暗殺者がHunter×Hunterに転生 作:ジュースのストロー
「ねぇ、ギタラクル。」
〝カタカタカタカタ〟
「何か喋ってよ、イル……」
「喋んないでよシバ、バレるでしょ。」
「だって、暇過ぎるよ……。」
私達は今、絶賛1次試験のマラソン中。だけどこんなローペースじゃ勿論疲れないし、段々飽きてきた私である。
私は基本「わん」しか喋れないし、イルミお兄ちゃんは声帯変化出来ないからって〝カタカタカタカタ〟っていう謎の音を発するだけ。せめて構って欲しいけど、こんな強面で柴犬と戯れているって何てホラー 。
何で私は柴犬何ぞに変身したんだろうか? いや、可愛いんだよ。だけど基本喋れないって辛すぎないか。
「じゃあせめてキルアお兄ちゃんの監視がしたいなー……なんて。」
「その姿で出来るの? 無理でしょ。」
「出来る! じゃあ行ってきます!! 」
こういうのは即決で! 即座にキルアお兄ちゃんの方へ移動する。
「ちょっと!! ……離れないって約束しなかったっけ?」
何も聞こえないなー。あーーーあーー。
◇◇◇◇◇
「わんっ!」
可愛い柴犬が来ましたよー!
「えっ、犬っ!?」
「げっ!?」
「迷い込んじゃったのかな?」
「いや、その犬は首にプレートを付けてるぞ。しかも何故か良い番号で。」
「321番、本当だー。」
「そいつ、あの針男の犬だぞ。あんまり関わらない方が良いんじゃねぇか?」
「キルア知ってるの?」
「あぁ、ゴン達が来る前にヒソカと何か話してたからな。針男は気を付けた方が良いし、その犬も勿論だぜ。」
「あの変態と……。」
「あの時は私達をじっくり舐め回す様な視線を感じたな……。」
「おい止めろよクラピカ! 思い出したら鳥肌が立ってきた!!」
「すまない、レオリオ。」
「でもそっかー、ただのワンちゃんじゃないのかー。」
あれ? 私も結構怪しまれてる?? こんなに愛くるしい姿をしているのに……何か自分で言い方がナルシストっぽいと感じてしまうけど。
「わんっ!わんっ!」
「おい、何か必死の形相で否定して来てるぞ。」
「そ、そうだな。あいつらと一緒にされたんじゃ溜まったものではないな……。すまない。」
そこまでは言ってないけど……、クラピカって辛辣な物言いするな。とにかく多少警戒が下がった様で安心した。
「ねぇ、触っても良いかな?」
おおっ! ゴンは柴犬の愛くるしさが分かってるね!! ただ、オーラに姿を映してるだけだから触れられないんだよね。そういう制約だから。
「あれ?」
「どうした、ゴン?」
「キルア、何故か犬に触れなくて……。」
「はぁ?! 何馬鹿な事言って……! 何だこれ!?」
「今、キルアの手が犬を通り抜けた様に見えたのだが……目が疲れているんだろうか。」
「クラピカ、どうやら俺も疲れているみたいだ。後でサプリメントを渡すから飲むといいぜ。」
「助かる、レオリオ。」
『ごめんね。本当は僕に触らせてたげたいんだけど。 』
「レオリオ、やっぱりサプリメントを今貰えるか?」
「あっあぁ、俺も幻聴が聞こえるとは思わなかった。」
「えっ、君話せるのー?」
『うん、話せるよ! 』
「マジかよ、すげーな!」
この反応の違いは面白いな。やっぱり年齢によって頭が固くなるんだろうか? ちなみに、声は勿論変えてある。七色の声を使い分ける何て御茶の子さいさいな私である。
「その、ゴンとキルアは不思議に思わないのか?」
「「何が?」」
「だって犬が喋るんだぞ! しかも触れないと来た! 普通に考えておかしいだろ!」
クラピカがその通りだと言わんばかりに首を盾にふる。
「でもほら、ナビゲーターの凶狸狐(キリコ)も魔獣だけど、人に化けられる上に喋れるしな。」
「うん、そんなワンちゃんがいてもおかしくないかなーって思ったんだけど。」
この何でもありな世界のせいで無駄に説得力が出てしまう。ありえない事はありえないとは、別の世界の言葉だが、ここでも十分通用するだろう。
『僕は魔獣とは違うけどね。』
「じゃあ何なのだ? 悪いが触れなくて喋る犬等聞いたこともないぞ。」
クラピカが怪訝そうに聞いてくる。確かに理解出来ないものって怖いよね。……だからそれだけ距離を取られてても別に良いもん。
『ジャポンの精霊ってやつだよ。僕も人間に化ける事が出来るけど、疲れちゃうからその内にね。』
口からでまかせにそんか事を言う。試験期間中喋れないのは辛過ぎるので適当な理由を考えさせてもらった。
「精霊か……それなら分かるぞ。確かジャポンでは犬を神やそ使いと崇めている所もある様だしな。」
それは犬神か狛犬じゃないか? まぁ、勘違いしてくれる分には良いが。
「へぇ〜っ、そいつはすげぇな! じゃあ何で始めただの犬の真似してたんだよ、驚いちまったじゃねぇか!」
『最初から喋ってたら怖いかなと思って……ごめんね?』
「いや、謝る事はねぇよ。 気を遣ってくれてたなら、こっちが礼を言わなきゃならねぇしな!」
どうやら、2人共やっと現実を受け入れてくれた様で良かった。こうして話す分には良い人達だ。
「おいゴン、先頭のスピードが上がったぜ。」
「本当だね。」
「えっ、マジでか!? これ以上上がる何て溜まったもんじゃねぇよ!」
「……悔しいが私もだ。」
「けっ、これ位でだらしねぇな。」
「おまっ、ゴンはともかくお前はスケボー乗ってるから余裕なんだろうが!」
「キルアもレオリオも喧嘩は止めようよ。」
「ゴン、俺達は先頭の方に行こうぜ。走れないってんなら置いてくしかねぇからな。」
「あっ、キルア! クラピカとレオリオ、ペース上げられる?」
「あのガキっ、……俺は今でも結構きついな……。」
「私もこれ以上は上げられん。こっちは自分のペースで走るからゴンは先に行ってくれて構わないぞ。」
「えっと……。」
『シバだよ。 そういえば、自己紹介してなかったね。』
「俺はゴン。宜しくシバ。」
「レオリオだ。」
「クラピカという。宜しく頼む。」
「シバはどうするの? 一緒に行く?」
『うん、僕もまだ余裕があるしついて行っても良いかな?』
「勿論! じゃあ行こうか。」
「わん!」
◇◇◇◇◇
Other Side
「なぁクラピカ、俺達も頑張らないとな……。」
「あぁ、年下に負けてはいられないな。」
〝カタカタカタカタ〟
(ボッチ寂しい。)
【原作との相違点】
柴犬と話す変質者イルミ。+主人公達。 周囲からは冷めた目で見られている。
ジャポンの精霊について知っているクラピカ。勿論文献で軽く読んだ事がある程度なので、多少の勘違いもある。
シバのお陰か4人の仲が原作よりも多少良い。特に常識タイプのクラピカ&レオリオの異常を前にした一体感が別格。
アリアが変身してるのはミニ柴のオス。アリアとは高さが合わないので、ゴン対策で話す時はちゃんと柴犬のオーラと重なって低姿勢になって話す。声の発生源が違うと思われない様に細心の注意を払っている。勿論走行方法は無音。
シバがいる事によりトンパから脱落予定者を弄る指示が出されないため、PC坊ちゃんは静かに脱落する。是非来年も頑張って下さい。