暗殺者がHunter×Hunterに転生   作:ジュースのストロー

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ハンター試験
5. 原作開始


 

 

キルアお兄ちゃんがミルキお兄ちゃんとお母様を刺して家出した。突然何を言ってるんだと言われるかもしれないが、これは事実である。

私とイルミお兄ちゃんが仕事で数日出掛けていた間にそれらがあったらしく、今は興奮気味のミルキお兄ちゃんを私が宥め、お母様は刺されたお腹の包帯を直されながらもキルアお兄ちゃんの成長が嬉しいらしく何やら喚いている。正直、2人とも出血してるんだから落ち着いて欲しい。

 

カルトはあの様子のお母様が少し怖いらしく、お父様と隅で待機している。今でもカルトへの愛情は止まるところを知らないが、どうやら構い過ぎてしまったらしく私はあまり好かれていない様だ。これに気付いた時は大変ショックを受けたが、それならと適度な距離感を図っている所だ。考えようによっては遠距離恋愛みたいで、会えた時にその分幸せな気持ちになれるのなら良いのかもしれない。

 

話が脱線してしまったが、キルアお兄ちゃんが家出したというのは確かハンター試験直前の出来事だったと思う。そういえば、イルミお兄ちゃんが仕事から返ったらザパン市に用事があるから一緒に行くって言ってたような……。用事って、てっきり暗殺か何かかと思ってた。ハンター試験受けに行くなら先に言って欲しかった。そしたら、マゾなお母様はともかくミルキお兄ちゃんは刺されないように出来たかもそれないのに……。

 

「クソッ! あいつぜってぇ許さねぇ!!」

 

「落ち着いてよ、ミルキお兄ちゃん。傷口が開いちゃう。」

 

それに、初ゼリフがそんな三下じみた台詞で良いのか? もう遅いけど。

 

「アリア……心配してくれるのはお前だけだよ。」

 

「そんな事、ないよ?」

 

確かに、両親含めて皆ミルキお兄ちゃんを残念なものを見る様な目で見ている。フォローしきれなくて疑問形になってしまったが、ミルキお兄ちゃんはゲーム上手いし機械に強いし凄い所もあるんだけどなぁ。

 

「アリア、そろそろ行かないと間に合わないよ。」

 

イルミお兄ちゃんが荷物を持って声を掛けて来る。目がさっさと片付けて来いと訴えているのが分かる。

 

「えっ、アリアもう行っちゃうのか?」

 

「……うん。前もって入れてた用事だからキャンセル出来なくて……。」

 

私はさっき中身を知ったけどな!

 

「そんな……。」

 

今が精神的にも辛い状況であるからか、そんな縋る様な目で見ないで欲しい。

 

「アリア」

 

イルミお兄ちゃんに低い声を出させてしまって、これ以上待たせたら何をされるか分からない。

 

「ミルキお兄ちゃん、約束しよう!」

 

「約束?」

 

「そう約束。私が帰って来たら一緒にゲームしよう! 2人で」

 

「2人でゲーム……。」

 

「最近2人でゆっくりやる事が無かったからさ……駄目?」

 

時間が無いので必殺技の上目遣いからのお願いをやってみる。私はミルキお兄ちゃんに頼み事をする際にはこれをやると大体は通るのだ。

 

「……分かった。」

 

「良かった! じゃあ約束ね!!」

 

お互いの小指を結んで最後に親指でチューをする。ゴンが原作でやっていたやつのパクリだが、気に入っているので私もそれを使っている。

傷を感じされない動きでゴロゴロしだしたミルキお兄ちゃんを置いて私は急いでイルミお兄ちゃんの元へと向かう。

 

「たまに思うけど、アリアのそういう知識は何処から来てるの?」

 

首を傾けていたら、何故かイルミお兄ちゃんに溜息を吐かれた。解せぬ。原作知識とは言えないから仕方ないじゃないか。決して天然ではなく人工物とだけ、この場では言っておこう。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

ザパン市へは、まずゾルディック家専用の飛行船から最寄りの同じく専用着陸地まで移動する。そこからは歩きになってしまうが数10キロらしいので、それ位なら手間ではない。そもそもそれ位でバテてたらハンター試験に落ちてしまう。

 

「準備が整いましたので出発致します。」

 

勿論、飛行船の操縦なんて出来る筈もないので執事にお任せである。まぁ、何度か見たから大体は操縦出来るだろうが年齢的に無理だかね。この世界の交通手段の資格はハンター試験よりも制限が厳しいから。……逆に、暗殺一家でも取得可能なライセンスって緩すぎないだろうか?

