遊戯王が当たり前?→ならプロデュエリストになる! 作:v!sion
◐月下-
「...」
慎也が大泉に謎の男を取り逃がした事を告げてからキリのいい時間まで過ぎていた
あれから変化は無い
ただ自身のデッキを確認したり、程々に水分補給をしただけであり、控えめに暇を持て余している
それにジレンマもあった
何か行動を起こしたい意欲も強かったが、それ以上に孤立した勝手な行いは慎むべきという気の方が隔離していたのだ
故にこの補給地点から動けなかった
直ぐにでも詩織の元へ走り出したい気を、進むべき宛も手段も無いと自らで諭しては強く歯ぎしりを繰り返すだけの時間だった
「俺1人だけじゃ無理なんだ...」
頼るべきプロ4名は居ない
それもたった1名の
「...そもそも俺は勝てるのか?」
同じ
全力をぶつけ挑んだつもりだったものの、あの時敗北してしまった故に詩織は日本から離れてしまった
憤りを覚えた
自分の無力さに
「...どうやって禁止カードを」
最近の出来事では分からない事が目立つ
«цпкпошп»の原理
禁止カードの使用方法
「«цпкпошп»も禁止カードも...改造か?」
ディスクの改造は非常に厳しく制限されている
化野も言っていた様に
それを加味した結果の法律でもある
ならば禁止カードはなんなのか
「...昔はゲームバランスのためと思ってたけど」
通常のプレイヤーならそう考えるのが自然
公式からもそう告げられているのだから一般プレイヤーは受けいれ従うだけだ
だがそれも知ってしまった国の秘密を加味すると他にも考えられる事がある
禁止カードに設定されているカード達は、恐らくディスクの改造と同じように人体に何かしらの影響を与える恐れがあるのだろう
「誰でも適合できたと言えば征竜が記憶に新しい」
化野の言葉だった
それと照らし合わせると征竜が禁止カードに設定されたのにも頷ける
人を選ばず適合するが、それが与える影響は未知数。
使用を禁止するのもそれなら納得できる
同じように何かしらの理由があり数々の禁止カードが生まれたのだろう
「....ねぇ、シエン」
その永世界の住人に聞きたい事があったのだが、今は独り。いるはずの無い精霊に向けた声は、虚空に霞むだけ
虚しくも思え、初期手札として持っていたカード達をディスクにしまい込んだ
残ったのはただ孤独感だけだった
「.....」
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◑日本-
/ 午後 16時59分
「君は何をしたのか分かっているのかい!?」
「怒らないで欲しい」
無機質は部屋の中
白衣の男と若い男が向かい合って座っているが、初老の方は怒りを覚えているらしい
対照的に若い男は真っ直ぐ怒りを受け止めている
強くジェルで固められた頭髪が痒いのか頻繁に頭に触れながら話を聞いていた
「皇君...君はブラックボックスと呼ばれる禁忌の部品に手をかけたんだぞ...分かっているのか?」
「そこまで触るつもりは無かったんだ...ただあの光と«цпкпошп»と言う技術が気になって仕方なく、好奇心に負けてしまった...負けてしまった」
「まったく...」
国から説教を受けていたのは皇だった
暁星に攻め入った集団の制圧に貢献した彼だが、国が設定していた禁忌を犯したのには変わりない
月下と
加えて暁星最強の
可能なら起用したい人材に対し、通常通り記憶操作を施すべきか見過ごすべきか。これもまた頭を悩ませる問題だった
「少しは反省している所を見せたらどうだ」
「反省はしている。だが後悔はしていない。あと1日あれば«цпкпошп»についても分かったかもしれないしな」
「コイツは...待て」
やはり記憶操作すべきか
諦めにも近い表情で頭を搔く白衣の男は安山にそう報告しようと端末を手に取った瞬間違和感を覚えた
«цпкпошп»についても?
ならまさかアンカーの技術については理解したというのか?
