遊戯王が当たり前?→ならプロデュエリストになる!   作:v!sion

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お待たせしました
長引いちゃったのですがキリがいいのでまとめました。

タイトルは似てますが全部違います


第八十六話 命賭けの爆竹

「おい!ふざけるなよ!」

 

 

1つの絶叫から始まった

一樹のチェーンにお互い何も無いことが分かると、先ずは[オーバーフロー]の処理が行われた

 

その処理は簡単な破壊

乱入扱いによって形だけは敵にあたる斎藤の[五光]目掛けて放たれた機械仕掛けの閃光は、一切の躊躇も邪魔もなくそれを穿った

 

次に相手のエクシーズモンスターが効果を発揮するが、対象不在のため不発に終わる

これで一連のチェーンは終着点となるが、未だ納得できない様子なのは古賀だった

 

 

「答えろよ!なんでお前が先輩のモンスターをっ!」

 

「うるせーな、俺だって最後のカード使いたく無かったんだよ」

 

「なんでだよ!なんでお前が...」

「拓郎!」

 

 

次に声を荒らげたのは東野だった

勢いが収まらる様子が無い古賀に対して、彼らしくない声量で一言制した

 

しかし、その声に最も驚いたのは名を呼ばれた古賀では無く一樹だった

 

 

「拓郎、今のモンスターは多分...」

「え...じゃあ.....?」

 

「...」

 

 

この茶髪の男は俺を庇ったのか?

と一樹は困惑すらした

 

彼は自分がこの場とどれだけミスマッチなのかは充分理解している。それでも聖帝の人間は自分の作戦に乗った。現に先程まで[未来融合]が無事だったのは彼らの加担に他ならないのだろう

 

感謝の気持ちと言えるものは浮かばなかったが、何か引っかかるものはあった

それが何なのか考えてみようとも過ったが、これ以上自分の世界に閉じこもる時間はなさそうだ

 

 

「...だから拓郎、一樹君が破壊する事でダメージを受けずに済むんだよ。先輩だけじゃなくても[五光]の攻撃力分のダメージは高すぎるからね」

 

「...うぅ」

 

「いいんだよ古賀クン、お陰でオレは助かったんだから。オレはフィールドを離れた[五光]の効果で...」

 

 

斎藤が[五光]のリクルート効果の先を悩んでいる様子を見せた。通常なら迷いなく強力な[雨四光]一択なのだが、斎藤は今プレイヤーとしたは孤立した扱いだ

故にドローフェイズのバーン効果の対象に古賀や一樹達も含まれる

 

仲間思いの男なのだろう

蘇った記憶の中でもこの男はそういう行動をとる人間だった

 

 

「...おい、賭博師」

 

「オレかい?」

 

 

この決闘(デュエル)をこれ以上長引かせる事は出来ない

理由として聖帝側のライフが残り少ない事と、自分の存在意義が関係していた

 

そもそもの始まりは一樹の提案だった

早急且つ確実的に敵を打破する作戦としてこれを提案したのだが、それが今は非常に怪しい

 

古賀と東野の態度を見れば斎藤が敬われているのなど見てわかる。では自分はどうか

招かれざる客と言うべきか、歓迎はされていない

 

東野の仲介によって誤解は解けたが古賀の信頼は未だないように思える

だが逆に返せば斎藤と東野は少なからず協力はしてくれている。今もバーンダメージを考慮した選択を成している最中だ

 

 

「[雨四光]だ」

 

「ん?」

 

「俺らに気使わないで[雨四光]を選べっつてんだ!」

 

 

一樹は”俺ら”と一人称を使ったが、[雨四光]のバーンに最も困るのは一樹本人だ

 

斎藤以外のライフは並列しているが、このターンのバトルフェイズを考慮すると崖際にいるのは一樹だ。次のドローフェイズの1500バーンを考えると残りライフは実質3200。加えて一樹のフィールドには何もカードが存在しない。格好の的になるのは目に見えている

 

それでもその一樹本人が[雨四光]を選べと放った

斎藤は一瞬迷う様子を見せたが、ディスクの選択画面を閉じた

 

 

「オレはエクストラデッキから[雨四光]を特殊召喚する!」

 

「でも...一樹くんは?」

 

「構わねー」

 

 

[雨四光]が正常に着地し終えると、優先権がやっと相手に戻った。依然一樹のフィールドはガラ空きのままな事に対してか、[雨四光]の存在に対してか東野は恐る恐ると言った具合で一樹の方を見た

 

当の一樹からは何か考えているようには見えるが焦りは感じられない

 

 

「なら俺は«цпкпошп»を通常召喚、効果によりデッキから«цпкпошп»を手札に加える!そして墓地の«цпкпошп»を除外して«цпкпошп»を特殊召喚!」

 

 

このプレイヤーは特殊召喚を繰り返し行っている。今の今まで通常召喚権を使うこと無く展開し、やっと行使した召喚権からまた新たなモンスターへと繋げている

 

もうこれ以上敵の«цпкпошп»を見過ごす事の出来ない一樹は自信の持つ情報と照らし合わせながらその様を観察している

そして結論付けた

古賀の推測が正しく、自分の推測もまた正しかったと

 

 

「...おい、あんた」

 

「...なに」

 

 

斎藤を結果的に助けたからか

自分が否定した推測が正しかったからか

 

双方少しだけ態度を改めて向かい合った

 

