平成のワトソンによる受難の記録   作:rikka

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昔集めていたVHSを引っ張り出して当時のビデオを見返すと結構楽しいですね。
オリジナル回とかは完全に忘れていて、当時を思い出しながらすっげー楽しめました!



……あれ、なんで泣いてるんだろう



探偵事務所設立―
014:浅見探偵事務所、満を持してオープン!!(強制)


 作業用のビジネスデスクがそこそこの数設置されている。応接用のスペースもキチンとしており、さらに個室もいくつかあり、おまけにトイレはどこぞの施設のように男女に別れた上にいくつか数があって、その全てがセンサー式。なぜかバスルームまで設置されているという――

 

「……事務所ってなんだっけ……」

 

 少なくとも、そのまま宿泊施設として使える様な場所ではない。

 事務所だとしても、こんな高そうな調度品がごろごろ転がっている場所って大丈夫なん?

 デスクとか椅子もいいけど、来客用のソファとかパッと見で超高そうなんだけど……。 いや、そもそも実質『ビル』の2階と3階をほぼ丸ごと貸すのは間違っていると思う。2階とかさらに広くて使いづらいわ。これもう完全なテナントじゃん、どう使えって言うのさ。一応3階の方が事務所って事になってるけど……。え、今月まではいいけどそれからはテナント料取る? 一月もない時間で探偵事務所を、こんな一等地でやっていけるほど流行らせろとかなんて無理ゲー?

 

「所長。まだ少ないですけど、いくつか依頼が入っています」

 

 そして安室さんやい。年下にそんな言葉使わないで、俺泣きそうになるから……おっと涙が。

 安室さんからFAXや手紙の束を受け取り、片っぱしから目を通していく。浮気調査にストーカーの調査、結婚相手の素行調査などなど――

 

「……時間制限がある結婚相手の素行調査が一つあるから……これは安室さん、お願いします。ストーカーの調査は俺と越水で行こう。残りは……緊急性がありそうなものは毛利探偵事務所に回すか。ふなち、一応事務所は閉めておくけどFAXとか郵便物の整理、毛利探偵事務所との仕事の調整をお願い。あぁ、それと――」

 

 事務所のドアをそっと開けると、そこには色んな所――白鳥刑事に松本警視正や毛利探偵事務所、黒川医院に水無さん、それと鈴木財閥関係の所から送られてきた花が所狭しと並べられている。あれ? こんな花あったっけ……From Chris Vineyard……クリス=ヴィンヤード……誰だ? 聞き覚えはあるけど……。

 

「まぁ……これ、どうにか上手い事飾っておいて」

「……地味に難題ですわね」

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

6月19日

 

 この一週間、日記書く暇が全然なかった。大学終わったら事務所に行って調査に入るか、依頼主の所に行くか……。この間にバイクの免許をとる予定だったけどほとんど教習所に行けてねぇ。おのれあの狸ジジィ! 今の所は昼は安室さんに事務所を任せてるけど、人が足りねぇ……。

 ちくしょう、なんでこんな事になったんだ。毛利探偵事務所に行きゃあ毛利探偵から『よぅ浅見~、お前も偉くなったもんだなぁ。ん~~!?』という有り難くないお言葉を頂戴し、頭を下げる蘭さんの姿を見ることになる。なんだろう、俺、何か悪い事したかなぁ、江戸川からは純粋に心配されてガチ泣きしそうになった……。

 

 ここしばらくは水無さん経由である女優の警護依頼に専念していた。星野輝美という女優で、元アイドルグループのアースレディース。安室さんと交代で張り付いて――途中、安室さんはモデルのスカウト受けていた。イケメン爆発しろ――まぁ、どうにかストーカーは無事に捕獲。事務所からの依頼料に加えて、星野さんからポケットマネーでボーナスいただいた。ありがたやありがたや。

 

 

 星野さんは工藤新一のファンだったらしく、江戸川から色々聞いていた話をそのまましたら結構楽しんでもらえ――それに我慢できなくなったストーカーが飛びかかって来たのを取り押さえて終わり。千葉刑事に来てもらって逮捕してもらった。いや、本当に神経使う仕事だったわー。工藤新一の助手という形で名前も覚えてもらったらしく、これから先なにかあったらウチの事務所を頼ってくれるらしい。

