遊戯王が当たり前?→ならプロデュエリストになる!   作:v!sion

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次で完結と言ったな、あれは嘘だ


第七十七話 逆境の活路

◐??? / 午後14時57分

 

「俺のターンだ!」

 

 

敵がドローフェイズに入った時、そのドローと合わせ敵の手札は5枚となった

 

フィールドにモンスター4体残してしまったため、このプレイヤーの行動次第では次の自分のターンは無いかもしれない

 

敵を過大評価している訳では無いが、次にも敵のターンが続くからだ。[超電磁タートル]1枚で確実に攻撃が止められるのも1回きり。後はセットした2枚のカードと[カオス・ソルジャー]だけだ

 

固唾を飲んで待つと、敵は早速手札を消費し出した

 

 

「俺は«цпкпошп»の効果で手札から«цпкпошп»を特殊召喚する!」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「さぁチェーンだ、«цпкпошп»と«цпкпошп»の効果を発動!«цпкпошп»の対象はその右のセットカードだ」

 

「くっ...ならチェーン3にリバースカードオープン、[天地開闢]!デッキから[超戦士カオス・ソルジャー]、[混沌の使者]、[ネクロ・ガードナー]を選択し、相手はランダムで選ぶ。それがガイアモンスターか、カオス・ソルジャーモンスターだったら手札に、違ったら全部墓地に送る」

 

「それにチェーンは無い。処理に入る」

 

 

対象に取られたリバースカードは今発動するしか無い

チェーン3の[天地開闢]の処理として、慎也がデッキから選択した3体の戦士族モンスターがまずソリッドヴィジョンに大きく提示された

 

するとランダムの処理に入る為に、それらは色を失いデザインも裏表紙に統一され、位置がシャッフルされる

完全に把握出来なくなった所で相手に一任する

 

相手が選んだのは慎也から見て一番右端のカード。双方のディスクには、[カオス・ソルジャー]が映された

 

 

「[超戦士カオス・ソルジャー]を手札に加え、残りは墓地に送る」

 

「終わりか?ならチェーン2の«цпкпошп»により、«цпкпошп»を手札に加える。そして«цпкпошп»の効果で[天地開闢]を破壊だ」

 

 

バックの破壊は不発になり、慎也としては消費を減らす事が出来た

 

残りのセットカードは1枚。そしてあのセットカードを破壊するモンスターの発動タイミングは少しおかしかった

 

ディスクには発動モンスターが分かるようになっているが、どうやら自身が特殊召喚に成功したタイミングでは無いらしい

 

先程もそうだ、他のモンスターが特殊召喚に成功した時にセットカードを破壊しに来る

どこかで見た事のあるような効果だ

 

 

「«цпкпошп»の効果だ、手札から«цпкпошп»を特殊召喚する。」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「この瞬間、«цпкпошп»と«цпкпошп»の効果を発動!フィールド全ての«цпкпошп»の攻・守を上げ、相手に2500ポイントのダメージを与える!」

 

「何っ!」

 

 

«цпкпошп» ATK ?→?

 

«цпкпошп» DEF ?→?

 

«цпкпошп» DEF ?→?

 

«цпкпошп» ATK ?→?

 

«цпкпошп» DEF ?→?

 

 

慎也 LP 7000→4500

 

 

「ぐぅぅ...バーンダメージが大きい...っ!」

 

「«цпкпошп»を攻撃表示に変更、さぁバトルフェイズだ!«цпкпошп»で[カオス・ソルジャー]に攻撃!」

 

「くっ...」

 

 

このプレイヤーはフィールド全ての攻撃力を上げている

そして攻撃可能なモンスターは3体、先程見えた攻撃力は2800と少し高めであり、300以上の数値攻撃力が上げられていればこの戦闘には勝てない

 

他のモンスターの攻撃力は分からないが、先程のバーンダメージも大きい。[超電磁タートル]はここで使うしかないのか

 

 

(いや...)

