遊戯王が当たり前?→ならプロデュエリストになる!   作:v!sion

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こ、今度こそペースアップします!


※いつになるか分かりませんが、«цпкпошп»編が終わったらルール4に変更します

カードプール的な問題もありますが、やはりルール4でやってみようと思いました


第八十二話 非力な王と硬い外堀

◑聖帝大学 / 午後16時5分

 

 

「松橋じゃん!」

 

「お、おう灰田」

 

 

格好のつかない登場だったのは松橋だった

彼は構内大会にこそ出場していたが、結果は初戦敗退。

 

灰田には名前を覚えて貰っていたようだが、長時間潜伏していたことからか少しだけ場違いな印象を作っている

 

だが彼は戦いを決意したのだ

同じ聖帝大学の生徒として、母校を守ると

 

 

「お友達とのお話は後にしな」

 

「...分かってるよ。始めよう」

 

 

ディスクが繋がっている黒服の男と対峙すると、いよいよ戦闘が始まろうとする。

 

まだ恐怖心はあった

それでも想い人の顔を浮かべると、逃げる事などできるはずもなかった

 

敗北が何を意味するかは分からない

勝利したとしてもまだ多くの敵が残っている

 

でもやるしかなかった

 

 

「「決闘(デュエル)!!」」

松橋 LP 8000

«цпкпошп» LP 8000

 

 

「先攻は俺だ。俺はデッキトップを3枚裏側で除外し、手札からフィールド魔法[トゥーン・キングダム]を発動!」

 

「ほう、貴様はトゥーン使いか」

 

 

たった1枚のカードだけでカテゴリーが判明した

彼のトゥーンデッキはロックよりの構築であり、先攻を取れたこととフィールド魔法が引けたことは非常に大きい

 

 

「[トゥーン・ジェミナイ・エルフ]を通常召喚!」

 

 

[トゥーン・ジェミナイ・エルフ] ATK 1900

 

 

「そしてカードを3枚セットしてターンエンドだ!」

 

 

松橋 手札:0枚 LP 8000

 

モンスター/ [トゥーン・ジェミナイ・エルフ] ATK 1900

 

魔法・罠 / リバース3枚

 

フィールド/ [トゥーン・キングダム]

 

 

大胆にも手札を全て使い切った先攻だった

 

 

 

 

「俺のターン、ドロー。俺は«цпкпошп»召喚する!」

 

「ん?...なにこれ」

 

 

«цпкпошп»を初めて目にした松橋の反応は困惑のそれだった。無理も無い、そもそもの急襲自体に恐怖を覚え、やっと戦場に足を踏みえれれば次に«цпкпошп»とまた未知なるものが現れたのだ

 

彼は«цпкпошп»を目にした者達の中でも、エラーを疑う珍しい反応だった。暫く己のディスクを操作してみたが、«цпкпошп»が改善される事は無い

 

少し遅れて改造の一種だと理解したが、結局それもなんの意味もなかった

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「アンノウンって何だよこれ...効果出ないの!?」

 

 

松橋は固まってしまった

«цпкпошп»という未知なる存在に振り回され、己がなすべき事を見失いかけている

 

だが今日1つ学んだばかりだ

考えても悩んでも怯えても、行動に移しておけば自ずと道は開かれると

 

今だってそうだ

恐怖心を拭うよりも先にこの場に来たのだ

ならば考えるのは後だ

 

 

「«цпкпошп»の効果を発動するぜ」

 

「もういい...その、アンノウン?の召喚成功時に罠発動![黒魔族復活の棺]を[ヂェミナイ・エルフ]とそのモンスターを対象に発動!2体を墓地に送り、俺はデッキから闇属性・魔法使い族モンスターを特殊召喚する!」

 

「ほう?」

 

「何も無いな?来い、[トゥーン・ブラック・マジシャン]!」

 

 

[トゥーン・ブラック・マジシャン] ATK 2500

 

 

「ど、どうだ!」

 

「ふん、少しはやるようだな。«цпкпошп»の効果でデッキから«цпкпошп»を手札に加える」

 

 

相手のモンスターの召喚を無効にしたことに満足しているようだが、«цпкпошп»慣れしている人間なら対象に取れたことを考えるだろう

 

さらには召喚成功時に何かサーチをしている

あまり考えない選択をしたからか、些か見逃す物が多いプレイングだ

 

 

「俺は«цпкпошп»を墓地の«цпкпошп»を除外して発動する。デッキトップ2枚のうち、«цпкпошп»を手札に加え、«цпкпошп»を墓地に送る」

 

「魔法も«цпкпошп»なのか.....」

 

「ついてこいよ?貴様のフィールドにのみモンスターがいる時、手札の«цпкпошп»は特殊召喚できる!」

 

 

«цпкпошп» DEF ?

