平成のワトソンによる受難の記録   作:rikka

18 / 163
今回、越水さん及び香坂さんはちょっとお休み。次回で多分出せると思う。


今、何かタイプしようとした瞬間に忘れた件について。
思い出したら追記しておきます(汗)


017:四国にて浅見探偵事務所、出張営業中(なお、所長は放置中)

「なーんで俺が探偵の手伝いしなきゃなんねーんだよ」

 

 放課後大事な話があるからと、取り巻き連中から殺気立った視線のシャワーを浴びながら呼び出された場所――音楽室に行ってみりゃ、相も変わらず偉そうな顔をしている紅子がピアノ前の椅子に座って、これまた偉そうに足を組んで待っていた。んで、いきなり何を言うかと思えば……

 

「もう一度言うわ、快斗君。最近ちやほやされてるあの浅見っていう探偵に協力……ううん、守ってやってほしいの」

「だーかーらー! なんで探偵の仕事を手伝わなきゃなんねーのかって聞いてんだよ、俺はどろ……マジシャンだぞ!?」

 

 思わず泥棒と言いかけたの必死に止めてマジシャンと言い直す。もっとも、コイツはどうやってかは知らないがとっくの昔に確信してる様子だけど……。

 

「えぇ、分かっているわ。ただ……あの浅見っていう男。一人でも多く味方がいないと死んじゃいそうなのよ……というか死ぬわ。絶対。確実に。間違いなく」

「どんだけ死ぬんだよソイツ!?」

「それくらい、よ」

 

 紅子はそう言って、足を組みかえながらため息を吐く。

 

「……お前がそんな顔するなんて初めて見たな。まじでどうしたんだ?」

 

 いつもなら高笑いしながら自分を良い様に振り回す女が、憂鬱そうな顔をしてため息をつく姿なんてそうそうない。少なくとも、興味は惹かれる。

 

「――とりあえず話してみろよ、紅子」

 

 しゃーねぇ。話だけでも聞いてみるか……。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「ここらへんを歩いた時の足音からして多分……」

 

 瀬戸さんがそう言いながら、使われていない暖炉の中でゴソゴソしていると思ったら、次の瞬間にはガコン!! という音と共に瀬戸さんの姿がいきなり消える。

 

「……地下室への入り口……ですか」

 

 

――安室さーん! こっちに扉がいくつか見えまーす!!

 

 

 瀬戸さんが消えた所に大きな穴が開いていて、近づいてみると階段があった。そして一番下には、無邪気な笑顔で手を振っている瀬戸さんの姿があった。

 

(疑ってごめん、浅見君。君の人を見る目はやっぱり凄かった)

 

 かなりおっちょこちょいに見えた瀬戸瑞紀さんだったが、その観察力は一級品だ。隠し金庫や隠しスイッチを容易くみつけ、その中に設置された防犯トラップも解除できる。……危険度の低い物に限ってたまに引っかかってしまう辺りがちょっと残念だが……。金庫や鍵開けのスキルは自分では足元にも及ばないだろう。まさしくプロ級――しかも頭に超一流がつくレベルだ。

 よくこれほどの人材を発掘したものだ、今現在はフリーターと言う事だが……。

 

(こっち側に勧誘できないものか……)

 

 いっその事、浅見探偵事務所の人員を丸ごとこちらに引き込めないかと、最近よく考えている。まだ浅見君は、その目的やバックボーンが不透明なため完全な信頼は出来ないが……。

 例の外国人達の事も調査を続けているがかなりガードが固く、アメリカから入国した事しか実質分かっていない。当然パスポートから色々わかった情報はあるが、おそらくほとんどがダミーだろう。

 彼の周りを調べているキールも、奴らの事はよく分かっていないそうだ。この間、浅見君の情報を問題ない所まで流した時に尋ねてみたが、分からないと首を横に振っていた。

 

「瑞紀おねーちゃん、こんなのよく見つけられたねー!」

「コナンくんも、さっき隠し金庫見つけたじゃない。えらいねー!」

「えっへへー」

 