 

 

前のターンでモンスター効果を無効にするモンスターがいた。イタズラに決闘(デュエル)中一度の制約をもつ最高峰の防御札を使用してしまうのはできれば避けたい

 

だが手札には儀式魔法1枚しかなく、セットカードは残り1枚

[タートル]を使うべきか、ここは見定めなければならない

 

 

(...まてよ)

 

 

ここで慎也は思い出した

相手が使用するモンスター達の規則性を

 

どのモンスターが効果を発動したかはディスク越しにモンスターゾーンで判別ができる

それによると、他のモンスターが特殊召喚された時に発動する効果を持つモンスターと、自身が特殊召喚に成功した時に効果を発動するモンスターで別れているように見えた

 

そして慎也が一度フィールドから墓地に送ったモンスターはあの攻撃力2800のモンスターのみ、そしてそのモンスターの効果は、デッキトップ2枚のうちのカードを手札に加える効果。これにより慎也のエンドフェイズに蘇生されたモンスターも同じだと分かる

 

 

(...分かってきたぞ)

 

 

他のモンスターも同様に判別出来る

今まで見た効果はサーチ、セットカードの破壊、攻撃力アップ、バーン

 

サーチは相手自身のターンにも発動していた。あの最初のターンにはその効果とあのデッキトップをめくる効果のみが発動された。セットカードの破壊はあの時には何も無かったため発動されなかったのだろう

 

サーチ効果を持つモンスターは一番最初に通常召喚され、そこから手札からの特殊召喚が連なった。そしてそれは攻撃力2800のモンスターで止まっている

 

 

(手札から特殊召喚する効果は...恐らく共通効果。そして無効化効果を持つモンスターにはそれが無い。手札から特殊召喚する効果を持つモンスターは、同時に他のモンスターが特殊召喚された時に効果を発動する効果も持つ。また無効化効果を持つモンスターは、自身が特殊召喚されたタイミングで別の効果も発動する...)

 

 

敵のデッキの性質が判明した

手札からモンスターを特殊召喚する効果と、自身が特殊召喚に成功した時に効果を持つモンスターとで2パターンあることがわかった。

 

そして前者には他のモンスターが特殊召喚に成功した時に発動する誘発効果もそれぞれ持っている。

 

そこから導き出された答えを、«цпкпошп»の裏にあるそれを慎也は瞳孔を力強く開いて見定めた

 

...

 

 

«цпкпошп» ATK ? パターンA

→手札からSS サーチ

 

«цпкпошп» DEF ? パターンA

→手札からSS バック破壊

 

«цпкпошп» ATK 2800 パターンB

→SS時にデッキトップめくり

→ モンスター効果無効(コストあり)

 

«цпкпошп» ATK ? パターンA

→手札からSS 攻・守アップ(300以上)

 

«цпкпошп» DEF ? パターンB

→SS時に2500バーン(モンスターの数×500?)

→不明

 

 

恐らくこの様な効果に当てはまるだろうと、慎也は一度目を閉じた

整理してみるとやはりあの攻撃力2800のモンスターがモンスター効果無効を持つモンスターなのだろう

 

だとするとやはり[超電磁タートル]は使えない

[カオス・ソルジャー]を守る事は出来なかった

 

 

「.....くっ!」

 

 

慎也 LP 4500→4200

 

 

「攻撃力3300、攻撃力アップの数値は500か...高いな。破壊された[カオス・ソルジャー]の効果は発動!デッキから[覚醒の暗黒騎士ガイア]を特殊召喚する!」

 

 

[覚醒の暗黒騎士ガイア] ATK 2300

 

[混沌の場] 魔力カウンター 0→1

 

 

「関係ないな、«цпкпошп»で[覚醒の暗黒騎士ガイア]に攻撃!」

 

「ぐっ!」

 

 

慎也 LP 4200→4100

 

[混沌の場] 魔力カウンター 1→2

 

 

「攻撃力2400...いや1900か」

 

「«цпкпошп»でダイレクトアタック!」

 

「その攻撃宣言時に俺は手札の«цпкпошп»の効果を発動し、特殊召喚する!」

 