 

「そのセットカードで何ができんだ」

 

「...これだけど」

 

 

非公開情報を見せるためか、古賀はゆっくりと一樹の方へ歩を進めた。つられて一樹も自然と近づき、耳打ちできる程の距離まで両者の位置は変わっていた

 

そして古賀は一樹にだけ見えるように自身のセットカードの中身を露出させる。そこには2枚の罠カード、1つは永続罠、もう1つは通常罠だった

 

 

「2枚使えば2枚破壊できるけど」

 

「...なるほどな」

 

 

今までのプレイングに納得のいくセットカードだった。タイミング的な問題と、消費数を考えると今の今まで発動を拒むのは頷ける

 

一樹は古賀のフィールドに残っている[ホークジョー]と[チドリ]に目をやったが、確かに自分が古賀でも同じプレイングをしていたかもしれないと知らしめられるばかりだった

 

 

「...なぁ、あのモンスターが何なのか分かるの?」

 

「.....チッ、あんたの推測で合ってるようだぜ」

 

「え?」

 

 

セットカードを見せてくれたお礼のつもりなのか、一樹はこのターンプレイヤーのデッキ内容について己の見解を述べた

 

先程までお互いで否定しあっていた推測

それはその両方の意見を混ぜた新たなものだった

 

 

「...だから”面倒臭いデッキ”っことか?」

 

「あぁ、しかももう[未来融合]もねーしな」

 

 

一樹の一言に、古賀は眉間にシワを寄せて何か反論するかのように見えた。が、一樹がそれ以上に何も咎めなかったからか、古賀もまた倣って口を閉ざした

 

 

(...なんだこいつ急に)

 

 

どういう心境の変化なのか古賀は疑問にも思ったが、それら彼自身にも言えることだろう

 

 

「...で、どうすればいい?」

 

「.....あ?なんだ俺に聞くのか?」

 

 

一樹もまた困惑していた

たった数分前までいがみ合っていたこの男は突如次の行動を仰ぐような真似をしている。煙たい皮肉でも返してやろうかとも過ぎったが、古賀の真面目な表情を見るとその気も失せた

 

 

(調子狂うな...)

 

 

どういう心境の変化なのか一樹は疑問にも思ったが、それら彼自身にも言えることだろう

少なくとも何らかの変化は双方に見られる

 

 

「...あんたの[チドリ]、普段どこまで攻撃力あがるんだ?」

 

「だいたい6000ぐらい...頑張っても10000行くか行かないかだと思うけど...」

 

「あ?もっと行かなかったか?」

 

「いやいや、俺ら初対面でしょ」

 

「...あぁ」

 

 

一樹は他のプレイヤーを見渡した

斎藤のフィールドには1枚のセットカードと[雨四光]

東野はあと1度だけ発動可能な[マネキンキャット]とセットカードとフィールド魔法が1枚ずつ。

 

ここで初めて相手のライフポイントを確認したが、4人とも7200で統一されている。恐らく[ノートゥング]だろうか、[未来融合]が無い以上ワンショットキルの難易度は高まっている

 

そしてこのターンプレイヤーが恐らく持っている、一樹が警戒する1枚の事もある。もはや1人の力で勝利するのは難しいという話ではない

 

 

「...おいそこのあんた」

 

「僕?」

 

「そのセットカードは...「遅い!」

 

 

特殊召喚成功時、聖帝側に訪れていた一時の優先権は終焉を迎えた。つまり起動効果、一樹は悠長にそのモンスターの効果を通したその後のリカバリーや、何らかの妨害を放つ場合のボートアドバンテージについて熟考していたが、些かその時は長すぎたようだ

 

 

「俺は«цпкпошп»の効果を発動!墓地の«цпкпошп»を除外し、貴様のセットカードを破壊する!」

 

「オレか...」

 

 

狙われたのは斎藤のセットカード

これによりフィールドには[雨四光]のみとなった。攻撃力は3000の、破壊耐性があるモンスターが残ったが、一樹が嫌がっていたのはこの次に起こるであろう出来事だった

 

 

「そしてもう一度«цпкпошп»の効果を発動!墓地の«цпкпошп»を除外し、次は貴様のセットカードだ!」

 

「えっ、ターン1じゃない!?」

 

 

東野のセットカードが狙われた

その破壊対象から、相手モンスターはこちらのモンスターを戦闘破壊出来るように見える

 

だからこそ邪魔になるであろうセットカードを順に狙っている。だが、東野は一瞬戸惑ったもののその対象になったカードをチェーン発動させた

誰にも確認し無かったが、悩む必要も無かった

 

 

「僕は[おジャマ・デュオ]をチェーン発動!相手のフィールドにおジャマトークン2体を特殊召喚する...」

 

 

だが、トークンの特殊召喚先で悩む

4人のプレイヤーの内ターンプレイヤー以外は2体分のモンスターゾーンを空けている状態だ。どのプレイヤーに送り付けるのが最も効率的だろうか

 

先程一樹が熟考の末優先権を放棄してしまったのは記憶に新しい。故に、東野は早急に他者の意見を求めることにした

 

 

「一樹君、どのフィードに出せばいいかな?」

 

「そうだな...」

 

 

一樹も並行して悩んでいたようだ

エクシーズを警戒するか、それとも[キメラテック・オーバー・ドラゴン]の攻撃対象の為に満遍なく特殊召喚させるべきか

 

