遊戯王が当たり前?→ならプロデュエリストになる!   作:v!sion

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また日が空いてしまいました

デッキビルドパックが発売されましたね
どのテーマも魅力的なので今回は全部作ろうと思います
閃刀姫以外はこのssでも起用できそうですしね


第七十話 哀炎下 

◑日本-秀皇大学 / 正午

 

 

この大学にも聖帝の決闘棟(デュエルパ-ク)のような設備があった。しかし規模はそれ以上の物だ

 

購買は見当たらないが、その代わりに聖帝の何倍もの決闘(デュエル)スペースが用意されている

 

しかし、祝日ということもあってか利用者は非常に少ない。今決闘(デュエル)を行っているのは1組のみだ

 

そしてその決闘(デュエル)は決着がついていた

長い髪を靡かせている女性の勝利らしい

 

 

「お疲れ様、次の人に変わって下さい」

 

「うぅ...参りました」

 

 

その女性は小さな眼鏡を装着し、無地のシャツ、無地のカーディガン、折り目の綺麗なスカートと着飾らない姿だった

 

強い口調で命じているのは次の決闘(デュエル)の事だ。敗北した青年が立ち去ると、代わりに長身で髭が特徴の男性が現れた

 

その女性はディスクを構えるが、男性の方は薄ら笑いで両手を低くあげて見せた。その両手にはペットボトルのミネラルウォーターがあり、そのまま女性に近づいてきた

 

男性の方には決闘(デュエル)をするつもりは無いらしい

 

 

「何ですか、早くディスクを構えて下さい」

 

「少し休憩しよう、文佳(ふみか)。ほら」

 

 

整った髭の男性は片方のペットボトルを文佳と呼ばれた女性に向けた。

しかし、その女性はそれを受け取ることなく、片手で制した

 

 

「結構です、喉は乾いていません」

 

「そうかい?でも少し休憩は挟むべきだ。もう2時間も決闘(デュエル)しっぱなしだぜ?」

 

「...分かりました。15分ほど休憩します」

 

 

そう言い放つと文佳は近場のベンチに腰掛けた

非常に美しい姿勢で佇むと、髭の男性もその隣に腰掛けた。対照的に男性の方は足を組み、大胆に背もたれに身を預けた

 

1つのペットボトルを傍らに置くと、残りのもう1つのキャップを勢いよく開き、一気に流し込み始めた

 

文佳は喉が渇いていないと言っていたが、寧ろ水分を欲していたのは男性の方なのかもしれない。500mlのそれを1口で飲み干して見せた

 

 

「...ぷはぁ!美味い、やっぱり秀皇ウォーターは格別だな!」

 

「いいえ、水なんてどれも同じだと思います」

 

「秀皇大学がわざわざ商品化してんだ、それだけで差別化されてると思わんかね?」

 

「そこは同意です」

 

 

髭の男性が投げ捨てたペットボトルのラベルには”秀皇ウォーター”と書かれていた。彼の言うとおり秀皇大学が制作し、構内限定で販売している商品だ

 

値段は90円と非常にリーズナブルだが、文佳の言う通りただの水だ

男性の投げたゴミは綺麗な孤を描き、そのままゴミ箱へと消えていった

 

満足そうにする男性だが、文佳は突然立ち上がりそのゴミ箱まで歩み寄った。何かと思えばその箱に手を突っ込み、先程捨てられたペットボトルを取り出すと隣の箱へ捨て直した

 

燃えるゴミの方へ入ってしまったらしい。きちんと分別を果たすと、無言で文佳は戻ってきた

 

 

「おや、悪い悪い。言ってくれれば自分で行ったんだぜ?」

 

「そうですか、では次から投げないで捨ててください”劉毅(りゅうき)”さん」

 

「分かった。そうしよう」

 

 

その空間は沈黙となった

その髭の男性からも、文佳からも特に話す事が無いからだが、彼らに気まずさはないように見える

 

沈黙が気にならない中というとか、とにかく二人は黙っていた

 

 

 

...しばらくそうしていると、文佳がまた立ち上がった。何かと思って見上げると、文佳はその建物の出入口の方を見つめていた

非常口を除けば一つしかない出入口だ

 

髭を撫でながら男性もそちらを見つめていると、多勢の足音共に怪しげな集団が姿を見せた

 