「な、なに!?」

 

 

脳内の情報網に新たな情報を付け加えようと攻撃力を暗算していると、敵は容赦なく慎也自身を狙いにモンスターへ攻撃命令を出していた

 

そしてもう1人のプレイヤーも何かモンスターを特殊召喚している。セットカードを発動するのなら今しかない

 

もう一体の攻撃力を知るにはいい機会だが、やはりバーンダメージが響いている。受けるべきか、与えられた時間いっぱい使って考えてみたが、最後に召喚されたモンスターの効果が気になってしまう

 

結果、まだ相手ターンが続くこともあり、避けられるダメージは避けておくことにした

 

 

「そのモンスター効果にチェーンし、[カウンター・ゲート]を発動!その直接攻撃を無効にしドローする。それがモンスターだったら召喚も可能」

 

「チッ...罠カードか」

 

「ドロー!...引いたのは[絶対王バック・ジャック]、召喚する!」

 

 

[絶対王バック・ジャック] ATK 0

 

 

「チェーン1の«цпкпошп»の効果だ、特殊召喚する」

 

 

«цпкпошп» DEF ?

 

 

サーチ効果を持つモンスターの攻撃力を知ることは出来なかったが、残りライフを守ることが出来た

 

そして相手の反応から、バーン効果を持つモンスターには罠を無効にする効果はない事も同時に分かった

2人目のプレイヤーが特殊召喚したモンスターも気になるが、ここは何とか凌げたと言えるだろう

 

ターンプレイヤーも不承不承と言った具合でメイン2へ移行していた

 

 

「ふん、メイン2に«цпкпошп»と«цпкпошп»をリリース、«цпкпошп»をアドバンス召喚する」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

[混沌の場] 魔力カウンター 2→4

 

 

「俺はカードを2枚セットしてターンエンドだ」

 

 

«цпкпошп» 手札:1枚 LP 5000

 

モンスター/ «цпкпошп» ATK ?

 

     /  «цпкпошп» ATK ?

 

     /  «цпкпошп» ATK ?

 

     / «цпкпошп» DEF ?

 

魔法・罠 / リバース2枚

 

 

「俺のターンだ、ドロー」

 

 

次にターンが回ったプレイヤーのデッキには、サーチ可能なカウンター罠がある

これは一体一でカードが見えていても厄介な事だ

ましてや«цпкпошп»によってどのカードがサーチしているのかすら分からない状況

 

先程のターンでサーチしたカードを含め、手札は2枚持たれている。フィールドにはモンスター3体が残っており、何が来るか全く予想がつかない

 

前のプレイヤーの布陣を忘れないように注意しながら、慎也はまた脳内での情報に縋るように記憶を始めた

 

そしてまたここで思い出すことがあった

先のターンプレイヤーは、あの特殊召喚成功時にバーン効果を持つモンスターをリリースしていた

そして最初のターンで相手ターンに発動可能な蘇生カードも見えている。まさかと身構えていると、案の定すぐに行動を見せた

 

 

「このドローフェイズに俺はセットしていた«цпкпошп»を発動!墓地の«цпкпошп»を特殊召喚する!」

 

 

«цпкпошп» DEF ?

 

 

「そして«цпкпошп»の効果を発動!デッキから«цпкпошп»をサーチし、貴様に2500ポイントのダメージを与える!」

 

「やっぱり!ぐぅ...うわぁっ!」

 

 

慎也 LP 4100→1600

 

 

「受けなくて良かった...危ない」

 

「良かったな?俺は«цпкпошп»の効果を発動し、«цпкпошп»をリリースして«цпкпошп»をアドバンス召喚する!」

 

 

«цпкпошп» LP 8000→7500

 

«цпкпошп» ATK ?

 

[混沌の場] 魔力カウンター4→5

 

 

「«цпкпошп»の効果で墓地の«цпкпошп»を特殊召喚する」

 

 

«цпкпошп» DEF ?

