課金厨のソシャゲ廃人がリリカルなのは世界に神様転生してまた課金するようです 作:ルシエド
ロストロギアで別世界に擬似的に生まれ変わってしまった課金王。
そこは個性こそが価値を持つ世界であり、「君の個性は……課金嗜好と爆発的な課金能力かな」と言われた課金王は、元の世界に戻るために動き出す。
「かっちゃん! 小学生でそれは危険過ぎるからやめよう!」
「
よいか、翠屋いずくっちゃん。これは危険ではない、輝ける勇気なのだ」
「明らかに蛮勇だよ!」
国立雄英高校に入学した彼らは、何を思い何を成すのか……(定番)
手頃な廃屋を見つけ、男達三人は屋根の上で横になる。
かつてベルカの新米騎士だった三人、しかし今は何の肩書きも持たない三人は、『時空管理局』を成立させるために幾多の世界を駆け回っていた。
「あー疲れたー……」
この世界は"岩の世界"。
日中に太陽光を浴びた特殊な岩が大気調整効果のある粒子を放出し、それが夜空から降り注ぐ星の光にフィルターをかけ、夜空の星を青く見せていた。
日中に太陽光を吸収した岩はうっすら赤く輝いている。地表の六割が岩で覆われているこの世界の夜には、青と赤の光が薄く輝く光景が広がっていた。
彼らは本日この世界の国家元首との交渉を終え、明日には『別世界の宝物』を貢物として捧げることで、それと引き換えにこの世界の政府から協力を得ることになっている。
「くそう、腹減ったぁ……」
「仕方なし、俺達にはまだ何もない。
管理局って名前思い付いただけで、金も無い。
借金して元手になる金作って、限界ギリギリまで食費を切り詰めるしかないんだ」
「時空管理局が完成した暁には、複数の世界の食文化交流させて最高の飯を作ってやるぅ……!」
200年後、彼が今日ここで見た『食』の夢は結実する。
『世界交流により生まれた最高に美味い食事』がミッドチルダでいくつも生み出され、それらは多くの人々を笑顔にし───その頃には物を食べる口を失っていた三人は、結局それらの食事を口にすることはなかった。
「信念で飯が食えたらいいのに」
「私もそれには同意」
ある世界では、一年間の根気強い交渉の末に協力を得られた。
が、クーデターが発生して政府が転覆し、"前政府の契約事項は現政府には引き継がれない"と断言され、三人揃ってふて寝することに。
ある世界では、三人の理想に共感し全面的に協力してくれた王様が居た。
王様は国を挙げて三人の管理局設立計画をバックアップしてくれたが、二年後にロストロギアの暴走により世界ごと消滅してしまい、三人は無力感に包まれたという。
アルハザードの遺産、古代ベルカの遺産で滅んでいく世界があった。
力のない三人には世界を守れない。遺産から世界を守ってくれる強い組織を、うつむき拳を握る彼らは求めた。
世界と世界が争い、戦乱で世界が滅びていった。
力のない三人には止められない。戦争を止めたくても、三人の知り合いと知り合いが殺し合う戦いが始まっても、人死にが嫌でも、彼らに仲裁を可能とさせる仲間や武力は無いのだから。
世界間交流もほとんどない。
世界と世界の間に立つ組織が無いために、世界と世界の間には険悪な摩擦が生じていた。
許す組織が存在しなかった。
許されなくて、救われない人が居た。
三人は無念と悔しさを抱え、世界を渡り続ける。
腹減った、と思う三人の内一人の前を、カマキリのような虫が横切った。
「!」
男は反射的に虫を引っ掴み、そのまま口に放り込んで咀嚼する。
貴重なタンパク源。しかし、味は最悪だった。
「不味い……不味い……昔食ったアルザスの竜の尻尾より不味い……」
「腹壊しても知らんからな、助けんからな」
腹の足しにもならない上、ちょっとみじめになってきた。
彼らはみじめさを誤魔化すように、別の話を始める。
「よし、おっぱいの話でもするか」
「食欲の代わりに性欲満たすのはもう嫌だ……」
「……じゃあ、今まで会って来た女性の中で一番魅力的だった人決めて、三人で頂点決定戦で」
いわば次元世界最高の女(暫定)を決める話。
三人は幾多の世界で幾多の女を見てきたため、女性の名前を挙げればその女性の性格や容姿の知識を共有している。
