前話で出た『和田進一』について追加コラム
〇『謎解きは喫茶ポアロにて』
アニメだと885話~886話、コミックス92、93巻
喫茶ポアロを舞台にした事件にコナン、安室、そして服部が解決した事件にて登場した和製ホームズ豆知識
コラの元ネタになった回と言えばピンと来る人もいるでしょう
考えてみたらこの話も結構前なため、知らない人や忘れている人もそれなりにいるだろうと追加。
カルタのあの子がある意味で事件に関わった初の事件でもあります。
……初登場はいつだったっけ……鵺?
自分が安室透として活動を始めた時、浅見透という男は偶然出会ったただの大学生だった。
自分が
組織としても、幹部が殺害したという工藤新一に関わりのある人間が動き出したことに興味はあったようだが、しょせん個人――そう、当時はまだ個人だったな――に出来る事はタカがしれていると、簡単な調査をした後に放置が決定されていた。
浅見透と言う男と工藤新一の間の接点が見当たらなかった事もそれを手伝った。
連続爆弾事件を解決に導いたのは確かだが、突如として姿を消し、死亡説すら流れ始めた有名高校生探偵の名前を騙っただけの、少々有能な目立ちたがりの類だろうと。
その認識が早くも覆されたのは、直接顔を合わせたその日のうちだった。
スコーピオン――今も逃亡し続けている盗賊との一戦。
あの時は大して気にしていなかったが、一目見ただけであのインペリアル・イースターエッグが不完全な代物だと見抜いた観察眼。
まだ発砲すらされていなかったのに、わずかな音を頼りに賊が持っていた拳銃に鍵を投げつけ弾き飛ばしたあの一連の攻防。
今にして思えば、あの頃から
だからこそか。
アイツが鈴木園子に引っ張られて行った美容院から帰った時に、本当にアイツが帰ってきた気がしたのは。
アイツの発言の一つ一つ、行動の一つ一つがアイツとダブって仕方ないのは。
だから、仕方ない。
「透、千葉県警から回されていた資料と一致している。例の連続宝石強盗団に奪われたものが全部ここに集まっている」
「みたいだねぇ。……県警に連絡したらサイレン付けて来ちゃうかな?」
「通報時に一言入れておけばいい。確か、千葉県警には君の開く会合に参加している刑事がいただろう?」
「あ、そういえばかずりさんの携帯番号交換してたわって言いたいけど、なんか人の気配集まって来てない?」
「……のようだな?」
明確に上司と部下になって、その上自分は二重の意味でスパイで、
「逃げてから通報する?」
「そしたらこの盗品の山は闇市場に流れてバラバラに、奴らは金を得て次の仕事のために地下へ潜伏」
「面倒だねぇ」
「あぁ、面倒だ」
「……」
「……」
それでも透と共に事件を追いかけ、危機を乗り越えていくこの日々が――
「よし、やっちゃおう。安室さん、全員拘束。一人も逃がさないように」
「任せろ」
――どうしようもなく楽しいのは……仕方ないだろう?
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
〇8月4日
書類仕事と会議をこなしたら通常業務だ。
最近じゃあ昔ほど……いや実質数か月前……この場合の実質ってどっちだ?
いやまぁいい、昔ほどではなくなったけど、現場に出る事もやはりある。
昨日は以前から追っていた宝石強盗団を捕捉したと、新設したばかりの千葉支部から報告があったので安室さんと急行、その後なんやかんやあって全員拘束してから駆け付けた
どうも関東のみならず全国的に働いていたようで、宝石の数も膨大なものになっていた。
いやぁ、もう……疲れた。
強盗っていうか、もうただの武装集団以外の何者でもなかったからなぁ。
ライフルで弾幕張られて頭抑えられる程度なら慣れたもんだけど、軽トラにごっつい機関銃固定して斉射するんじゃない。
ここ日本だよ? どこの紛争地域に来たかと思ったわ。
いやぁ、結果論だけど先手打っておいてよかった。
下手に警察の到着待ってたら殉職者何人か出す所だった。
到着した警官隊も、事態はとっくに終わっているっていうのにビクビク怯えていたし、大丈夫かね。
顔見知りの
〇8月6日
元太の奴マジで釣りの才能あるかもしれん。
ようやく実行できた山キャンプで、色々考えた結果川のある所でフライフィッシングを子供達にやらせてみたのだが、元太の奴5匹も釣り上げやがった。
食べる事に関しては集中力もあるのか、俺の想像以上にジッとチャンスを待ちながらあれこれ試していたし、魚が釣れた時はすごく嬉しそうにしていた。
本当に嬉しそうにしているし、自分で釣った魚をみんなで食べるって事が嬉しかったのか、魚の捌き方とかも熱心に練習していた。
機会があったらサバとかアジを多めに買って、元太に練習させてみるか。無駄にしないようにそれを使ったメニュー、桜子ちゃんと考えておこう。
楓? アイツはほら、野生児だし……。とうの昔に俺より上手かったし料理の腕じゃ負けてないし。
キャンプに着いてきていた香田さんも、いい写真が撮れたと喜んでいた。
……子供達をダシにしたようなのは少し罪悪感はあるが、それでも光彦や歩美達も楽しめていたし、子供に料理を教えてた桜子ちゃんや七槻、ふなちも満足していたし、まぁ良しとしよう。
コナンは……その……釣れない日なんて珍しくないさ。
……今度釣りやすい所に誘ってみるか。
〇8月8日
キャンプの件を、浅見透の休日と言う題材で記事にした所売上部数が伸びたと香田さんが喜んでいる。
それはいいんだが、俺にその場で調達する料理記事の仕事回すのは間違ってないかい?