 

 

「特殊召喚に成功した«цпкпошп»の効果だ、デッキから«цпкпошп»を手札に加える」

 

 

«цпкпошп» LP 7500→7000

 

 

「«цпкпошп»を発動する。デッキから«цпкпошп»を墓地に送り、«цпкпошп»のレベルを同じにする」

 

 

«цпкпошп» ☆ ?→?

 

 

「そして俺は«цпкпошп»と«цпкпошп»で«цпкпошп»をエクシーズ召喚する!」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「«цпкпошп»の効果発動、貴様の墓地にある[カオス・ソルジャー]を俺のフィールドに特殊召喚する!」

 

「くっ...」

 

 

慎也の墓地に眠っていた、蘇生条件を満たす[カオス・ソルジャー]が標的になってしまった

 

コントロールの奪取と言うよりかは、[死者蘇生]に近いものだった。慎也の墓地の数が1枚減ると、相手フィールドにその姿が映し出された

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「[カオス・ソルジャー]まで«цпкпошп»に...」

 

「バトルだ、こいつでダイレクトアタック!」

 

 

奪った[カオス・ソルジャー]で攻撃宣言を行っていた。その攻撃力は慎也の残りライフを上回る数値も言う事は、慎也自身もよく分かっている

 

なら墓地にある防御札を温存などしていられない

 

 

「墓地の[超電磁タートル]の効果を発動!バトルフェイズを...」

 

「させん!俺は«цпкпошп»の効果を発動!手札の«цпкпошп»を捨て、そのモンスター効果を無効にする!」

 

「くっ!」

 

 

やはり通らなかったでは済まない状況下にある。[バック・ジャック]の攻撃力では絶対にライフを保つ事など不可能であり、この攻撃を止められないなら慎也の敗北だ

 

やはり温存など出来ない

[天地開闢]で落としておいて良かったと、もう1枚の防御札も発動させた

 

 

「さらにチェーンして[ネクロ・ガードナー]の効果を発動!このターン1度だけ相手モンスターの攻撃を無効にできる!」

 

「それにチェーンは無い」

 

「俺もだな」

 

 

静かにチェーン処理を済ますと、結果慎也は生き残る事が出来た

 

それはターンプレイヤーのモンスターが追撃して来なかったこともあった。慎也を仕留めきれなかったそのプレイヤーも、またメイン2になるとセットカードを残してターンを終えるようだ

 

 

[混沌の場] 魔力カウンター 5→6

 

 

「メイン2、俺は墓地の«цпкпошп»の効果を発動。フィールドの«цпкпошп»を墓地に送り、自身を特殊召喚する」

 

 

«цпкпошп» DEF ?

 

 

「効果でデッキから«цпкпошп»をサーチする。そして俺はカードを1枚セット、ターンエンドだ」

 

 

«цпкпошп» 手札:1枚 LP 6500

 

モンスター/ «цпкпошп» ATK ?

 

     / «цпкпошп» ATK ?

 

     / «цпкпошп» DEF ?

 

魔法・罠 / リバース1枚

 

 

 

敵のエンドフェイズ

それはすぐに慎也にターンが回ることを意味している

 

だが慎也はまだディスクの承諾ボタンを押せずにいた

圧倒的に追い詰められてしまった事からそれすら億劫なのだろうか

 

恐らく今伏せられたのはカウンター罠だろう

最初のターンのプレイヤーのフィールドも五体のモンスターが並び、少なくとも一体は効果無効を持つものだ

 

またモンスターが入れ替わったのを覚えながら、このターンのプレイヤーの動きを追うことは非常に脳への負担が大きかった

 

明らかに慎也には疲弊が見えていた

 

 

(クソ...前半の動きは見逃した...クッ.....どれがどれだ?)

 

 

頭痛のようなものを覚えた

いくら目を凝らした所で«цпкпошп»の向こう側にあるもんの素性など見えず、自らの記憶に聞いてもハッキリとした答えは帰ってこない

 

嫌気もした

«цпкпошп»の相手など今まで散々やってきたというのになぜこの決闘(デュエル)ではついていけていないのだと

 

 

(...)

