インフィニット・ハンドレッド~武芸の果てに視る者 作:カオスサイン
え?∞なのか百なのかハッキリしろって?気にするな
プロローグ 説明把握と別れ
「これで処置は万全です」
「ありがとうございます」
「…」
あの後二人の男性によって助けられた俺は病院で目を覚ました。
その後彼等の経営する道場へと招待された。
ここで重大な問題がようやく発覚した。
なんと俺の体が幼稚園時代の頃ぐらい迄に何故か縮んでしまっていたのだ。
恐らくあの穴の影響なのだろうが…。
「俺はこの道場の師範、剣崎ホクトだ」
「同じく第二師範の剣崎リュウセイだ。分かると思うがホクトとは兄弟だ」
「お、織斑一夏です…よろしくお願いしますホクトさんにリュウセイさん」
「おいおいそんなガチガチにならなくていいよ。
俺達の事は好きに呼んでくれて構わないぜ」
「で、ではホクト先生にリュウセイ先生で」
「「お?」」
俺がそう呼ぶと二人は顔を見合わせる。
「あー…もしかしてイチカおめえ「剣崎流」の剣技を請いたいのか?」
「ええ…信頼していた実の姉にも見捨てられてしまいましたし行く充てもないようだし…」
「そいつはどういうこった?」
「そういえばお前の事をまだ聞いてなかったな」
「はい…全てお話します」
俺は二人にこれまでの経緯…元は宇宙開発の為に開発されたISの事、その欠陥のせいで世の中に女尊男卑思想が浸透してしまった事、賢大過ぎた姉や出来の良い兄をもったが故に「出来損ない」と罵られ続け挙句の果てに姉を辞退させる為だけに誘拐され裏切られ殺されそうになった所に突然穴が空きそこに吸い込まれ気が付けばあの場所に居た事と自分が本当は中学生なのだが体が何故か若返っていた事と全て包み隠さず話した。
「これが全てです」
「はあ坊主、この世界にISなんて物は無い。
それに「日本」という国は半世紀前に「皇国ヤマト」に変わっているんだ。
宇宙開発はしてるっちゃしてるがな…という事はお前さんは恐らく異世界から飛ばされてきた事になるな
お前さんの体が若返ったのはその穴の弊害だと思うぜ」
「ええ!?…」
「俺達もにわかには信じ難いが…成程おめえさんの話を聞きゃ俺が助けようとしたあの女の言動にも納得がいくな…」
「あ…」
俺はその盲信故に無謀にも怪物に向かっていき消し飛ばされた女性を思い出す。
「っと今度はこっちの話を聞かせてやる」
今度は二人にこの世界の話を聞いた。
一年前に宇宙から地球に突如隕石と共に異種生命体サベージが襲来してきた「第一次遭遇」が起きた事、隕石に含まれていた鉱石「ヴァリアブルストーン」が奴等に対抗可能な唯一の手段の鍵である事が判明した事、それに反応出来るのが「第二次成長期」いわゆる「思春期」を迎える前の男女という限られた子供達である事、中には反応しきれずに奇病を発症してしまった人もいるらしいが…もしかして俺の体が若返ってしまったのには…
「まあこんな所だな。
さっきの話に戻すがいいんだな?」
「は、はい!是非!お願いします!」
「弱ったな~…」
「はは…」
俺がそう返答しながら頭を下げるとホクト先生は困り顔になり、リュウセイ先生は苦笑する。
「良いか?イチカ…剣崎流は編み出した本人である俺達でさえまともに技を放てるようになるまで結構な時間がかかったんだ」
「それは覚悟の上です!」
「それにな…剣崎流や他の流派にも言える事なのだが戦う為だけの力じゃないんだ」
「どういう事ですか?」
「そいつぁ坊主、自分自身で見つけてみろという事さ」
「は、はあ…」
「所で提案があるんだがイチカお前俺の義息子にならねえか?
ちなこれが弟子入りを許可する条件という事で」
「へ?…」
リュウセイ先生の提案に俺は呆ける。
「リュウセイお前な…」
「兄貴には可愛い娘が居るんだからこれぐらい良いじゃねえか!
どの道武芸者の数が揃えば俺達は引退するだけだしな」
「まあそれはそうなんだが…良い許可しよう」
「でどうなんだ?」
リュウセイ先生は笑いながらそう言うがホクト先生はどこか苦い顔をしながら提案許可を出してきた。
「はい!よろしくお願いします義父さん!」
この瞬間から俺は剣崎リュウセイの義息子、剣崎イチカとして生まれ変わる事を決意したのだった。
「本当に良かったのかリュウセイ?イチカは…」
「まあ、とんでもない量のウィルスを直接体に取り込んだが心配は無いってさ。
それにアイツの覚悟を無下にするなんてマネは出来ないさ。
なんてたって俺の義息子になったんだからな!」
数日後、俺に武芸者として才が備わった事が分かり、義父さん達に報告しようと道場に急ぎ足で帰るとホクト先生が腹部から大量の血を流して倒れており義父さんが涙を流しながら謝罪していた。
「ホクト先生!」
「兄貴!すまない…俺がもっとちゃんとしていれば!…」
「一体先生に何があったんだよ!?なあ、義父さん!」
義父さんに話を聞くと先生達が新米の武芸者達に戦闘訓練を施していた最中に突如サベージが出現。
これを迎撃に出たのだがロクに訓練を積んでいない武芸者の一人が出しゃばって前線に出てしまい、サベージの砲撃を喰らいそうになった所をホクト先生が庇ったのだという。
「ああ…イチカも帰ってきたか…スマンな…ちゃんと周囲に気を張れていなかった結果がこのザマだ…リュウセイおめえは悪くないさ…剣崎流の跡取りをしっかり頼んだぞ…それとイチカ強く生きていけよ……」
「ホクト先生そんな!?…」
「兄貴!…クソッ!母親のソウカさんや娘のトウカを残して逝っちまうなんてこの馬鹿野郎がっ!…」
この日ホクト先生は俺達に見守られながら静かにその息を引き取ってしまった。
ホクトの奥さんの名前については原作で明記されていなかった為オリジナルです。
次回はトウカとの出会い&如月兄妹との出会いです。