遊戯王が当たり前?→ならプロデュエリストになる! 作:v!sion
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「...やっぱりこのカードは発動タイミングがネックですよね」
「えぇ、ですが[エッジインプ・シザー]や[エッジインプ・ソウ]とシナジーは噛んでいるかと」
これは何時、何処での出来事だっただろうか
辺りはザワザワと少し騒がしく、幾つもの
聖帝の
ザワついているのは他の利用客と、主に灰田の声
[オネスト]について黒川に熱く語っているようだが、詩織と草薙は話の輪に入ること無くカードをパラパラと眺めていた
感想戦と言えるものか
たった今詩織と草薙の
その時に発せられた言葉だった
何気無い会話だったと思っていたが、今にしてみればこの会話には学ぶことが多かったのかもしれない
「...ですがデストーイは充分な展開力と火力を持っていると思いますわ。どうしてこのカードに拘りを?」
「ふぇっ!?え、えっと...」
単純な疑問のつもりだった
しかし詩織は頬を赤らめ、バツが悪そうに口篭ってしまった。草薙が依然疑問の表情で詩織を見つめても、等々目すら合わせなくなってしまった
その詩織の目線を追うと、慎也がいた
その慎也は西条に自身の愛用するカードについて熱く語っている所だった
「だからね、このカードには無限の可能性があるんだよ!マドルチェだって[ホーットケーキ]のコストがトリガーになるでしょ?西条も使おうよ」
「い、いえ...マドルチェは墓地を肥やしたいテーマでは無いので...」
「墓地を肥やすだけじゃなくてピンポイントで落とせる所が強いんだよ。[タートル]と[バック・ジャック]と一緒にいれるだけでギミックとして使えるし、各属性相性のいいカードもある。例えば炎だったら[ヴォルカニック・カウンター]とか水なら[素早いアンコウ]でランク2か4のエクシーズにも繋げられるし、風なら...」
「ちょ、ちょっとそのくらいで...」
子供のような真っ直ぐな瞳で語り続けるその青年は、詩織が思いを寄せる人物だ
それは草薙も同じ事
エクストラデッキとメインデッキで少なくても3枚を使うギミックは入れて置けばいいという判断では中々採用出来ない
それでも詩織がデストーイに運用しているのは、恐らくその慎也の影響が殆どなのだろう
エッジインプとそのカードの相性がいいのは事実だが、想い人の模倣とは些かどうなのだろうか
そう刹那の時間草薙は思い浮かんだが、同時に自分のデッキには採用可能かを考えているあたり否定する立場には無いだろう
「い、一派逆転の手になるからですよ!デッキトップ操作をしないで発動できたら感動もしますし!」
「そ、そうですわね...」
確かにそうだ
この場はそれに収めることにすると、草薙は慎也の元へ迫って いった
「村上さん」
「俺だって本当は六武衆にも入れたいけどトリガーが無いから...ん?」
草薙の訪ねに慎也が反応すると、その隙に西条はそそくさと逃げ出し詩織の背後に隠れた
西条と慎也が何の話をしていたかまでは聞いていなかったが、慎也が手に持つカードを見ると西条が思わず逃げ出した理由も分かるだろう
慎也がキョトンとしていると、草薙は目的の問いかけを始めた
「村上さん、このカードについてなのですが」
「草薙も使うの!?」
「え、えぇ...まぁそういう所で。村上さんの紋章獸を前に拝見した時思ったのですが、デッキトップ操作が[バック・ジャック]のみとは些か不安には成りませんか?」
直に綺麗な視線を受けたのが恥ずかしいのか、草薙は頬を赤らめながらとあるカードの採用について本音を訪ねた
対する慎也の答えは否定では無かった
「不安とは違うかな」
「と言いますと?」
「これしか勝ち筋が無いんだったらそりゃ不安で仕方無いかもしれないけど...」
微かな微笑みを浮かべると、言葉を探す素振りも見せずに慎也は続けた
「やりたい事が出来たらで楽しいじゃん?その確率が低ければ低いほど嬉しいし...不安じゃない答えにはなってないかな?」