 

 

慎也の中で何かが音を立てて崩れた

諦めに近いそれは、自分でも驚くべきほどに脱力感へと変貌していた

 

 

 

▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽

 

 

◑聖帝大学 / 午後14時54分

 

 

「エンドフェイズに俺はセットしていた«цпкпошп»を発動する!」

 

 

 

草薙のフィールドには、1ターンに1度魔法カードの発動を無効にする[ワイゼル∞]が睨みを利かせている

 

加えて[精霊神后ドリアード]の効果により、チェーンブロックを作らない特殊召喚は全て無効にする事が出来る。1度バトルフェイズに入り、除去しようにも守備の構えの[ハモン]がそれを許さず、守備力4000の[ハモン]にしか攻撃は許されない

 

しかし、敵はそれらを柔軟に避ける罠カードによるチェーンブロックを作る特殊召喚を草薙のエンドフェイズに割り込んで行った

 

 

「«цпкпошп»により、«цпкпошп»に装備されている«цпкпошп»を特殊召喚する」

 

 

«цпкпошп» DEF ?

 

«цпкпошп» ATK ?→?

 

 

今まで[クリスタルウィング]が奪われた際にも発動する気配を見せてこなかったセットカードは蘇生カードの類だった

 

さらによく見ると永続罠のようだ

守備表示で召喚されたのはおそらくそういう制約なのか、とにかく草薙は2体のモンスターを残したままターンを返してしまったことになる

 

 

「そして俺のターンだ」

 

 

だが、先程述べたモンスター達に加えて草薙にもセットカードが2枚残っている

とても宝玉獣の制圧力では無いが、とにかく非常に強固な布陣が完成した

 

相手はそれを改めて確認したのか、少し間を置いてメインフェイズまで飛んだ

 

 

「俺はフィールド魔法«цпкпошп»の効果を発動する。手札から«цпкпошп»を捨て、デッキから«цпкпошп»を手札に加える」

 

「構いません」

 

 

既に発動の段階を終えている魔法カードには[ワイゼル∞]は何も出来ない

 

まずは出来ることから始めた様子だ

必要なカードをサーチし終えると、次の手に移った

 

 

「俺は«цпкпошп»に装備されている«цпкпошп»の効果を発動する。自身を特殊召喚し、もう一体の«цпкпошп»も特殊召喚する」

 

 

«цпкпошп» DEF ?

 

«цпкпошп» DEF ?

 

«цпкпошп» ATK ?→?

 

 

「そして«цпкпошп»を通常召喚する」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「効果を発動する。墓地の«цпкпошп»を装備だ」

 

「貴方は初めのターンにも見ましたわね」

 

 

装備が特徴的なそのデッキにおいて、墓地から装備する効果と、自ら装備を外れフィールドに特殊召喚される効果は非常に優秀なそれだ

 

少ない枚数で噛み合っており、消費の少なさが応用に繋がっている

だが、それはシンクロ召喚を経たらの話

 

草薙は墓地を再確認し、何回まで無効にできるかを計算していると、早速その効果の出番がやってきた

 

 

「俺は«цпкпошп»に«цпкпошп»をチューニング、«цпкпошп»をシンクロ召喚!」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「さぁ、どうするんだ?」

 

「やっとシンクロ召喚が来ましたわね.....」

 

 

ターン制限の無い[ドリアード]を温存する理由は、墓地のモンスターの数に関係するだろう

 

しかし、一通り相手の動きを見た感想として、シンクロ召喚が展開の中心であり要だと分かっている。ならば使わない手は無い。初めて召喚したモンスターの効果を発動するこの瞬間に、草薙は高揚感を覚えずにはいられなかった

 

 

「勿論[精霊神后 ドリアード]の効果を発動します!墓地の[メタルフォーゼ・シルバード]、[ライトロード・アサシン ライデン]、[聖鳥クレイン]を除外し、その特殊召喚を無効にして破壊します!”エレメント・パニッシュ”!」

