インフィニット・ハンドレッド~武芸の果てに視る者   作:カオスサイン

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EPⅥⅩⅧ「偽りを纏う弱さを捨てて 前編」

Sideイチカ

「そうか…」

「すみません…イチカさんが苦しんでいたのに助けに行けなくて…」

「気に病む必要なんかねえよカレン。

その気持ちだけでも俺は十分嬉しいぜ?!」

「イチカさん…」

亡国企業の連日に渡る襲撃後、俺がヴァリアントの力を暴走させていた間の事を聞き、申し訳なさそうにしていたカレンを抱き締めていた。

「さてと…問題はサベージや元教皇達だけではないときたか…」

「ああ、その通りだ剣崎、皆先日の度重なる襲撃と正体不明の怪物の対応の為に各国から編入されてきた者達だ」

俺は突如現れたサベージとは違うあの正体不明の怪物を討伐したミドウ・オルガストと二人の少女を含む何時の間にか増えた数人の代表候補生であろう彼女達に視線を向けた。

「まあ、本題に入る前に軽く自己紹介とでもいこうか。

私はオランダ代表候補生のロランツィーネ・ローランディフィルネイだ、今後共よろしく頼む!

可愛らしき乙女達と勇者よ!」

以前のシャルの様な風貌をした銀髪の女性、ロランを皮切りにそれぞれの自己紹介が始まる。

勇者って俺達の事か?…

「次は私か。

ギリシャ代表候補ベルベット・ヘルだ以上」

赤ロングの女性は面倒くさそうにしながらそれ以上何も話さない。

「タイ代表候補ヴィシュヌ・イサ・ギャラクシー…」

褐色肌の少女は先程の彼女と同じ様に必要以上に話すような人物ではないらしい。

「私は鳳 乱音。

一応鈴とは従姉妹の台湾代表候補よ!」

鈴が凄くビックリしていた。

又叔父の拳法を継ぐ予定の春に興味を持っているみたいだ。

ン?…後もう一人ぐらいいたような…

「…」

カーテンの影にオドオドしながら隠れていた。

「クーちゃん怖くないよ?…」

「ふあっ!?…ほ、ほんと?…」

「うん!…」

セラフィーノが隠れている彼女を猫のように招きよせていた。

というか知り合いだったのね。

「ろ、ロシア予備代表候補生く、クーリェ・ルククシェフカです!

よ、よろしくお願い致しまふっ!?…」

「だ、大丈夫!?」

盛大に噛んだクーリェさんを皆心配する。

予備という事は刀奈会長の補欠という訳か。

「だ、大丈夫れふ…」

なんとか回復したクーリェさん。

ちょっと不安ではあるが頼りには出来そうだ。

「最後は私達ね。

カナダ代表候補のファニール・コメットよ」

「同じくカナダ代表候補のオニール・コメットだよ~皆よろしくね!」

「ちなみに私達はアイドルを兼業しているの!」

成程…俺が暴走状態から元に戻れたのも彼女達の歌があったからか。

という事は…

「彼女達にヴァリアブルコアを提供したのはアンタなんだな?

ミドウ・オルガスト、アンタには聞きたい事が山程ある」

「わ、私達もミドウお兄ちゃんの事は話しますから!包み隠さずに!」

ミドウを心配してかオニールが立ち塞がる様にそう言ってきた。

「オニール…いや俺自らが全て話す」

「ミドウお兄ちゃん…」

オニールをなだめながらミドウは語り出した。

「あれは…」

 

Sideミドウ

五年前

「ミーくんお疲れ様!」

「先走ってほんとしょうがないわねミドウは」

「はは…」

俺はセカンドアタックに巻き込まれた直後、世界有数のヴァリアント武芸者として覚醒を果たし武芸者として目覚めた実の姉であるネール姉さんと幼馴染兼許嫁でもあったシャルティーや他の仲間達と国をサベージの侵攻から平穏を護る為日々戦い続けていた。

だがそれまでの平穏が崩壊の一途を辿る引鉄が着実に引かれ始めている事に気付けずにいた。

とある日

「グッ!?…」

「敵が多過ぎるわ!…」

サベージの襲来数が予測されていたよりも遥かに多過ぎて捌き切れない状況が続いていた。

「一旦撤退して体勢を…」

「どうしたんだ姉さん!?」

「いいから早く皆伏せて!」

姉さんが何かに気が付き俺達に伏せるように促した。

その瞬間、ドォーン!

そこからしばらく俺達の意識は暗転した。

「グッ…一体何が?…!?」

目が覚めるとそこにはとても受け入れ難い光景が目に飛び込んできた。

「うう!?…」

「…ね、姉さん?…シャルティー、皆!?」

俺以外の皆が傷付き何かに苦しんでいたのだ。

姉さんが守ってくれたのか…。

周囲を取り囲んでいた筈のサベージもコアが焼け爛れ活動を停止していた。

これはまさかヴァリアントウィルスの浸食!?

一体何故…今は考えている場合じゃない!

普通の武芸者でしかない彼女達ではこの量のウィルスの浸食を処理しきれない。

ならばと急いで吸い出す事にするがいかんせん俺一人では到底間に合う筈もなかった。

「糞ッ!糞ッ!なんでだよ!姉さん…シャルティーイィー!!」

虚しく俺の絶叫が響き渡る。

俺はそのままショックで意識を失ってしまった。

 

 


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