インフィニット・ハンドレッド~武芸の果てに視る者   作:カオスサイン

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EPⅢⅩⅨ「臨海学校と陰謀PARTⅢ」

Sideイチカ

「厄介な事になったな…」

山田教諭から非常事態特例との報告が来て俺達は賢姉殿に呼ばれた。

「ここからの事は極秘事項なので一切の他言無用だ。

破った者には重罰を科す事になっているからな。

今朝方、ハワイ沖にて試験稼働を行っていた米国とイスラエル共同開発の新型軍用ISである「銀の福音(シルベリオ・ゴスペル)」が突然搭乗者の制御を離れ、暴走を引き起こし領海を脱出し現在も尚日本近海を周回しているそうだ。

そして約一時間以内には東京上空に辿り着いてしまう恐れがある」

「それで何故俺達が?」

愚兄が賢姉殿に訊ねる。

「言いたい事は分かる。

だが政府の方も色々と対応に追われていて自衛隊を派遣するのにも時間を要するようなのだ」

「だから手の空いている我々に福音の足止めをしろ…という訳ですね教官」

「ああその通りだラウラ。

それで肝心の標的である福音の詳細スペックだが…」

「…」

日本政府にはアホ共がまだ蔓延っているらしく全く頼りに出来る様な状況ではないらしい。

賢姉殿が件のカタログデータをプロジェクターに表示する。

「この高機動力の上にフルスキンタイプ、そして多方向からの波状オールレンジ攻撃…私のブルーティアーズやセラフィーノさんの付喪月神にも勝るとも劣らない同規格の機体らしいですわね…」

データを見たオルコット嬢がそう言う。

だが少し不正解だな…オルコット嬢のブルーティアーズのビットはともかくとして、セラフィーノのあれはドラグーン型のハンドレッドである訳であの程度の数に遅れを取るとは思えない。

だが問題は奴の機動性だ。

「速度スペックが高い者を先行させるべきか…」

俺の外部武装と闇切改弐式の全身武装状態の機動力では全開で行っても後一速は及ばないか…。

エナジーの無駄な消費を省く為にも偵察は別の者に任せた方が良いか。

だとすると…

「はいはーい!」

俺が考えを巡らせていると束さんがどこからともなく現れた。

「束、許可無く…」

「そんな固い事言わずにさ~折角良い作戦案を伝えに来てあげたのにな~?

こういう時こそ箒ちゃんの紅椿の出番なんだよねー!」

「何?」

「…」

そう言った束さんを引き寄せ俺は小声で話す。

「(本気ですか束さん!?今の箒に紅椿の性能を引き出せるとは到底思えないのですが…)」

現にモップは力を手に入れた事で酷く浮かれていた。

「(大丈夫だよイッくん…私はまだあそこの屑とは違って箒ちゃんはまだ生まれ変われる筈だと信じているから…)」

「ぶえっくしょん!?」

俺が心配を口にすると束さんが愚兄を指差してそう言う。

指を差された愚兄はくしゃみをしていた。

「(だからイッくんにお願いがあるの…もしまた箒ちゃんが道を誤りそうになったらその時は…)」

「(…そこまで思えるものなんですね…分かりました。

アイツが道を誤りそうになったら俺が叩き斬ってでも止めてやりますよ!)」

「(ほ、程々にお願いね(^^;))」

束さんの熱意に負け俺は箒の監視を了承した。

「話に戻るけど速度なら紅椿が一番なんだよ。

それで彼女を目標まで運ぶ担当なんだけど…」

「俺がやりますよ!」

「…」

愚兄が箒を福音まで運ぶ担当に立候補するが束さんは彼を冷ややかな目で見ていたがそれに気が付く事はなく言葉を続ける。

「箒の機体に俺の白式を合わせれば最も早く目標に辿り着ける!だから!…」

「ああ、その先は言わなくていいよもう。

紅椿の機動性で敵機を攪乱してその隙にあっくんが零落百夜を当てるという寸法でしょ?」

「え、ええそうですが何か問題でも?…」

確かにスピードならばトップクラスといっても過言ではない白式なら問題無く福音の下へと一早く辿り着けるだろう。

だが問題はそこではない。

勿論問題点の分かっている束さんは黒い表情を浮かべていた。

 

