暗殺者がHunter×Hunterに転生   作:ジュースのストロー

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未だ抜け出せない料理会


10. 玉と卵

 

 

「はぁっ! 何で不合格なんだよ!! 寿司って一口型の酢飯の上に薄く切った生魚を載っけた簡単な料理だろ!!」

 

キルアお兄ちゃんの叫び声が会場に響き渡る。忍者ハンゾーさんはその後に並んでいたが、お兄ちゃんが不合格なのが何故か分からない様子だ。

 

「簡単料理、言ってくれるねぇ……。寄生虫の対策もせずにぎっちぎちのご飯の上に生魚を載せたこれが寿司とは舐めんじゃないわよ!」

 

もっと言ってやってくれ、メンチさん。寿司を簡単料理だなんて、ジャポンの職人さんはあれだけ美味しい寿司を作っておいて自分は半人前だって言っているのに……。

 

その後も辛口の評価は続き、しまいにはお腹が一杯だと2次試験が終了してしまった。途中で魚が丸ごとあしらわれていたり、ご飯がベチャベチャだったりと酷い料理ともいえない物がでてきたのにも関わらず、審査のために1口は口にしたメンチさんは凄いと思う。黒烏龍茶が欠かせないブラハさんとは大違いだ。あ、メンチさんが裏で吐いてる……。

ちなみに早めに合格を貰った私達は海鮮丼を作って食べていた。メンチさんの目が痛いけど、マスオとイクラの親子丼最高! ついで食べながらこっそりと調味料をいくつかちょろまかしておくのも忘れないで。ジャポンの調味料は貴重です。

 

〝どぉおおんっ!〟

 

会場の少し離れた所から何かの破壊音が聞こえてきた。どうやら賞金首ハンター志望の男性が、どうして料理の試験で落とされないといけないのか騒ぎ立てている様だ。メンチさんが男性に挑発し、男性が殴りかかったがブラハさんに天高くに召されていた。南無南無。

 

「賞金首ハンター? 笑わせるわ!! たかが美食ハンターごときに一撃でのされちゃって。」

 

メンチさん激おこである。男性が見えなくなった後も鼻息を荒くして周りに怒りのオーラを飛ばしている。受験生は半径10mには近寄ってない様子だ。

そしてメンチさん曰く、この試験では未知のものに挑戦する気概が知りたかったらしい。まぁ、ヒントは至る所に隠されていたから其処から推測して調理するのもハンターには必要なスキルだよね。

 

〝それにしても、合格者一人はちと厳しすぎやせんかの?〟

 

上空からネテロ会長の声がスピーカーで聞こえてきた。私が円を展開しても引っかからないって、とんでもなく高い。ちなみに、私の円の半径は500mである。横下方向へなら紐状に薄く出来るので、意識すれば無限に広がっていくが。

受験生が声の元を探そうと屋外へと出たので私もそれに倣い空を見上げると、そこには飛飛行船。そこから人影が落ちてきた。先程とは比べ物にならない音を立てて落ちてきたのはハンター協会のネテロ会長である。成程、実物を見たのは初めてだがオーラの総量はとてつもないものを感じるし、その姿やオーラに隙が全くない。これは私では正攻法でとても勝ち目がないのがよく分かる。……気のせいかもしれないが、先程からネテロ会長と目が合う様な……うん、気のせいだ。ネテロ会長の声が聞こえてからまたシバの姿になり幻視覚で隠れてるし、ウィンクとかされてない絶対。

そして原作通りにネテロ会長が審査が不十分な事から再試験をメンチさんに勧めた事によりマフタツ山への移動が決定した。実は私、クモワシの卵で卵かけご飯するのが夢だったんだ!!

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

さてさて再試験会場そに到着。マフタツ山は丁度真ん中の辺りで2つに割れており崖の様な構造をしている。これはかなり深い。

 

「安心して、下は深ーい河よ。流れが早いから落ちたら数10km先の海までノンストップだけど。」

 

気付かなかったけど、海までそんなに離れていなかったのか。念使って移動すればあっという間だし、もっと早く気づけば海鮮丼のバリエーションがもっと増えたのに……。

ちなみに女子だから高い所が苦手とかいう訳では全くない。前世でも高層ビルダイブとかやったしね。あれの命綱なしバージョンだと思えば怖く……いや怖いか?