 褒められて素直に嬉しかったのか、近寄って来たコナン君の頭を撫でている。

 瀬戸さんについて特に意外だったのは、コナン君と相性がよかった事だ。ふなちさんと組ませようかとも思ったが、車の中でコナン君の相手をしていた時……コナン君が自分や浅見君といる時のような話し方ではなく、全力で子供らしさを表現したような笑える――もとい、素晴らしい演技で瀬戸さんと話しているのを聞いて、試しに組ませてみようと思ったのだが――これが正解だった。

 子供相手にどう対応するかも見てみたかったし、コナン君の観察眼なら信頼できる。それに、子供相手に酷な事を言うようだが、彼なら仮に何かあっても大抵の事態は乗り越えられるだろう。

 さっきこっそり、新入りの様子を見てくれと頼んでおいたし、後でさらに詳しい話を聞くとしよう。ふなちさんはもちろん下笠さん達とも見た限りでは仲良くやれているみたいだし、フルで雇ったとしても人間関係は悪くはならないと思う。

 おっちょこちょいな所と、本人の都合で浅見君たち以上に働ける時間が少ないという欠点はあるが、それでもチャラ――いや、それどころがおつりがくる人材だ。

 

「いやぁ、お見事ですね瀬戸さん。先ほども、あの不可思議な金庫をたった5分で開けるなんて」

「えぇ、まぁ。一時期、鍵師の手ほどきを受けていたんです」

「貴女程の腕前を鍛え上げた先生ですか……是非お会いしたいものです。その方は今どちらへ?」

「……八年前に亡くなりまして……」

「それは……すみませんでした。しかし、大変有能な方だったんですね、貴女の先生は」

「はい、とってもすごい人でした! 私が世界で一番尊敬している人です!」

 

 もういないとなると、実質、彼女はその方の後継者の様なものだろう。

 いっそ今ここで彼女に頭を下げて、教えを請いたいものだ。いや、時間を見て教授をお願いしよう。ポケットマネーから授業料を払ってもいいと思うくらいだ。

 

「――って、うん? …………コナンくん、これ」

「え? …………これ、図面?」

「どうかしたかい、二人とも?」

 

 先ほど見つけた地下道は、どうやら特殊なワインセラーだったようだ。部屋ごとにワインの種類が分かれていた。今は三人で、一番奥の部屋――ワインセラーではなく、純粋な倉庫……しかも長い間使われていなかった部屋を調べている。残りの面子は、応接間を使って依頼人と話しながら、今まで発見した物の整理をしている。

 コナン君と瀬戸さんは、並んで古い紙を慎重に眺めている。どうやら一枚の紙が破れて二枚になっているようだ。

 

「……安室さん、確か浅見さんと一緒にロマノフ展にいたんだよね?」

「? あぁ、いたけど……それがどうかしたのかい、コナン君?」

「ちょっと、これを見てもらえませんか?」

 

 瀬戸さんが懐中電灯でその紙を照らしたまま、そっと数歩離れる。

 彼女と場所を入れ替わるようにして、その紙を覗き込むと……

 

「これは……あの時の?」

 

 そこに書かれていたのは世界でもっとも豪華な卵――インペリアル・イースター・エッグが描かれていた。……? でも、あの時見た物と違うような?

 紙全体を見回すと、文字で注釈のような物が書かれているようだが、そのほとんどがもう読めない状態だ。唯一読めるのは、小さい紙の左下の個所。そこにはアルファベットで『MEMORIES』と書かれている。

 

「……メモリーズ・エッグ」

 

 瀬戸さんが静かにそう呟いたのが、この地下室に響き渡る。妙に響き渡り、残響するその声が、どうにも不吉な予感をさせていた。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「開幕放置プレイってどーなのよ越水……」

 

 いざ、四国が愛媛――そして問題の屋敷に到着したのはいいんだけど……。

 俺たちの宿を取って、越水からようやく話を聞く事が出来た。どうも、ラベンダー畑の中にある屋敷で起こった殺人事件と、その後に起こった被疑者の自殺の再調査が目的らしい。

 越水は屋敷の関係者やそこから繋がる人達に話を聞いてくるといい、俺はいきなり別行動宣言をされて途方に暮れていた。

 

(いやー、それにしてもなーんか引っかかるんだけど……)

 

 なんだろう、越水らしくないというか……しっくりこないというか……。

 俺が頼まれたのは、別視点からの調査――調査? まぁ調査か。

 主にやっている事は、その殺人事件から半年後に現れ推理をした高校生探偵が誰かという調査だった。

 どうもその高校生探偵から、推理の経緯なんかを聞きたいみたいだけど……ふむ?