「いえ...いい思考かと」
全て納得出来たわけでは無かったが、慎也の笑顔をみるとそれもどうでもよく感じる
そうか
彼は出来ない事をしないのではなく、やりたい事をやろうとしているだけなのだ
確率や難易度を越えたそれに、最早敬意すらも混み上がっている
彼のそんな所もまた魅力の一つだった
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◑聖帝大学
「...っ!」
いい加減ディスクの処理の催促がうるさく思う時、色鮮やかな記憶と別れを告げた
今あの青年はいない
想っていた時間はあまり長く無く、別れを告げてからはまだ短い
その青年との再開は、今この場所での勝利で応えるはずだった。いや今もそのつもりだ
「[コバルト・イーグル]は魔法・罠ゾーンへ置き、[補給部隊]の効果でドローします!」
「今更威勢だけでどうにかならん!«цпкпошп»で...」
「待ちなさい!」
敵に行動はまだ許さない
この宝玉獣が破壊されたこの瞬間、まだ発動すべきカードが残っている
一瞬発動自体を諦めたそれは、宝玉獣が共通で持つ特殊な性質故に発動はまだ可能だったと思い出していた
彼女は、宝玉獣使いなのだ
「[コバルト・イーグル]が戦闘破壊されたこの瞬間!デッキから[サファイア]、[エメラルド]、[アメジスト]、[トパーズ]、[アンバー]、[ルビー]そして魔法・罠ゾーンの[コバルト]を墓地へ送り発動します!」
「な...なんだそのコストは?」
1枚のカードで7枚ものコストを要求する罠カード。
唯一無二の重すぎるコストは、宝玉獣使いにとっては喜んで支払えるもの
「[究極宝玉陣]を発動!」
姿を現すのは神
宝玉を司る、七色を越えた存在だ
喉を力いっぱい酷使して述べるのは召喚口上。神を演出するのには必要不可欠のそれだ
「七色を越えし神竜よ、大地を塗り、海原を染め、天空を描け!この世は無地、全て貴方色へと彩って差し上げなさい![究極宝玉神 レインボー・オーバー・ドラゴン]!」
[究極宝玉神 レインボー・オーバー・ドラゴン] ATK 4000
「...なるほどな、[カウンター・ゲート]の名に相応しい」
「私のデッキです。ピンチの時には必ず応えてくれますわ」
口では強がっているが、実際の所[コバルト・イーグル]を引くまでは敗北が過ぎっていた
結果論だ
全て上手くドローが噛み合っただけの偶然だ
その偶然こそが、彼女と彼女のデッキの友情だとも証明できるだろう
「面白い。俺はバトルフェイズを終了しターンもエンドする」
«цпкпошп» 手札:0枚 LP 5800
モンスター/ «цпкпошп» ATK ?
/ «цпкпошп» ATK ?
/ «цпкпошп» ATK ?
魔法・罠 / なし
「私のターン!」
通常ドローにより、手札は2枚になった
少し手札は少ないが、今引いたカードは間違いなく最高のカードだった
あの時の記憶が思わず蘇るほどに
「私が引いたカードは[
「っ!」
これには思わず敵も言葉を失ってしまった
宝玉獣に多くのギミックが入っている事はとっくに把握しているつもりだったのだろうが、草薙のデッキはその予測を遥かに超えていた
対局的に草薙は満面の笑顔になっている
慎也の言葉の意味がようやくわかった気がしたからだ
これか
これがやりたい事をやるという、簡単な事なのか
「メインフェイズに効果を発動!エクストラデッキから[No.107
[CNo.107
「効果を発動!フィールド上全てのカードの効果を無効にします!”時空独裁”!」
「くっ...ぐうぅっ!«цпкпошп»の効果発動!その発動を無効にして破壊するっ!」
これは読めていた
わざわざ蘇生カードで特殊召喚したのだからあの無効化効果を持つモンスターがフィールドに残っている事など«цпкпошп»でも分かる
だが[
そのため[
文字通り次の一手に繋ぐ役割を果たしたのだから
«цпкпошп» ATK ?→?