そのため、性癖の暴露大会を兼ねた、次元世界最高の女を決める話になる話になるはずだった。
「オリヴィエ様」
「オリヴィエ様」
「オリヴィエ様」
「「「 満場一致!? 」」」
が、圧勝。
聖王無双、金髪美女は強かった。
性格ランキングと容姿ランキングで一位を狙えるオリヴィエは、まさしく次元世界最強の美少女なのだ。男のバカ話の中では。
「美人だけど、可愛いんだよな」
「分かる分かる」
「こう、惚れそうになる人とエロ本で心惹かれる女は違うんだよ」
「分かる分かる」
「エロいことしたいし、相思相愛にもなりたい、って思うのが本物の美女とか美少女だよな」
「そう、それそれ!」
「個人的に思うのはな、美人ってのは顔のパーツが整ってる人なんですよ。
笑顔がヘタクソでも美人は美人なわけで。
つまり美人は先天的に手に入れないといけないもので、才能に似た天よりの賜物なのです」
「ふむふむ」
「だが『可愛い』は違う。可愛いってのは生き様なんです! 分かります? 分かれ」
「ほー?」
「可愛い笑顔、可愛い仕草、可愛い行動、可愛い生き方、可愛い失敗。
オリヴィエ様は美人だけど可愛いんだよ! 存在そのものが可愛い! 分かるだろ!?」
「分かる。超分かるわ」
「しかも人妻属性まで付いたとか、こりゃもう大興奮ですよ」
「あ、それは分かんねーわ。浮気とか不倫とか人妻とか妄想でも無理」
(急に長々と熱く語る奴って、はたから見てるとこんなに気持ち悪いのか……僕も気をつけよう)
女三人寄れば姦しい。
男三人寄ればバカバカしい。
廃屋の屋根の上に寝っ転がりながら、男三人は青い星輝く夜空を見上げ、語り合う。
いつしか、三人の間には自然と沈黙が舞い降りていた。
「―――」
心地のいい沈黙。
夢に落ちていく微睡みの中、瞳を閉じた三人は、それぞれ意味もなく呟いた。
「オリヴィエ様、俺達頑張ってますよ」
憧れた背中を思い浮かべる。三人は、優しくなれる人間になりたかった。
「シュトゥラは繁栄してますか、クラウス様」
憧れた勇姿を思い浮かべる。三人は、許せる人間になりたかった。
「エレミア様もベルカ様も、元気でやってるといいな……」
憧れた想い出を思い浮かべる。三人は、辛いことも多くあったが、頑張っていた。
いつの日か『時空管理局』という組織が、今よりも少しだけいい世界を作ってくれると信じて。
そして、遠い未来。
三人の騎士達が夢の果てに次元世界を平定し、150年近くが経った頃。
管理局が成立し、次元世界が少しだけ優しいものになってから70年以上が経った頃。
とある管理外世界、地球の海鳴市にて、一つの危機が訪れていた。
「これでポケ○ンGOの歩きスマホで出た死傷者は10人目か……」
「クソ、平和だった海鳴市がまさかポ○モンに侵略されるなんて……!」
海鳴市を包む○ケモンブーム。
歩きながらスマホ、自転車に乗りながらスマホ、バイクに乗りながらスマホ、自動車に乗りながらスマホ、吸血鬼やアンドロイドもスマホスマホスマホ。
ポ○モンGOを見てたせいで自動車が人を跳ねるという事件も起きており、正面衝突した人間が無傷だったからよかったものの、危うく大事件になるところであった。
"HGSでなければ即死だった"とは、被害者の談である。
海鳴市の表と裏の運営に携わる人間が一堂に会しているこの会議は、ポケモ○GOの爆発的ブームと、それが生む海鳴市の治安悪化に対抗する策を考えるためのものであった。
「―――!」
「―――?」
通常の策ではどうにもならない。
市内単位での行政能力では決定的な対策は打てないのだ。
案が上がり、却下され。策が練られて、否定され。手を考えては、無為に帰す。
そして通常の策が会議を通らないのなら、自然と奇策が出て来るものだ。
「『あの子』を呼ぶべきでは?
歩きスマホを何年もやりながら、結局一度も怪我したことがないあの子を」
「! バカな、逆効果になったらどうするんですか!
第一彼が怪我しなかったのは、なのはちゃんが見張っていたからです!
なのはちゃんが外国に行った今!