 

 ……人手がまじで足りねぇ。ある意味目的にはかなり近づいているが、やることが多すぎて何から手をつけていいか分かんねぇ……人手ぇぇぇぇ。

 

 

 

 

6月20日

 

 ふなちがちょっと――いや、相当グロッキーだ。そりゃ事務仕事溜まってるもんなー。今いる人員全員で出来るだけやってるけど、さすがに多い。調査依頼もあるから効率も悪いし……あれ、そういやしっかり休んだ日ってなくない? やべぇ、いくらなんでもこれはブラックだわぁ……。

 

 鈴木財閥からは税理関係の人員は借りているが、手を出しすぎないように相談役から言われているらしいから、多分人手は貸してくれないだろう。

 ……募集をかけるか。というか、紹介所みたいなやつないかなぁ。個人情報が多いから信頼できる人間がいいんだけど……。

 今日はまさかの殺人事件。またかよ……。江戸川いないのになんで起きるかなぁ。やっぱ俺か?

 俺と安室さんで、浮気調査の結果報告に行ったら、依頼主の旦那さんが殺害されていた。幸い、複雑なトリックではなく、俺と安室さんだけでどうにか解決できた。佐藤刑事と高木刑事が到着した時には、犯人である奥さんの偽装工作を安室さんが暴き、そのまま警察に引き渡すだけで終わった。

 安室さんの頭の回転も相当なものだ。正直、江戸川並みだと思ったわ。――けど、それならなんで俺みたいな出来そこないの探偵に協力してくれるんだろうか?

 ……そんな事言ってる場合じゃねぇ、優秀な人がいてくれるならラッキーだ。愛想尽かされないように頑張ろう。

 

 

 

 

6月23日

 

 人手が来てくれた! 事務員というか、どちらかと言えば使用人だが。

 下笠穂奈美さんと美奈穂さん。双子の姉妹で、俺の一つ上だ。

 この間募集の広告を出してみて見つけた人だ。一応、受けた依頼の報酬自体はすでに大分多かったから――テレビ局関係の仕事の払いがよかったというのがあるが――早すぎるが思い切ってやってみた所、何人かの応募が来ていた。その中で、来客対応もこなせる人という事で二人を選んだ。

 で、今日が出勤だったんだが――うん、服装については何も言わなかったけど……なんでメイド服? や、すっげぇ優秀な二人だから全然いいけど。何かある度に二人同時にステレオみたいにしゃべるのにビビってしまう。

 そして、遊びに来た江戸川から微妙な視線を頂いた。違う、違うんだ江戸川……俺の趣味じゃないんだってば……。

 

 

 

 

6月24日

 

 双子すげぇ……。接客出来るってのもでかいけど事務能力高ぇ……。空いた時間で掃除もやって料理もやってくれている。確かにキッチンはあったけど使う事はないと思ってたのに、講義が終わって事務所に入ればいつも飯がある。ふなちは双子を完全に尊敬の目で見てる。いやそりゃそうだわ、安室さんとも話してたけどあの二人絶対手放さねぇ。派遣会社抜けてもらってから再雇用とか真面目に考えている。給料もっと出すよ、いやまじで。

 

 

 

 

7月5日

 

 月末乗り越えた! 色々面倒くさい書類仕事を全部終わらせ、税理の人に提出して……おぉう、まじで疲れた。

 儲けもかなりあって、各人員の給料と経費分差っぴいても相当ある。もうちょい人増やしても余裕――というほどでもないが、まぁ大丈夫っぽい。や、あくまでこの調子が続けばの話だけどさ。

 そういえば、今日訪ねてきたお客さんから聞いた話だが、例の中止になったロマノフ展は、機会をみて大阪でやるらしい。浦思青蘭さんというロマノフ王朝の研究家だそうだ。どうやら、あのイースターエッグを見せてほしいと鈴木財閥に頼んだんだが断られ、実際に目にしたという俺から話を聞きたかったらしい。

 ロマノフ王朝の研究をしていて、その論文のために是非とも見たかったとか……。

 ぶっちゃけすっげー好みだわ。今度食事の約束を取り付けたし、良い事あるといいなぁ。

 今日も夜は水無さんと食事。おぉ、俺今すっげープレイボーイっぽくね!?