 

「ハンター試験直前じゃなかったら、キルを探しに行くのに。」

 

家出したのを聞いてからそればっかりだな。いい加減聞くのもうんざりしてきた。……ぶっちゃけキルアお兄ちゃんとは試験会場で会えるんだけど。

 

「キルアお兄ちゃんならきっと大丈夫だよ。それに勘だけど、すぐに会える気がするし。」

 

「何それ。」

 

「だから勘だって。」

 

まさか原作知識とは言えない。

 

「ふーん、アリアの勘ってよく当たるからなぁ。」

 

バタフライエフェクトが起こらない限りは未来の出来事だからね。

 

「そんな事よりもお兄ちゃん、何で試験の事直前まで教えてくらなかったの?」

 

「そんな事よりもアリア、ミルキと2人きりでゲームってどういう事?」

 

間髪入れずに質問で返して来た。私の質問には答えてくれないんだね……別に理由が気になる訳じゃないから良いけど。それにその質問はされるだろうと身構えていたから特に驚かないし、下手な返事をするとお兄ちゃんの機嫌が急降下してしまうから注意しないといけない。

 

「私が質問したのに……まぁ良いけどさ。どうせ自分から離れるなって言いたいんでしょ。それなら同じ部屋じゃなくて壁ごしでいて、視覚管理もしたいならカメラでも付ければ良いよ。」

 

「……勝手に自分で約束を取り付けて……。せめてオレに許可を取ってからにしてよね。」

 

「それは悪いと思ってるけど、だって時間が無かったから……。」

 

「全く悪びれてないよね。ちなみに、それってミルキに……」

 

「勿論内緒だね。」

 

「はぁ、やっぱりそうか……ミルキドンマイ。」

 

「ミルキにも悪い事したなって思うけどさ……気付かなければ問題無いよね。」

 

だから溜息はそれ以上つく必要ないよ。知ってる? 溜息ってつくとオーラが減っちゃうんだよ。お爺様が言ってた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「ステーキ定食下さい。」

 

「あいよー! 焼き方は?」

 

「弱火でじっくり。」

 

「奥の部屋へお進み下さい。」

 

「……アリア、何やってるの? 置いてっちゃうよ。」

 

「だって、親子丼食べたい。」

 

そう、ここは第1試験会入口の定食屋『ごはん』である。私もまさかここで足止めをくらうとは思わなかった。だってまさか日本食が置いてある何て……。家でも再現出来る物は再現してみたが、日本食の大部分は醤油か味噌が無いと始まらない。だからここのメニューに親子丼の字を見つけた時に思わず二度見をしてしまった。

試験会場に行くにはステーキ定食を頼まなければいけない。だが私は親子丼が食べたい。私の胃袋は前世での一般的な食事量しか入らないし2つ共は無理だ。

 

「お兄ちゃん、私のどうやらハンター試験はここまでみたい。」

 

ハンターライセンスや原作介入と親子丼を天秤にかけたら、あっという間に親子丼に傾いてしまった。

 

「アリア……何馬鹿な事言ってんの。」

 

「私は、親子丼が食べられないなら、ハンターライセンス何ていらない!!」

 

「嬢ちゃん」

 

肩を叩かれて振り向くと、お店のおじさんが立っていた。煩くし過ぎただろうか。ハンター試験も参加出来ず親子丼も食べられ無かったら辛すぎる。

 

「すみません、煩かったでしょうか。親子丼1つ下さい。」

 

「アリア!」

 

「くくくっ、そこまでして親子丼を注文していく客は初めてだ! 特別にステーキ定食を注文せずとも合格って事にしといてやるよ!!」

 

「良いんですか!」

 

「あぁ、そっちの兄ちゃんは合言葉を知ってるしお前さんも本当は知ってるんだろう?」

 

「はい、ありがとうございます!!」

 

