暗殺者がHunter×Hunterに転生   作:ジュースのストロー

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2. 兄と妹

 

 

あれから皆には良くして貰っている。あの後直ぐにゼノさんが家に帰って来て紹介された。血の匂いがする以外は優しいおじいちゃんって感じの人だ。両親が基本無表情なのもあり、正直ゼノさんの方が一緒にいて落ち着く。また、やっと言葉が話せるようになってキキョウさん、シルバさん、ゼノさんと話しかけたら焦った顔でお母様、お父様、お爺様と呼ぶ様に言われた。呼びたくないかと悲しそうな声色で聞かれたがそんな事はない、家族の一員としてちゃんと認められていたのだと嬉しかった。

イルミお兄ちゃんはよく私とキルアお兄ちゃんを連れて外に出掛けてくれる。優しくて頼りになるお兄ちゃんだ。ミルキお兄ちゃんは始め敬語+お兄様呼びをしたら、何かをブツブツ唱えた後にひときしり悶えてからタメ口+お兄ちゃん呼びに直された。両親には敢えて敬語らしいが、よく分からない。ゲームが強くてユーモアのある面白いお兄ちゃんだ。キルアお兄ちゃんは何故か私と一緒にいたがる。少しでも側を離れると長いお説教が待っているので、最近ではトイレ以外は本当に一緒にいる。

 

そんな家族にまた1人、新しい仲間が増えるらしい。名前はアルカ。私が両親と出会った時には既にお父様とお母様で今度は女の子が欲しいと相談していて名前だけは決まっていたらしい。嬉しい事の筈なのに、原作知識もあり何故か不安ばかりが募っていった。

いざアルカが産まれるとなって私達は執事達と一緒にいた。お父様とお爺様は2人ともお母様の病室にいる。兄弟全員で遊びながらも皆どこかソワソワしているのが感じられる。かくゆう私も朝から酷く落ち着きが無い。この場合、私だけ良い意味ではないのだが。

キルアお兄ちゃんが意地悪く取ったジェンガを眺め、その内の1つのブロックに手を伸ばした時にそれは来た。地面が揺れた様に感じ、空気が震える。はっきりと病室の方から禍々しい気配が伝わって来て思わずジェンガを崩してしまった。キルアお兄ちゃんととミルキお兄ちゃんが不思議そうな顔をしているがイルミお兄ちゃんは気付いている様子だ。どうやら年能力者にしか今のは分からなかったらしい。

アレは何なんだ?! 分からないけど、絶対に関わってはいけない。危険過ぎる。アレは人間ではなく、最早神の化身とかそういう部類だ。異邦人である私だが、そんな物とはレベルが違うと感じられた。

ふと、キルアお兄ちゃんの様子がいつもと違う様に感じられた。何だかぼやっとしているというか目の焦点が合ってないような。

 

「キルアお兄ちゃん? どうしたの?」

 

「……行かなきゃ。」

 

やっぱりおかしい。いつもなら私の顔を見てその言葉を言ってくれるのに、自ら私から離れる事なんて絶対しないのに。

イルミお兄ちゃんと目を合わすと無表情の中に真剣さを混ぜて頷かれた。どうやら同じ意見らしい。理由は分からないがキルアお兄ちゃんは何かに操られていて、私達はそれを止めなければなない。絶対にだ。周りにいた執事達とついていけてないミルキお兄ちゃんに声を掛けてキルアお兄ちゃんの足止めをする。年能力まで使って体を抑えたのだが、何故か全くキルアお兄ちゃんの歩みを止められない。大勢に囲まれているのにも関わらず、年能力を使ってすらないキルアお兄ちゃんは悠々と歩いて行く。部屋を出て、段々と禍々しい気配が伝わって来た病室へと近づいて行く。危険、危険、危険。離れないと。嫌だ、近付きたくない。だが、止めないと大切なキルアお兄ちゃんがアレと出会ってしまう。怖い。恐ろしい。前世も含めてここまでの恐怖は初めてだ。

 

「キルアお兄ちゃんお願いだから行かないで! お願いだよ!!」

 

必死に止めるにも関わらず全く衰えを見せない歩み。どころか早くなっている気もする。禍々しさがとんでもない量になって来た。体が動かし辛い。意識も混濁して来て、これはいけないと先程から生爪を剥がしているのだが効果はあまり見られない。ついにはキルアお兄ちゃんにとてもついていけなくなってしまった。体がフラフラで震えていて、気付くとキルアお兄ちゃんは廊下の先に一人で歩いていた。他のお兄ちゃんも執事達もいつの間にか脱落してしまった様だ。悔しい。キルアお兄ちゃんを絶対アレに近づけてはいけないのに……もう限界みたいだ。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

ハッと目が覚めた。確かキルアお兄ちゃんが……。今は何時だ?! どんな状況になっている?!