 

 あー、でもアレだ。今日事務所に行く途中に、すっごい綺麗な女子高生から「貴方、なんで生きてるの?」とか聞かれた。なんでなんですかねぇ(哲学)

 なんか、男連中の取り巻きを従えて歩いてる、漫画でしか見たことない様な子だった。「アカコ様」って呼ばれてたけど……なんだったんだ、あれ? 高校生探偵ならぬ高校生占い師? むちゃくちゃ美人だったけど、なんか面倒くさそうなオーラが出てた。

 しかし、顔を見られるや否やあんな質問されるとは思ってなかった。俺、そんなに死にそうな顔してたのか。

 

 

 

 

7月10日

 

 また事件に巻き込まれてた。事の始まりは、阿笠博士に頼んでいた物を受け取りに行った時だ。

 これから先、緊急事態も増えるだろうという予想の元に、阿笠博士に特殊なサバイバルキットと、江戸川と行動する時用に、例の少年探偵団のバッジと同じ機能の物を作ってもらった。阿笠博士、本当にありがとうございました。代金こそもう振り込みましたが、今度また何か美味い物を持っていきます。

 

 で、江戸川と将棋の対局をしていたら、阿笠博士が江戸川に伊豆のツアーを勧めていた。阿笠博士が友人とその孫娘さんの三人で行く予定だったが、その孫娘さんが熱を出したためにキャンセル。代わりに毛利さん達3人で行こうという話らしい。

 ミステリーツアーはどうでもいいが、伊豆というのは素晴らしい案だとこの時俺は思ったんだ。

 最近休みらしい休みはなかったし、ちょうどいいと事務所のメンバー全員で軽く伊豆のホテルで遊んで行こうと――今、心から思う事がある。どうして俺はこの時、江戸川達のホテルや日程を確認してなかったんだろう。

 

 

 調査依頼も一区切りついていた事だし、といざ予約を取って『伊豆プリンセスホテル』という豪華なホテルに。運よく部屋がギリギリ空いてて――今思ったけどこれフラグだったんじゃね?

 運転は下笠姉妹が車を二台出してくれるというのでお言葉に甘えて伊豆のビーチへ!

 

 初日はすっごい楽しかった。到着してからプールで泳いだり、美味い飯食ったり酒呑んだり。そうだよ、あれこそ休日だよ。やばい、ちょっと無理して良かった。さすがに毎月は無理だろうけど、今度また企画しよう。今度こそ江戸川と予定をずらしてな!

 んで、次の日だ。嫌な予感はしてたんだよ。プールの方ですごい水しぶきが上がった音がしたので見に行ったら、見覚えのある姿の小さな子供がずぶ濡れのまま走り去っていく姿が見えた。

 そっかー、同じ伊豆に行くって話だったもんなー。日程もホテルも俺確認してなかったしなー。ちくせう。

 まぁ、常にフラグが立つ訳じゃないだろうって思いながら、念のために事務所の面子全員で行動してたら――起きたわけです。悲鳴が。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 悲鳴を聞きつけて3階の屋外レストランに駆け付けた時には、俺たちも参加していたツアーの客の一人、江原時男が銅像の剣に串刺しになっていた――父さんの小説の登場人物――闇の男爵、ナイトバロンの格好をして。俺は蘭や刑事の目を盗んで、下ろされて横になった遺体を調べている。

 

「なるほど、客の中に紛れている主催者を突きとめる謎解きツアーで、その主催者がナイトバロン……。では、江原さんが主催者ということですか!?」

「さ、さぁ……よく分かりませんけど」

 

 後ろでは蘭が、駆け付けた刑事――埼玉から静岡県警に異動してきた横溝刑事に事情を説明している。

 どこかで飲んでるだろうおっちゃんも、あの悲鳴を聞いてりゃ駆けつけてくるだろう。その前に出来るだけ調べておかなきゃいけない。こういう時に浅見さんがいると楽でいいんだが……っ。

 

(これは……ベルトも、ネクタイの結び方まで……!?)