奴は操縦桿の付いてない、直進して全てを壊すだけの戦車に等しい! 無理です!」
「高町恭也くんを付けたらどうだい? 今帰省しているはずだろう?」
「……なるほど、それなら……」
それは、病人が毒を飲んで体を治すに等しい、大博打の治療法。
「毒をもって毒を制すという言葉もある。
ポケモンGOが宿主を殺す毒なら、あの少年は宿主と共存する寄生虫だ。
寄生虫が体内の毒を食ってくれるというのなら、あるいは……ありやもしれん」
「昔寄生虫ダイエットってあったよなあ。
腸内に寄生虫飼って、余分な栄養食わせるってやつ。
私としてはあの良心ある課金厨が有益な寄生虫扱いされて笑っちゃいますよ」
「かつて海鳴小学校を汚染したあの男を、小学生の指導に使うとは、運命とは皮肉ですな」
「連絡は取れるのか?」
「高町家の長男とバニングスのお嬢さんが頻繁に連絡を取り合っている。
高町家の長男が帰省を終えても、入れ替わりでバニングスのお嬢さんが帰って来るらしい。
情報元は人伝に聞いただけの噂話だが、会議の後にスケジュールを聞いておけばいいだろう」
「ああ、あの二人は彼と仲が良かったですね」
会議の終わり際、上座に座る偉そうな中年が眼鏡を光らせ、結論を口にする。
「海鳴のシド・ヴィシャスを呼べ。奴ならば。
ソシャゲ界を衰退させると言われているポケモ○GOの対策を、あるいは……」
かくして彼らの決断から、半年後。
課金王による覇道が海鳴市に敷かれ、海鳴市におけるポケ○ンGO関係の犯罪や怪我人は一週間と経たずにあっという間にゼロになった。
しかし課金王はいい話で終わらせず、その伝説はここから始まった。
課金王は海鳴市の子供達と大人達を配下に収め、海鳴市を統一。海鳴市のポケモ○GOユーザーを纏めた大部隊を作り、周囲の市に大侵攻を仕掛けていった。
侵略すれど支配せず。
他の市も、次々と彼の配下に収まっていった。
課金でルアーモジュールを買いまくり、一日に100を超えるルアーモジュールをバラまいて地域の発展に貢献していく彼を皆が慕い、彼が名乗るまでもなく皆が『課金王』と彼を呼ぶ。
代金ベルカ式の魔法は○ケモンGOの色を変えることが可能であり、課金王は望む者が居ればそのユーザーの所属色を赤に変え、あっという間に自分の配下にしていった。
そう。課金王は、ポ○モンGOで天下布武を狙っていたのである。
「おのれ課金王!」
そうなれば、反抗するのが人間というものだ。
課金王が一つの県を統一する寸前、県から腕に覚えのある青のポケ○ンGOユーザーと、黄の○ケモンGOユーザー達が集まり、義勇軍を結成して課金王の侵略に立ち向かったのである。
夏休みのエース、学生達。
土日のエース、社会人。
定休日のエース、自営業のエース達の混合部隊。
エース・オブ・エース高町なのはが帰省した時には、無双しているニート・オブ・エースが海鳴市で脚光を浴びており、彼女は目眩を覚えたという。
世はまさにポケモン戦国時代。
ポケモン+ノブナガの野望というゲームの売上が伸びるくらい、戦国時代であった。
課金王が関東を制圧し、その頃には全国で決起した赤勢力が課金王の配下に馳せ参じていた。
反抗勢力である青と黄も、全国規模とはいえ劣勢勢力であるがためか、敗戦間近のドイツのようにキチガイじみたエース達が生まれ始める。
戦いを終えたその後に、互いを認め合った青勢力・黄勢力のリーダー格と課金王が、固く握手を交わしたこともあった。
そのシーンが写真に撮られて新聞に載り、それを見た全国各地の小学生が真似をして、違う色同士で握手をする光景も見られたという。
「いい勝負だった、課金王。負けを認める。頑張れよ」
「ああ」
任天堂も負けじとアップデートを繰り返し、環境が大変動してキャラや技の強さ具合が変動し、全国の戦力バランスが常時崩れるという大乱世となる。
バランス自体は崩壊していなかったため、乱世に参加しなかった者達も、戦国時代に戦争に参加せず畑を耕していた農家のごとく、まったりと戦乱を眺めていた。
戦乱の覇者が誰になるのか、ちょっとだけ楽しみにしながら。
そして、赤が日本を制覇する。
「よっしゃああああああああああああっ!!!」
日本制覇後、任天堂の手によって全てのジムの色がリセットされる。
課金王はそれと同時に、表舞台から――この世界から――姿を消した。
天下布武は確かに成され、されど兵どもは夢の跡。
課金王が見せた覇道の夢に浮かされていた者達も、次第に青や黄に移っていった。
伝説は想い出となり、かつての赤に憧れ赤に所属した新人、かつての赤に憧れそれを倒そうと他の色に行った新人なども参入を始め、ポケモ○GOはかつてない隆盛を迎えていた。
「何?