 

(そもそも、アイツにしちゃあ何から何まで不親切すぎるんだよ。あからさまに何か隠してるんで疑って下さいって言ってるようなもんだが――)

 

 さて、どうしたものか。今回ばかりは越水の真意が読み取れない。これが江戸川が関わってるような案件だったら違う視点から推理もできるんだけど……、さすがにこういう時、物語前提での展開予想は使えない。

 

「さて……どうしたものか」

 

 一応屋敷の関係者や、白鳥刑事経由でこちらの刑事に情報を流してもらったりしたけど、肝心のその男の事は教えてもらえなかった。本人のプライバシーのためと言っていたが、恐らくその男が目立たないように口止めをお願いしたのだろう。そして今、図書館で調べ物をし終えて、適当なファミレスで軽い食事を取っている所だ。――あとアルコール。……一杯、一杯だけだから。

 

(新聞や雑誌の情報だって、結局は高校生探偵としか書いていなかったし……)

 

 そういえば、なんでその情報だけが出てるんだろう? 名前を出さなかったのは……謙虚なのか、あるいはなんらかの形で名前を出したくなかったかの多分どちらかだろう。

 とはいえ、本当に謙虚だったらそもそも存在すら出さないだろう。俺で言えば、あの黒川邸の事件の時がそうだった。最初っから刑事にそう言っておけばキチンと黙ってくれる物だ。噂とかの口コミは止められないだろうが、新聞に『高校生探偵』という言葉が書かれることすらないはずだ。――となると……どういうことだ?

 

「あー、だめだ。よくわからねぇ」

 

 じんわりと汗で湿った髪を手櫛でおおざっぱにとかしながら、さっきコピーした新聞や雑誌をホッチキスで止めたものをもう一度パラパラっと読み直してみる。ちくしょう……どうしたものかな。

 

「こういうことを難しく考えるのって、そもそも本来の探偵の仕事じゃねーだろ……はぁ、殺人事件よりも、まだ身辺調査の方が気が楽だ……」

「せやせや! なんで一々殺人が起こったら首を突っ込まなアカンねん!」

「あれだろ、もう本能っていうか習性みたいなもんだろ。それがなきゃ生きていけないんだよ」

「そんなん、人の不幸でおまんま頂いてます~って言うてるようなもんやん!」

「だよなー。つっても、殺人起こった時なんて顔キラキラさせて首突っ込んじゃうからもうどうしようねぇ……」

「ホンマホンマ」

「まぁ、実際それで狡い事して逃げようとしてる奴引きずり出してるわけだから、必要っちゃ必要なんだけど」

「そやけど、物事には限度っちゅーもんがあると思わん!?」

「言いたい事は分かるけど……止められる? あのキラキラした悪戯小僧みたいな顔見てさ」

「……………」

「……………」

「……アカン、無理やわ」

「だろう?」

「「アッハッハッハッハッハ!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「で、おたく誰?」」

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 後ろに座っている見知らぬ客と偶然会話が成立するという奇跡を見せた後、その関西弁の女の子――遠山和葉ちゃんという高校生と相席することになった。ポニーテールいいなぁ。

 

「あぁ! 名前に聞き覚えがあるなぁ思うとったら……平次が最近話す工藤とかいう女の連れやん!」

 

 速報、俺の相棒がいつの間にか性転換した模様……じゃなくて。

 多分、俺の知る工藤の事だと思いつつ訂正を入れると、本気で工藤という人物を女だと思ってたらしく、真っ赤になって照れてしまっていた。

 しかし、工藤――コナンと話している人物か。

 

「それで、相棒さんがなんで愛媛に来とるん?」

「……連れの手伝いに来たつもりが振り回されてるっていったところかなぁ……」

「……苦労しとるん……やね?」

「分かってくれるか」

「いや、ちいとも分からへんけど……ごめん、嘘、ちょっとは分かる気がする」

 

 和葉ちゃんもまた、先ほどの俺と同じように「はぁ……」とため息をつく。あぁ、なんだろう事務所開いたばっかりの頃の俺ってこんな感じだったのかと思ってしまった。

 