「[補給部隊]の効果でドローしますわ」
「もう«цпкпошп»を使う羽目になるとは...」
敵にやっと焦りが見えた時、草薙は高揚した
もう邪魔をするものは何も無いと
「[貪欲な壺]を発動します。墓地の[イグニスターP]、[ミスリエル]、[宝玉の先導者]、[マスターP]と[メタルフォーゼ・シルバード]をデッキに戻して2枚ドローしますわ!」
「ここでドローカードか...っ」
手札が3枚に落ち着くと、次第に最終目的が見え始めていた。そしてその為には些か邪魔なカードがまだあった
それは勝つためと言うよりかは、成すべきこと。やりたい事をやるためだった
「永続魔法[星邪の神喰]を発動します」
「[星邪の神喰]だと...?」
少しマイナーなカードの為か、敵はディスクでその効果の確認を急いだ
宝玉獣がわざわざ採用するその永続魔法とは一体どんな効果なのかと。言葉を失っているのは薄すぎるシナジーに驚いているからだろうか
「[レインボー・オーバー・ドラゴン]の効果を発動しますわ!墓地の[サファイア・ペガサス]を除外し、その攻撃力を頂きます」
「まさか...それだけの為に...」
[究極宝玉神 レインボー・オーバー・ドラゴン] ATK 4000→5800
「...やりたい事を成すのが私のスタイルですわ![星邪の神喰]の効果を発動!墓地のモンスターが一体のみ除外された時、デッキからそのモンスターと属性が異なるモンスターを墓地に送ります」
[サファイア・ペガサス]の属性は風
しかしジェムコンプリートを果たした今、わざわざ落としたいモンスターなどいるのだろうか
普通なら恐らく存在しない
だが草薙のデッキは、普通の宝玉獣では無い
「私はデッキから[アルカナフォース
「.....何なんだ一体...」
初見の相手を驚かせる
もしかしたらこれもまた”やりたい事”なのかもしれなかった
ならばまた1つ成し遂げていた
だがまだ終わってはいない。故に
「そして私の墓地にモンスターが10体以上存在する時!」
「今度は何だっていうのだ!?」
宝玉獣7体と今落としたアルカナフォース。
加えて[
現れるのは、これまたあの青年も使っていたカードだ
「無は無限に...そ、そして無限の光は時を越える。...陰りの知識よ、我が悪しき肉体に、時の神を顕現させよ...っ!お願いします[究極時械神セフィロン]!」
[究極時械神セフィロン] ATK 4000
「効果発動ですわ、墓地[アルカナフォース
「その為だけの...」
[アルカナフォース
「...む?」
敵はここで気がついた
草薙が[レインボー・オーバー・ドラゴン]の効果を発動していないことにだ
[クリスタルウィング]がフィールドに居ることは草薙にバレてしまっている。その為[クリスタルウィング]の攻撃力が7500まで上がっているのも暗算で分かっているはずだ
何を考えている?
敵は警戒より、疑いの気持ちで草薙を見据えた
「.....さて」
大して草薙は一度立ち止まり、今まで使用してきたカード達を反芻し始めた
何がデッキ残っているか、そして何を引きたいかを
ドローカードがある故の行動だが、草薙の残り手札にはモンスターカード1枚があるだけ
そして[レインボー・オーバー・ドラゴン]の効果を発動せずにここまで展開してしまった以上もうそれには頼る事は出来ない
だが決してプレイングミスでは無い
[貪欲な壺]で引いた以上使わずには居られなかったのだ
「私はフィールド上の光属性ドラゴン族である[究極宝玉神レインボー・オーバー・ドラゴン]と光属性天使族である[アルカナフォース
「[レインボー・オーバー・ドラゴン]をリリースだと!?今度は...一体っ!?」
この
だがこの召喚方法は今までで最も難易度の高いそれだろう
デッキに入れておいていい事の方が少ない、決して使いやすい訳では無いそのカードもまた、草薙の”やりたい事”の一つなのだろう
「眩き光の竜、天の使徒と交わりてこの世の真理に干渉する。我は正義の元に、その者の命をはかろう。顕現せよ[マアト]!悪しき者は喰ろうてしまいなさい!」
[マアト] ATK ?
「貴様ぁ...ふざけるのも大概にしろ!」
「私は真面目にやりたい事を成しているだけですわ。[レインボー・オーバー・ドラゴン]がフィールドを離れた時、墓地の[究極宝玉陣]の効果を発動します。墓地の[サファイア]、[コバルト]、を魔法・罠ゾーンに置きます」
これによりまた魔法・罠ゾーンをジェムが埋めた
[補給部隊]と[星邪の神喰]の分があるため5箇所全てという訳には行かなかったが、圧迫はしている
1箇所だけ残して置いたのは、まだ”やりたい事”があるからだろうか。魔法の発動すら出来なくなってしまうので、これは自然な選択なのだろう
「ではドローをしましょうか」
「世迷言を...デッキトップを見ずに当てられるはずが!」
草薙のディスクの右上に小さく20/60と点滅している。これはデッキの残り枚数を示したものだ
[貪欲な壺]や[錬装融合]でデッキに戻ったカードもあるが、現在は残り20枚まで消費している事になる
だからこそ[マアト]でのドローを選んだのだ
ここまで分母が下がれば、当てられると
堅実とはかけ離れた無謀な”やりたい事”だ
「[マアト]の効果を発動!私が宣言したカードがデッキトップ3枚にあればその枚数分だけ手札に加え、その数×1000ポイントの攻撃力になりますわ!」
「当たるはずがない!」
敵の怒号に貸す耳など既になかった
己のデッキに眠るカード達は全て覚えている
この
(...貴方と、貴方。後は貴方が居てくれればいいのですが)
