インフィニット・ハンドレッド~武芸の果てに視る者 作:カオスサイン
EPⅤⅩⅦ「再び波乱の幕開」
Sideイチカ
先日夏休みが終わり波乱の二学期が幕を開けて数日がたったある日の夜…
「そこにいるのは千冬姉?それともハクナか?」
『…』
俺の目の前には水面が広がっている。
其処には一人の女性がいた、
俺は一瞬千冬姉かと思ったのだがすぐに彼女が元愚兄の専用機であった白式のコア人格であるハクナだという事に気が付く。
けど彼女がどうして此処に?
『は、ハヤク…』
「!…どうした!?…」
ハクナの様子が可笑しい事に気が付き俺はかけよる。
『私達が…正気でいられなくなる前に…は、ハヤク!…』
「オイ!?…」
彼女の体が段々と黒くなっていきそう呟いたかと思うと辺り一面も黒く塗り潰されていった。
「はっ!?…はあはあ、い、今のは一体何だったんだ?…」
飛び起きて夢だと確かめる。
だがそれにしては…何か不穏な事が起ころうとしているのか?…
思案を振り払い夢のせいで早くに起きた俺は二学期の準備をしていた。
教室
「おはよう~!イッチー~」
のほほんさんが一番に挨拶してくる。
「おはようさん。
…誰かいないようだが?」
「あ、箒姉さんなら今日迄は休むって」
「ああ、そういう事か」
美月がそう言ってくる。
元愚兄がまた起こした事件のおかげで山篭り期間を延長したのか。
「セラフィーノ、ちょっと良いか?」
「何いーくん?…」
今朝方の夢の事…話す必要性がありそうだ。
俺はそう思い文化祭の設営準備がてらの間に五組の教室を訪れセラフィーノに話した。
「ハクナの?…私も同じ様な夢見たよ。
でもよくは分からなかった…」
「そうか…」
セラフィーノにも理解出来ていないのならば今は最悪の事態に備えるしかないか。
「イチカさんこっちを手伝って下さーい!」
「今戻る」
カレン達に呼ばれたので急いで準備に戻る。
おっとそうだ!丁度良い機会だしリトルガーデンの皆にも招待状を送っておこう。
その頃、Side箒
「秋彦お前は…」
己を見つめ直そうと山篭り修行を始めていた私に美月から秋彦が再びとんでもない事件を起こした事を聞かされ青冷めた。
まさか彼が学園を脱走した挙句に織斑家に放火したとは…。
秋彦の腹の内がようやく分かって私は激しく後悔と己の未熟さに悩まされていた。
「ええい!…」
持ってきた模造刀で周辺の竹を斬っていく。
「はあはあ!…」
駄目だ!…全く以て集中出来んぞくそぉっ!…
「おろ?…丁度良い練習場所を見つけたと思っていたら先客がいたか!
む?お主も刀使いか!」
「え、ええまあ…」
赤い髪の同い年くらいの女性に声をかけられ返答する。
「従兄上とはまだ会えておらぬし、ハヤトやリュートは選抜隊の任務で今は不在故に相手がいなかったのだ。
丁度良い!どうだここは私と一緒に模擬戦でもやってはくれぬか?」
「え?…」
その女性がそう提案してくる。
「あ、はいお願いします…」
「そうこなくてはな!
あ、私は剣崎トウカだ」
「あ、私は篠ノ之箒…です…」
「ホウキだな!よろしく頼む!」
「はい…ってむ?…」
このまま一人でやっていても仕方無いと感じたので彼女、トウカの提案を受け入れる事にした。
だが今…
「どうしたのだ?」
「いえ、聞き覚えのある苗字だと思いまして…」
「まさかお主は…いや今はいいな…早く始めようか!」
一瞬驚愕の表情を浮かべてきた彼女だったがすぐに構えの態勢を取った。
私も慌てて構える。
「せやあっ!」
「はあっ!」
互いの刀がぶつかり合う。
私の攻撃が少しばかり押し負けていた。
「くう!?…」
「中々の太刀筋ではあるな。
でもそれだけじゃあ!」
「なっ!?…」
トウカが繰り出す凄まじいまでの面打ちを私は防ぐのがやっとの思いで精一杯だったのだ。
「お?こればっかりは流石に防がれるか…ならば奥の手!」
「しまっ!?…」
息が上がっていた私に彼女の一撃、いや二撃が入る。
しかも今の技は!?…
「ふう…これで決まりだな!」
「…」
見間違いではない…あれは確かにあの出来損無いが使っていた…って駄目だ!
これでは今迄の二の舞ではないか!…
「迷いで曇っている…何を悩んでいるのかは分からないが…」
「ッ!…」
「自分一人だけで乗り越えようなんて思うな…ホウキも決して独りではない筈だ」
「…」
去り際のトウカに図星を突かれ私は苦虫を噛む。
だが私の中で何かが変わっていく気がした。