インフィニット・ハンドレッド~武芸の果てに視る者   作:カオスサイン

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EPⅡⅩⅠ「クラス対抗戦中編 揺るぎない信念の果て」

Sideイチカ

「なんだって!?それは本当か!?」

「ええ、まさかあの天才(笑)と同じ様な考えを持った先輩が彼の味方をしているなんて流石に思わなかったわよ!」

「あンの阿呆タレが…」

朝っぱらから鈴がとても不機嫌だったので昼食時に理由を問うとあの愚兄が女尊男卑に染まりきったイタリア代表候補(笑)な先輩と結託して適当な因縁をつけてセラフィーノの機体を取り上げようとしていたらしい。

どうせあの野郎の事だから後に同じ様に俺達の百武装や春の機体をも取り上げようと画策していたに違いない。

「分かった、その先輩は俺がマークしておくから何も心配しなくていいぞ!」

「イチカ…うんお願い!

山田先生には私が話しておくから」

「すまないな」

「いいってことよ!音六ちゃんの為だもの!」

今織斑千冬にこの件を告げるのは色々と不味いと感じたのか鈴はそう言ってきたので俺は安心する。

さて、解決するべき件が増えたのは予想外だったが俺は昼食を終えすぐに件の先輩の悪事を洗いざらい調べ彼女の話を聞こうとしたのだが…

 

「何?姿が見当たらない?」

「ええ、サヴェビッチさんは昨日から寮にも帰ってきていないみたいなのよね」

彼女のクラスメイトに所在を聞くが誰も見ていないらしく監視を付けようにもこれでは不可能だ。

「第一ウチらは彼女の事なんて全く知らないしねえ…」

「…そうかありがとう話を聞かせてくれて」

「ええ」

知らないというより最早一切を知りたくないのだろう。

まあ、あれだけ自分勝手な我儘振り回してたらそりゃあ嫌われて当然の事か。

あの愚兄とんでもない類友を…。

ピリりッ!

「はい、何かあったんですか?束さん」

「『やっと出てくれた!

大変なんだよイッくん!』」

「少々厄介事が増えてしまってそちらに手間取っていたんですよ…」

そんな事を考えながら教室を出た途端束さんからの通信が入り急いで寮に戻りやっと出ると束さんは物凄く慌てた様子だ。

「『厄介事?』」

「ええ、愚兄と同じ様な考えを持った馬鹿が増えましてね…ですがその者を調べようと思ったんですがどうやら昨日から行方不明らしく手詰まりになりまして…」

束さんに此方も事の経緯を伝える。

「『へえ…もしかしたらこっちで感知したIS学園内で一瞬だけ起こったノイズが関係しているかも!…』」

「ノイズ?…」

「『うん、ほんの一瞬だけだったんだけど今そのとっても可笑しなノイズをまだ解析中だから結果が出たら教えるね!って今はそれ所じゃなかった!

イッくん【SR】発令だよ!』」

「!」

束さんから告げられた言葉に俺は息を飲んだ。

【Saveage React】

どうやら此処数ヶ月姿を見なかった奴等の出現が久し振りに確認されたようだ。

「『日本海路を往回移動しているみたいだから正確な数と進路はまだ確認出来ていないけど恐らく今の状況だと学園へ向かってくる筈だよ!』」

「分かりました!カレンにもすぐ伝えておきますね」

「『うん、お願いね!』」

通信を切ってすぐにカレンを呼びサベージが近郊に現れた事が確認された件を伝えた。

「分かりました!もし現れたなら私も一緒に戦います!」

「背中は任せたぞ!」

俺達は来たる時に備え準備を密かに進める。

 

その頃、Side音六

「…」

はーくんと鈴ちゃんがあの怖いお兄さんと中学の時に代表候補生試験で戦った先輩から無理矢理奪われそうになった私の専用IS「付喪月神」通称【ツクモ】を取り返してくれて一安心した私は整備室でツクモを整備しながらISコアに語りかけていた。

