ブラック?ざけんな、ホワイトが至高だ!   作:x麒麟x

5 / 9
今回はどの鎮守府にもいる、とある艦娘の救済です。
わりとこの艦娘、作者は好きです。
羽黒や神通、榛名ほどではないがな!
作者は癒し系が好き、はっきりわかんだね。


壊された心、そして…

涼「おー、盛大に壊れたな」

 

俺の目の前には瓦礫の山、そして満面の笑みを浮かべる艦娘達。

これで少しはこいつらの心を癒せたかねぇ…?

 

涼「あーはいはい。喜ぶのはいいが少し落ち着けー」

吹雪「で、ですが、司令官!?こう、なんと表現すればいいのでしょうか…!?えっとえっと…!」

卯月「なんか心ピョンピョンするぴょん!」

愛宕「そうねぇ、すごいスッキリしたわね!」

 

全員が晴れやかな顔をしてるが、浮かれすぎて話を進めれねぇ…。

 

涼「スッキリしたのはよかったが、この後の予定を伝えるから静かにな?」

全艦娘「はい!」

涼「よし、では伝える。壊したのはいいが、あの中には執務室などあった。そのため、建て直しを行う…そろそろ来るはずなんだが…?」

全艦娘「?」

「おーい!提督さんよぉぉ!」

涼「お?来た来た」

 

相変わらず時間にルーズだな、あの人…。

 

涼「少し遅刻だぞ、おやっさん?」

おやっさん「がははは!小さいこと気にすんなや、ボウズ!来たからいいだろ!」

涼「はぁ…。この方が建物の建て直しに協力してくれる…」

おやっさん「おう!ボウズの昔の知り合いだ!おやっさんと呼んでくれ!にしても、可愛い子ばかりじゃねぇか!羨ましいな、おい!」

涼「そういう相手じゃないですよ…。皆にしてもらいたいのは、建物の建て直しに協力することだ。艦娘なら瓦礫の撤去も手伝えるし、力仕事の多いこの作業を手伝ってもらいたい」

 

実際、艦娘の力は凄い。

艦装を装備していない状態でも、普通の大人より力があるから、かなりの戦力になるはずだ。

 

涼「ただし、全員が一斉に手伝うわけじゃない。幾つかのグループに分けて、順番に手伝ってもらう。順番じゃないグループは、この前言った通り、好きに過ごしてくれ。この後、そのためのお金を渡す」

おやっさん「おいおい、ボウズ?本当にこんな女の子達が手伝うのか?俺にはそんな力持ちには到底見えねぇんだが…?」

涼「大丈夫だよ、おやっさん。扶桑、電。そこの瓦礫を適当に持ち上げてくれ」

扶桑「了解いたしました…」

電「は、はいなのです!」

 

そう言った二人は瓦礫に近づき…

 

扶桑「ふっ…」

電「え、えい!」

 

軽々と持ち上げた。

 

おやっさん「…おいおい、マジかよ」

涼「どうだい、おやっさん?これなら足を引っ張ることはないだろ?」

おやっさん「お、おう…。ぜひ手伝ってくれ!これなら予定より早く終わりそうだな!」

涼「あと、この子達も貸し出す」

おやっさん「お?おぉぉ?なんだこのちびっこいのは?」

 

おやっさんの足元には妖精達が集まっていた。

 

涼「うちの技術班だ。建築の専門知識もあるから、艦娘と合わさったら、一週間くらいで終わるはずだ」

妖精一同「よろしくお願いします!おやっさん」

おやっさん「おぉ!よろしく頼むぞぉ!にしてもボウズ…、一週間は流石のワシでも辛いものがあるぞ?」

涼「いや…、おやっさんとうちの艦娘と妖精が合わさればできるさ。頼んだぜ、おやっさん?」

おやっさん「がはは!仕方ねえな!やってやるよ!おら、妖精っていったか?ついてこい!打合せするぞ!」

妖精「はーい!」

 

おやっさんは妖精を引き連れていった。

にしても、あれだな…。

相変わらず、元気な人だな。

あれで還暦越えてるんだから、すげぇよなぁ…。

 

榛名「あのぉ…?提督?」

涼「っと!すまんな。グループ分けの紙をこれから配るぞ。それと同時にお金も渡したいから、戦艦から順番に来てくれ。それと長門と陸奥は残るように」

 

さてと、これ配ったあとには溜まってるあれを整理しないとなぁ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お金とグループ表を配り終えた俺の目の前には、長門と陸奥が立っていた。

 

