暗殺者がHunter×Hunterに転生   作:ジュースのストロー

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ゾルディック家
1. プロローグ《突然の死》


 

 

最近、睡眠時間が増えているのは自覚していた。体の関節は痛むし、体を動かすのも億劫で上手く頭が回らない。まぁ、齢90で今の状況は納得だし寧ろ元気な方じゃないかとは思う。やる気を出せば50m走は6秒台位なら出せるし、日課のフルマラソンは欠かした事がない。

ただ、やはり年というものは重かったみたいで……

 

気がつくと知らない場所にいた。

 

 

 

 

っていやいや、何処?!

何で?! さっきまで普通に過ごしてたよね!

確か、意識がふわ〜っとして来て、その後視界が真っ白になって……

ん? もしかして死んだ??

 

はぁ……、死んでしまったのなら仕方ない。幸いな事に悔いもないし、騒いでも何も解決しないからね。

ただ、本当に此処は何処? どうも視界が真っ暗でよく分からない。何故か頭上で等間隔に音がするし、時折地震のように揺れたりもする。暖かい液体に包まれた体。そして感じる安心感。

……現実逃避はここまでにして、現実に向き合おう……

そう、私は何故か記憶を持って転生をしてしまったらしい。

ここは母体の中。未だ私は生まれてはないので、転生という表現は違うのかもしれないが生憎ボキャブラリーが少ないのでそれ以外に思いつかない。

 

んっ? 何だか外が騒がしい。

胎内は響いてよく分からないけど、あまり宜しくはない音がするような……

 

〝 ヒュッ!〟

 

へっ? 今度は音がはっきりっ……って痛っ!! 熱うっっ!!

何これ何これ、体中が焼けるように痛いし熱い。何かが体を勢い良く掠ったようだ。

わわわっ! 痛ぁーーーー!

一瞬、何が起きたか分からなかったけど母親が倒れた衝撃で自分も地面に激突してしまった。お腹ごしだけど 、すっごい痛い!

 

あ、頭上から光が見えた。眩しいなー。そして、先程から途絶えている頭上の心拍音。

これは……

 

 

《誕生前に母親が突然の死》

 

 

まさかの展開。

辛すぎる。せめて顔を合わせて一言でもお話してからにして欲しかった……

 

そして、母親の心拍音が消えてから頭上の穴越しに聴こえてくる声。これは、もしかしなくても私の母親の命を奪った人物なのだろうか。別に恨みとかそういった感情はないが、それにしてもキーキー煩い。ヒステリックこじらせてるんだろうか。

 

と、そこまで考えた所に誰かの気配を感じた。何故だか物凄いスピードでこちらに迫って来る。ど、どうしたらいいのだろうか? 逃げる? このまま隠れてる? 戦う? どれがいいんだ?? 死ぬ前よりも頭が上手く働かなくて、余計に焦ってしまう。

 取り敢えず、体を動かして移動を試みようとしたが……うん、絶対無理。まだお腹に隠れていよう。

 

あっ……。遂には、私のすぐ近くまで迫ってきた誰か。ど、どうしよう視線を感じる。これ、グサッと腹ごと刺されたりしないだろうか? それは困る。それと、感覚的にここら一体には2人以外誰もいないみたいだ。という事は、ここら辺で自分元気ですよー、害はないですよーアピールをしておかないと、放置の末に野垂れ死にしかねない。2分の一の確率で殺されるが、赤ちゃんには手を掛けないと信じてみようか。正直、自分の母親を殺した相手に養ってもらおうと考えているあたり薄情を通り越して外道かもしれないが仕方ないじゃないか。折角生まれた命なら生き抜いてみせたい。

 

頭上の穴から這い出る。ちょうど体と同じ大きさだったので、抵抗なく出ることが出来た。

日の光が本当に眩しい。外の世界は果てしなく広がる空とゴミ。

ゴミ

ゴミ

ゴミ

ゴミ

ゴミ

ゴミばっかりだった。

 

いや何処だよ!?

何でゴミ!? えっ、どういう事なんだ?!

いや、それも気になるけど2人の反応は……

 

「「……。」」

 

「……。」

 

いや、何か反応してくれ!!