「ゴメンねツクモ…私がこんなにも弱くて…でも私もう諦めたりなんてしない!…絶対に貴方達の願いを実現させてみせる!…」

「え、えっと…」

私がそうツクモに語りかけていると不意に後ろから声をかけられる。

「はう!?あ…お邪魔しちゃってごめんなさい!」

「?なんで謝るの?…」

「へ?いやなんか凄く一生懸命にしてそうだったから…」

私はどうしてか謝ってきた女生徒に対して疑問を浮かべたがその子はどこかとてもあたふたしているようだった。

「…そのISは貴方の?…」

「へ?うんそうだけど…」

あまりそういう事を気にしない私はツクモのすぐ傍に鎮座してあるISについて聞く。

「私の専用機「打鉄弐式」っていうんだけど織斑秋彦君の機体が優先されたせいで開発が急遽凍結されてしまったから自分で引き取って造ってみているんだけどどうも上手くセッティングが出来てなくて…」

あの怖いお兄さんの名前が出て私は一瞬不快な気分になるがすぐに振り払い、開発途中だという彼女のISに触れてみる。

「…手伝ってあげようか?…」

「貴方、出来るの!?」

「うん、大体の知識や技術はお父さんやファミリーの開発主任さんに教えて貰ってたから私も粗方は出来るよ…」

「ふぁ、ファミリー…?はおいといて貴方のお父さん凄いんだね!」

「うん、私にとって最高のお父さん…」

私の発言に疑問を持ったのか首を捻っていたがすぐにお父さんの事を賞賛してくれたので良い気分になる。

「あ!…今更だけど私は一年四組の更識簪…よ、よろしくね!」

「五組の音六・フェッロン・セラフィーノだよよろしく!…」

唐突に彼女、簪ちゃんが自己紹介してきたので私も自己紹介し合った後、簪ちゃんの機体のセッティングをほんの少しだけど手伝ってあげた。

「この機体(子)の事これからも大事にしてあげてね…」

「うんありがとう音六さん…色々と手伝ってくれて!」

「うにゅ…良きにはからえー…」

「なんで時代劇語?…」

簪ちゃんの手伝いを終えた後私はツクモを待機状態に戻し整備室を後にした。

その直後

「!?な、何この感覚!?…」

今迄感じた事のなかった悪意がすぐ近くに迫って来ていると感じた私の足は恐怖に震えながらも寮へと戻る。

「はあはあ…一体何だったんだろ?…ねえツク…モ?…」

やっと先程までの感じていた悪寒は止まりふとツクモを見やるとISコアとお父さんが搭載していた紅い不思議な石が一際輝きを放っていた。

「…そう…それがツクモの本来の力?なの…」

輝きが止むと今迄ほんの僅かだけ理解出来ていなかったツクモの全てをようやく知り得た気がしたのだ。

 

Side簪

「不思議な子だった…まさかこんなにも早く弐式が完成を迎えられるなんて夢にも思わなかったな…」

音六さんと友達になった私は彼女のとんでもない技量に仰天するばかりであった。

でも彼女なんで左手にあんなグローブしているんだろう?

「…帰ろうかな今日はなんだか疲れちゃったし…」

また後日聞いてみようと思い私も整備室を後にした。

 

「ウゥッ!…簪ちゃん本当によかったわね…」

「あ、あのいつも不真面目な筈の御嬢様が今真面目に仕事している!?…」

その後、しばらくの間感激の涙を流しながら仕事に奮闘する生徒会長の姿があったという話が更識家で噂されたらしい。

 

Side鈴

一週間後、クラス対抗戦が遂に始まった。

私は音六ちゃんを酷い目に遭わせようとしたあの馬鹿にお仕置きするチャンスを今か今かと待ち構えていた。

そして遂に第一戦目のマッチングが決定され彼と当たる。

「来たわ!アンタをこの手でシメテヤレル時が!」

「フン!…あんな不衛生極まりない奴をどうこうしようたって別に鈴には関係無いだろうが…」

「全然関係無くない!このアホタレ!」

「なんだと!?」

全くといっていい程反省の色すら無い彼に私は少々挑発する。

「まあいい。この僕が勝たせて貰うんだから!」

「アンタなんかに敗北したらきっと末代までの恥になっちゃうわよ!

