インフィニット・ハンドレッド~武芸の果てに視る者 作:カオスサイン
Side春季
不良達による羽交い絞めの昔ながらなナンパの餌食にされそうだった少女、音六を通りすがりの成り行きで助けた俺は何故か彼女の父親に呼び出される形で半ば半強制的に赴く事になってしまったのだが…。
予想していた所とは大分違う場所に目隠しで連れてこられていた。
「よう…あんちゃんがウチの愛娘を危ねえ輩達から助けてくれたそうだな…」
「ええっと(^^;)はあはは…まあそういう事になりますね」
ナニコレェー…なんか凄く怖くて若干どこぞの金ピカなライダーの様なファンキーな風貌のおっちゃんが此方に睨み顔を近付けていた。
「…てーい」
「あでるぅっー!?」
そうこうしていると音六がどっからかハリセンを取り出しておっちゃんをはたくとおっちゃんは奇声を発する。
○ン○ムかな?
「もう…お父さんあんまりはーくんを困らせないで…」
「スマン!だから機嫌直してくれよ音六」
ぷくーと頬を膨らませた音六を必死な顔でなだめるおっちゃん…ってお父さん!?
こんなファンキーな見た目なおっちゃんが!?
「ちょいとイタリアンジョークが過ぎちまってたなスマン!
俺はタイセイ・フェッロン・セラフィーノだ。
紹介する前に言われちまったが音六は俺の娘だ。
そしてイタリアンマフィアグループの、セラフィーノファミリーの第十三代目現首領でもある!
まあタイセイでもお兄さんとでも呼んでくれ」
満面の笑みで自己紹介してくる。
「織斑春季です…やはりそうでしたか…」
「あんま驚かないんだな」
「彼女のファミリーネームを聞いた時からもしやとは思いましたからね…」
セラフィーノファミリー、最大規模イタリアンマフィアの内の一角のボスがこんな身近に居るなんて思いもよらなかった。
俺は先程の睨み付けの事もあり条件反射で奥義の構えを取る。
「ああ、坊主勘違いしないでくれよ?
俺達のファミリーは約三代前から他のグループよりは真っ当な組織なんだ。
社会貢献だってした事もあるんだぜ」
「そうですか…ン?じゃあおっちゃん此処はもしや?…」
物凄く嫌な予感がしておっちゃんに聞く。
「おっちゃん…俺って結構老けて見えるのか?…
此処は俺等セラフィーノファミリーの家だ」
やっぱり…俺イタリアに連れてこられていた様です。
おっちゃんは項垂れていたがすぐに調子を取り戻す。
「そういや坊主お前のファミリーネームはあのブリュンヒルデの…」
「ええ…末の弟です」
「何か事情がありそうだな聞いてもいいか?」
「はい…」
おっちゃんに問われ俺はまた自身の抱える事情を話した。
「大分苦労してきたんだな…」
「…」
話を聞いてくれたおっちゃんはしみじみとそう言ってくれ、音六は何処か思う所があるのか無言で俺の事を見てくる。
「良い子良い子…」
「おわっ!?…誰?」
横から突然ハグされた俺は驚きその人物を見る。
音六とかなりそっくりな容姿をした女性だった。
特に何処とはあえて言わないけど。
「もしかして音六の姉か妹さん?」
「いんや、俺の妻だ」
「なんだと?…」
「…タイセイの妻、繭音・フェッロン・セラフィーノなの…音六ちゃんを助けてくれてありがとうなの…」
「ど、どういたしまして…」
マジかよ…どうみても音六と並んだらますます姉妹にしか見えないぐらい若々しい人ではないか繭音さんは。
「タイセイお仕事の依頼があるなの…」
「そういやまたお上から解決して欲しいといわれた案件があったな。
ちょっくら片付けてくるか!」
どうやら繭音さんはおっちゃんを呼びに来たらしくついでに俺を見かけてハグしてきたみたいだ…自由奔放な人だな。
おっちゃんは急いで部屋を出て行った。
「…お母さんだけずるい…私もはーくんとハグしたい!…」
「ちょ!?…」
その晩俺は己の理性と戦いながらセラフィーノ邸で眠れぬ夜を過ごす羽目になった。
バトルに中々いけない…もう少し彼の憂鬱に付き合ってあげて下さいw