いいの? 俺にサバイバルの記事書かせて? 七槻やふなちがドン引いたあの企画やっちゃっていいの?
一応あの時の、遠野さんとキャメルさんに修正される前の時に作ろうとした奴のレシピを香田さんに送っておいた。
俺がズレているというのは理解したから、アレで俺に変人のイメージが付かないか心配だけど、七槻と志保に聞いたところこれくらいで俺のイメージがダウンすることはないらしい。
……ならいっか。
〇8月12日
やっと合衆国が折れた。これで人材集めにGOサインが出せる。
この際だから色んな所に声をかけるか。
主に泥棒の先生とか師匠とか先生とかのせいで人材そのものには困っていない。
困っているのはその人材をまとめられる人材がいないことだ、どいつもこいつも癖の強い奴ばっか送り込みやがって。
そういえば、日売テレビが俺を怜奈さんとセットでテレビ番組をやりたいとか言ってきているそうな。
熱愛報道自体はあの手この手を使って下火にしたが、仲の良い友人同士であるというのはそのまんま残っている。
そこに目を付けたプロデューサーがいて、企画会議に出たらしい。
別にテレビに出るのはもう今更だけど、番組持つのは無理だろうなぁ。
事件で緊急出動したり怪我してたり入院してたりするだろうし。
……季節の特番とかなら受けてもいいか?
1日だけとかなら。
〇8月15日
また随分と変わった依頼を受けた。
簡単に言うと遺言絡みだ。
伊勢川剛三、伝説の相場師と呼ばれた男――故人からの依頼だ。
自分が事務所の運営を始めたばかりの頃に一度会ったことがあるけど、まさか昨年に亡くなっていたとは思わんかった。
依頼……というか頼みというのは、これの遺言に関わる人物。『時計』という偽名としても微妙すぎる名前の男から、少年探偵団を貸してくれという事だった。
まぁ、正確には俺の秘蔵っ子という事で知られているコナンと志保なんだろう。
コナンもキッド絡みで人気だが、志保も地味に人気だからな。
この間も小さい芸能プロダクションがこっそり志保を付けていた。なんとか大人の目がない所でスカウトを掛けようとしていたんだろうが、残念そいつは中身は大人だ。……いや、高校生ならまだ子供か?
……あ、それで思い出した。クリス・ヴィンヤードがウチの事務所に隠れ住んでる事が一部の人間に嗅ぎ付けられたっぽい。
どうしたもんかな……。
香田さんと相談してみるか。
〇8月16日
相談した結果、とにかく隠せということだった。
有名女優が記憶喪失なんて格好のスキャンダルだし、まず間違いなくまた滅茶苦茶な数のメディアが群がるだろうと。
ならば、せめて記憶が戻るまでなんとか匿って、後で事実を公表した方がいいということだ。
一番そういうのに食いつきたい香田さんが協力を約束してくれたのは本当にありがたい、マジで助かる。
それに宍戸さんやフォードさんと言った、アクアクリスタル事件で知り合った面々も噂のもみ消しに協力してくれると約束してくれた。
いやもう、本当に助かる。
あぁ、そうだ。
少年探偵団が関わった件だが、アイツら無事に用意されていた謎を解いたらしい。
おかげで伊勢川剛三の遺産の一部が手に入ったうえに、あの相場師の秘書を務めていた男も傘下に入った。
少年探偵団には、明日辺り美味いもんでも食わせてやろう。
〇8月20日
クリスの噂を垂れ流していた連中が判明した。
色々と目撃情報が上がっていたが、それを流していたのは全員旅行で日本に来ていた外国人らしい。
怜奈さんに確認してもらって完全に判定。
またお前らかFBI。
相変わらずなんか鬱陶しい事をさせるとピカイチだなお前ら。
念のためにこっちの情報網でクリス・ヴィンヤードの目撃情報をアチコチで拡散させた。
日本含めアメリカやイギリスで目撃情報が出まくれば、情報全部が曖昧になるだろう。
後はクリスに付けホクロみたいな分かりやすい特徴付けてもらえば、写真が出た所でそれが逆に物証になる。
加工してでも流そうとすれば、その加工の痕跡を逆に利用してやろう。
FBIめ、情報戦でこっちに勝てると思うなよ。
せめて鈴木財閥くらい金と人員かけてもらおうか!