課金王と赤の軍団の話は伝説となり、想い出となった。
当時『白金山』と改名されたばかりの小さな山の看板が落書きされ、『課金山』という名前に変えられた事件もあったが、これも爆笑を呼んだのでそのままにされたという。
"課金山の頂上に課金王が現れる"という都市伝説が生まれてからは、この山も観光資源になったらしい。とんでもない話だ。
「おい、聞いたか」
だがそんな日本に、いつしか暗雲が立ち込める。
海鳴市を課金王が治めてから半年後、彼は全国制覇を成し遂げた。
そして課金王がこの世界から消えて半年が経った頃、動乱が始まる。
「ああ、聞いたぜ」
そう。日本の外からの侵略だ。
「アメリカの奴らが攻めて来るってんだろう?」
「信じられねえぜ! あっちは壊れポケ先行実装直後って聞いたぞ!」
「赤勢力の伝説を聞いて、三ヶ月以上の準備をして人を集めて、ツアーでこちらに来るらしいわ」
「あっちはCP上限更新も先行しています。まともに戦えば勝ち目はありません……」
ポ○モ○GOは日本より外国の方が僅かに先行していた。
最近は言語の問題で外国の方に仕様やポケモンが先行実装されることが多く、かつて国会議事堂をカイリューで占領した外国人をリスペクトし、外国からの来訪者が日本を蹂躙することも時々はあった。
だが、ここまで大規模なものは前例がない。
もはや侵略だ。
日本と米国の軍事力の差が、そのまま両国の○ケ○ンGOの戦力差と言ってもいいだろう。
「先月のアップデートで、アカウントに国籍が表示されるようになった。
つまり日本の赤青黄チームで手を組んで、アメリカの侵略に抵抗するってわけだ……!」
日米対決、ポ○○○GOを舞台にした大戦争が始まる。
「皆、準備しろ! 上陸は一週間後だ!」
―――後の時代に、第二次太平洋戦争と呼ばれる戦いであった。
「来るなら来い! 返り討ちにしてやるぜ!」
当然のように、日本は蹂躙される。
「クソ、なんて強さだ! 取られたジムが取り返せねえ!」
「マンダの りゅうせいぐんが つよい にほん ボーマンダいない クソゲーッ!」
「日本円にしてお一人様八万円の日本縦断ツアーなんかに負けてたまるかー!」
次々とやられていく日本の戦士達。
ツアーで一日中戦えるアメリカンポケモントレーナー達に、平日は大半が学校や仕事のある日本人が敵うはずもなく、ジムが次々と占拠されていく。
かつて課金王と共に戦ったジムリーダー達も、もはや塵芥に等しい状況であった。
「なんとかしないと……!」
そして、米国の魔の手が海鳴に伸びる。
「伝説の始まりの地、
自営業や水曜日が定休日の者達が集まり、海鳴防衛戦が始まる。
散っていく者達。
消えていく金。
ポケモンの捕獲そっちのけ、育成そっちのけで、"戦わせてるだけのお前らのどこがポケモン『トレーナー』なんだ?"と言われるような激戦が繰り広げられる。
アメリカンのやり方が生んだ悪影響であった。
(もう、ダメか……ダメなのか……?)
海鳴市に訪れるピンチ。
ピンチ、ピンチの、ピンチの連続、そんな時。
「───待たせたな」
ウルトラ課金マンが欲しい。
「お……王の帰還だ……!」
アリサ・バニングスの召喚に応じた課金王が、地球に帰還する。
それが、ポケモンの始まりの地・日本が世界に意地を見せる、痛快な反撃の狼煙となった。
【警告】
○○○○GO課金編、体験版はここで終了です。
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