インフィニット・ハンドレッド~武芸の果てに視る者 作:カオスサイン
今回のコラボは天月みご先生の「翼の十字軍<クルセダーズ>」という作品です。
Side春季
「なんとか峠は越えてくれた様だな…」
「よかったですね!」
数十分後、負傷させられたカップルを収容したラブコフィンが二人の回復を終えたようで一人でに開くのを見て俺達は一安心する。
「一体あの男達は何が目的だったのでしょうか?」
「思い当たる節はある…だけど詳しい事はあの二人が目覚めたら話を聞いてみないとな…」
「そうですね…」
もしも俺の立てた推測通りだとしたらこの世界は…以前訪れた世界よりも厄介な事は確実だ。
そして数十分と経たずに件のカップルが目を覚ました。
「…アレ?…ハッ!?そうだあの子は!?香織は!?」
「ううん?…其処に居るのは智くん?…嘘!?…私達生きてるの?!…」
「そうみたいだ!…あれだけ撃たれた筈の傷もすっかり治っているみたいなんだ」
自分達が無事な事を確認し合った二人は抱き合って涙を流していた。
俺はタイミングを見計らって二人に声をかける。
「少し良いかな?」
「!…生徒会の連中じゃない…もしかしてあんた…いや君が助けてくれたのか?」
「えっと確か智君だったね。そうだ」
「正直もう駄目なのかなと思っていた…だけど…ありがとう!本当にありがとう!…」
「見かけたからには無視なんて出来なかったからね」
俺が命の恩人だと分かると智はまた涙を流しながら感謝を述べてきた。
「その代わりとはいってはなんだけどこの世界の情勢について知っている事を教えてくれないかな?」
「「え!?…」」
俺がそう言うと二人はとても驚いた表情をしながらどこか怯えていた。
ああ、そうか!
「心配しなくて良いよ。
この周囲の目障りな監視カメラなら既に俺が一つ残らず破壊しておいたから大丈夫だ」
「「( ゚Д゚)…」」
俺がその旨を伝えるとカップルは唖然とした表情をしていた。
「あ、あの!口頭では上手く説明出来ないのでコレを見てもらえれば…」
香織さんが自身の生徒手帳らしき物を差し出してくる。
どうやらコレを見てみればこの世界の全容が分かるらしいな。
「借りるよ」
「私にも見せて下さい」
俺は香織さんから手帳を受け取り、矢千夜と一緒に一通り目を通してみる。
「…なんなんだよコレは!?…」
「そんな!?…こんなの酷過ぎますよ!…」
手帳に書かれていた事に目を通し終えた俺達は絶句した。
こんな事が平気で世の中に罷り通るだなんて…これが人間が考えた事なのかよ!?…予想以上に酷く穢れた世界に俺は怒りを露わにする。
「青少年健全育成法」…この法によって未成年の恋愛禁止、その上に全ての行動に制限・監視…少しでも破れば即刻刑が執行される…。
この悪法を可決したこの世界の政府は相当腐っているようだな。
法に則って政府に認められ刑を執行する権限を与えられたそれぞれの学校に設置されている「武装生徒会」…腐敗した実は好き勝手に根を生やしている。
着実に潰していく必要があるな。
俺達が遭遇したのは数有る武装生徒会の中の下っ端役員のグループだろう。
恋愛磁場をRedHotとかいう能力と勘違いしていたにも関わらず只の銃撃しかしてこなかったしな。
それに連中が言っていたクルセダーズというのも気になる。
Kuruseda−zu…直訳すると「十字軍」か…恐らくこれらは武装生徒会と政府、育成法に対しての反対勢力の総称だろうな。
其方についても調査が必要か。
「智君、香織さんこれからどうしたい?」
「え?…」
「それは…」
なんとか怒りを抑えた俺は二人に問い質す。
この悪法によって処された筈の彼等が生きている事が奴等に知られれば再び命を狙われる事になってしまう。
そうなってしまう前に二人の意思を聞き、対策を講じる必要性があった。
「この理不尽に塗れた世界を変える為に徹底的に戦う道を取るかこのまま普段通りの生活に戻るか…後者でもサポートはさせてもらうけどね」
「俺は…香織と…好きになった人ともっと一緒に生きたい!だから生徒会や政府と戦う道を選ぶ!」
「わ、私も!…好きな人と共に生きられない世界なんてもう嫌だから!」
「そうか!」
俺は二人の意思を聞き届ける。
pipi!
お?正に絶妙なタイミング!
束さん達が俺達の居る世界線を特定し連絡してきた。
さあ、革命の刻はすぐ其処だ!