「皇君!君はアンカーについてどこまで知ったんだ!?」
「あの
「そうだ、まさか原理までは...」
「ワイヤレスで通信させていると思ったんだが、そのアンカーって奴は対象のディスクに
「...」
当然悠長に語りだした皇に対し、白衣の男は思わず言葉を失った。変貌に対してよりかは、その内容について驚く事があったのだろう
国学部の生徒だもは聞いていたが、あの短時間でそこまで理解していたのか。無論全てが正しい訳では無い。国が秘密裏にしている
が、同時に放っておけばいずれ
「どうなんだ?正しいなら卒業制作にしたいんだが」
「...」
冗談に聞く耳も持たず、男は迷った
この男ならその情報を合わせると技術支援・対策課へ間違いなく貢献してくれそうだ。知るべき人物かどうかは定かではないが、
正当さを測るべく白衣の男は口を閉ざし
皇は冗談を言ったことに後悔しながら黙った
「...少し違う」
「どの辺が間違っていたんだ?」
決心の色を瞳に宿し、男は白衣を脱ぎ捨てた
そのまま携帯している薄いパソコンを開き、皇に向けるととある極秘のファイルを解放し提示した
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◐月下-
「...見つけたわ、ボス」
「どこに居た」
「あの無法地帯の辺りね。軌跡までは分からないけど随分迷っているみたい」
「...そうか」
「いいの?」
重々しい機械類とモニターが並ぶ広めの部屋にグラスと知樹が密談のように言葉を交わしている
グラスが新たに手にした情報を上司に当たる知樹に報告しているだけの事だが、雲行きは怪しくも見える
そして曖昧な確認の言葉に対し、知樹が答えたのは肯定のみだった
「問題ない。慎也なら何とかしてここまで来るだろう」
「正確な場所も時間も把握出来ないのよ?」
「来てる事が分かれば御の字だ。カムイも喜ぶだろうな」
そう言い残すと知樹はグラスから距離を取り出した。そのまま部屋を後にしようとする姿勢を感じとったグラスは未だ解せない中、確かに返答が帰ってくるであろう質問を一つだけ投げかけた
「何処に行くの?」
「日本の事を任せてる
「...分かったわ」
「ボス!」
絶叫で名を呼ばれた知樹は少しだけ驚く様子で声の方向を確認した。そこには見慣れた全身黒服姿の恐らく男性が一人知樹を捉え肩で息をしている
余程急ぎの報告があるのか、知樹もパーカーから手を取り出すと神妙な面持ちで発言を促した
「どうした」
「日本潜入任務中の
「そうか」
それだけでは良いニュースなのか否かは判断できない
それなのにも関わらず知樹は余裕の表情を浮かべ、挙句には含んだ笑みすらも作った
部下の報告を催促する意味も含め、知樹は皮肉めいた口調で一言放った
「それで、鷲崎貴文はなんて言っていた?」
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◑日本-
時間が足りない
幾らあっても配分しきる事が出来ない程に時の針に急かされている
「...灰田光明の
「も、もう少しかかるとの事です...」
「...」
安山は自身が抱えている苛立ちを、どう足掻いても他の何かに形容出来ずに疲弊している
分からない事の多さに対しての対応策は追いつく気配の尾すら見せない
自分の沈黙にすら気まずさを覚え始めた頃、一先ず現在までに至る経緯を整理してみようとした
まず何よりはあのビルでの出来事
7月3日土曜日午後13時
聖帝大学の3回生を中心に施されたプロ
この際に月下の
それから2日後の7月5日月曜日
一ノ宮一也らを初めとしだ5名の
が、同日正午には村上慎也を残してほか4名が敗北し、未だ安否は確認出来ていない
それとほぼ同時刻
聖帝大学、暁星大学、秀皇大学、闘叶大学に
しかし、聖帝の生徒に
加えて灰田光明は«цпкпошп»を知らない、海堂一樹の
それからまだ1時間ほどしか経過していない
月下に残した村上慎也が
「安山総帥!彼らの別神経の解析が終わりました!」
「結果は?」
また別の研究員が安山の元へやってきた
見慣れた薄いパソコンを取り出し、それを開くと数時間前に見た7つのデータが並んだ画面が見える
特異点は直ぐに見つかった
とある青年の
「海堂一樹の別神経と
「...まさかそれと
「間違いないかと」
これには安山もあまり驚かなかった
人知を超えた
現に一樹のような人物は他にもいた
協力的だった人間も、既に
彼らに向けた名称も作っていた
その名を呼ぶのは随分久しくも思えたのだが
「
「はい。
一樹のように本人が無自覚のケースもあり、またカードの精霊をその見に宿すのもこれに当たる
まさかノーマークだった一樹にそれがあることは
「...大泉玄に灰田光明の
「承知しました」
「それと」
安山は近くの機械類全てを操作するかのような勢いであらゆるキーを叩き始めた
大仕事を成すつもりだ
予定よりも早いそれだが、一樹や灰田の一件を含めると最早遅すぎるとも取れる現状に嫌気もささない
待機中の専属のプロ
その他多くの使える人材全てを把握した結果の収集を始めだした
「1時間後大会議室に幹部を含めた
「6時間以内に...」
「予定よりも1週間程早いが、第2次月下潜入任務を...いや」
安山は発言の最中で自らの言葉を遮った
大きな過ちがあった訳では無い
それでも新たに訂正した言葉を聞くと、安山の心境が伺える。強く発言したその言葉は、誰しもに緊張の糸を張り詰めさせるそれだった
「日月戦争だ。これから日本の
ぶっちゃけどうですか?
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読みたいからやめて欲しくない
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読みたいけど無くなったら読まない
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普通
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無くてもいい
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読むのが億劫