こちらをじっと見ているけど、目に何の感情も籠めないのはやめてくれ。頼むから。

こっちも相手を見つめ続けると銀髪の大柄な男が手を伸ばしてきた。私は努めてそれに身をゆだねる。頬を、髪を男に撫でられる。何かを1つ1つ確認するように撫でられ続け、疲労と安心からか私は深い眠りについた。

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

シルバ・ゾルディックside

 

 

俺には大切な人がいた。名前はアリス・クーパー。いた、ではないな。今も大切だ。俺が初めて家族以外で愛して、大切にしたいと思った相手だ。

だが、俺の家は暗殺一家ゾルディック家。その当主の妻となるには単純な強さだけではなく残忍性や殺しに対する価値観なんかも重要になってくる。俺は彼女が大切だからこそ、離れる事にした。彼女も中々に凄い念能力者ではあったが、生きる道が決定的に違う。

勘違いしないで欲しいのだが、今はキキョウ一筋だ。彼女を本当に愛しているし、共に暗殺をする事による信頼もある。

 

ある日、部屋の整理をしたらアリスと以前撮った写真が出てきた。懐かしい。暫くその写真を眺めていた。まさか、それをキキョウが凝視していてあんな事になるなんて思わずに……。

 

ヒステリックな事が多い、キキョウが暫く平静でいた。俺はその事に何の疑問も持たず、逆に平和に過ごせるのは幸せだとさえ思っていた。長年連れ添って来たのに、妻の奥底に潜む怒りに気付かないなんて暗殺者としても夫としても失格だ。

 

気付いた時には、キキョウは家を飛び出してアリアの元へと向かっていた。アリスの事は自力で情報を探し見つけたらしい。俺はそれに気付きすぐに追いかけたが、あと1歩及ばなかった。

目の前には腹に穴が空いたアリスの死体。

どうしてアリスが死なないといけないんだ……。どうして……。

俺は怒りが湧いていた。アリスを殺したキキョウに。それよりもアリスを守れず、かえって死なせてしまった自分自身に。

暫く自己嫌悪に陥っていたが、ふと別の気配に気付いた。弱くも穏やかな、そんな気配が死んだアリスの方から伝わってくる。俺が気付かなかったなんて、そんなに動揺をしていたのか。それとも、こいつが特殊なのか……。

果たして、アリスの腹から出てきたのは銀髪の不思議な雰囲気を持つ赤子だった。その赤子とじっと目が合うと、つい手が伸びてしまった。赤子か嫌がる素振りを見せないこを良い事に抱き上げる。銀髪の毛がうっすらと生えていてアリアの赤毛とは違うが、瞳の色が青と、アリス譲りの金のオッドアイで神秘的だった。

アリスの子供……。この子だけは守らなけらばいけないと思った。それが、彼女への贖罪から来た感情なのかは分からない。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

キキョウ・ゾルディックside

 

 

きっかけは1枚の写真。

いけないとは思っていたけど、あの写真を見た時のあの人の顔が忘れられなくて、私は写真の中の女性に醜い嫉妬心を抱いていた。

気付けば私は彼女の情報を集めて現住所を突き止め、息の根を止めていた。私と家族以外にあの表情を見せるのが許せなかった。その女を殺せばきっと私の事をもっと見てくれるに違いない、そう信じて。

 

しかし、彼女の死体を見たあの人の顔を見て酷く後悔してしまった。私の方を見てくれない。殺した事で、あの女をあの人の中で永遠にしてしまった。死んでもあの人に想われるなんて妬ましい。その事に気付いて酷く歯痒い思いをした。

そして、その女の子供が今目の前であの人に抱かれている。私との子供じゃないのに……。何で、そんな顔を向けるの。

良く見ると、銀髪に青い目とあの人の特徴が遺伝しているのが分かる。しかし、片方だけ何故か金色の目をしていた。私の目はそんな色じゃない。何で何で何で何で何で何で何で……。視界が暗く染まっていく。そこからの記憶はあまりない。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

転生者side

 

 

腕の中で安心して眠ってしまった後、ふと殺気に気付いて目を覚ました。周りは真っ暗なはずなのに、暗闇にぼぉっと光が見える。この光は私の母親を殺した人だ。眠る前からあまり良い感情は感じて無かったが、まさか物理的に私を排除するつもりか!?

容易く殺されるつもりはないので、逃げようと抵抗を試みるが流石に赤子の体では無理があった。

自分の首が締まっていくのが分かる。苦しい。もしかしたら生きられるかもしれないと思ったのに、ここで死んでしまうなんて……。苦しい。

生理的な涙が出て来て頭がぼぉっとして来た。これは何とかしないとヤバイと思った瞬間、何故か手が緩んだ。一瞬、訳が分からなかったがすぐに目に鋭い痛みを感じた。ぐちゅ、ぐちゅ。目をえぐろうとされている。痛い。今まで、泣きもしなければ一切言葉も発していなかったが流石にこれは痛い。少しだけ、声が出てしまった。

しかし、すぐに殺されないにしてもこのままじゃいけない。母親だけでなく目まで奪われたのでは溜まったものじゃない。何とかしなければ、何とかしなければ……。

すると、私の中にあるオーラが右目に集まり形どったのが分かった。何が起きているのかさっぱりだが、これで大丈夫だという安心感が何故かあった。

久方振りに感じた痛みと体の倦怠感の中で、また銀髪の男の声が聞こえた気がして私は再び目を閉じた。……来るのが遅いよ、全く。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