〇8月22日
赤井さんと相談してみた所、やはりFBI内部のスパイを排除しない事には手が打てないという意見に落ち着いた。
そして動かすためには、やはり彼らの上司を内密に動かすしかない。
というわけで、一度沖矢さんは出張の名目でアメリカに戻ることになった。
出張の内容はアメリカで訓練中の山猫候補たちの視察と試験。
その間に、赤井秀一として上司と接触、事態を説明して来日してもらう。
組織の目があるため危険だと思ったんだけど、明美さんも同行することになった。
赤井さんだけじゃなく、一緒に死んだ明美さんもいれば納得してもらう手間が多少は省けるだろうという事だ。
……となると、その間に俺がFBIの目を引き付ける必要があるか。
怜奈さんも派手に動けばCIA絡みの件がバレかねんし……まぁ、何とかしてみよう。
〇8月25日
面倒くさい仕事を後回しにしたいのはよく分かる。
やることがハッキリと決まっていないから手を付けづらいのもよく分かる。
だがお前ら、よりにもよって自由研究を夏休み最後の週まで残すんじゃない!
志保も楓も終わらせていたし大丈夫かと思ってたら、あの3人組はまだだった。
元太は読書感想文もだ……元太が興味を持てるそれっぽい本探すのに苦労した……。
おかげで今日は三人それぞれに合いそうな市販の子供向け実験キットやら模造紙やらの買い出しに実験やその記録の付き添いで忙しかった。
途中で桜子ちゃんが監督役を代わってくれて助かった。
楓は紅葉屋敷に帰ってたし、志保も出発前に明美さんの所で過ごしているしで人がいなかったから……。七槻やふなちは札幌方面に出張中。
コナンは小五郎さんや蘭ちゃんとどっかに旅行だし。
三人のご両親も全員用事でいなかったからなぁ。
正直、事件フラグじゃないかとビクビクしていたが、まぁなんとかなった。
今はマリーさんが監督しながら事務所で下書きしているから、明日には清書してギリ完成か。
疲れた。ホント疲れた……。
『P.S.』
亀倉さんから報告が来たが、元太の奴料理にハマったらしく、亀倉さんに魚の美味しい食べ方色々聞いているそうだ。
……来年の今年のアイツの自由研究、近隣の郷土料理とかのまとめでいいんじゃないかな。
そんときゃ俺も車だすし、あれなら取材できそうなところ探しておくか。
とりあえず、手が空いていたら元太だけじゃなく、興味を持った子供達に色々教えてくれるように頭下げておこう。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「
「おう」
「新人候補の選定っていうから透兄が一通りボコってくるかと思ってたのに」
「真純貴様」
「それに恩田さんは美人の勧誘だろう? 透兄なら絶対顔を見に行くかなって」
「……まぁ、そっちは否定しないけど、それはそれとして俺のイメージそんなんか」
「そんなんだよ」
「……そんなんかぁ」
夏休み最後の一日。アメリカ組を見送った後例によって仕事に追われていた俺は、真純とメアリーの所で八月最後の一日を過ごしていた。
今は簡単な昼食作りの真っ最中で、二人揃ってキッチンに並んでいる。
うん、よし、たまに教えていただけあって真純も仕込みが様になってきたな。
「にしても透兄、ウチで飲むの好きだよねぇ」
「……防犯上家をデカくしてカゲやらを入れなきゃならんかったとはいえ、やっぱ俺はこれくらいの普通の家の方が落ち着くんだよ……それかアパートの一室とか」
「遊びにはお金掛けるけど、それ以外は貧乏くさいよねぇ、透兄は」
「家はある程度くつろげる空間と寝る場所さえあればそれで十分だと思うんだけどなぁ……」
いや本当に。
今は来客とかその来客の重要度とかが跳ね上がったせいで警備その他諸々のために拡張せざるを得なくなっていたが……。
いやでもよかった。隣の家がちょうど同時に売りに出たおかげで引っ越すことなく広げられた……。