 

 

「さらにこの方法で特殊召喚に成功した時、墓地の«цпкпошп»を特殊召喚できる!」

 

「ずるい!?」

 

 

«цпкпошп» DEF ?

 

 

「さらに«цпкпошп»の効果を発動、«цпкпошп»のレベルを変更する」

 

「何それ...完全にエクシーズの効果じゃん」

 

 

«цпкпошп» ☆ ?→?

 

 

「あぁ、俺は«цпкпошп»と«цпкпошп»でオーバレイ、«цпкпошп»をエクシーズ召喚!」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「バトルだ、«цпкпошп»で貴様の[トゥーン・ブラック・マジシャン]に攻撃!」

 

「俺は[トゥーン・キングダム]の効果で破壊を防ぐ...ぐっ!?」

 

 

松橋 LP 8000→7900

 

 

攻撃力の差はたった100で、デッキトップを裏側で除外する事でモンスターの戦闘破壊を免れた

 

起こった出来事はそれだけなのだが、松橋にとっては決闘撃痛(デュエルショック)も未知の技術だった

 

たった100の痛みに悶え、理解が追いつかない表情でいる。«цпкпошп»の攻撃力の計算も忘れ、只只痛みが収まるのを希っている

 

 

「おいおい、たった100ダメージだぞ」

 

「なっ...んだよこれ!」

 

「場数が足りないようだな...俺はメイン2にカードを2枚セット、フィールド魔法«цпкпошп»を発動してターンエンドだ!」

 

 

«цпкпошп» 手札:2枚 LP 8000

 

モンスター/ «цпкпошп» ATK ?

 

魔法・罠 / リバース2枚

 

フィールド/ «цпкпошп»

 

 

 

「くっ...俺のターン!」

 

 

お互いにフィールド魔法と、セットカードが2枚。フィールドのモンスターは一体ずつと一見均等しているかのようだ

 

だが、ライフポイントは100の差があり、手札は松橋のドローフェイズを含めて1枚差。あちらのフィールドにはエクシーズモンスターがいることも考えると、消費手札の差は歴然だ

 

どこかでアドバンテージを稼がなければ先は無い

しかし、トゥーンならライフポイントの差は用意に稼げるだろう

 

 

「俺は[トゥーン・ブラック・マジシャン]の効果を発動!手札の[トゥーン・マーメインド]を捨て、デッキから[レッドアイズ・トゥーン・ドラゴン]を特殊召喚する!」

 

 

[レッドアイズ・トゥーン・ドラゴン] ATK 2400

 

 

「バトルだ![トゥーン・ブラック・マジシャン]でダイレクトアタック!」

 

「ちぃっ!」

 

 

LP 8000→5500

 

 

「トゥーンはダイレクトアタックがある...これで行くしかない!俺はターンエンドだ!」

 

 

松橋 手札:0枚 LP 7900

 

モンスター/ [トゥーン・ブラック・マジシャン] ATK 2500

 

     / [レッドアイズ・トゥーン・ドラゴン] ATK 2400

 

魔法・罠 / リバース2枚

 

フィールド/ [トゥーン・キングダム]

 

 

「ふん、これぐらいすぐ返してやる。ドロー」

 

 

トゥーンモンスターによるダイレクトアタックの存在が優劣を分かりづらく動かした。だが手札は3枚差まで広がっている

 

«цпкпошп»と相まって情報面のアドバンテージは握られたまま。対する松橋にある勝機はこのままライフの差を開く事。両者勝ち筋が異なり、先は全く見えないものとなった

 

 

「俺は«цпкпошп»を通常召喚、効果により手札から«цпкпошп»を特殊召喚する」

 

 

«цпкпошп» ATK ? ☆?→?