「なに? 和葉ちゃん、彼氏さんが探偵なん?」

「な……っ! ちゃうちゃう、彼氏とちゃう!! ただの幼馴染や!」

「ほーーん?」

「な、なんやねん! その気色悪い反応は!」

 

 ……多分年の頃は高校生。幼馴染っていうなら相手も当然同じ年、誤差があったとしても前後1年くらい――やはり相手も高校生と見ていいだろう。工藤新一と同じ高校生の探偵で? 彼の事をよく話していて? かわいい幼馴染がいて、かつ関係がじれったい所から中々進みそうにない爆発しろ。……ストーリー関係者か。

 となると、やはりもうあの子で間違いないだろう。名前も一致するし。

 

「ひょっとして、君の幼馴染って服部平次君?」

「! やっぱり、平次の事知っとるん?」

「まぁね。直接会ったことはないけど……コナン君から服部君の話を聞いていたから」

「コナン君?」

「……あぁ、服部君は話してないのかな? 二つの事件で服部君が相手をしていた子供だよ。あの子とは仲よくてね」

 

 一回工藤に戻ったっていう時は知らんけど、コナンとの遭遇はまだなし。……服部平次の名前が出たならストーリー関係者は確定、ただ今回は本編前にフライングで会ったと見てよし。となると、やっぱり今この時は描かれてない、あるいは存在しない場面と見るが吉。うかつな展開予想は避けた方がいいだろう。こういう時にいつも頼りにしている越水は隠し事をしていて、全部俺には話してくれないだろうし。――よし。

 

「――そういや、服部君は今どこにいるの? 」

 

 ブレイン役の確保から始めよう。他力本願と笑わば笑え。保険は掛けられるんなら掛けておくに越したことはない。

 

「平次なら、今警察に行っとるわ。せっかく夏休みの旅行にきたのに事件起こって首突っ込んで――ホンマ腹立つわ、平次の奴」

 

 ごめんなさい、巻き込む気満々なんです。恨むんなら、俺に隠れてこそこそ何かしてる越水を恨んで――あ、止めとこ。後でボコられる。

 

「あはは。旅行は何日の予定なの?」

「ん? 愛媛には今日来たばっかなんよ。平次の夏の大会が終わった後に、ゆっくり四国回ろう言うてて……そうやね、あと四泊くらいで他にも色んな所を回ろうと思うとるんや」 

「へぇ、それじゃあ結構ゆっくりじゃないか。まだ彼氏君と過ごせる時間は十分にあるって」

 

 その時間、こっちにもらうけどな!

 

「だ、だから彼氏やないって!!」

 

 照れて必死に否定する和葉ちゃんを尻目に、越水には少し遅れるとメールを打っておいた。もう少し遅くなっても大丈夫だろう。怒られたら? 怒る元気があるなら安心出来るわ。

 向こうが隠れているように、俺も隠れてこそこそ動く事になるが……親友が『触ってほしいけど触ってほしくない』という何かがあるなら、近づける所まで近づくのが俺のスタンスだっていうのは向こうも知っているはずだ。

 

 

―― 一応、もう一個の保険もあるし……

 

 

 サマージャケットの胸ポケットに差している『サングラス』を無意識に手でいじりながら、俺は和葉ちゃんとの会話を楽しんでいた。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「あー、すまん和葉! えらい遅なってしもた!」

 

 いくらなんでも遅くなりすぎたと、服部平次は慌てて県警近くのファミレスに駆け込んで入った。

 

(むちゃくちゃ怒っとるやろうなぁ……。こらきっついで……)

 

 県警本部で事件の事を話すついでに色々な事を聞いていたら、気が付いた時には予想した時間を2時間も過ぎてしまっていた。

 席を見回すと、目当ての姿がそこにいた。予想通り一人で待っているが、

 

(あれ? 思うた程怒っておらんな……)

 

 不機嫌なのは間違いないが、正直店に入った瞬間に怒鳴りつけられる覚悟はしていた服部だったが、とうの和葉はむすーっとはしているが、激怒している様には見えなかった。

 

「か、和葉! 本っっっ当にすまんかった!」

 