そもそも自分は次のターンで[キメラテック・オーバー・ドラゴン]を召喚できるのか、それともターンは回ってくるのか

 

考えていると古賀が一言放った

 

 

「圭ちゃん、その効果は特に考えなくてもいい、どこでもいいよ。ただその特殊召喚時に[マネキンキャット]は使った方がいいと思うんだけど」

 

「...」 

 

 

一樹に是非を問うかのように古賀は視線を送っている。対する一樹も古賀の発言を反芻してみたが、大凡は賛成できた

 

結局の所守備で特殊召喚する限り場所はあまり関係ない。後者の[マネキンキャット]についても異論は無い

だがだからこそ訂正するべき所を見つけた一樹は、なるべく穏便に返した

 

 

「あぁ...異論はねーけど特殊召喚先はあいつがいい」

 

「ん?」

 

 

一樹が指さしたプレイヤーのフィールドにはモンスターが2体のみが存在していた。一瞬理解が遅れた古賀に説明するかのように一樹は言葉を並べた

 

 

「対象に取る効果を無効、とか合ったらめんどーだ。墓地に[スキル・プリズナー]とかあんなら別だがあいつにはセットカードがねぇ。送るならそこがいい」

 

「...なるほどね、じゃあ」

 

「待つんだ2人共。あのプレイヤーのセットカードはオレが[紅葉に鹿]で破壊したんだ。なんの反応もなかったから一樹クンの言う通り墓地効果がある可能性がある」

 

「.....分かりました僕は!」

 

 

最終的な決断は東野が果たす

古賀、一樹、斎藤らの材料を加味した結果、東野が選択したプレイヤーは最も初めにターンが回ったプレイヤーだった

 

 

「あなたのフィールドにおジャマトークン2体を特殊召喚します!」

 

「チッ...いいだろう」

 

 

その後チェーン1の破壊効果が不発に終わる

だが嫌に長くも感じられた一連の処理に違和感を覚えたのは一樹だけだった。

 

随分ゆっくり進めていたがディスクの待機時間がいつもより長く感じられたのだ。原因はすぐ隣にいた。古賀のディスクに目をやるとチェーンの有無を問う確認画面が今消滅した所だった

 

古賀が考える時間を作っていたのだ

セットカードを発動させるとディスクに指示だけを出し時間目一杯使って待機させ、結局発動をせず優先権を放棄。ささやかなチームプレイだ

 

 

「そして僕は[マネキンキャット]の効果を発動!デッキから[森の聖獣 カラントーサ]を特殊召喚する!」

 

 

獣族モンスターの効果によってフィールドに降りると、フィールドのカード1枚を破壊する誘発効果を持つ獣族モンスターだ

 

東野がその破壊対象に悩んだのはほんの一瞬

一樹と古賀の方へ向くと先ずは一樹が答えた

 

 

「そいつの三体素材のエクシーズモンスターだ、めんどーだから早めに除去りてぇ...あんたはどう思ってんだ?」

 

 

古賀も何か言おうと口を開きかけた時、一樹の方から促された。違和感に一瞬言葉を失いかけたが、与えられたタイミングに古賀も自らの意見を重ねた

 

 

「あのモンスターはなんだと思う?」

 

「[シャイニング]」

 

「俺もそれか[グローリアス・ヘイロー]だと思う。だとするとさ」

 

「...ランクアップがあるかもしれないって事か」

 

 

このプレイヤーはエクシーズ召喚を多用していた。

そして古賀と一樹の意見は、そのエクシーズモンスターが危険という点においては一致している

 

が、古賀はさらにスペルスピード2のランクアップマジックがあった場合のケースについて言及した

少し前の一樹なら一蹴していただろう

 

あるはずがない

残り手札2分の1にある確率は低いだろうし、そもそもデッキに採用されているかも怪しい、と

 

だが一樹はそれを自身の判断材料にした。時間を求めて古賀の方を顎でしゃくると、彼もまたチェーンの確認画面で時間稼ぎを始めたところだった

 

そして導き出した答えは古賀の意見だった

 

 

「.....確かにな」

 

「え?」

 

 

一樹の見解はこうだ

 

1. 東野の[カラントーサ]の破壊効果に対し、相手が何もせず破壊を受け入れた場合。

手札にランクアップマジックが存在せず、またエクシーズモンスターは[仮面魔踏士シャイニング]であると言える

 

2. 相手が何もチェーンせず、フィールドにモンスターが残った場合。

手札にランクアップマジックが存在せず、またエクシーズモンスターは[光天使グローリアス・ヘイロー]であると言える

 

しかし、1.のケースはおそらく無い。仮に何かしらのランクアップマジックを持っているのなら[シャイニング]をそのままにしてはおかないだろう。[アンブラル]にしてしまえばこの[カラントーサ]の効果に対し、ハンデスとライフの半分を奪えるのだから。

つまりモンスターが、[シャイニング]の場合はランクアップマジックそのものを所持してないと言える

 

2.の場合はどうだろうか

[グローリアス・ヘイロー]は破壊耐性効果を持ち、それを使うことによって追加効果を得るモンスター。サクリファイスエスケープを行うモンスターではあまりないが、追加効果はそのターンの戦闘ダメージを半減する効果とわざわざ狙うものでも無い

 