 

«цпкпошп» DEF ?

 

 

「またレベル変動か」

 

「それぐらいは見てもらわないとな。俺は«цпкпошп»と«цпкпошп»でオーバレイ、«цпкпошп»をエクシーズ召喚!」

 

 

«цпкпошп» DEF ?

 

 

「そして«цпкпошп»を発動、«цпкпошп»のORUを2つ取り除き2枚ドローする」

 

「それは...なんてカードだったけか...」

 

 

敵の手札が増えると同時に、また松橋は混乱のようなものを患った。カード名は«цпкпошп»において重要度は限りなく低い

 

あったはずの記憶の捜索よりも、その効果と他のカードとのシナジーからより早期の使用デッキの判明が求められる。現に松橋がそのカード名を思い出すよりも早く、敵は引いたカードをすぐに使用していた

また新たな情報だ

 

 

「俺は«цпкпошп»を発動、効果はそっちのディスクにも出てるだろう」

 

「ん...コントロールの入れ替え!?[強制転移]か!?」

 

 

敵はいまエクシーズ召喚したばかりのモンスターを、対する松橋は対抗する手段が無いか必死に探った後に[レッドアイズ]のトゥーンを泣く泣く差し出した

 

問題はここからだ

 

わざわざ送り付けてくるのだからこちらに有利なモンスターでは無いだろう。«цпкпошп»についてまだ不慣れな松橋は、送り付けられたモンスターが«цпкпошп»を纏っていなかった事よりも、そのモンスターのステータスに驚くだけだった

 

 

[No.30 不滅のアシッド・ゴーレム] DEF 3000

 

 

「い、いらねー!」

 

「そんな事言うなよ、バトルだ。«цпкпошп»で[トゥーン・ブラックマジシャン]に攻撃!」

 

「き、[キングダム]の効果で破壊を免れる!ぐぅっ!」 

 

 

松橋 LP 7900→7800

 

 

「俺はこれでターンエンドだ」

 

 

«цпкпошп» 手札:1枚 LP 5500

 

 

モンスター/ «цпкпошп» ATK ?

 

     / «цпкпошп» ATK ?

 

魔法・罠 / リバース2枚

 

フィールド/ «цпкпошп»

 

 

「ど、ドロー!」

 

「スタンバイフェイズに[アシッド・ゴーレム]の効果を処理して貰おうか!ORUを取り除くか2000ポイントのダメージを受けてもらう!」

 

「ぐっ...ぐわ!」

 

 

松橋 LP 7800→5800

 

 

敵は毎ターンこのバーンダメージと合わせ、2100ポイントのダメージを与えてくる。対する松橋は[トゥーン・ブラックマジシャン]の2500と上回っており、ターンが回れば敵の方が先に絶えるだろう

 

だがしかし、それは[強制転移]が打たれなかった場合のケースだ。

 

今は相手のフィールドにトゥーンモンスターが存在している。故にトゥーンのダイレクトアタックの条件が満たされていない

 

松橋はこのターンからダメージを与えられないという事になる。相手の[レッドアイズ・トゥーン・ドラゴン]を処理するか、自分のフィールドの[アシッド・ゴーレム]を除去しなければライフアドバンテージさえも取られてしまう

 

 

「くっ...だけどいいカードを引いたよ。俺は[コミック・ハンド]を発動!」

 

「貴様もコントロールカードか」

 

「これで俺のトゥーンを...?」

 

 

今抱えている問題の内、前者を解決できるはずの装備魔法だが、ここで松橋にはもう1つの問題が生まれた

 

それは«цпкпошп»によるモンスターの判別困難だ。しっかりと相手フィールドを確認していれば奪われたトゥーンモンスターを取り返すことも可能だったのだが、松橋には2体いるうちの«цпкпошп»のどちらが[レッドアイズ]なのか分からなかった

 

それどころか自分のモンスターが«цпкпошп»化していることにさえ今気がついたばかりだ

完全に«цпкпошп»を相手取る上での悪手と言える

 

 

「くっ...」

 

「おいおい、まさかどっちが自分のモンスターなのか分からねぇのか?」

 

「う、うるさい!2分の1だ...俺はそっちのモンスターに[コミック・ハンド]を装備する!」

 