 

「なんだありゃ?」

 

「分かりません、劉毅さんもご存知ないのですか?」

 

「俺はなんにも聞いちゃいないぜ」

 

 

黒いロングコートのフードを深く頭素顔を隠した格好をしている。首元や腰に多くのこれまた漆黒のアクセサリーを大量に施しており、その音と乱暴な足音が空間に響き不快さを増していた

 

その内の1人が文佳達に気が付くと、恐らく笑みを浮かべながらこえを張った

 

 

「えらいべっぴんさんがいたもんじゃねぇか!俺がやるぜ」

 

「劉毅さん、あの方達は何を仰っているのでしょうか」

 

「分からん、とりあえず不審者だって事は分かるがね」

 

 

束の間の休息を終え、文佳はその不審者達へ自分から近づいて行った。予想外の行動なのか、その多くの黒服を纏う人間達は半歩下がりやや威嚇気味に吠えだした

 

 

「なんだ...貴様この状況が分かってるのか!?」

 

「素性を隠した格好、決闘(デュエル)ディスク、統率が取れてることからゲリラ的でない集団が行う、遊戯王犯行だと推測しました」

 

 

冷静に分析すると、文佳が先にディスクを構えた

好戦的にも見えるが、淡々と告げる口調や無表情がどちらとも言い難いものだった

 

今にも噛みつきそうな文佳を宥めようと、劉毅と呼ばれた男性も前に出た

彼はディスクを構えてはいなかったが、文佳と謎の集団の間に入る用に屹立している

 

 

「おいおい文佳、彼らは道を訪ねたいだけかもしれないだろ?どうしてそんなに好戦的なんだ」

 

「前にも改造ディスクや違法カードを試したがっていた愚連隊の相手をしたことがあったので」

 

「なるほどな、そういう事なら」

 

 

劉毅がディスクを構えた

彼もまた決闘者(デュエリスト)であり、文佳の代わりに戦うという意思が伺える

 

しかし、その文佳は疑問そうに劉毅を見つめていた

その視線に気がついたのか、劉毅の方から答えた

 

 

「これから関東大会やらランク戦を控えたプロ様が手を煩わせる相手じゃねぇーよ。マネージャーである俺の仕事だぜ」

 

「いつから私のマネージャーになったんですか?」

 

「今からだ」

 

 

急襲してきた方の人間達が動揺しているように見える。目的はともかく突如現れたあの黒服の人間達を前にして、被害者にあたる劉毅や文佳が想像以上に好戦的だからなのか

 

決闘(デュエル)の準備を終えると、劉毅はまだ蓋の空いていないペットボトルを勢いよく開くと、先ほどと同様に一気に傾けて飲み干した

 

文佳に渡す分だったがそれも劉毅の体内に飲み込まれた。そのゴミと化したそれを後方へと投げ込むと目の色が変わった

 

臨戦態勢に入っている

 

 

「休息時間は延長だぜ、俺が全員ぶっ倒すまで座ってな」

 

 

三つあるゴミ箱の内、劉毅の投げたゴミは綺麗にペットボトル専用の箱へと音を立てて落ちた

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

ーー

 

 

◐日本-聖帝大学 /12時45分

 

 

 

「止めだよ、[大刃禍是]でダイレクトアタック!」

 

「ぐおおぉっ!」

 

 

LP 1700→0

 «цпкпошп»LOSE

 

 

 

「はぁ...はぁ...これで何人目なのかな?」

 

「お疲れかな?ふふふ...次は私が相手だ」

 

 

聖帝大学が戦場と化してからまだ数十分程しか経過していなかった。しかし聖帝の戦士達には既に疲れが見えている

 

1人倒せばまた次の敵が立ちふさがる。それをなぎ倒そうと、また新たな敵が前に立つ。その既視感にもうんざりし始めていた

 

宛もなく自らに問いかけてみたが、目の前に現れた新たな敵がそれも馬鹿馬鹿しく思わせている

何度目かのデッキの再セットを行うと、秋天堂は力強くまた決闘(デュエル)を開始しだした

 

 

「「決闘(デュエル)!!」」

 

秋天堂 LP 8000

«цпкпошп» LP 8000

 

 

「私の先攻だ、私はカードを3枚セット。そして«цпкпошп»を通常召喚してエンドフェイズに以降する。«цпкпошп»の効果でリリースし、デッキトップ5枚をめくる」