 

 

[ドリアード]が大きく手を広げると、周囲に3つの光球が浮かび上がった。燃えるような赤色と、あらゆるものを照らす眩い黄色の2色あり、草薙が[ドリアード]の効果を発動するために除外したモンスターの属性に関係していることが分かる

 

この処理後にも草薙の墓地だけで六属性残っているため、攻撃力の減少も無い

 

[ドリアード]は力を蓄え終えたのか、一度その球体を手に取ると、相手フィールドに今降り立とうとするシンクロモンスターに狙いを定め、放った

 

フィールドに降りることは叶わず、そのモンスターは墓地へと目的地を変更させられてしまった

だが敵はどこか余裕を残したような反応を見せている

 

 

「セットカードに何かあるのかとも思ったが、やはり無さそうだな。俺は«цпкпошп»の効果を発動、墓地の«цпкпошп»を除外する事で貴様の[ハモン]を除外する!」

 

「除外...仕方ありませんわね」

 

 

[ハモン]が特に出番無くフィールドから姿を消してしまった。どうも草薙の[ハモン]は役目を全うしきれないようだ。だが、バトルフェイズに入る事を躊躇わせ、除去に墓地のリソースを使わせたと考えると、些か勿体ない気もするが働きと言えるだろうか

 

相手は墓地を使うデッキだ、恐らくあのコストもテーマに属するモンスターを除外しいるはずと考えると、充分なのかもしれない

 

...と、[ハモン]が除外ゾーンへ行くのを見届けた時までは考えていた。だがこの除外効果は、非常に恐ろしい効果だと知らしめられてしまった

 

 

「もう一度«цпкпошп»の効果を発動する。今度は貴様の[ワイゼル∞]を除外しよう」

 

「なっ...た、ターン1制限が無いですって!?」

 

 

シンクロ召喚成功時の効果を元に、今フィールドに並んでいるモンスターの判別はできていた。

だからこそ装備状態から直接特殊召喚されたこのモンスターが除外という強力な効果を持つことに1度は驚かされた

 

だが間違いなくこのモンスターは2度目の使用をしていた。コストがあるとはいえターン1制限の無い除外効果等は予想もしていなかった

 

そのため[ワイゼル∞]が除外ゾーンへ消えるのも、黙って見ているしかないのだ

 

 

「«цпкпошп»の効果で[ドリアード]も除外する。ダメ押しだ、«цпкпошп»の効果でさらに[ミネルバ]も除外だ!」

 

「そ、そんな...っ!」

 

 

草薙のフィールドにいた4体のモンスター達は、気がつけば全て除外ゾーンへと溜まっていた

魔法の発動無効も、攻撃誘導も、破壊された時の誘発効果も意味無く、[ドリアード]も一度効果を発動しただけだった

 

呆気なさすぎる

あれだけの展開を重ねたというのに相手は墓地リソースを払うだけでこの場を一掃して見せた

 

憂鬱な気分にもなるものだ

 

 

「そんな顔をするな。俺は装備状態の«цпкпошп»の効果で自身を特殊召喚する。そして«цпкпошп»に«цпкпошп»をチューニング、«цпкпошп»をシンクロ召喚!」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「«цпкпошп»の効果で墓地の«цпкпошп»を装備、そして装備解除する」

 

 

«цпкпошп» DEF ?

 

 

「さらに«цпкпошп»に«цпкпошп»をチューニング、«цпкпошп»をシンクロ召喚!」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「それは...また[クリスタルウィング]でして?」

 

「まぁな、だがこいつもシンクロ素材だ。俺は«цпкпошп»に«цпкпошп»をチューニング!」

 

「なっ...」

 

 

墓地のチューナーを、装備カードを経由する事でフィールドに召喚しているのだろう。そんな事は今までの動きで理解している。シンクロ召喚したモンスターもまた墓地から装備する効果を持っているらしく、それを繰り返すことでシンクロモンスターのレベルが上がっていくのだ

 

