難しそうだ。

 

今まで先頭でずっと受験者を待っていたトンパさんが前へ出る。

 

「それではここヌメーレ湿原の説明をします。ヌメーレ湿原は通称詐欺師の塒と呼ばれる場所です。二次試験会場へはここを通ってしか行く事は出来ません。ここにいる動植物たちは特殊な進化をしていて、その多くが人間を欺いて食料にしようとする狡猾で貪欲な生き物たちです。騙されると死にますよ。これからも私に付いて……」

 

「ちょっと待ったぁ!!」

 

不意に響いた声に受験生が振り返る。私は勿論察知していたが、皆お馴染み人面猿である。

 

「そいつは嘘をついている! 本当の試験監督は俺だ!! そいつの正体は人面猿でお前達を迷わせようとしているんだ。」

 

そう叫んで手に持ったサトツさんそっくりの人面猿を見せつける。第3者だから気楽なもんだけど、自分がこれやられたら凄い嫌だな。

受験者の中にもどちらを信じたら良いのか分からない者達が出て来てざわめき出したが、ヒソカのトランプにより取り敢えず解決はした。サトツさんへの軌道上にいたとはいえ、私の実体の方にトランプを投げてきたのには驚かされたが……え、円してないのにどうして私の実体の位置が分かったの? 偶然、だよね??

トランプは普通に避けてサトツさんに向かわせたから良いけど、内心バックバクである。早く治めないと、ゴンに心臓の音で不信がられそうだ。

 

気を取り直して再度出発する。私達は試験管のすぐ後ろを陣取って走っている。暫くすると受験者が段々バラケて来ていてクラピカとレオリオもまた見えなくなってしまった。ギタラクルは相変わらず、一定の距離で付いてきてるが。

 

「霧が濃くて先が真っ白だねー。」

 

「試験管を見失ったら終わりだよなぁ。あいつらもここまでか。」

 

「えっ、そんな事ないよ! 2人共絶対合格する!!」

 

『そうだよ、何が起こるか分からないんだから。……逆にもしかしたら僕達が落ちるかもしれないけどね。』

 

「それこそありえねぇよ! ぶっちゃけここまでの試験、楽勝過ぎるし。」

 

おっ、言うねぇ〜。まぁ、ゾルディック家の英才教育を受けてたらその気持ちも分からなくもないけど。でもあんまり油断してるとイルミお兄ちゃんに試験が終わる前に捕まるよ。

 

〝ぶわっ!〟

 

急に突風とともに禍々しいオーラが飛ばされて来た。これは確実にヒソカだ。

 

「何だ、これ……。」

 

キルアお兄ちゃんは顔を青ざめている。イルミお兄ちゃんの教育が効いてるみたいだ。

 

「あっちって、クラピカとレオリオがいる方だよね……。」

 

『この気配はヒソカだね。受験者の叫び声が増えたからきっと受験者を潰しまくってるんだよ。』

「そういえばお前、ヒソカと知り合いなんだろ? 止めさせて来いよ。」

 

『無茶言わないでよ。彼と僕は今日が初対面、ご主人の知り合いってだけだから。』

 

舌打ちをされる。キルアお兄ちゃんも無理な頼みだっていうのは分かってるだろうに余裕がないんだろう。

 

「僕、心配だからちょっと戻るね!」

 

「はっ?! おいっゴンっ!!」

 

ゴンが駆け出してしまったが、キルアお兄ちゃんは走りを緩めるだけだ。

 

『キルアは追いかけなくて良いの?』

 

「試験管を見失っちまったら生き残れねぇだろ。ゴンも落ちちまったな……。」

 

言葉では何でも無い様にしているが、実体でお兄ちゃんの横顔を見つめるとそれは情けなさと悲しさでいっぱいだった。

そんなに後悔する位なら追いかければ良かったのに……。まぁ、完全に教育のせいだろうし、それをやったら私とイルミお兄ちゃんが全力で止めるけど。

 

「そういえば、お前は飼い主の所に戻らなくても良いのか?」

 

『あぁ……。』

 

すっかり忘れていた。円を展開してみると、すぐ後ろに付いてきている様だ。霧で分からなかったとはいえ、ここまで近くにいたとは……。

 

『うーん、どうやら大丈夫みたい。まだ一緒にいても良い?』

 

「おっ、お前がいたいってんなら別に良いぜ!」

 

本当に素直じゃないなぁ。ゴンもいなくなっちゃって寂しい癖に。

 

「そういえば、お前って名前何て言うんだ?」

 

『あれ? そういえば、言ってなかったっけ?』

 

「言ってねぇよ!!」

 

さっきキルアお兄ちゃん以外とは自己紹介したから忘れてた。

 

『シバだよ。宜しくね。』

 

「俺の名前は知ってるから良いよな。宜しく。」

 

『あれ? 名前呼んでくれないの?』

 

「うっせ!」

 

あれれぇ? 耳が赤くなってるぞぉ。

 

『……寂しいな。』

 

「……。」

 

あ、悩んでる悩んでる。

 

「……シバ。」

 

『キルア!』

 

〝ぼんっ!〟

 

「は?! はぁあああ?!」

 

あまりの感動の余り、柴犬の姿から変身して人型になって抱き着いてしまった。勿論、私の姿とは違い髪も目も黒く短く揃えて和服を着ているが。

 

「おっお前っ! 何を……」

 

『キルアー、嬉しいっ!』

 

懐かなかった猫が懐いた様で凄く嬉しい。まぁ動物は私の方だが。

 

「何で人間に……いや、そういえば変身出来るって言ってたっけ?」

 

『うん♪』

 

「お前っ、びっくりしただろ! 驚かせんなよ。」

 

『ごめん、嬉しくなっちゃって……。またシバって言ってくれないの?』

 

「……シバ。」

 

『はい♪』

 

〝カシャ〟

 

あれ? 今フラッシュとシャッター音が聞こえた様な……。気のせいかな。

 

 

【原作との相違点】

ぼっちじゃないキルア。ワンコが可愛くて仕方ない。

ぴったりくっついて来るイルミ。既に携帯のデータメモリを交換する勢いで写真を撮っている。

 

 




シバの鉛筆画


【挿絵表示】

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