 

「墓地肥やしの効果だね...」

 

 

コストとして自身をリリースし、デッキの上から5枚をめくる処理のようだ。公開情報のはずだが、«цпкпошп»がそれを許してくれず5枚全てが未知の物に見えた

 

 

「ん?」

 

 

その後もディスクの画面を睨んでいると、5枚の«цпкпошп»の内4枚だけが墓地へ流れて行った

 

見えているカードの数を数えてみると、どうやら残りの1枚は手札に行ったらしい。

エンドフェイズにここまで個性のある効果はなかなか無い。秋天堂は既になんのモンスターなのか理解していたが、そのカードが入るデッキは非常に多く、まだ判明には至らないでいた

 

 

 

«цпкпошп» 手札:2枚 LP 8000

 

モンスター/ なし

 

魔法・罠 / リバース3枚

 

 

 

「僕のターン!」

 

 

秋天堂の使用デッキは妖仙獣

バウンス効果とペンデュラム召喚と通常召喚をメインの動きとするテーマであり、現在はバウンスの対象がいない状況だ

 

既に承知の上だが、彼女のデッキは«цпкпошп»に対し有効なデッキでは無い。モンスターが居ないうちに勝負を決めるつもりで大一手をうった

 

 

「僕は[妖仙獣の神颪]を発動!僕のフィールドにモンスターが存在しない時に発動可能、デッキからレベル5以上の妖仙獣モンスターをサーチするか、[左鎌神柱]と[右鎌神柱]をスケールにセットする!」

 

「ふふふ...君は妖仙獣使いなんだね」

 

 

ペンデュラム召喚を使うにあたって、1枚でスケールが揃う効果は文句無しにパワーカードと言える

 

次のターンに破壊されるデメリットを持つが、妖仙獣には戦闘ダメージを与えるだけで妖仙獣カードをサーチする効果がある。デッキの神柱3枚までの限定だが、元々長期戦をするつもりのない彼女にとっては関係無いようだ

 

 

「僕は永続魔法[修験の妖社]を発動、そして手札から[妖仙獣 鎌壱太刀]を通常召喚!」

 

 

[妖仙獣 鎌壱太刀] ATK 1600

 

[修験の妖社] 妖仙カウンター 0→1

 

 

「[鎌壱太刀]の効果を発動するよ。手札の[鎌参太刀]を召喚する!」

 

 

[妖仙獣 鎌参太刀] ATK 1500

 

[修験の妖社] 妖仙カウンター 1→2

 

 

「[右鎌神柱]の効果で自身のスケールを11にする!そしてペンデュラム召喚、おいで[妖仙獣 閻魔巳裂(ヤマミサキ)]!」

 

 

[妖仙獣 閻魔巳裂(ヤマミサキ)] ATK 2300

 

[修験の妖社] 妖仙カウンター 2→3

 

 

「ペンデュラム召喚に成功した[閻魔巳裂]の効果を発動するよ。そのセットカードを破壊する!」

 

「これかい?ふふふ...ならば発動しよう、«цпкпошп»!」

 

 

対象をとる効果故にチェーン発動で逃れられる。

しかし、«цпкпошп»が見えた所でこちら側としては何も得るものは無い

 

どのような効果なのか、身構えたがそれほどの処理はないらしい

 

 

«цпкпошп» ATK ?→?

 

 

「蘇生カードだったんだね」

 

「ふふふ...さぁ、続けたまえ」

 

 

攻撃表示で現れた

[リビングデットの呼び声]の表示形式を固定化させる物か、そもそもの攻撃力が高いのか分からない

 

強いて挙げるのなら、その蘇生カードを破壊したにも関わらずモンスターが残っている事から永続罠では無いと推測できる。

また、蘇生対象とその蘇生効果自体が相互的に依存しない効果と言える

 

テーマ専用のカードだろうか、未だよくわからない

 

 

「[鎌壱太刀]の効果でそのリバースカードを手札に戻すよ」

 

「仕方ないね...」

 

 

[鎌壱太刀]のバウンス効果は何も無く通った

残りの1枚が気になるが、攻撃をしない選択肢は選びたくない。

 

ここは臆せず攻めると決めたようだ

 

 