長門「それで提督、なぜ私たちを残した?」

涼「すまんな、聞きたいことがあったんだよ。お前らは俺が来るまでに書類などの、本来提督がやる業務を行っていた。これはいいな?」

陸奥「えぇ、そうよ」

涼「なら知ってるはずだ。どの鎮守府にも必ず一人は存在しており、書類作業などの手伝いをしてくれる…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大淀はどこだ?俺はこの鎮守府で大淀を見たことがない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長門「…やはり…気づくか」

涼「流石にな。俺は昨日から鎮守府を歩き回っているが、大淀だけが見当たらない。鎮守府に一人は必ずいるはずなのに…だ」

 

そう、俺は大淀だけ見た覚えがない。

鎮守府内の全ての施設を歩き回り、全艦娘が集まったときでさえ、俺は大淀を見ていない。

明らかな異常事態だ。

 

陸奥「ねぇ…?貴方は大淀の業務を知ってる?」

涼「…?提督の事務作業等の手伝いだろ?他にも作戦指揮の通信も担当してくれたはず…」

陸奥「えぇ…、合ってるわ。でもね?それは常に提督の側にいないといけない…。どんな提督が相手でもね…」

 

…っ!?それはつまり…

 

長門「…気づいたか。そうだ、大淀は常に提督の側にいた。そのため、提督は大淀を都合のよいストレス発散に使った…。肉体的にも、精神的にもな…」

 

…糞が。そういうことか…

 

陸奥「そんな扱いをされて平気な子がいると思う?大淀は追い詰められていって、ひどい精神不安定状態に陥ったわ…」

長門「今は宿舎の部屋で療養中だ…。ただし、回復の兆しはまったく見えんがな…」

 

………

 

長門「…提督。今までの行動で貴方は信頼できる人だと私は思っている。色々型破りな所はあるがな…」

涼「自覚している…。直す気はないぞ?」

長門「だろうな…、別に今のままでいい…。そんな貴方にお願いがある…!」

 

長門と陸奥は俺の目の前で膝を地面につけ…、おい…ちょっと待て…!?

 

 

 

 

 

 

長門、陸奥「頼む(お願い)…!どうか大淀を救って欲しい(ちょうだい)…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

涼「…俺は提督だぞ?提督に怯えてる大淀に俺が説得しようとしても逆効果だろ?」

長門「…かもしれないな。だが、それでも頼む…!私では救えないんだ…!」

陸奥「確かに私たちが近くにいれば、落ち着きはするわ…。でもね、それじゃあダメなのよ…。根本的な解決をしなければ、あの子は永遠に前提督の影に怯えることになってしまう…」

涼「それは…確かに…そうだが…」

 

大淀のトラウマになっているのは恐らく、前提督個人ではなく、提督という肩書きを持った人間だ。

そんな状態の大淀に俺が行っても逆効果なんだが…。

 

長門、陸奥「「…」」

 

…ここまでされて、断るわけにはいかねぇ…か…。

 

涼「…わかった」

長門「…!?本当か!」

涼「ここで嘘言うほど、性根は腐ってねぇよ。ただし、条件がある」

陸奥「条件?」

涼「俺と大淀が話すときにお前らが大淀の隣にいることだ」

長門「…錯乱させないためか?」

涼「そうだ。錯乱されちゃ話し合いにならないからな。それじゃあ、俺は用意するものがあるから少し時間を置いてから集まるぞ。場所は宿舎の前でいいか?」

陸奥「えぇ、それでいいわ!」

 

俺はその場から離れた。

はぁ…、どうすっかなぁ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、宿舎の前に…、あぁいたいた。

 

涼「すまん、遅れた!」

長門「いや、そこまで遅れてないからいいのだが…」

陸奥「貴方、その布に包まれた長い棒は何?」

涼「んー…、そうだなぁ…。強いて言うなら…護身道具?」

長門、陸奥「…?」

涼「ほら、これのことはいいから大淀のところに行くぞ。案内頼むぞ~」

 

これが役立ってくれるといいんだが…。

 

 

 

 

 

 

 

長門「ここだ。この部屋に大淀がいる」

陸奥「それじゃあ、私たちが先に入って事情を説明するわ。大淀が話し合いに応じてくれたら、呼びに戻るから少し待っててちょうだいね?」

涼「あぁ、わかった」

 

そう言い残し、長門と陸奥は部屋に入っていった。

にしても、この宿舎暗いな…。

日差しとかそういうのじゃなくて…、なんだろうな…。雰囲気とでも言えばいいのか?

重苦しい空気が漂っている…。

これも改善できればいいんだが…、そう簡単にはいかんだろうなぁ…。

ほんと、いらんものしか残さねぇな、前提督。

ん、部屋の中で動きがあったな?