翌朝、私は普通に目覚めた。私の目は片方だけ抉られていた……様に見せてある。これはどういう事かというと、私にはしっかりと両目があり瞬きも出来るのだが他の人にはそうは見えないのだ。これは恐らく私が出したオーラの影響かと思われる。どういう原理かはさっぱりだがあの時の私は自らの目の偽物をオーラで具現化し、あの女性、キキョウさんの目を誤魔化せたらしい。これもどういう訳か自然に理解出来てしまった。色々と分からない事だらけだが、我ながらグッジョブだったと思う。

銀髪の男性、シルバさんが私の目を見て痛ましいような、申し訳ないような顔をしていたのが少しだけ悪いと思う。ただ、彼は何故か毎回助けるつもりで遅刻してくるのでこれでお相子にしてくれないかな。

そして、キキョウさんは何故か今までと態度を180度変えていた。私の事を猫かわいがりしだして赤子の面倒を見てくれる。どうやら金色の目を抉った(様に見せかけた)事により、私には父親の要素しか残らず愛する事に決めたらしい。恐らく私の本当の母親の事は禁句だろうが、それでも育児放棄等にならずに本当に良かった。正直母親殺しの復讐よりも当面の扶養の方が重要だ。

たまに感じるヤンデレちっくな愛は重いと感じるし窮屈だが、それでも愛してくれる人がいるって大切な事だと思う。

 

 

そして飛行船で1週間という長い旅の末に、何とか家に辿りついたみたいだ。この間、たっぷりと2人の愛を感じて幸せに過ごす事が出来た。本来ならば執事やメイドの方達が私の面倒を見るらしいのだが家を飛び出して来てしまったので連れてくる暇も無かったとか。

 

話が変わるが私には1つ疑問に思っていた事があったのだが、家に着いた時にそれが確信に変わってしまった。キキョウさん、シルバさん、私の中の不思議なオーラ、そして飛行船。極めつけはゾルディック家という暗殺一家に赤子の薄ぼんやりした視界が次第にハッキリしてきたせいで見えた2人の姿。あらやだ、ここってHUNTER×HUNTERの世界じゃないですかー。どうりで生まれから随分とハードモードだと思ったよ。ちなみに私の漫画知識は当時の連載話までしっかりと読み、更にアニメもというレベルだ。細かい所まで全てという訳にはいかないが、話の大筋と誰が死ぬかくらいは覚えている。

成程、そう考えると全て納得する。私のオーラは念能力というもので、もしかしたら母親のお腹で攻撃を受けた際に覚醒してしまったのかもしれない。そういえば、あの時は痛いだけでなく体が沸騰する様に熱かった記憶があるし、へその緒は焼き切れた様にして消えていた。赤ちゃんにしては体力もあるし、それら全て念能力の賜物なのだろう。

 

家に帰って早々に私は執事の方達に引き渡され、数多くの健康診断を受けさせられた。念能力のお陰でなんて事はないがあんなゴミ山で生まれたから取り敢えずだ。私は気が付いた時には既に念で纏をしていたので彼等には既に念能力者である事はバレている。それもあって全く泣かない子供だとは思われているが、あまり心配はされていない。

本来なら生まれて直ぐの赤ちゃんは、無菌室で厳重管理だった記憶があるが念能力のお陰で診断が終わり次第2人に返された。そこで私は衝撃の出会いをする事になる。

 

目の前にはキキョウさんに抱えられている私と同じ銀髪の赤子。キルア・ゾルディック、作品の準主人公と言っても過言ではない。そして私の足元に立っているのはイルミ・ゾルディック、これまた有名なヤンデレ兄である。キルアは私よりも2回り程大きく、どうやら私よりも年上らしい。先程より私が気になるらしく、しきりにペタペタ触って来る。イルミは目が合ったので愛想笑いをしておいた。特に何かしてくる様子はなさそうだが、見た所既に纏をしてい念能力者の様だ。少し早すぎないだろうか。

 

そしてこの時に私は贈り物をされた。一生に1度だけある大切な贈り物だ。

『 アリア・ゾルディック』

これが私の名前。以前の世界とは異なるが2人から貰った大切な名前だ。

 

 

【原作との相違点】

 

ゾルディック家に妹が増えて雰囲気が少し明るくなる予定。

シルバさんの初恋。

キキョウさんloveなシルバさんだけど、ヒステリックよりは普通な方が良いよね!

キルアの初妹の座奪っちゃってごめん!

 

 


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