結論としてランクアップマジックを持っているか否かの問題であり、相手はランクアップマジックを持っていようが無かろうがチェーンはしてこないであろうという事。

故に一樹は消極的な判断をしかけている。結局分からないのなら破壊できそうなモンスターを破壊した方が良さそうだと

 

しかし、だからこそ古賀に話したのだ

 

 

「...やっぱりあのエクシーズモンスターを破壊しよう」

 

「あ?あんたがランクアップマジックの事を言ったんだろ。[ノーブル・デーモン]にされたらあの賭博師が今度こそバーンで死ぬぞ」

 

「そんなの...」

「一樹クン」

 

 

沈黙していた斎藤が口を開いた

自分の少ないライフについて気にかけられたからか、古賀では無く一樹に対して言葉を放った

 

 

「古賀クンの言う通りだ、ランクアップマジックがあるにしろ無いにしろ対象に取ってみるべきだ。[ノーブル・デーモン]が出たとしてもオレなら大丈夫だから...東野クン!」

 

「....あぁ」

 

「は、はい!僕は[カラントーサ]の効果でそのモンスターを破壊します!」

 

 

東野の[カラントーサ]が«цпкпошп»に飛びかかった

チェーンの有無を問うかのようにゆっくりに見える跳躍を見届けていると、一樹の予想していなかった処理が起こった

 

 

「俺は«цпкпошп»をチェーンする!«цпкпошп»を召喚!」

 

「なんだと...?」

 

「ランクアップマジックを持ってたのか...っ!」

 

 

3.破壊効果にチェーンされた場合。

[グローリアス・ヘイロー]か[シャイニング]なのか分かり兼ねる。モンスターの数からランクアップマジックか否かは判断可能だが、得られる情報は少ない

 

前者だとすると破壊耐性効果を使われた瞬間斎藤が敗北し、後者だとすると聖帝側全員が苦しくなる

[ノーブル・デーモン]の1500バーンは[雨四光]と同じ数値だ

 

 

「俺は«цпкпошп»の上に重ねて«цпкпошп»をエクシーズ召喚する」

 

「またエクシーズ...先輩の[五光]を破壊しようとしたモンスターだったよ」

 

「あぁ」

 

 

ターンプレイヤーは再び取り戻した優先権を使って新たにエクシーズ召喚を行った。モンスターゾーンをよく見ていた東野は、先程サクリファイスエスケープしたモンスターとは別のエクシーズモンスターだと理解し、直ぐに一樹にも情報をシェアした

 

 

「俺は«цпкпошп»を発動する。«цпкпошп»から素材を2個剥ぎ取り2枚ドローする」

 

「...[ノーブル・デーモン]じゃないかな」

 

「あぁ、同意見だ」

 

 

恐らく[エクシーズ・ギフト]が発動された

2体のエクシーズがそれぞれORUを4つと3つと多く持っている中、このプレイヤーは4つ持つモンスターから2個墓地へ送った

 

破壊耐性を使った後のORUの数により効果を発動する[ノーブル・デーモン]が示唆された。これには古賀も一樹も多く語らず合致している

 

 

「«цпкпошп»を«цпкпошп»に装備。さぁ、バトルだ...俺は«цпкпошп»で貴様にダイレクトアタックだ!」

 

「...」

 

「お、おい発動した方が...」

 

 

長らくメインフェイズが続いた後、この決闘(デュエル)初のバトルフェイズに突入した

 

無論狙われたのは何もカードがない一樹自身

残りライフに余裕がある訳でもないというのに一樹本人は口を閉ざし空いた左手で呑気に顎を掻いている

 

痺れを切らしてセットカードを発動するか提案したのは古賀。いつの間にか一樹を守る目的に戻っているが、当の一樹は首を横に振るだけだった

 

古賀が疑問の表情で一樹の顔を覗き込むが、今度は短く「構わねー」とだけ

 

 

「か、一樹君!このままじゃ!」

 

「そうだ!まさか諦めたんじゃ...」

 

「......いや」

 

 

やる気を無くしたわけでは無いらしい

東野と古賀に問い詰められると、今度も長くは語らなかった

 

 

「がら空きの俺を狙ってくれんならそれでいい。後はその賭博師と...っ!」

 

「ん?」

 

 

一樹が自身のリタイアと、各々カードを温存するよう告げようとした

しかし、発言の最中斎藤の方へ目をやると彼は何かカードを発動させていた所だった

 

それは先程破壊され、墓地に眠っていた罠カードだった

 

 

「オレは[仁王立ち]を[雨四光]を対象に発動...このターンは[雨四光]にしか攻撃が出来ないよ」

 

「お、おいてめぇ!あの野郎なんか装備してただろ!今のライフで受けられるのかよ!」

 

 

今度は一樹が声を荒らげる番だった

自らが敵の攻撃を受け、あとに続けるつもりだった一樹はその任を斎藤に取られ激昂すらした

 

何故だかは分からなかった

自己犠牲の精神そのものへでは無く、あの男が[仁王立ち]で他のプレイヤーを守ろうというプレイングをする事に何故か腹が立った

 

 

「...君、まかせろ!墓地の[仁王立ち]の効果発動!キミはこのターンオレの[...]にしか攻撃が出来ないよ!」

 

 

...いつの記憶だろうか

 

 

「チッ...ならチェーンして[ブレイクスルー・スキル]!墓地に目を囚われすぎだ!」

 