「んじゃ用意しておくから2人纏めて奥の部屋に行きな。」

 

「はい!」

 

定食屋のおじさんが良い人で本当に良かった。部屋に入ると既に親子丼とステーキ定食が用意されていた。少し仕事が早すぎないだろうか。それともそういった念能力なのか? ……何て実用的な。

扉を閉めると同時にエレベーターが動き始める。冷めない内に親子丼を平らげてしまおう。

 

「アリア、後でお仕置きね。」

 

何か物騒な言葉が聞こえたけど、きっと気の所為だろう。あれ?味がよく分からないなぁ。味付け薄いのかもしれない……。

 

このずっと下に第1試験会場がある訳だが、全体の把握のために円を展開しておく。私の方が円の性能は上で円を細長く伸ばす事により別の部屋にいても隙間さえあれば感知可能だというのもあるが、私があまり触れてこなかった念能力【幻視覚(げんしかく)】は凝でも見破れない癖に円では簡単に見破れてしまうのも大きな理由だ。眼帯を付けて目を覆っているから平気な筈だけど、抉られた(様に見せている)目の本来の姿を確認出来ない様に円は出来るだけ遠慮願いたい。布1枚では心許ないのだ。

そして円で感知して分かったのだがやはりキルアお兄ちゃんとヒソカが既にいた。キルアお兄ちゃんはまだ念能力に覚醒出来てはないが見慣れているし、ヒソカは禍々しいオーラが感じ取れたのでこれだろう。逆にこれで違ったらそいつの顔が見てみたいものだ。

 

「イルミお兄ちゃん、下にキルアお兄ちゃんがいた……」

 

突然イルミお兄ちゃんからオーラの圧が発せられる。予測はしていたが、唯でさえ味の薄い親子丼が不味くなるので勘弁して欲しい。

 

「イルミお兄ちゃん落ち着いて。キルアお兄ちゃんにバレたら逃げられちゃうよ。試験期間中はイルミお兄ちゃんも自由がきかないんだから、終わるまで待とうよ。」

 

「……それもそうだね。」

 

オーラを引っ込めてくれて助かった。円で確認した感じだとキルアは一瞬気配を感じ取ったが気の所為だと判断し、ヒソカには完璧に気付かれたみたいだ。

直ぐに下に着いてしまうので、勢いよく親子丼をかき込む。家では普通に残すが外で出された物は残さない派なのだ。

 

「そういえば、念能力が1人だけいて、凄い禍々しいオーラ放ってたよ。」

 

言わずもがなヒソカの事である。

 

「ふーん、そうなんだ。そいつには近付いちゃ駄目だよ。」

 

えっ、スルーなの? てっきりここでヒソカを紹介してくれるのかと思ってたのに……。もしかして知り合ってなかったりするのか?? ずっと私とイルミお兄ちゃんは一緒にいるからヒソカとお兄ちゃんが直接会ってないのは分かってる。

 

「うん、……分かった。」

 

まぁいいや。いよいよ試験が始まる。原作の主人公に会うのも楽しみだ……って待てよ!

 

「このままだとキルアお兄ちゃんにバレる!」

 

急いでイルミお兄ちゃんはギタラクルに、私はその相棒の柴犬に変身しておいた。ちなみにこの変身自体は2人共割と仕事でするので手馴れている。今回の柴犬のチョイスは何となくだ。私はイルミお兄ちゃんみたいに形を変えられれば何でも良い訳じゃないからね。ギタラクルは正直ない。

 

 

 

 

【原作との相違点】

定食屋ごはんの増えたメニュー。実はあのおじさんがジャポン出身で親子丼が大好物だったため、それをメニューに載せていた。認知度の低さから全く注文がされず、アリアが頼んだのが初めてだったという無駄情報。

ハンター試験にアリアも参加。勿論変装していく。

 

【幻視覚(げんしかく)】

オーラで対象の物体を纏い、変化させる事により姿形やオーラの質まで変えさせる(様に見える)能力。

これはオーラの質を変化させる事により凝でも見分ける事が出来なく、唯一円か直接触れる事により確認出来る。

 

制約

姿は物でも生物でも空想上のものでも変身が可能だが、実体はそのままなので実体以外は触れられない。

円で視れば1発でバレる。

 


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