 

コントロールが入れ替わると、«цпкпошп»も剥がれる。少し遅めの理解だったが、松橋にもやっとそれが分かったようだ

 

だが、選択は誤っている

松橋のフィールドに現れたのは見覚えのないモンスターだった

 

 

[No.6 先史遺産(オ-パ-ツ) アトランタル] ATK 2600

 

 

「あ...あれ?」

 

「それは俺のモンスターだ。まさか2分の1も外すとはな...」

 

「ち、ちくしょう...っ!」

 

 

トゥーンを取り返せなかった事しか見えていないようだ

 

今は松橋のモンスターのため、ORUを含めた細かな情報まで確認可能なのだが、やはり彼にはそこまで機転が回らない様子だ

 

敵もそれを感じたのか、呆れた様子でいると、松橋は半ばヤケクソにも感じられる勢いでバトルフェイズに突入した

 

 

「仕方ない、バトルだ![トゥーン・ブラック・マジシャン]で俺の[トゥーン・レッドアイズ]に攻撃!」

 

「なら俺もフィールド魔法«цпкпошп»の効果を発動しよう。デッキから«цпкпошп»を墓地に送り、破壊を免れるっ!」

 

 

«цпкпошп» LP 5500→5400

 

 

「それも破壊耐性か...なら[アトランタル]でもう一度攻撃!」

 

「チッ!」

 

 

«цпкпошп» LP 5400→5200

 

 

2度目の戦闘時には破壊耐性効果を使わなかった

これも«цпкпошп»を相手取る上での重要な情報と言える

 

使わなかったのか、使えなかったのか

 

トゥーンモンスターを奪えたのなら維持しておきたいため、恐らく後者なのだろう。それぐらいは松橋も直感で理解したようだ

 

 

「それはターン1なんだな、俺はターンエンドだ!」

 

 

松橋 手札:0枚 LP 5800

 

モンスター/ [No.6 先史遺産(オ-パ-ツ)アトランタル] ATK 2600

 

     / [No.30 不滅のアシッド・ゴーレム] DEF 3000

 

     / [トゥーン・ブラック・マジシャン] ATK 2500

 

魔法・罠 / リバース2枚

 

     / [コミック・ハンド]

 

フィールド/ [トゥーン・キングダム]

 

 

 

「俺のターンだ、さてそろそろだな」

 

 

敵がドローを終えた瞬間、何か企むような言葉を吐いた。勘のいい決闘者(デュエリスト)なら松橋のフィールドを見ただけで分かるかもしれないが、それは非常に強力かつ非情なコンボだ

 

松橋本人はまだ何も気がついていないようだが

 

 

「俺はここでセットしておいた«цпкпошп»を発動する。墓地の«цпкпошп»を特殊召喚!」

 

 

«цпкпошп» DEF ?

 

 

「蘇生カード?」

 

「まだだ、フィールド魔法がある時、こいつは手札から特殊召喚できる!」

 

 

«цпкпошп» DEF ?

 

 

「さらに«цпкпошп»の効果だ、«цпкпошп»のレベルを変更する」

 

 

«цпкпошп» ☆?→?

 

 

「その効果は見たな...」

 

「まぁな、俺は«цпкпошп»と«цпкпошп»でオーバレイ、«цпкпошп»をエクシーズ召喚!」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「そして«цпкпошп»を発動!«цпкпошп»をランクアップさせる!」

 

「なに!?」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「どうした?そろそろそのセットカードを発動するか?」

 

「くっ、そうさせてもらうよ!」

 

 

思えば前にもこのカードの発動タイミングに悩まされていた事があった。大胆な破壊効果に憧れてデッキに採用していたのだが、慎也と前に戦った時は全く意味をなせなかったカードだ

 

それが今こそ意味を成すだろうと希望を抱いて温存していたカードを表に返した

 

 

「召喚成功時、罠[激流葬]を発動!フィールド上の全てのモンスターを破壊する!」

 

「ほう」

 

 

トゥーンモンスターは[キングダム]で破壊されない

[アシッド・ゴーレム]は守ってやれないが、この発動はそれの破壊も目的だった

 

これはついでに相手のエクシーズモンスターも破壊できる、非常にアドバンテージに繋がる発動に見えた

しかし、相手にもセットカードが残っている

 