 

これは確か自分の台詞だ

 

 

「うっ...く、だけどキミの連続攻撃は抑えさせてもらう...」

 

「先輩...」

 

「あとは頼んだよ.........くん!」

 

 

「死ねや![キメラテック・オーバー・ドラゴン]で[五光]に攻撃だ!”オーバー・エヴォリューション・バースト”!!」

 

 

 

そうだ、前にも花札衛(カ-ディアン)使いと戦った事があった。確かその時も4対4の乱戦で、仲間達に自分の[未来融合]を守らせていたのだ

 

...その時の仲間は誰だったのだろうか

対面していた花札衛(カ-ディアン)使いの事はよく覚えている。

 

 

「チィ!なら俺は«цпкпошп»で貴様の[雨四光]に攻撃だ!」

 

「あとは頼んだよ......皆!」

 

 

今共に戦っている斎藤によく似た男...

それは同一人物だった

 

 

「...お、お前!あの時の賭博師か!?」

「くたばれ!」

 

 

一樹の記憶が戻った瞬間、«цпкпошп»の攻撃が[雨四光]を貫いた

 

思わず走り出した一樹だが、斎藤の意識が消える方が余程早かった。倒れゆく斎藤に伸ばした手は届かず、虚空を引っ掻くに終わる

 

 

 LP900→0

  斎藤 LOSE

 

 

「っどうしたんだよ!おい!起きろや!」

 

「ぐっ...」

 

 

痛みに苦しむような表情を浮かべる斎藤を抱き抱え、一樹は激しく揺すった。しかし斎藤の瞳が再び開く事は無く、代わりにディスクの装着された腕を一樹に向け伸ばした

 

そこには

 

 5200 DAMAGE!!! 

 

とあった

具体的な戦闘ダメージを最期に伝えたかったようだ

一樹は程々にそれを確認すると、また斎藤の肩に力を加える

 

 

「んなもん今はどうでもいいんだよ!お前、あの時の花札衛(カ-ディアン)使いだろ!なぁ!」

 

「...ぐっ......ど、どうでも...」

 

 

斎藤は絞り出すように、蚊の鳴くような声で何か放った。一樹は耳を傾けるが、その内容は一樹の質問に対する答えでは無かった

 

 

「どうでも良く...ないだろ......まだ、戦いは......ぐぅっ...」

 

「...」

 

 

斎藤が挙げた腕を古賀らに向け直した

長くは語れ無かったが、何を言わんとしているかは伝わる

 

一樹も古賀と東野に目を向けると、舌打ちを一つだけして立ち上がった

意識を失った斎藤を大事に寝かせてからだ

 

 

「せ、先輩!」

 

「まだだ終わってねぇだろ!」

 

 

同じく駆け寄ろうと走りかけた東野を怒鳴り声で制すると、一樹はデッキトップに指をかけた

 

斎藤が[仁王立ち]と自らのライフポイントで繋いでくれたこの決闘(デュエル)。聖帝の生徒でない一樹が受け継ぐと言うのなら東野にも古賀にも多く語る必要はなかった

 

たったひとつの怒声で一樹の意思は2人に通じた。この決闘(デュエル)、絶対に勝つと

 

 

「俺のターンだ!」

 

 

4枚目の手札を確認したが、やはり[未来融合]の損失が悔やまれた。

あるはずだったスタンバイフェイズを程々に過ごすと、次にメインフェイズがやってくる

 

そして後はバトルフェイズだけで終わらせる気でいた

その為にも何かカードを発動する前に古賀と東野に改めて情報を求めた

 

 

「おいあんた」

 

「...俺は古賀だ」

 

「あ?」

 

 

決闘(デュエル)も後半に差し掛かろうという時

一樹に呼ばれた古賀は目も合わさず自身の名で返した

 

名前を呼べと言うことだろうか、一樹にそれは伝わったが意図が分からなかった

言われてみればお互い名前など知らない関係だ

そんな状態で良くも連携を撮ろうなどと考えたものだと自傷じみた笑いもこみあげてくる

 

そんな事を考えていると古賀がこちらを見つめた

 

 

「お前は?」

 

「...俺は一樹でいい。苗字は嫌いだ、あんたこそ下の名前はなんだよ」

 

「拓郎だ」

 

「あんたは?」

 

「僕は東野圭介」

 

「...あいつは?」

 

 

一樹は既に音を無くした斎藤を見て言った

倒れ、決闘(デュエル)に参加出来なくとも仲間だという認識があるのだろう

 

古賀が答えた

先に倒れた戦友の名を

 

 

「斎藤先輩だよ。あぁ、健太先輩だよ」

 

「健太に圭介に拓郎...か」

 

 

「古賀君、まかせろ!墓地の[仁王立ち]の効果発動!キミはこのターンオレの[五光]にしか攻撃が出来ないよ!」

 

 

霞んでいた記憶が鮮やかに変わっていく

 

 

「圭ちゃん!?」

 

「拓郎...先輩、何も出来ずにすみません...あとはお願いします...」

 

 

色を失っていたものを彩るように

ぼやけていた輪郭をなぞる様に深く濃く記すように

 

一樹の当たり前にあった記憶は戻っていった

そうか、あの時の相手は斎藤だけで無く、この2人もいたんだったなと

 

しかしやはり理由が思い出せない

それも今は関係無いと自ら蹴るのにさほど時間はかからなかったのだが

 