そうこう考えている間にメンチさんがI can flyしていった。見下ろして見るとまだまだ下に着かない様で、一体どれだけの深さがあるのか疑問である。

 

「マフタツ山に生息するクモワシ、その卵を取りに行ったのじゃよ。」

 

メンチさんが何も言わずに飛んで言ったから、ネテロ会長が説明にまわる。再試験はやはり崖下にあるクモワシの卵を取ってくる事だった。

説明が終わってくずに、メンチさんがクモワシの卵を持って来た。思っていたよりも大きくて、1人で食べ切れるのか心配になる。これは決して女子ぶってる訳ではなく、HUNTER×HUNTERの世界の人達がおかしいだけだ。

試験が始まると、自信があってすぐに飛び込む者、躊躇する者と様々だ。丁度前の人がいなくなったので私も飛ぼうとすると1つ気が付いた。ネテロ会長の前では何となく人型になっていないのだが、シバの姿のままでツルツルの卵は取れないのではないだろうか。悩んだ末に泥棒が使う様な風呂敷で背負う形の幻視覚を出す事にした。

計画も決まった事だしイルミお兄ちゃんに声をかけて一緒に飛ぶと、思っていたよりも開放感があって気持ちよかった。体重の差から距離が離れてしまうので実は手を繋いでのダイブだったりする。私の姿は見えないので手を繋いでいても問題はないが、精神衛生的にはギタラクルの姿でいるのを本当に辞めて欲しかった。

どんどん落ちる速度が増していき、次第に太くて白い網の様なものが見えてきた。恐らくあれがクモワシの巣なんだろう。シバの姿をお兄ちゃんの肩に固定して、私もクモワシの糸を掴む。この時、お兄ちゃんの近くの糸を掴まないと誰もいないはずの糸がたゆんで不自然になってしまうので注意だ。周りを見渡せば、所々に卵があったので1つだけ拝借していく。幻視覚で予定通り包んで完璧である。ジュルり。

直ぐに戻って調理を始める。試験はゆで卵なので、皆と同じ様に卵を大鍋へと投入するが、完全に茹で上がる前に取り出す。すると、中はトロトロの半熟卵の出来上がりである。これはこれで塩を振って食べると美味だが、トロトロの黄身の部分を半分ご飯にかけて頂こう。ちなみに私が食べていた海鮮丼用の白いご飯(個人用なので自分で炊いた)と調味料は先程の会場からパクってきたものである。醤油を一かけすると、卵かけご飯の出来上がり!! 味付けは素材の味を活かしてシンプルに! それじゃあ頂きます!!

 

「…………。」

 

何かもう、言葉に出来ない……。醤油が手に入らないせいで卵かけご飯を食べたのはこっちに来てから始めてだったが、ここまでとは……。

新鮮な食材とジャポンの調味料に感謝。

この後、残しておいた漬けイクラを入れたり麺つゆで食べたりと卵かけご飯を存分に楽しんだ私は暫くの間お腹が辛かった。……きっとトンパさんのジュースが今頃効いてきたんだ、そうに違いない! 食べ過ぎてなんかない!

お腹を摩りながらゆっくりしていると、このまま第三試験会場までは休憩だと伝えられた。この後すぐ体を動かせって言われたら試験に落ちる自信があったから良かった。

食べた後すぐに横になるのは駄目だけど苦しくて動けないし、何だかんだで緊張してたのもあるから眠たくなって来たのでシャワーを浴びて寝ようと思う。イルミお兄ちゃんと人が来ない所を探して、お休みなさい。

またぐしゃぐしゃって頭撫でるの辞めて欲しいけど、もう無理……眠い……寝……。

 

 

 

 

 

 

はっ!! 一瞬だったけど誰かの殺気が感じられた。イルミお兄ちゃんも感じとったみたいで同じ方向を睨みつけている。これは恐らくネテロ会長のものだろうけど、一瞬とはいえ恐ろしい殺気だった。少ない殺気だったけど分かる人には分かる強者のものだ。

お兄ちゃんに目で訴えられたので、円を展開する。ネテロ会長対策で細くて触れるのが一瞬の隠で隠した円を出したが、これでも気付かれそうで怖い。するとやはりゴンとキルアお兄ちゃんとネテロ会長がいた。

 

(「あの殺気はネテロ会長のみたい。」)

 

(「やっぱりあの爺さんか。強いね、僕でも勝てそうにないや。」)

 

(「それと、落ち着いて聞いてね。……一緒にゴンとキルアお兄ちゃんがいるの。」)

 

前みたいに殺気を出しこそしなかったものの、お兄ちゃんの眉間に深い皺が出来ていて怖い。ネテロ会長という強者がいなかったら舌打ちでもしていそうな表情だが、先程から溜息とも深呼吸とも言える様な動作をしている。

 

(「はぁ……、仕方ないから遠くから監視するよ。窓が大きいから飛行船の外からなら絶をすれば監視出来るでしょ。」)