 

「チェーンして«цпкпошп»を発動、フィールドのNo.モンスターは効果では破壊されない」

 

「...え、俺の[アシッド・ゴーレム]も......っ!?」

 

「元は俺のだがな」

 

 

[激流葬]が発動されたのにも関わらず、フィールドに居た両者のモンスターは1体も破壊されずに終わった

 

松橋は耐性の為のコストを払ったが、相手は«цпкпошп»を発動しただけだ。それも場に残っている。

 

 

No.モンスターに破壊耐性を与える永続罠

これは前に慎也に発動された[ナンバーズ・ウォール]だろうか。またも[激流葬]は失敗に終わってしまった

 

 

「さて、効果を発動だ、貴様の...いや俺の[アトランタル]を返してもらおう」

 

「またコントロールが...え?」

 

 

フィールドをモンスターが行き来するのを松橋は見届けたつもりでいた。しかし、松橋のフィールドにいたはずの[アトランタル]は、姿を消してしまっている

 

«цпкпошп»の数も変わっていない

どこにいったのかディスクでカードを追うと、相手の魔法・罠ゾーンに«цпкпошп»が増えたのがわかった

 

装備カード扱いとして奪う効果のようだ

段々と«цпкпошп»と言う異常な決闘(デュエル)に慣れてきた頃、松橋に脅威が襲った

 

 

「装備カードとORUを全て墓地に送り、«цпкпошп»の効果を発動!」

 

「......は?えっ、ちょ!」

 

 

どういう効果か、ディスクに現れるだろう効果テキストを待っていると驚くべきものが映された

 

今はチェーン確認の段階だ

発動してしまった以上無効にする以外にその効果を避ける方法は無い。効果を見たいが故に判断が遅れてしまった結果だ

 

全く予想していなかったそれに、松橋は相手の効果を見過ぎたと後悔した。最早このタイミングで逃げる手段は残されていなかったからだ

 

 

松橋 LP 5800→100

 

 

「ら、ライフが...っ!」

 

「安心しな、この効果後はダメージを与えられない」

 

「そ...そうか、それなら.....っ!?」

 

 

ディスク越しに«цпкпошп»が見せない効果を確認し終えると、一先ず松橋は安堵した

 

が、それは刹那の出来事だった。そのテキストの後ろには松橋のフィールドにいるモンスター達が見えている。相手から送り付けられた[アシッド・ゴーレム]が嫌に映えていた

 

 

「こ、これ...次のスタンバイに...」

 

「あぁ、バーンで死ぬな」

 

 

詰みか

松橋の脳裏を過ぎったのはそれだった

 

松橋が次のターンにドローを終えると、すぐさま[アシッド・ゴーレム]のバーン効果が処理される

 

可能ならこのターン中に、遅くとも次のドローフェイズ中に処理出来なければその場で敗北となる

見るからに焦りの汗をかいている松橋に、それは可能なのだろうか

 

 

「俺はカードを1枚セットしてターンエンドするぜ」

 

「くっ...な、何かないか!?」

 

 

手札は無い

除去すべき[アシッド・ゴーレム]は破壊耐性を持ち、永続効果で他のモンスターの特殊召喚も叶わない

 

 

「俺はエンドだ、早くドローしな」

 

「えっ...ちょ、ま...」

 

 

言語すら忘れてしまったのか、焦りを通り越して松橋は混乱を極めている

 

負けたく無いが、ライフポイントが無い

それを守るカードを引くにはドローフェイズに入るしかないが、次のスタンバイにバーンがある

 

このターンに出来ることと言えば次のドローフェイズに良きカードが引けることを願うだけだろうか

 

だが松橋はそれすらもせずに、ただディスクが時間を告げ、ドローを促しているのを見ているだけだった

 

 

「...」

 

「どうした、早くドローしろ!」

 

 

何となく辺りを見渡してみた

周りでは松橋と同じように聖帝の戦士達が各々戦いに身を投じていた

 

灰田はもうすぐ決着がつきそうだ

黒川も大丈夫だろう

名前は分からないが他の2人の女性も強気で戦っている

 

遠くにいる先輩達も疲れは隠せていないが、全力を出しているのだろう

 