 

「...よし、行くぞ拓、圭!」

 

「お、おう!」

「圭って...」

 

 

一樹は早速1枚のカードをディスクに通した

相手のカードは多い。恐らく無効にされるだろうとの一手だ

 

奇しくも彼には今通った友情のようなものがある

彼は1人ではない

 

 

「まずは[強欲で貪欲な壺]を発動する。何かあるやつはいんのか?」

 

 

これには沈黙が帰ってきた

無効にされるには痛い1枚だが、コストにするにも手札はあまり噛み合っていないためダメ元で発動を試みたのだったが、これは通った

 

手札が5枚になると、次第に己の手順が見え始めた

 

 

「俺は[パワー・ボンド]を発動する」

 

「ククク...なら俺は«цпкпошп»の効果を発動する!その発動を無効にする!」

 

「...俺はチェーンする!」

 

 

古賀は今まで発動してこなかったセットカードを発動させた

ように思えたが右手は手札にかけてあった

 

手札の内1枚は帰還した[巨神鳥]。そして古賀が手に取った残りもう1枚の手札は罠色のカードだった

 

 

「俺はフィールドの[チドリ]をリリースして手札から[ブラック・バード・クローズ]を発動!相手フィールドのモンスター効果を無効にし、エクストラデッキから[ブラックフェザー・ドラゴン]を特殊召喚する!」

 

「なんだと...まだ妨害効果を持っていたのか...?」

 

「お、おい拓お前...」

 

「.....ずっと発動出来たんだ、ごめん」

 

「...通るなら話は早い!」

 

 

それがあるなら[未来融合]は守られたはずだ

だがそれについては言及すべきでない

するつもりもなかった

 

古賀の控えめな謝罪に追い越されたからだろうか、一樹はそのまま黙って[パワー・ボンド]の処理に戻った

この発動を通してくれるなら[未来融合]はなくとも何とかなりそうだ

 

 

「...俺は手札の[サイバー・ドラゴン・ヘルツ]と[サイバー・ドラゴン・ドライ]を融合!異形の機械龍よ、出てこい、喰らえ、俺に尽くせ。てめぇの主のため汚ぇ道を開けやがれ!融合召喚、行きやがれ[キメラテック・ランページ・ドラゴン]!」

 

 

[キメラテック・ランページ・ドラゴン] ATK 2100→4200

 

 

「効果発動だ!召喚成功時に素材の数だけ魔法・罠を破壊する!さらにチェーンして墓地に送られた[ヘルツ]の効果だ、デッキから[サイバー・ドラゴン・ドライ]を手札に加える!」

 

「ぐっ...邪魔なチェーンだ!」

 

「対象はてめぇのフィールド魔法と、そこのセットカードだ!」

 

 

誘発効果により[ランページ・ドラゴン]へのチェーンを回避する。さほど難しいテクニックでは無いが、相手に妨害札があると分かっている現状では必要であり必須でもある

 

そして相手の反応から«цпкпошп»の推測も叶った

一樹は古賀にむくと1度は肯定した推理をもう一度否定した

 

 

「拓、やっぱあれは[アンブラル]だと思うぜ」

 

「確かにそんな反応だったけど...でも[アンブラル]だったら特殊召喚成功時にバック破壊が出るんじゃ?」

 

「ありゃ”時できる”だから出来ねー」

 

「プレミ...かな?」

 

 

[アンブラル]なら効果無効がある

[アンブラル]だと推測して動いていた方が失うものも少なくなるだろうし、一樹の心理は正しいとも言える

 

兎に角[ヘルツ]にチェーンが無いとなると一樹は相手のアドを削りに動く。最も初めにターンを開始したプレイヤーのセットカードと、恐らく[アンブラル]を持つプレイヤーのフィールド魔法を破壊しおえるとようやく[融合]による一連の処理が終わった

 

 

「さて...俺は[サイバー・ドラゴン・ドライ]を通常召喚!」

 

 

[サイバー・ドラゴン・ドライ] ATK 1800

 

 

「効果を発動する」

 

「一樹!あれは[アンブラル]なんじゃ...っ!」

 

「馬鹿め!俺は«цпкпошп»の効果を発動する!その効果を無効にし、手札と...っ!」

 

 

一樹がフィールドでモンスター効果を発動させた時、古賀と敵は同じような反応を見せた。それは効果発動に対しての否定的な意味を持つものだった

 

古賀は[アンブラル]である事を前提とし、ハンデスとライフ半分を恐れた感情を

そして相手プレイヤーは[アンブラル]である事を肯定するかのような勢いを見せた

 

結果として[ドライ]は唯の[サイバー・ドラゴン]とかした

が、どのプレイヤーのライフポイントにも変化は無い

 

 

「...何故だ、何故だ貴様らのライフは減らない!?」

 

「ハンデスとライフ半分は同時に行われねーんだよ。ハンデスしてからライフ半分だ、ハンデスが出来ねーんならライフも減らせねぇ」

 

「...あっ!」

 

 

東野は相手より早く合点がいったようだ

手札のおジャマを全て放出し切った東野の手札は0。故にハンデス処理が行えないためライフの減少も防ぐことが出来たのだ

 

しかし、古賀は最後の[巨神鳥]を握っており、一樹もまだ1枚カードを持っている。そこについて疑問に感じたのは一樹以外だろう

 