だが、3度目のそれは新しい

通常召喚可能な事から初めは高くてレベル4から始まっているはずだ。[クリスタルウィング]のレベルは8、同じチューナーを使っているとなるとチューナーのレベルは2だ。とすると、次に現れるのはレベル10のシンクロモンスターとなる

 

 

「現れろ«цпкпошп»!」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「効果を発動する。俺のフィールド魔法とこの永続罠を破壊する事により、このターン«цпкпошп»は3回攻撃が可能となる!」

 

「そ、その効果は...っ!」

 

 

3回攻撃

攻撃力が1000当たりの数値ならそこまでの脅威では無いが、シンクロモンスターを2度も経たそのモンスターがその程度のはずはない

 

加えてもう一体のモンスターも健在だ

草薙が冷や汗を拭った瞬間、そのモンスターまでもが攻撃表示へと移り変わっていた

 

 

「«цпкпошп»を攻撃表示に変更。もう1つはダメ押しだ、«цпкпошп»を発動。墓地の«цпкпошп»を特殊召喚する!」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「ま、まさか...」

 

「貴様が大好きな[クリスタルウィング]だ、とことん味わっておけ!バトル、«цпкпошп»でダイレクトアタック!」

 

 

合計5回の攻撃が予測される

ライフは8000残っているとはいえ、全てを受けきれるとはとても考えられない

 

ならばこのセットカードを発動させるしかないだろう

彼女自身あまり好まない運任せのプレイングだが

 

 

「直接攻撃宣言時に[カウンター・ゲート]を発動しますわ!その攻撃を無効にしてドローします。それがモンスターカードでしたら通常召喚も行いますわよ」

 

「いいだろう。引いてみろ」

 

 

セットカードが攻撃反応系だった事に相手は無関心にも見えた。展開の過程に横槍を入れてこなかった事や、[ドリアード]の発動を促していた事から多よそ予測をしていたのだろうか

 

草薙のドローを黙って待っているあたり、何が出ようと破壊し尽くす自信があるらしい。攻撃を無効にされた«цпкпошп»から、別の«цпкпошп»に視線を移し、草薙の処理を待っている

 

 

「ドローしたカードは...[宝玉獣 コバルト・イーグル]っ」

 

 

草薙が唯一ピン刺しで投入している宝玉獣だった。

1度は攻撃を受けてはくれるが、その後は魔法・罠ゾーンを圧迫させる以外に役割を持たないモンスターだ

 

ダメだったのか

そう考えたのは宝玉獣の新規のサポートカードが頭を過ぎったからか

 

ジェムコンプリートはこれで達成される

相手ターンのバトルフェイズ中の、他に守る手段が無いこの瞬間にだ

 

 

「...通常召喚します」

 

 

[宝玉獣 コバルト・イーグル] ATK 1400

 

 

[虹の引力]があれば[究極宝玉神 レインボー・ドラゴン]を呼び寄せ、一度は戦闘ダメージを受けてしまうもののこのターンは確実に生き残ることが出来ただろう

 

だがいま草薙がセットしているカードは残念ながらそれではない

 

 

「なら«цпкпошп»で[コバルト・イーグル]に攻撃だ!」

 

「きゃぁっ!」

 

 

草薙 LP 8000→6400

 

 

草薙の決闘(デュエル)ディスクが点灯し始めた

それはモンスターが破壊された事をトリガーとする[補給部隊]の強制効果を知らしめるものだ

 

しかし草薙は、そのドローを受け入れる事が出来ないでいた

ドローしてしまえばあとに続くダイレクトアタック。攻撃力3000を直に受ける恐怖がすぐ目の前に迫っているからだ

 

 

(村上さん...っ!)

 

 

慎也の名を呼ぶその声には、慎也を心配する気持ちよりも遥かに己の恐怖と助けを乞う意が非常に強かった

 

もう彼女には何も出来ない

決闘(デュエル)ディスクよりも先に己自身が敗北を感じてしまっていた

 

 

 

 

ぶっちゃけどうですか?

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