インフィニット・ハンドレッド~武芸の果てに視る者   作:カオスサイン

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お久しな更新です。
中々時間が取れず申し訳ありませんでした!


EPⅩⅥ「再会の中国娘と春季の憂鬱PARTⅤ」

Sideイチカ

鈴とセラフィーノが転入してきてからはや四日が過ぎていた。

春の方はというと案の定、休み時間になるとほぼ毎回セラフィーノが教室にやって来て表情が色んな意味でぎこちなくなっていた。

でもクラスメイト達と仲良く話しているセラフィーノを見ていて何処かとてつもない揺るぎない思いを秘めた表情をしていた。

でもそんな彼を嘲笑うかのように自重という事を一切しない馬鹿共が少なからずいる訳で…事件は起きる。

それは昼休み、食堂での事である。

「♪」

「チッ!…」

皆が仲良く昼食をしながら談笑する最中、あからさまな不機嫌オーラを出している者がいた。

言わずも知れずセラフィーノに初対面でその歪みきった悪意を見抜かれ恐怖を抱かれた秋彦と彼を怖がられた事に一人憤怒する箒である。

「離れているからいいがその手の傷を視界に入れてくるんじゃねえ」

「そうだ!理由も無く秋彦を嫌悪した上にその不衛生な手を此方に向けられてはたまらんからな」

嫌々、嫌悪の理由は明確にあるのだがもしそれを言えばコイツ等は更に逆上するであろうから言うに言えない。

そしてセラフィーノの手の傷について未だに言いたい放題叩いてくる始末である。

当然ながらこんな阿呆共のせいで春はセラフィーノの為にわざわざ距離を取って食事している。

「はあーったく、アイツ等ときたらそれしか能が無いのかよ…」

「…」

俺は呆れ、一方の春はそんな愚兄達に対していい加減に堪忍袋の緒が切れそうなのか体を震わせている。

「春、今は堪えろ…抑えるんだ」

「で、でも!…」

俺は春をなだめるが彼はそうは言ってられないといった様な表情で愚兄達を見ている。

「でもじゃない。

今此処でお前が暴れてもただのデメリットにしかならない。

セラフィーノの為を思うなら尚更だ」

「それは!…分かったよ…」

俺の指摘に春は渋々怒りを抑える。

彼のセラフィーノに対する想いの自覚はまだまだ薄いようだがそれでこそ強くなれる。本当の強さを培えるという素質を持ち得ているといえる。

「春良かったらそろそろセラフィーノとの関係とお前が知る限りでいいから彼女の事を聞かせてくれないか?

ついでに鈴の叔父さんの事もな」

「…ああうん分かったよ」

春はセラフィーノとの過去、そして鈴の叔父さんとの関係を語り出す。

Side春季

俺はイチカ兄さんに音六との事について聞かれた。

音六との出会いは正直な所師匠と再会し鳳流奥義への弟子入りを果たす以前のあまり良いとはいえない色々と荒れた生活という俺の中の黒歴史の最中の出来事なので少々恥ずかしいという事もあり少しの間考えて結局話す事にした。

その前に鳳師匠との再会の事から。

「あれは…」

~二年前~

「ふう…なんとか今日のも稼げたな…」

第二回モンドグロッソの最中で一夏兄さんが何者かに誘拐されてしまい生死不明認定っとなった一週間後の俺の生活は一変した。

一夏兄さんは行方知れずの状態、千冬姉さんは仕事の都合であまり家には帰ってこない。

そんな状態だと俺は秋彦兄さんにどんな仕打ちを受けさせられるか分かったものじゃなかったので自身もあまり帰らずにいた。

ああ、勿論学校の方はちゃんと登校していたよ。

その荒れ果てた生活ではまだ俺が織斑の出来損無いだという事が知られていない裏地域に赴き其処でのギャンブルや怪しいバイトに手を出し日銭を稼ぎネカフェ篭りのアウトローな日々を過ごしていた。

「おらぁ!何とか言えよこの出来損ないの糞餓鬼が!今迄ビビッて損した分お返しじゃあ!」

「ぐふぅっ!?…ガッ!?…」

でも半年後のある日とうとう俺の素性が他の不良達にバレてしまい目をつけられ制裁という名の集団リンチを受ける事になってしまった。

「アニキ、コイツどうしましょうかねえ~?」

「そうだな…一応織斑の家系の者らしいしいっその事どっかの研究機関にでも売り渡しちまうかな!」

「流ッ石アニキ!」

「…」

この地区の不良ボスと取り巻きがそんな会話をしていた。

ああ…結局俺も姉の権力を振り翳す事しか出来なかった愚か者だったという訳か…このまま死んでしまっても構わないと思えていた俺にまさか救いの手が差し伸べられるとは思いもしなかったけど…。

「やれやれ悲鳴が聞こえたかと思い来てみれば…日本もこういう所は相変わらず変わらないというものか…」

「だ、誰だテメエは!?」

「!…」

路地の向こう側から声が響き不良達が驚き問いかける。

俺は何故かその声に懐かしさを感じていた。

「私か?私は貴様等がそんな集団がかりで苛め抜いてしまっている昔の教え子の関係者さ」

「という事はこの出来損無い野郎の教師か?ハッ!先公如きが口割って入ってくるんじゃねえよ!皆やっちまえ!」

「おおう!」

「ああ…」

不良達がその人物に唾を吐きながら殴りかかっていく。

中にはサバイバルナイフを取り出した者も居た。

だけど俺にはその人物が負ける気がしなかったのだ。

何故なら…その人物がある型の構えをとっていたからだ。

「やれやれ会話すら成立しないか…ならば!鳳流奥義第参の型、『鳳凰烈突破』!

ほおっ!」

「うぎゃああー!?…」

「な、ナニィッー!?」

突き出した拳とその際に起こされた風圧によって不良等は持っていた筈のナイフを弾き飛ばされた上に見事なストレートが入り気絶していく。

「こ、この野郎!」

「ムッ!?」

「あ!?…危ない!」

その様子を信じられないといった表情で見ていた不良ボスは何をとち狂ったのか拳銃を取り出し発砲する。

「もう一度、『鳳凰烈突破』!」

「!?ウギャアアァー!?…」

俺の警告よりも一早く気が付いた人物は再度同じ技を繰り出しなんと風圧で銃弾を反転させた後跳ね返したのだ。

その弾はボスの左肩を撃ち抜いた。

「ヒッ、ヒイッ!?ば、化物だあコイツ!に、逃げろぉ!」

手をまだ出してこなかった残りの不良達は気絶したボス等を抱え退散していった。

「よっと!ちょいとやり過ぎた感が拭えないが…大丈夫だったか?」

「す…凄かったです…鳳 亥曇先生!……」

「お、おい!?傷が思ったより深かったみたいだな…早い所病院に連れて行かねえと」

それが俺の恩師であり格闘技界の王である鳳 亥曇先生との再会。

変わらぬ技のキレを見た俺は意識が限界を迎え運ばれるのだった。

 

 

 

 




ちょっと長くなったので春季と音夢との出会いについては次回で。

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