Side束

「…稼働率十九%如きで技量も無いド素人が…」

私は心底この男、織斑秋彦に対して物凄く腹が立って仕方無かった。

箒ちゃんが歪んでしまった原因の一因は彼によるものの影響の方が大きいのだから。

なんでこんな他人を利用する事でしか己を証明出来ない屑がちーちゃんと肩を並べるとかいう戯言をほざけるのだろうか怒りを通り越して呆れるばかりだ。

「あっくん…分からないなら説明するね?

確かに零落百夜は今回の作戦においては有効な切り札の一つ…だけど福音が暴走を引き起こしている以上そんな状態で技を当てれば搭乗者がどうなってしまうかは想像が付く筈でしょう?」

「…大丈夫ですよそのくらい、貴方の作った物なんだからさ!」

「ッ!…」

私の指摘に彼は一瞬考えるがやはりISを過信しているのか馬鹿なのか…あるいは両方なのかそんな事を言う。

こんな奴に私の娘の一機が使われているのかと思うと余計に腸が煮えくり返ってくる。

「…確かセシリアちゃんだっけ?

貴方には確か高機動パッケージが送られてきていたよね?」

私はあの屑との会話を強引に終わらせ本来の作戦案の要の子に声をかける。

「は、はい!ですがまだあまり完了出来ていなくて…」

「心配には及ばないよ私が手伝うから!

後十五分でアップデートを完了させてあげよう!」

「本当ですか!?」

「OK~!」

高機動パッケージであるストライクガンナーをインストし白式に次ぐ機動力を持ち得たセシリアちゃんのブルーティアーズならば安心して任せられる。

そう思った私は彼女を手伝う事にした。

あ、それと後であの子、音六ちゃんにも話を聞かなきゃね。

 

Side秋彦

「束さんまであんな態度を取ってくるなんてどうなってるんだよ!?」

俺は自身の立てた作戦案を一蹴りにされ心底イラ立って部屋で一人壁に八つ当たりしていた。

「あ、秋彦…」

そこに俺を心配した箒が来て俺はふと考えが浮かんだ。

「箒、丁度良い所に!」

「え?…」

俺はコッソリと箒を外に連れ出し機体を装備させた。

「良いのか?先生達の許可は…」

「そんなもの後でもらえばいいんだよ!ほらとっとといくぞ!」

「…」

手柄を他の奴等に取られまいと俺は箒を連れて一足先に出撃した。

 

Sideイチカ

「大変です!秋彦君と箒さんが部屋にいません!」

「何ッ!?」

「あんの馬鹿共…」

「あちゃ~…」

恐らく自分の案を一蹴りにされた事が気に入らずに彼は箒をかどわかして無断出撃したんだろう。

予想しとくべき事だったのにぬかりがあったか…。

「あれそういえば美月ちゃんは?」

「さ、先程急いで出ていかれましたよ…」

「あらま…」

美月は美月で彼等を追っていったらしいな。

俺は頭を抱えるしかない。

「大丈夫ですよイチカさん、既に彼等も向かっているそうですから!…」

カレンが俺を物陰に呼んできてそう言う。

「!それってもしかして…」

俺はカレンの一言が気になり彼女のPDAを覗くと驚愕した。

「『よっ!やぁっと繋がったな!』」

映像の向こう側には俺達の誇るべき戦友達が映し出されていたのだから。

 

 




次回、無断出撃の末福音とエンカウントした秋彦と箒だが案の定に翻弄される。
その中で密漁船と封鎖情報を聞き逃し取り残された船を発見するが彼等は…
一方、秋彦達を一足先に追って出撃した美月が道中で遭遇したのは…
「臨海学校と陰謀PARTⅣ」


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