古賀は何をしているのだろうか、ここからではよく見えないが、少なくとも決闘(デュエル)をしているようには見えない

 

 

そして自分はどうだろうか

残りの謎の集団の数を見ると、自分一人が負けた所で戦況に響くようには思えない

 

周りは自分なんかよりもずっと強い

自分なんかが出しゃばるべきじゃなかった

 

今の松橋に残っていたのは、そもそも戦闘に参加した事への後悔だった

弱くはないと思っていたのだが、松橋は弱かった

 

 

「...ドロー」

 

 

仕方なくドローフェイズを迎えた

ディスクと相手がうるさいからだ

 

 

 

 

ーーー

ーー

 

 

 

「本当に思い出せねーか?」

 

「うん。まったく...でも俺もどこかで君と会ってる気がするよ」

 

 

少し離れた位置に、古賀と一樹が言葉を交わしていた

話題はお互い初対面だと思えないことについて

 

戦いの最中にわざわざ話すべき事ではないが、どうしても一樹は気になって仕方ないらしい

しかし両者答えは同様「思い出せない」だった

 

平行線を辿っていると、いい加減しびれを切らした敵の数名と斎藤が声を荒らげた

 

 

「[五光]でダイレクトアタック!......古賀くん!...とキミ、悪いがお話は後にしてくれ!」

 

「貴様ら、呑気にお喋りとは余裕だな...!」

 

「ぬおおおぉっつ![グレート・マグナス]でダイレクトアタックゥゥウ!」

「ぬあぁっ!?」

 

 

斎藤がまた決闘(デュエル)を終えた瞬間、すぐ近くの早乙女もまたダイナミックに決闘(デュエル)を終わらせた

 

珍しく声を荒らげた斎藤に対し、その早乙女も同意見の様子だ。離れた位置で軽い放心状態の松橋を指さすと、力強く発した

 

 

「お前さんら!今この瞬間にもあいつがピンチなんだ!戦える俺らが戦わないでどうする!!」

 

「あ?うるせーよおっさん。てかなんで上裸なんだよ」

 

 

頭を掻きながら、今も尚決闘(デュエル)に参加する姿勢を見せない一樹は、取り敢えずと言わんばかりにその松橋の方を向いた

 

[アシッド・ゴーレム]が見える

だがそこまでのピンチには見えなかった

 

それを見据えたのか、早乙女が情報を付け加え後押しした

 

 

「見えんか?あいつの残りライフは100だ!もう時間が無い!!」

 

「いやふつーみえねーだろ。...てか残りライフ0で[アシゴ]って詰んでんじゃ...」

 

 

この瞬間

一樹の中にあった記憶の欠片が蠢いた

 

この地に来てから様々な異常があった。«цпкпошп»と決闘(デュエル)の強制開始の改造

 

何故か見覚えのある古賀

 

そして今見ている残りライフ100

 

 

改造、LP100

 

 

 

「...あ?」

 

 

 

どこかで見た。

その朧気な既視感は、自らの記憶だと確信した

 

だがまだ思い出せない

 

 

「分かったら一緒に戦ってくれ!」

 

 

依然として声を荒らげる斎藤の声が脳裏に響いた

 

 

煩い

 

 

「た、拓郎!僕達だけじゃもたない!」

 

 

ひ弱な東野の声も加わった。この声もどこかで聞いた事のあったようなものだ。だが今は、ひたすらに煩かった

 

 

 

煩い

煩い

煩い

 

 

 

「...分かった圭ちゃん。君、悪いけど話は後だよ。俺は戦う」

 

 

一樹一人残して斎藤らはまた戦いに身を投じようと離れた。

 

一樹の疑問は解消されないままかと思えたが、その古賀の声が最後のピースを埋めたのだった

 

古いパズルのように、全てのピースが埋まったものの歪な出来栄えだった

だが、完成はした

 

記憶と名のパズルに、全てのピースが揃った

 

 

「...おいまてや!」

 

「な、なに!もう喋ってる場合じゃないよ!」

 

「チッ.....だったら俺も戦ってやる。だからディスクを貸せ!」

 

 

古賀のディスクを掴んだまま、一樹は斎藤らの前に出た

 

彼の発言通りならやっと重い腰を上げたことになるが、斎藤らは怪訝な面持ちを隠さなかった

 