 

急いで飛行船の外に出て監視を始める。キルアお兄ちゃんとゴン今からボール取りゲームを始める様だ。ネテロ会長からボールを奪ったらハンターライセンスが貰えるって、詐欺も良い所である。

ゴンは持ち前の瞬発力で、キルアお兄ちゃんは培ってきた暗殺術でボールを奪おうとするもあと一本及ばない。まぁ、そう見せているだけだろうがあの狸爺も人が悪い。

 

(「ちょっと、今念使ったでしょ。 手は出さないんじゃなかったの?」)

 

ネテロ会長が油断していたのか一瞬とはいえ焦って攻撃を念でかわしていた。キルアお兄ちゃんの見せ場だっただけあり、イルミお兄ちゃんからの野次が飛ぶ。

1通り試して攻撃が通らないのが分かったキルアお兄ちゃんは本気になると殺してしまうかもしれないからとゲームを降りた。自分は本気で言ってるのかもしれないけど、身内として少し恥ずかしい。

 

(「帰ったらキルの事、鍛え直さないと……。」)

 

キルアお兄ちゃんファイト!!

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

〝ピチャ……ピチャ……〟

 

血が滴る音がする。音源はキルアお兄ちゃんの手からするが、勿論自分の血ではなく他の受験生のものだ。遠くから監視をしていたため暗殺を防ぐ事も出来ず、かと言って止める必要性も感じられなかったのだが。

キルアお兄ちゃんは暗い顔で立ち尽くしている。恐らくゴンという光と自分の闇を比べて自己嫌悪に陥っているのだろう。私は殺人を犯す=闇だとは思わないけどね。ゴンだって将来的に敵討ちでキメラアントを殺すし、考え方と気持ちの持ち用次第な気がする。その点私は楽観主義者だから光と言えるかもしれない。

 

『キールア♪』

 

絶で後ろから近付いたのでキルアお兄ちゃんの肩が揺れる。ちなみにイルミお兄ちゃんはまだ隠れている。

 

「シバかよ、びっくりさせんな……。」

 

『……それ殺しちゃったの?』

 

「まぁな、……引いたか?」

 

『別に……ただ、試験中に受験生殺しても本当に大丈夫なのかなって思って。ほらヒソカは霧の中で殺してたし、キルアはこの距離じゃ確実にネテロ会長にバレるよ。』

 

「うわっ!? 確かに……。」

 

『無計画な殺人は1番駄目だよ。ちゃんと考えて暗殺しなきゃ。』

 

一時の感情に任せて暗殺をして失敗すると痛いじゃ済まされない。暗殺をするならこちらもされる覚悟で。どんな小さな敵でも綿密に計画的に行動しなければ、人間誰しも終わる時は一瞬なのである。

 

「あははっ、あはははははは!!」

 

真面目な話をしていたのに何故かお兄ちゃんが笑い始めた。何で?? どこにツボがあった???

 

「ヒヒっ、はっ、……ははっ……。」

 

『もう、何で笑うの?』

 

真面目な話をして笑われるのは酷い。ついつい顔がむくれてしまう。

 

「だって、今更だけど言う所そこ? 普通暗殺はいけない、とか言うんじゃないのかよ……くくっ。」

 

『僕だってそういう事やってるし、そんな偏見じみた事は言わないよ。……まぁ、キルアが元気になってくれて良かった。』

 

「はぁっ?! そんな訳…………ちっ……サンキュ。」

 

そう言って照れ隠しをしながらそっぽを向くキルアお兄ちゃんは中々素直になれないけど、そんな所も可愛いなぁ。

その日の夜は結局キルアお兄ちゃんと一緒に寝た。イルミお兄ちゃんは絶状態で側に寝ている。明け方にゴンがやって来た時は一瞬目が覚めたがまた寝た。次の試験も、頑張ら……ない、と……。

 

 

 

【原作との相違点】

シバの姿のまま犬食いを回避するため、ギタラクルの肩にシバを載せて食べさせてもらうアリア。後ろから抱き着いて肩口にあーんの体制は他の受験者には見えないが、シバにあーんさせる姿はバッチリ確認されているので、ギタラクルのキャラが低迷中である。

 

トンパのジュースは勿論飲んでない。飲んでも毒の耐性は付いているので平気。

 

ボール取りゲームの時もしっかり監視をしている2人。ストーカーは慣れたものです。

 

キルアの暗殺技術が少しだけ向上。これによりネテロ会長をあと1歩まで追い詰める。

 

キルアの落ち込みが回復。アニマルセラピー効果です。

 

 

 

 

 


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