 とはいえ、怒っていることには変わりなく、平謝りするしかない事を服部は分かっていた。席にはつかず、頭を下げていると、和葉は「はぁーーーーーっ」と深いため息をついて、

 

「わかっとるわかっとる、事件の話色々聞いとったら、気になる事がぎょーさん増えて色々話して、ほんで遅なったんやろ? まぁ、ちゃんと慌てて謝ったし? ええ、ええ、アタシも理解のある方やし、もう許したるわ」

「………………」

「……なんやのん? 人の顔じーっと見て」

「和葉、お前……なんや悪いもんでも食うたんか?」

 

 

――かっちぃぃぃぃ……ん

 

 

「こん……のぉ……。せっかく人が下手に出たっちゅーのに……」

 

(あ、しもたっ!)

 

 口にしたのが不味かったと服部が気が付いた時にはもう遅かった。

 和葉はプルプル震えながら『ゆらぁ……り』と立ち上がり、その拳を握りしめて―― 一歩ずつ、服部の方に足を進め、

 

「ちょ、ちょー待て和葉! おお、俺が悪かった! つ、つい口が滑ってやな――」

「口が、滑ったやとぉ…………っ」

「あ、ちょ……ちが―――」

 

 

 

 

 

「こんっの……あほんだらぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんでな、その浅見っちゅー人がずっと話を聞いてくれてなっ!」

「……そら、よかったのぅ……」

 

 赤く腫れた頬を押さえながら、目の前で料理を凄い勢いでパクつきながら話す和葉の姿を服部はジトっとした目で眺めている。非があるのは自分だと服部も理解はしているが……

 

「って、浅見? おい、和葉。その人ひょっとして浅見 透か?」

「あ、そやそや! 言うの忘れとった、その人、アンタが電話でこそこそ話しよる工藤君の相方やって!」

「こそこそて……なんや、棘があるのぅ」

 

 ぶーたれながらも服部は、以前友人の江戸川コナン――工藤新一が話していた助手について思い出していた。工藤曰く、自分の推理を、持ち前の身体能力、観察力、なにより事務所を設立してから広げている人脈を駆使して手助けしてくれる、優秀な助手。

 

(うらやましい話やのぅ……)

 

 高校生探偵である自分は、いざ事件に関わる時も信用が足りず、知り合いの刑事の協力を得ないと何もできない時がある。それに対して工藤は、名探偵の毛利小五郎について事件に関われる上に、いまや社会的地位がある男が様々な手法でバックアップしてくれる。

 

(ほんまに恵まれとるやないか、工藤。噂が本当なら鈴木財閥もバックについとるっちゅーし……)

 

 まぁ、強いて言うならホームズではなくワトソンの方が、世間では名探偵と称されているのが少々皮肉だが……。

 

「ほんで? その浅見っていう人、なんか用やったんか?」

「うん。でも、ウチやなくて平次にって話やったで?」

「? 俺に?」

「うん……なんでも、手伝ってほしい事件があるって……あ、そうや、これを平次に渡してくれって!」

 

 和葉が自分の鞄から取り出したのは、数枚のコピー用紙をホチキスで止めた物だった。言うまでもなく、浅見が図書館で作った簡単な書類である。

 裏には浅見透の名前と、携帯電話の番号、そしてメールアドレスが書かれている。

 服部は表情を引き締めて、その書類に目を通す。

 

 

「ふーん……なるほどなぁ。ラベンダー屋敷の密室殺人……っちゅーわけか」

 

 

 

 

 

 

 

 




越「で、なんで帰りが遅くなったの?」
浅「いえ、あの……ですね。たまたま共通の知り合いがいる子と会いまして」
越「…………年下の女の子?」
浅「なんでわかるんですか」


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


関西弁は難しいので、自分で想像して違和感が出来るだけないように書いています。
もしよっぽど酷い物などがあったらコメかメッセージでお願いいたしますw

ようやく服部と、原作より早い和葉を出せて一安心です。
この話を終えたら、あとはキッド(ある意味出てるけど)を出してから日記編でスキップして14番目に入ろうと思っています。

それと、感想欄でも書いた事ですが、基本劇場版が順番にやるつもりではありますが、アニメ版は意図的に順序を変えたりすることがあります。ご了承ください。

え、そんなことしたら違和感が強い? サザエさん時空のせいだから仕方ない

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。