何をするつもりだ

斎藤が疑問を声にする前に、一樹は自らのディスクを操作し出した

これはS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)に身柄を拘束され、聖帝に送り出される時に受け取ったS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)のディスクだ。

 

自分のディスクに施した改造は無い

そう、過去に自分が行った数々の改造は無いのだ

 

 

「キミ...何をするつもりだい?」

 

「思い出したんだよ...ぜーんぶな」

 

 

答えにはなってなかった

だが、記憶を取り戻したのは斎藤も同じだ

 

一樹と初めて目が合うと、今日思い出したばかりの記憶と一致した

 

あの時

古賀と東野、そして高城と共に戦った、暁星から攻めてきた不良集団のリーダー格の男だ

 

 

「...っ!キ、キミはあの時の...っ!?」

 

「なんだ、あんたも思い出してたのか」

 

 

古賀と東野はまだピンと来ていない様子だが、一樹は気にせず続けた

 

 

「おいあんた、あの時の女はいねーのか?」

 

「...高城クンの事か?彼女は今日はいない」

 

「え、君がなんで高城さんのことを...?」

 

 

東野の質問を無視すると、一樹は非常に気持ちのこもった舌打ちを一つした

 

聖帝の事も、この訳の分からない集団の事も、S・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)の事も彼にとってはどうでもいい事だ

 

だが、斎藤らは違う

聞かなければならないことが山ほどある。そのためにはやはりS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)の命令通りここにいる敵を殲滅するしか叶わないようだ

 

それを理解した上での怒りだった

 

 

なんでこいつらとやんなきゃならねーんだ

 

 

だが、彼が思い付いた作戦は彼らの協力が無ければ成り立たない物だった

 

不服

それ以上の言葉を知らない一樹はそれを噛み締めると意を決したように己の作戦を語った

 

 

「おいおめーら、耳かせ」

 

「...えっ!?」

「そ、それって...」

 

 

斎藤にはその作戦を話さなかった

わざわざ言わなくとも、一樹が持つ1枚の融合モンスターを見れば伝わると確信していたからだ

 

古賀と東野は驚愕していた

それは突飛な作戦だからか、思い当たることがあるからだろうか




松橋君の事覚えてた人いますか?
僕は若干忘れてました←

プロット読み返してた時、松橋君の再登場ってのがあって誰だっけ?ってなりました。


〜おまけ〜



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▶3位: 占術姫ダイス DL : 99.369 -DOWN-
>>>>アルカード社

・占術姫のモンスター達が描かれたサイコロ!何と降る度に[タロットレイ]に占ってもらえる演出付き!プロ決闘者(デュエリスト)でも数名の方がこのオプションヴィジョンを設定していました!ブームが去ったのか先月と比べてダウン!


〇オプションヴィジョン(コイントス)

▶1位: カラフルコイン DL : 119.465 -UP-
>>>>株式会社-届かせる夢-

・表裏を好きな色に設定出来る自由度の高いオプションヴィジョン!貴方が好きな組み合わせは黒と紫?緑と白?裏が赤?表が青?追加コンテンツで虹色も!迷ったらこれ!

▶2位: モリンフェンコイン DL : 114.514 -UP-
>>>>株式会社KUZ

・また[モリンフェン]!?どうやらコアなファンが多いようです(汗。緩やかにランキングを登っていく[モリンフェン]の姿は、少しだけ怖いですね...!それよりもこの会社はどれだけ[モリンフェン]を推すのでしょうか...?

▶3位: 天邪鬼コイン DL : 996.147 -UP-
>>>>マニファニ社

・いわゆるユニークオプションと呼ばれるもの!なんと表には裏、裏には表と書いてある非常に分かりづらいコイン!使いづらいと思うのですが、どうやら達筆な字に魅力を感じる人もいるとか...


※オプションヴィジョン
決闘(デュエル)ディスクが映すソリッドヴィジョンの中でも、細部を設定するための機能。ダイスロールやコイントスを行う際、他者との差別化を図る目的がある。有料コンテンツだが、無料のものもある。

 また、政府の許可無く個人的にオプションヴィジョンの制作及び決闘(デュエル)ディスクの改造、干渉は法律で禁じられています

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