東野のそれを汲んだのか一樹は聞かれる前に答えた

 

 

「このディスクはチーム戦が複雑なんだよ。乱戦なら各々が手札捨てるんだが、今の俺らは1人のプレイヤーとして数えられてる。だから誰か一人でもハンデス出来ないとそもそも処理が行われねーんだ」

 

「...なんか随分詳しいな?特に[アンブラル]について」

 

「......少し前にめんどくせー奴に付き合わされたばかりだからな。嫌でも覚えてた...いや思い出した」

 

 

それは慎也の事だった

あの日SR(スピ-ドロイド)以外のデッキの相手もさせられ、多勢への対策、処理の違い等嫌になるほど繰り返したのだ

 

[アンブラル]だってそうだ、その時嫌になるほどテキストを読み返したのだ。

しかし慎也の場合は、いかにして[アンブラル]のコントロールを守るかの対策が主だったのだが...

 

 

「ハンデスに焦って効果を使ってくれて助かったぜ?」

 

「ぐっ...ぐぅ!」

 

「俺は[キメラテック・ランページ・ドラゴン]の効果を発動!デッキから[サイバー・ファロス]、[サイバー・ドラゴン]を墓地に送りこのターン3回攻撃を可能にする!」

 

 

3回攻撃で合計攻撃力は12600だ。非常に高い数値だが、各プレイヤー東野が特殊召喚したトークンを合わせてモンスターが残っているため、とてもじゃないが削りきれる値では無い

 

すると古賀が1枚のセットカードを発動させた

一樹の視線を感じ、一樹のプレイングを見ていた古賀にとってはそれだけで発動を促しているのだと伝わったようだ

 

散々確認画面を開いていた、発動することのなかった永続罠が表を上げたのだ

 

 

「俺は永続罠[DNA改造手術]を発動!フィールドのモンスターは全て俺が指定した種族になる!」

 

「な、なんだと?」

 

「はっ!拓、お前何族にするんだよ?」

 

「そりゃ俺は[スワローズ・ネスト]が打ちたいからこれ入れたんだよ?」

 

 

やや皮肉めいた口調で訪ねた一樹に対し、古賀はコミカルに微笑んだ。段々とこの異端の戦地を楽しみ始めたのだろうか、この2人は嗤っていた

 

[assla Pisc(アスラピスク)]にアクセスするつもりだったのだろうか、無理やり種族を鳥獣にする永続罠の処理が始まった

 

しかし、選択されたのは無論鳥獣では無かった

 

 

「だけど今回は”機械族”で!」

 

「いいじゃねぇか、圭!」

 

「うん!僕は墓地の[おジャマ・デュオ]の効果を発動!デッキから[おジャマ・イエロー]と[おジャマ・ブラック]を特殊召喚する!」

 

「...ま、まさか!」

 

 

[おジャマ・イエロー] ATK 0→1000

 

[おジャマ・ブラック] ATK 0→1000

 

 

ここで優先権が一樹に戻った

そしてフィールドには機械族モンスターのみが存在している。最早誰しもが一樹の狙いがを理解し、恐怖か期待のどちらかの感情のみがうまれるだろう

 

 

「俺はフィールドの[サイバー・ドラゴン・ドライ]とテメェらの«цпкпошп»全部を融合させる!」

 

 

«цпкпошп»の色なきカードらを多く巻き込んだ融合召喚だ。それはもはや融合と言うべきか、全てを飲み込む異形の何かだった

 

 

「おらぁ!異形の機械龍!まどろっこしいのはもう終わりだ!全部だ、全部を喰らえ!敵も味方も贄も餌も関係ねぇ、終わらせろ![キメラテック・フォートレス・ドラゴン]!!」

 

 

[キメラテック・フォートレス・ドラゴン] ATK 0→7000

 

 

「そして[サイバー・レヴシステム]を発動、墓地から[サイバー・ドラゴン・ドライ]を特殊召喚する。そして今度は圭のおジャマ2体と[マネキンキャット]、[カラントーサ]と拓の[ブラックフェザー・ドラゴン]とおジャマトークン2体と[ドライ]で融合!暴れろ![キメラテック・フォートレス・ドラゴン]!」

 

 

[キメラテック・フォートレス・ドラゴン] ATK 0→7000

 

 

2体目の[フォートレス・ドラゴン]が現れた

これで少なくとも2名のライフポイントは削りきれる値まで辿り着いたが、やはり4人分には届かない

 

それでも一樹は気にせずバトルに突入していた

彼自身は終わらせる気なのだ

 

「おらぁバトルだ!2体の[フォートレス・ドラゴン]でてめぇーらにダイレクトアタックだ!」

 

「ぬわぁぁぁ!!」

「ぐぅぅ!」

 

 

«цпкпошп» A

LP 7200→200

 

«цпкпошп» B

LP 7200→0

LOSE

 

 

「そして[ランページ]でてめぇに2回!てめーに1回ダイレクトアタック!!」

 

「ぐぐ...ぐおおおっ!」

「ぐわぁ!?」

 

 

«цпкпошп» C

LP 7200→2900→0

LOSE

 

«цпкпошп» D

LP 7200→2900

 

 

「くっ...だがまだだ!大した攻撃力だが我々を削りきるには足りなかったな!次の私のターンでがら空きの貴様ら2人を葬ってくれる!」

 