周りを見渡すと執事の1人がこちらを見てホットした様子でいた。

 

「ツボネ、あれから一体どうなったの?!」

 

いても立ってもいられず、詰め寄ろうとする。ベットから勢い良く体を起こすとグラッと視界が揺れ反転した。すかさずツボネに抱き抱えられなければ床に衝突していた所だ。

 

「落ち着いて下さい。キルア様なら大丈夫です。取り敢えず離す事には成功しました。今は眠っております。」

 

それを聞いて体からやっと力が抜けたのを感じた。ほっと深い息を吐きツボネの体にもたれる体制になる。

 

「本当に、良かった……。」

 

「アリア様もご無事で本当に良かったです。廊下で酷く憔悴した状態で気絶なされていて、中々目を覚まさないので心配していたのですよ。」

 

「ありがとうございます。心配かけさせてしまってすみませんでした。」

 

今度はゆっくりと体を立たせようとするが、中々体に力が入らず上手く立てない。

 

「無理をなさらずに私にどうぞ頼って下さいな。キルア様の所に行くのでしょう?」

何だか、全てお見通しな様で恥ずかしい。私の方が長く生きている筈なのだが、どうしても外見に中身が引っ張られてしまう。今は齢3歳なので敬語が使える時点で異常ではあるのだが。

 

「……お願いします。」

 

暫く考えた後、現実問題自力では出来ないと判断してお言葉に甘える事にした。

 

「それでは失礼します。」

 

そう言うとツボネは私を腕に抱えて歩き出した。目指すはキルアお兄ちゃんの寝ている寝室だ。

寝室の中に入ると、ベットに寝ているキルアお兄ちゃんとその手を取って枕元に座っているイルミお兄ちゃんがいた。

 

「イルミお兄ちゃん……。」

 

「リア、起きたんだ。良かった……。」

 

「お兄ちゃんも、本当に良かった……。」

 

ツボネにはもっと頼れと言われてしまったが、ゾルディック家の一員としてそんな無様な姿を使用人に見せられなくて……耐えていたものがイルミお兄ちゃんに会って溢れてしまった。赤ちゃんだった頃みたいにお兄ちゃんの胸に収まりにいく。お兄ちゃんも私に片腕を回してくれた。昔よりも大きくなった私だが、それはお兄ちゃんも同じなのであまり昔と変わらない様な気もする。

イルミお兄ちゃんが手に取っていたキルアお兄ちゃんの手を私も包むようにして掴む。2人の体温を感じて、やっと心から安心する事が出来た。決して泣きはしないけどね。涙は遠い昔に枯れてしまったから。

 

「……僕が守るから……だから、僕から離れないで」

 

お兄ちゃんの腕に包まれ安心しながら、首筋にチクリと痛みを感じて私は意識を手放した。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

イルミ・ゾルディックside

 

 

キルがいれば他に何もいらない。両親の言う事もきくし特別だけどキルは何よりも勝る僕の唯一の宝物。

その宝物が増えたのは両親が何故か家を飛び出して帰って来た日に赤ん坊に会わされてから。僕と目が合った赤ん坊は花が綻ぶ様な笑顔になって、キルの時と同じ衝撃が僕を襲った。守りたい。大切にしたい。あの基本無表情な両親に育てられたのもあるかもしれないけど、僕は赤ん坊の無邪気な笑顔に弱いみたいだ。キルと一緒にいる姿を見ていると微笑ましく感じる。これからは僕達の妹になると伝えられ、とても嬉しかった。

 

そんな可愛い妹もすくすくと育っていき、僕が手伝って暗殺の真似事をしたりもした。すると驚く事に僕よりも念能力を使いこなしているし、暗殺の技術も習ったばかりとは思えない練度だった。これは天才なんて言葉じゃ片付かない。流石に暗殺対象に向かって歩いて行って心臓にナイフを一突きした時は肝が冷えた。あれでも対象は高練度の柔術の使い手だったのだけど、殺されるまで殺気に気付かなかったってどういう事?! 僕も今から暗殺すると知っていた筈なのに、ナイフを刺して尚リアから殺気が感じられなかった。まるでお茶でも飲んでいる様な雰囲気で人を殺した。これはこれで恐ろしいものだよね。