 

陸奥「提督…。いいわよ…」

涼「そうか…。なら失礼する」

 

部屋に入って目にしたのは…、長門の背中に隠れるセーラー服のようなデザインをした服を着ている、黒髪ロングの女の子だった。

 

涼「君が大淀…か?」

大淀「…は…はぃ」

 

俺が名前を聞くと、大淀は震えた声で返事をしてくれた。

 

涼「…君の境遇は長門達から聞いている。君は前提督個人が怖いのではなく、提督という存在が怖いんだな?」

大淀「…そうです。あの人は…前提督は言っていました…。私たちは兵器で、それは提督の間では常識だと…。…貴方もそうなん…でしょう。私たちを兵器と見なし…、夜には都合のいい娼婦扱い…。確かに…私たちは兵器です…。でも…それでも…あんな扱いは嫌です…。殴られ…罵倒され…囮にされ……犯される…。もう嫌なんです!私は!未だに夢に見るんです!あの日々を!だれか…たすけてよぉ…」

 

そう言いきり、俯く大淀。

それは慟哭だった。

長い間悪夢に魘され恐怖に怯える、悲しい叫び…。

 

涼(…兵器?目の前のこの娘が?涙を流し、助けを求めるこの娘が?…ふざけるなよ…!どう見たら、そうなる!?異常だとは思ってた。軍学校では『艦娘を兵器として見る』ことをおかしい頻度で教え込んでいた。あれはもはや、洗脳の類いだ!…上等だよ。最初は乗り気じゃなかったが、あの人の話に乗ってやる…!)

 

涼「…大淀」

大淀「…なんでしょう」

涼「君の今の状態では、俺の言葉は何を言っても君の心には届かないだろう。そこでだ。君にこれを預けたい。陸奥、渡してやってくれ」

陸奥「その長い棒を?まぁいいけど…」

 

俺は肩に引っかけていた物を陸奥に渡す。

陸奥はそれを怪しげな表情で受け取り、大淀に渡す。

 

大淀「…なんでしょうか、これは」

涼「まぁ、開けてみてくれ」

 

大淀は布を広げ、中身を確認し

 

大淀「…なっ…なんですかこれは!?」

 

絶句した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大淀「…なんで…日本刀が…!」

長門「何!?」

陸奥「何ですって!?」

 

おぉ、三人とも驚いてる驚いてる。

 

涼「大淀。君にはその日本刀の帯刀、または使用を許可する」

大淀「……は?」

涼「簡単にいうとだな?君はそれをこの鎮守府内ならいつでもどこでも、持っていていいし使ってもいいということだ。まぁ、使用に関しては俺相手限定だがな」

大淀「あ、あなた正気ですか!これを使ってもいいということは…!」

涼「あぁ、殺してもいいということだ。長門から俺の殺害許可については聞いているな?」

大淀「…はい」

涼「君が復帰するのなら、前のように俺の側で業務をすることになる。だが、それじゃあ前提督の時のように、襲われるかもしれない。そのための日本刀だ。それは君の護身道具なんだよ、大淀」

大淀「で、ですが…!執務中にこのような物を…!」

涼「さっき言ったろ?いつでもどこでも持ってていいって。執務中だろうが飯時だろうが、それを持っててもいいんだよ」

大淀「…(唖然)」

長門「…くっ…くははっ!さすが提督!私たちの思い付かない方法で説得しようとするな!」

陸奥「ふふふっ…。自分の側に自分の命を狙う殺し屋を置くような真似、普通の人にはできないわよ?」

涼「こうでもしないと、説得できんと思ったからな。最近、書類関連が辛くて辛くて…。大淀にはぜひ戻ってきて欲しいんだよ。じゃないと、俺が書類で埋もれ死ぬ。前提督の溜め込んだ書類の量見るか?発狂するぞ?」

大淀「…あの人は…仕事をする気がありませんでしたから…」

 

そのおかげで、俺に仕事が回ってくると。

前提督、生き返らねぇかな?

そしたら、俺がもう一回あの世に送り返してやれるのに…。

 

涼「さて、大淀。君はどうする?俺を側で見張るか、ここで静かに過ごすか。好きな方を選んでくれ」

 

 

 

 

 

大淀「……ここまでされて…逃げるわけにはいきません…。提督…これからよろしくお願いいたします!」

 

 

そう言った大淀の表情は

 

 

 

部屋に入った当初の怯えた顔ではなく

 

 

 

大淀本来の笑顔だった。

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。