インフィニット・ハンドレッド~武芸の果てに視る者 作:カオスサイン
Sideセシリア(I弱)
「なんて事ですの…」
中国の代表候補生に強姦を働いたとして女性の尊厳を踏み躙った大罪で極刑に処される筈であった黒雪月夜(真犯人には今の彼女では未だ至らず)を想定外の急襲で取り逃がし、更にはその襲撃者に一方的に有無を言わさぬ程の完膚無き迄の敗北寸前を強いられてしまった。
驚愕すべき事はその襲撃者が未確認の男性IS操縦者であったからだ。
それも部分展開の片腕だけにあそこまで叩きのめされたのだ。
自分は何処で間違えてしまったのであろうか。
英国政府に報告しようにも馬鹿正直に事を言える訳が無くセシリアは一人自身に下されるであろう罰に震えていた。
『チカラガホシイカ?…』
「え?…」
『ナラバオデヲウケイレロ!』
「キャアァー!?…」
ふと何処からか不気味な声が聴こえたかと思うと黒い影がセシリアを襲った。
しばらくしてむくりと何事も無かったかのように彼女はふらりと外に出て行った。
その目は何処か虚ろだった。
Side春季
織斑を名乗る訳にはいかないので仕事で使っている偽名での自己紹介を終えた後、早々にこの世界の織斑一夏が話しかけてきた。
ゼロから得た事前情報だとどうやらこの一夏は逆らう奴がほぼいない事をいいことに女生徒を取っ替え引っ替え食い物にしているしくオマケに鈴を強姦しようとしたらしくその罪をあの黒雪という男子生徒に擦り付けたそうだ。
まるで果ての害兄を見ているようでとても不愉快極まりない。
もし師匠が耳にしたらすぐさま飛んできて鉄拳制裁所じゃない一撃を喰らわせるレベルの案件である。
案の定、音六にも言い寄ろうとしたが流石、そそくさと俺の後ろに隠れた。
何故か味方がほとんどいなかったが…ここまでとはな。
この世界でも変わらないのほほんさんと数名の生徒だけが救いだった。
で…音六の対応に逆切れを起こした馬鹿が俺達に模擬戦を持ち掛けてきた。
勿論、本来の力を使う迄もなく焔牙で打倒した。
弱過ぎるぜ。
周りが何故か卑怯だなんだのとうるさかったがすぐに黙る事になった。
何故なら…
「…」
「あれは…」
オルコットさんがようやく登校してきた。
そんなにすぐに変われるとは思っていないが…って何処か様子が可笑しくないか?
「はーくん!…」
「!この感覚は…」
音六が一早く察知し叫ぶ。
そんな馬鹿な!?奴はイチカ兄さん達に倒された筈だ!…なのに何故この世界のオルコットさんからあの嫌な感覚が!?…
「喰ワセロ…!」
オルコットさんの声で奴はそう言った…不味い!?
「え?……」
瞬間、彼女を心配して駆け寄ってきていた女生徒がオルコットさんの身体を使って変化させた刃で奴が貫いた。
「き…キャアァァー!?」
鮮血が辺りに飛び散り、人が殺される瞬間を目撃してしまった生徒達は叫び声を合図に一斉にパニックに陥ってしまい逃げ惑おうとする。
「モットオデニ!…」
狙った獲物を逃がさまいと触手を伸ばそうとする。
が…
ザンッ!ドシュ!
伸ばされた触手が斬り裂かれる。
「おい英国お嬢さまよ…アンタ一体何しでかしてやがんだ!」
「鉄華団案件のようだね…」
触手を斬ったのは黒雪月夜ともう一人の男性操縦者である三日月千春だった。