確率はどのカードを選んでも同じだ
ならば欲しいカードを言っておこう
今欲しいのは、この
「[究極宝玉神 レインボー・ドラゴン]、[sinサイバー・エンド・ドラゴン]...[地縛神
「何を...何を言っているんだ...」
草薙がドローしたカードはディスクとソリッドヴィジョンを通して敵にも伝わる
まず先に目にした草薙が口角を上げただけで、敵には大体の察しがついた
まさか、本当に引いたのかと
「デッキトップは[レインボー・ドラゴン]、[sinサイバー・エンド・ドラゴン]そして[sinトゥルース・ドラゴン]でした。残念ながら[トゥルース・ドラゴン]は墓地に送ります」
「...」
結果は2枚ドローとなった
が、草薙が予期していた物より随分といいデッキトップだ。これで止めのヴィジョンも完成した
手札に加わったカードは全て公開情報なのだが、それも問題は無い
草薙は元よりこのターンで終わらせる気だったのだ
[マアト] ATK ?→2000
「ではエクストラデッキの[サイバー・エンド・ドラゴン]を除外し、[sin サイバー・エンド・ドラゴン]を特殊召喚します!」
[sin サイバー・エンド・ドラゴン] ATK 4000
「そしてスケールの[スティエレン]の効果を発動します。[sin サイバー・エンド・ドラゴン]を破壊し、デッキから[錬装融合]をセットします」
既出だが、このセットと破壊は同時に行われる処理。
故に、[マアト]で零れてしまったあのモンスターの召喚タイミングは健在だ
「そして私のフィールドのsinモンスターが破壊された時、ライフを半分払う事で墓地の[sin トゥルース・ドラゴン]の効果を発動します!」
初めて«цпкпошп»と戦った
あの時もライフ6300を半分にし、このモンスターに託したのだったと
いつもそうだ
新しいギミックを試したくとも、«цпкпошп»戦がその初披露になってしまうのだ
「永遠の矛盾を越え、全ての罪は我が身が背負う。退け、跪け、我の進む道を妨げるな!来る正真正銘の未来へ、行きなさい[
草薙 LP 6300→3150
[Sin トゥルース・ドラゴン] ATK 5000
「最後です。墓地にジェムが7種類ある時、このカードは特殊召喚できます!」
最後に召喚しようとしているモンスターは、今までのものと比べると比較的容易な召喚条件だった
しかしそれは、宝玉獣ならではの話
最後の最後でデッキの真髄を見せることになるとは、美しいものだった
「現れなさい、[究極宝玉神 レインボー・ドラゴン]!」
[究極宝玉神 レインボー・ドラゴン] ATK 4000
本来であれば宝玉獣の切り札となる神
だがそれは時代と持ち主の変化に伴い何体目かのそれにあたる
欲を言えば地縛の神にも出番を与えたかった
必要は無いが、この”やりたい事”は次に持ち越すとしよう
☆10 [マアト] ATK 2000
☆10 [究極時械神 セフィロン] ATK 4000
☆ 10 [究極宝玉神 レインボー・ドラゴン] ATK 4000
☆ 12 [sin トゥルース・ドラゴン] ATK 5000
合計攻撃力15000、合計レベル42
破格の数字だ
やはり[マアト]はやりすぎただろうか、[オーバー・ドラゴン]と[セフィロン]をもっと大事に使うようにするべきか
余裕から生まれた反省をしばし交えると、
「バトルフェイズです。[究極時械神 セフィロン]でそのモンスターに攻撃!」
「ぐぅっ!?」
«цпкпошп» LP 5800→4800
「そして[sin トゥルース・ドラゴン]でそのモンスターに攻撃しますわ!”パニッシュメント・ストーム”!」
「ぐわぁっ!」
«цпкпошп» LP 4800→3100
「ここで[トゥルース・ドラゴン]の効果を発動!戦闘破壊に成功した時、相手フィールド全てのモンスターを破壊します!”ギルティー・エフェクター”!」
「くそっ!」
攻撃力7500の[クリスタルウィング]は残念ながら戦闘破壊は出来ないため、[トゥルース・ドラコン]の全体破壊に頼ることになった
しかしそれも問題は無い。[
そもそも[レインボー・オーバー・ドラゴン]で全体バウンスを発動していればもっと早かったのだが、それについては言及してはいけない
「[マアト]でダイレクトアタック!」
「ぐっ...なにを.....っ!」
«цпкпошп» LP 3100→1100
「止めは貴方です。[究極宝玉神レインボー・ドラゴン]でダイレクトアタック!”
始まりと終わりは宝玉獣が務めた
[虹の架け橋]はやがて究極宝玉神へと変貌し、この
意図したわけではなかったが、これも”やりたかった事”に付け加えておくことにしよう
LP 1100→0
«цпкпошп» LOSE
ぶっちゃけどうですか?
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読みたいからやめて欲しくない
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読みたいけど無くなったら読まない
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普通
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無くてもいい
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読むのが億劫