だから最初っから手加減無の全力でいかせて貰うわよ!」

試合開始のゴングが鳴りすぐに私は自身のIS「甲龍」の武装の一つである龍砲を撃ち放った。

 

Sideイチカ

「ほう…アレが鈴の機体の武装の一つか」

「龍砲…ですわね。

空間自体に圧力をかけて砲撃を放つ武装ですわね」

オルコット嬢が武装の説明をしてくれる。

「という事はつまりは不可視の砲弾という訳か…」

まああの愚兄じゃそれを攻略出来る糸口を見つけられる可能性は限り無く0に等しいがな。

鈴も全開で戦っているし。

「ムッ!?…」

「この感じは!…」

「如何致しましたんですの?お二人共」

「悪い、俺達ちょっと席を外すから」

俺達武芸者が感じ取った違和感により俺とカレンは観戦席を離れた

「ああ!?ちょっとイチカさん、カレンさん!?…もう何々ですの?!」

一人取り残されたセシリアは憤慨していた。

だけどしばらくして彼等が席を外した理由を知る事になる。

 

「束さん!」

「『サベージ達の侵行速度が急に早まってもうすぐ近くに現れちゃう!

予測データではまだの筈だったのに…』」

「やはり!…数は?」

「『弩級型が二、通常型が四だよ!』」

「了解!」

違和感を感じた俺達は席を離れすぐに束さんに通信を入れ彼女の予測データを聞いてすぐに戦闘準備に取り掛かる。

「カレン、春を今すぐ呼んで来てくれ!」

「分かりました!」

被害を最小限に抑える為に早目にカレンに春を応援に呼ぶように言った。

千式雷牙のおかげで彼は簡易とはいえ人工ヴァリアントとなっているのですぐにヴァリアントウィルスが無害化される。

だけど心配なのはあの愚兄だ。

彼自体がどうなろうともう知った事ではないがウィルスに感染されれば他の生徒達にも被害が及んでしまう。

早くあの馬鹿がサベージに突っ込んでいく前に戻って無理矢理にでも止めなければ!

「セラフィーノ?一体何を…まさか!?…待って!」

「鈴ちゃん、はーくん達が危ない…!…」

その途中、何処か様子が可笑しなセラフィーノの姿を見てまさか彼女の中の人工ヴァリアントの力がサベージと引き合わせ合っているのではないかと推測した俺はより一層足を速める。

自身のISの中に秘められたハンドレッドの存在を知らない今の彼女をサベージと戦わせる訳にはいかないからだ。

だが俺の予想が大きく外れる事になろうとはこの時思いもよらなかった。

 

SIde鈴

「ええい!いい加減に敗北を認めたらどうなの?!」

「誰が!まだSEは切れちゃいねえ!」

「ほらほら避けているだけじゃ甘いわよ!」

私の放った龍砲に物の見事に直撃してくれる馬鹿に内心ガッツポーズを決めるが彼は次第に慣れてきてしまったせいか当たり辛くなっていた。

「雪片弐型!」

「ようやくね!…双天牙月!」

ようやく接近戦を仕掛けてきた彼に私も青龍刀、双天牙月で応戦する。

「グッ!?…」

「踏み込みが甘いわ!これでも喰らいなさい!」

対する彼が牙月の重圧に耐えるのがやっとだと確信した私は一旦距離を取り、もう一本の牙月を連結させて投擲した。

「何ッ!?…」

「よっしゃあー!これで終わりなさい!」

私の牙月の投擲が彼の雪片に命中しトドメを刺そうとした瞬間…

ドッガアァーン!

「な、何!?…」

轟音が響き渡りアリーナの防壁が突如破壊され、この世の者とは到底思えない異形が数体現れたのだった。

 

 

 




次回!
突如アリーナに襲い来る数体の異形、サベージに対し生徒達は恐怖し大混乱に陥ってしまう。
教師部隊が到着する迄の間鈴と秋彦は応戦しようとするが己の攻撃が全く以て通じず秋彦は容易く吹き飛ばされ、鈴はその存在に恐怖し立ち尽くしてしまう。
その時、彼女達を救うは果ての想い人とその恋人、そして親友と呼んだ二人の男女だった。
「クラス対抗戦後編 救世主と成り得るは黄金の瞳と大空を飛翔する剣と拳、そして平和を祈り乗せた声」




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