一応、記憶にないとはいえ本当の家族と住んだ家だしな。
変えざるを得ない所もあったけど、名残くらいは残したかった。
「あ、今更だけど真純、来月からちょっと真君とペア組んでくれないか?」
「京極君と? あぁ、別に構わないけどどうしたんだ?」
「……現場を経験させてくれって朋子さんから依頼が来た」
俺の答えに真純は少し首を傾げ、だがすぐに納得したのか作業を続ける。
「あぁ、印象操作か」
「そ、真君の教育はあくまで事務所の新人教育、鈴木の次代ではない……っていう印象操作かな?」
「園子君のママもしつこいねぇ。悪あがきしてでも透兄が欲しいんだ」
「それはそうだろう」
そうしていたら、メアリーが降りてきていた。
俺やジョドーに提出する報告書が終わったんだろうか。
「資金源として、人脈の要として、貴方もう大人気よ? 言ったでしょう?」
「……この間偶然を装ってきたあのボディタッチの多かった金髪美人は……」
「SISのそういう要員だ。よく引っかからなかったな」
「いやな気配がしたんで……あぁ、やっぱ当たってたのか。めっちゃ好みだったのに夢もへったくれもねぇ」
がっくりだよ残念だよでもそうじゃないかと思ってたんだ!
ちくしょう! 我が人生に幸あれ!
「最近欲濡れた変な女にばっかりアプローチかけられて……なんか萎え――笑ってんじゃねぇぞメアリー貴様ぁっ!」
こ、この女本気で爆笑してやがる!!
見ろ、真純が目をまんまるくして驚いてるだろうが!
「透兄、そんなに最近……アレなの?」
「アレなんだよ。ちょっと人間不信に陥りそう……」
「そんなに?」
「……とりあえず金持ちの令嬢は当面お断りしたい。……いや幸さんみたいにいい人もいるんだけどさ」
前々から思ってたけど園子ちゃんは上澄み中の上澄みなんだよなぁ。
まともというか、調子に乗りやすい所と顔がいい男に弱い所以外は感性がキチンとしているというか。
金とか目当てで適当な誉め言葉しか吐かない連中の万倍イイ女だわ。
口にしたら朋子さんからまた別方向でアプローチ掛けられそうだから絶対に言わないけど。
「長門財閥の取り込みがほぼ決定した辺りで、貴方はもう鈴木に並ぶプレイヤーになったもの。今の内に慣れておきなさい」
「無理」
「即答しない。……というか、貴方自分を殺しに来る女のほうがいいの?」
当たり前だろうが!
「金目当てとかの場合もこれから先あるんだろうけど、俺を殺しに来るのってこう……自分の全てをかけて挑んでくる人間が多いからさ」
「…………」
「……透兄」
「ん?」
「今のが理由?」
「おう。だって、ほら……愛を感じるだろう?」
二人とも頭抱えてため息吐かない。
というか、仕草とか雰囲気とかたまに似てる時あるよね、二人とも。
たまに姉妹に見えるわ。
「ん、じゃがいも煮えたか。真純、耐火皿とオーブンの用意よろしくー」
「はいはい」
「メアリーは……おい堂々とソファに座って新聞広げるんじゃない。厨房に立たない昭和のお父さんか貴様」
おいこら。
小さく笑ってるんじゃないよ全く。
ドリンクグラスくらい持って行ってってば、ねぇ。
『不思議な天使の館』
File403,404(アニメオリジナル)
コナンワールドの美少女ランキングなどでたまに出てくる幸薄系美少女キャラ、松中ユリコが登場するアニオリストーリー。
この子は凄いです。
なんたってほぼウナギ一筋になっている元太が、以前好きそうな描写があった歩美を前にして浮かれるくらいの美少女っぷり。むくれる歩美ちゃんに笑ってしまった。
『奇抜な館の大冒険』や『もののけ倉でお宝バトル』、『くらやみ塔の秘宝』のように、大掛かりな仕掛けのある施設が舞台となる事件は大好物なのですが、その中でも割と好きなアニオリ。
個人的に、人間関係に関する推理を微妙に外すコナンというかかつて小五郎をサポートして解決した『見えない容疑者』事件を連想させるので好きなエピソードです