 

今日もキルとリアは一緒にいる。リアは何処か遠くに行ってしまいそうな儚げな印象があるから、きっとキルもそれを感じとっているんだろう。そんな2人を連れて僕はよく外に出掛ける。この時間がずっと続けば良いのに、と思う位には僕にとって大切な時間。この2人以外は何もいらないから、ずっと一緒にいられたらと切に思う。

 

ところで両親にまた、子供が出来たらしい。名前はアルカ、女の子になるそう。兄妹が増えるのは純粋に楽しみだし、もしかしたらまた宝物が増えるかもしれない。ミルキ?そんな豚の品種がいたかもね。

そしていざ妹が産まれるとなった時、空気が禍々しいものに変わった。今日の朝から何故か落ち着きのなかったリアがガタガタと震えているのが分かった。僕も震えてはいるけど、リアは更に酷い。顔なんか、見た事無いくらい真っ青で今にも倒れそう。

でも、そのリアの視線を追ってキルの様子がおかしい事に気付いた。目が虚ろで、操作系の念能力を多用するので分かるが何かしらの能力が掛かっているのが分かる。

 

「……行かなきゃ。」

 

そうキルが呟くのを聞いて一気に肌が粟立った。駄目だ。駄目だ。絶対にあちらに行かせてはいけない。リアと目を合わすと同じ目をしていたので頷いておいた。

執事達と協力してキルを止めようとするが、どうしてか止める事が出来ない。ずるずると重さを感じさず歩みを進められてしまう。そうして次第に体の力が抜けていき、執事達の姿が気付けば消えていた。その時にうっかりキルから手を離してしまい、そしたらどうやっても2人に追いつけなくなってしまった。待って。行かないで。離れないでよ、お願い。

願いは伝わる事なく、僕は廊下に倒れた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

目が覚めて真っ先にキルの所に向かった。キルはベットで寝ていたけど、ちゃんと息をしていて今はあの化物が操作してたオーラもキルからは感じられなかった。キルの手を取ると暖かさが感じ取れた。キルは弱い。家では天才ともてはやされてはいるが、あいつのオーラを受けて簡単操られてしまう程度には弱く純粋だ。このままじゃ駄目だ。また守れなくなってしまう。僕かずっと守ってあげられたら良いけど限度があるし、この家を継ぐ以上そうも言ってられないから。

そうだ、キルは何かと素早いから自分よりも強いやつに会ったら逃げるように訓練しよう。それなら僕の念能力も手伝えるしすぐに出来る。うん、それが良いや。

 

「イルミお兄ちゃん……。」

 

どうやら集中し過ぎてたみたい。リアに声をかけられるまでさっぱり気付かなかった。

 

「……リア、起きたんだ。良かった……。」

 

「お兄ちゃんも、本当に良かった……。」

 

リア。あの時僕を置いて離れて行ったリア。そのリアが今、目の前にいる。

 

「おっと。」

 

「お兄ちゃん、お兄ちゃん……。」

 

凄い勢いで僕の胸に飛び込んで来たので流石に驚いた。たった3歳の癖に泣いた所を見た事が無いこの娘がここまで取り乱すのを初めて見た。やっぱり辛かったんだろうか。苦しかったんだろうか。僕が一緒にいたら絶対にそんな思いはさせないのに……。こうやって抱き締めてあげるのに……。僕の腕の中で震えているリアは吃驚する位強いけど、どこか危うい。気付いたら居なくなっていそうで……僕に縛れば良いのか? 縛って、縛って、雁字搦めにして……それで僕から離さなければ良いんだ。リアの全てを管理してずっと一緒にいればリアが傷付いても抱きしめてあげられるし、リアが消える事もない。

 

「……僕が守るから……だから、僕から離れないで」

 

この時初めてリアに念能力を使った。

 

 

 

 

 

 

【原作との相違点】

 

アルカがマジで化物。扱いがボスキャラか何か。キルアごめん!

イルミがまだ原作時程、機械じみてなくて優しい。但しブラコン・シスコンは更に拗らす予定。

ミルキのオタク理解者の存在。豚くん良かったね!

 

 


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