「だとよ、拓」

 

「それは嫌だね、俺は[戦線復帰]を発動!墓地から[ノートゥング]を特殊召喚するよ!」

 

「なん...だと?」

 

 

古賀のターンをあまり見ていなかった一樹も、敵のライフを見れば古賀がBF(ブラック・フェザ-)の展開において[ノートゥング]を経由していた事など簡単に予想が着く

 

そして先程確認したセットカードは[戦線復帰]と[ゴッドバード・アタック]。融合素材にしたかったため後者の出番は早めに無くなっており、前者は一種のバーンカードのように使われる事になった

 

[ノートゥング]の特殊召喚成功時の効果は2つとも強制効果だ。そしてモンスターが居なくともバーン効果は適用される。古賀も充分に勉強してきた処理だ

 

 

「[ノートゥング]の効果発動!相手に800ポイントのダメージを与える!」

 

「俺はく、喰らわん!手札の«цпкпошп»の効果発動!このターン効果ダメージを受けん!」

「お、おい!ぬうぉぉぉおおっ!」

 

 

«цпкпошп» A

LP 200→0

LOSE

 

«цпкпошп» D

LP 2900→2900

 

 

残ったプレイヤーは、最後にターンが巡るプレイヤーだった。つまり、このまま一樹がターンを終えても次に東野、次に拓郎のターンが回ってくる

 

勝機は皆無と言える

諦めに近い雰囲気を纏ったそのプレイヤーにトドメを指すかのように、一樹は最後の手札を使用した

 

 

「足りねぇ...いや、おい圭!なんか蘇生カードあるか!?」

 

「...あるよ!」

 

 

一樹は1枚の融合モンスターを見せながら東野に残りのセットカードについて問うた

敵の残りライフとそのモンスターのステータスから東野は一樹のやらんとしている事をいち早く理解し、貢献することを決意した

 

 

「拓、使うぞ!」

 

「やっちまえ!」

 

「行くぜ、俺は速攻魔法[瞬間融合]を発動!俺のフィールドの[ランページ]と拓の[ホーク・ジョー]、[ノートゥング]を融合!機械仕掛けの龍よ、永き嘆きに終止符を打ってやれ。介錯はしねぇ、走馬灯に怯えて沈みな!融合召喚、トドメだ[サイバー・エタニティ・ドラゴン]!」

 

 

[サイバー・エタニティ・ドラゴン] ATK 2800

 

 

「...は、ふはは!足りてないじゃないか!モンスターも使いきってまでなぜそのモンスターを!」

 

 

攻撃力は残りライフに100届いていない

さらに古賀のモンスターを全てを利用したため、次の東野がモンスターを引かなければトドメを指す事も分からなくなる

 

だが、ここで東野がカードを発動させた

ここに来て最高の連携プレーを叶えようとしたのだ

 

 

「一樹君、プレゼントだ!僕は[リミット・リバース]を発動!墓地の[おジャマ・イエロー]を特殊召喚!」

 

 

[おジャマ・イエロー] ATK 0→1000

 

 

「...完璧だ![おジャマ・カントリー]の効果で[エタニティ・ドラゴン]の攻守が入れ替わるぜ」

 

 

[サイバー・エタニティ・ドラゴン] ATK 2800→4000

 

 

「き、貴様ら...っ!」

 

「堪能してくれ、[サイバー・エタニティ・ドラゴン]でダイレクトアタック!”エタニティ・エヴォリューション・バースト”!!」

 

 

見事な連携プレーだ

古賀のバトルフェイズを迎えること無く彼らのカードの繋がりはゲームエンドへ導く数値を無理やり叩き出す事に成功させた

 

 

 

LP 2900→0

 

 

 

 

ーーー

ーー

 

 

「最後のカードなんだったと思う?」

 

「[ハネワタ]」「[ハネワタ]じゃないかな?」

 

「...うん、[ハネワタ]で正解![オネスト]じゃなくたったね?」

 

「今思えば[アンブラル]に[オネスト]使えねーし、[ノーブル・デーモン]ならそもそも融合素材にするしかなかったしな。[オネスト]を警戒する必要が無かったな」

 

 

古賀は最後に倒れたプレイヤーのディスクから[ハネワタ]のカードを抜き取り一樹らに提示した

一樹が中盤に放った「面倒臭いデッキ」について、古賀が相手の手札と見比べたのだろう

 

その瞬間、辺りから同じように決闘(デュエル)終了のブザーが共鳴する様に鳴り響いた

 

 

「こっちは終わったよ!」

「俺もじゃ!」

 

 

聖帝側の勝利だ

視界の中で屹立している決闘者(デュエリスト)で、黒服を纏っている人物はあと1名だけだった

 

その相手は松橋だ

依然泥仕合を繰り広げているようだがまだ敗北はしていない

 

 

「...ハッ、最後はあいつかよ」

 

「なんか不満なのか?」

 

 

最後の敵を倒すのは松橋

それはまるで聖帝側に負ける要素がないと断言するかのような発言だった

 

一樹はそういった自分の心境の変化に戸惑う事も程々に、唯一倒れてしまった斎藤を抱えて肩を貸すとその松橋の決闘(デュエル)を見届けるべく近寄って行った

 

それに連なるように古賀達も松橋を応援すべく集まった

 

 

聖帝の凱旋は近かった

 

 

 

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