 

 おかしい。おかしいぞ、この死体――!

 

「う~む、これは……自殺か、事故死か、それとも……」

 

 

 

――殺人ですよ、刑事さん。

 

 

 

(そう、これは殺人……て、え?)

 

「な、誰だ! 君たちは!!」

 

 自分の内心と重なるように、聞き慣れない男の声がした。いや、でもどっかで聞いた様な――

 思わずそっちの方を向いてみると、立ち入り禁止のテープギリギリの所に6人の男女が立っていた。――って、おい!

 

「そのネクタイとベルトを見てください。おかしいとは思いませんか?」

「え、えぇと……」

 

 褐色肌の男が、横溝刑事にそう言うと、横溝刑事は素直に遺体を調べ出す。

 

「ん~? ……これは! 逆だ! 結び方が逆になっている!」

「ベルトもだよ、刑事さん」

 

 横溝刑事が気付いた事を叫んだ後、今度はセミロングの女性が口を挟む。慌ててそっちも調べ、やはりベルトも締め方が逆になっている事を確認した横溝刑事は難しい顔で死体を見つめている。

 

「なるほど――つまり、その遺体が着ているその妙な衣装は、他の誰かが着せた物である可能性が高いという訳ですわね?」

「あ、貴方達は一体……?」

 

 締めくくるようにそう言ったツインテールの女は、セミロングの人と同じで良く知っている顔だ。そうか、ここに来ていたのか――

 

 

「「申し訳ございません。御挨拶が遅れました」」

 

 双子のメイドが、まったく同じタイミングで頭を下げる。そして、ここ最近でもっとも付き合いの深い男が面倒くさそうなため息と共に前に出る。

 

「浅見探偵事務所、代表の……浅見 透です。よろしければここに来ているはずの毛利探偵と共に、事件に協力をしたいのですが――よろしいでしょうか?」

 

 横溝刑事の顔を真っ直ぐ見てそう言った少し後に、こっそりと俺に目配せをする。

 

 

 

 

―― 浅見さん、久々に一緒に動けるな。

 

 

 

 

―― …………あぁ、そうだな

 




コ:一緒に動けるな!(喜)

浅:あぁ、そうだな!(泣)


登場キャラ紹介を入れておきますw
興味を持たれた方はぜひググったりして調べてみてくださいw


○星野輝美(ほしの てるみ)
File249-250 アイドル達の秘密(前後編)(アニメ)
32巻File5-7

 毛利小五郎のお気に入り歌手で有名な沖野ヨーコや他二人の計4人で『アースレディース』というアイドルグループで活躍していた人。23歳。今は女優をやっているようです。
 工藤新一の大ファンで、演技にもそれが表れているクールに見えて可愛い人です。
 アースレディースのメンバーも是非もう一度出てきてほしいですw




○下笠穂奈美 (しもがさ ほなみ)
   美奈穂 (しもがさ みなほ)

File184 一時間スペシャル
『呪いの仮面は冷たく笑う』にて初出。

 アニメ版のオリジナルキャラで、何気に一度復活しているメイドさんです。
 もう一度出てこないかなー、この二人の雰囲気すっごい好きだったw



○アカコ様

 まだ本登場とは言えませんが、「まじっく怪斗」のもう一人のヒロイン、小泉紅子(こいずみ あかこ)の事です。
 余りに美人過ぎて、キッド以外の男は全て跪くらしいですが、コナン世界と混じってしまったから決してなびかない男が爆発的に増えたという……残念!

 とっても綺麗な魔女(ガチ)です。
 正直、当時からメインヒロインの青子より彼女の方が好きでしたw





○浦思青蘭(ほし せいらん)

調べたい人は調べてみてください(にっこり)

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