ケイの旅 ーLife is a Journeyー   作:黒猫冬夜

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6/27 ー 文章に間違えがあり、修正。


面の国

暖かな日差しの当たる窓辺の席で黒髪の青年は一人、紅茶を飲みながら外の通りを眺めていた。白いシャツの襟を絞まるネクタイは緩く結んであり、腰のベルトにはパースエイダーを二丁ぶら下げている。

 

青年が観察している通りには、多くの人々が活発に出歩いていた。今日はお祭りでもあるのか、多くの人は顔をお面で隠していた。口より上を隠すそれは一つ一つ綺麗に細工が施されていて、誰一人と同じ物を付けている人はいない。どれも、近くの国に売ればかなりの儲けになるだろう。

 

ボーッと外を見ている青年の反対側の席に、一人の若い女性が座る。彼女もまた、お面をしている。彼女の面は白地に桃色の花と、結構可愛らしい。

 

「旅人さんですよね。」

「あぁ。」

「ふふ、良かった。」

 

女性は微笑えむ。

 

「今日、お祭りがあるのか?」

「いいえ?・・・あ、このお面ですか?」

「あぁ。多くの人が付けてるみたいだが。」

 

女性は自分の面をコンコンと叩く。一瞬面を取るような素振りをしたが、考え直したのか上げた手を膝に戻す。

 

「これは、未婚の印です。」

「未婚の?」

「はい。この国内で今結婚をしていない方は全員お面をしています。」

「なぜ、そんな大層な事を。」

「何故始めたのかは知りません。けど、続けている理由は知っています。」

 

いつの間に頼んだのか、一人のウエイトレスが女性の前に紅茶を置く。そのウエイトレスもまた、面で顔を隠している。

 

「旅人さんは、何を見て人を判断しますか?」

「何を見て、か。」

「えぇ。見た目、性格、趣味、夢、職業。私は見たことありませんが、肌色の違う人もいると聞きます。判断材料は幾らでもあるんです。」

「そうだな・・・敵か否か。後は・・・性格、かな。」

 

青年は自信なさげに肩を竦め、紛らわすように紅茶を一口飲む。女性はそれを静かに眺め、自分もまた紅茶を飲む。

 

「誰も、性格と答えるものです。けれど、誰も少しは外面で決めつけてしまうものです。」

「第一印象か。」

「えぇ。それを不公平の無いよう続けられているのが、このお面です。」

「顔で判断しないように、か。」

 

紅茶は薄く湯気を立てて、ゆっくりと冷めていく。茶菓子でも頼むべきだろうか、と旅人は軽く悩むように顎に手を当てる。しかし紅茶があまり残っていない事に気付いたのか、ウエイトレスを呼ばなかった。

 

「顔は変えられない、そしてだからこそ不公平なんです。顔が・・・平均以下だからと性格を見て貰えないのは酷いでしょう?」

「けれど、体格は隠せないな。」

「体格は、自分の性格を表します。自分の性格次第で、体格など変えられます。」

「それもそうか。」

 

空のティーカップがカチャリと置かれる音が鳴る。まだ空ではないティーカップは女性の手に収まっている。

 

「その面は何処で作っているんだ?」

「職人さん達が彼らの家で作っていますよ。」

「そうか・・・」

「良ければ、案内しますよ。」

 

女性は楽しそうに笑い、まだ残っている紅茶を捨てるように立ち上がる。青年は涼しい顔でそれを見届け、また座るようにと手で示す。

 

「場所を教えて貰えれば結構です。」

「けれど・・・」

「一人で観光しながら行きます。」

 

 

 

 

 

 

「おや、旅人さん。お面を作って貰ったのですか。」

「ええ。とても綺麗なので、旅の土産に一つ。」

 

国と国をつなぐ細い道に一軒だけ立つ小屋の窓から、入国審査官が顔を出す。彼は面をつけておらず、小屋の中から賑やかな声が漏れてくる。

 

「綺麗な出来ですね。大事にしてください。」

「そうします。」

 

白地に鮮やかな緑の蔦が描かれた面をつけた青年は、終わりなど見えない道を走り出した。

 




後書き:

お久しぶりです。すぐに投稿すると言いながら、随分と放っておいてしまいました。

今回は、作者が女性の化粧について考えてたら思いつきました。
人を顔で判断するのは、良くないと思っても本能的にしてしまう事です。
ならば、全員が面で顔を隠すのはどうでしょう。
一軒不気味ですが、慣れてしまえば案外良いかもしれません。

犯罪が無い世界だと、上手くいくかもしれませんね。

これから、ずっと書くことを楽しみにしてた次話を書きます。
もし良ければ、投稿後そちらも読んでください。

では、次回お会い出来る事を楽しみにしてます。

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