「じゃあバトルだよ、行け[閻魔巳裂]!」

 

「では私も«цпкпошп»を発動、」

 

「これは...」

 

 

今度はこちらにも影響を与える効果だった

それは表示形式を変えるもの

 

フィールドに存在する全てのモンスターが守りの態勢を強いられ、攻撃も叶わなくなってしまった

 

秋天堂にこのターンの終わりがよぎったが、どうやら敵にはまだ効果があるらしい。守備表示になった時、その«цпкпошп»が誘発効果を発揮していた

 

 

「ここで«цпкпошп»の効果を発動...守備表示になった時、デッキから«цпкпошп»を特殊召喚する!」

 

「守備表示になった時...随分変わった効果だね」

 

 

«цпкпошп» DEF ?

 

 

「仕方無い僕は...メイン2に以降する。[妖社]の効果でデッキから[神颪]をサーチする。カードを1枚セットして、妖仙獣達を手札に戻してターンエンドだ」

 

 

秋天堂 手札:4枚 LP 8000

 

モンスター/ なし

 

魔法・罠 / [修験の妖社]

 

     / リバース1枚

 

スケール / [妖仙獣 右鎌神柱] (5)

 

     / [妖仙獣 左鎌神柱] (3)

 

 

「私のターンだ、ドロー。まずは«цпкпошп»2体で«цпкпошп»を召喚する!」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「これはエクシーズ召喚だね」

 

「ふふふ...全くこの国の子供達は臆することを知らないようだね」

 

「...どういう意味だい?」

 

 

秋天堂が解せないでいると、黒服の男は控えめな笑い声をあげた。この男の癖だろうか、先程から良くその笑い方が良く見える気がする

 

秋天堂が何も言わないでいると、男の方から語り出した

 

 

「私は以前にもこの国に来たことがあってね...その時出会った青年も君のように物動じない子だったよ」

 

「へぇ、その子には勝てたのかい?」

 

「残念ながら敗北した」

 

 

自らの敗北を軽い口調で語っている。

聖帝の出入口を固めている当たり、やはり前もって情報を集めていた犯行だったようだ

 

そして国という言葉を使用している

他国から来たということだろうか。それにしても目的依然として判明しない

 

通常ならわざわざ海を渡ってまで何が目的だと考える。だが、秋天堂には一般人が知らないもう1つの考えが浮かんでいた。

 

日本にあって、日本でない国の存在だ

 

 

「だが、今の私には«цпкпошп»がある!バトルだ、«цпкпошп»でダイレクトアタック!」

 

「くぅっ!?」

 

 

秋天堂 LP 8000→5200

 

 

「そして手札から«цпкпошп»を発動!」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「速攻魔法の...ランクアップか!?」

 

「ふふふ...まだバトルフェイズ中だ、«цпкпошп»でダイレクトアタック!」

 

「うぅ!」

 

 

秋天堂 LP 5200→3000

 

 

 

「随分食らっちゃったけど...ここまで見たらもう分かるよ」

 

「おや?ふふふ...もうバレてしまったようだね」

 

 

効果1800から2200へのランクアップ。それも速攻魔法によるものであり、効果のトリガーは守備表示へ変更された時。唯一無二の動き方であり、戦ったことのある者ならすぐに分かるデッキかもしれない

 

そして秋天堂は既に特定を終えている様子だ

しかし、«цпкпошп»だ。相手の使用デッキが分かるまで一手遅れているだけで既に優劣は傾き始めている

 

それは双方分かっている事であり、秋天堂は苦く、敵は緩やかに笑っていた

 

 

「«цпкпошп»のORUを2つ取り除き、«цпкпошп»を召喚する!」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「これもランクアップか...?」

 

「ふふふ...カードを2枚セットしてターンエンドだ...」

 

「このエンドフェイズに僕の[右鎌神柱]と[左鎌神柱]が破壊される」

 

 

«цпкпошп» 手札:1枚 LP 8000

 

モンスター/ «цпкпошп» ATK ?

 

魔法・罠 / リバース2枚

 

 

 

「僕のターン!」

 

 

先程バウンスされた物ともう1枚追加でカードを伏せた。やたらとカードを伏せるプレイヤーだ

先程発動した速攻魔法も加味すると、本来であれば相手ターンに行動する事に重きを置いているのかもしれいない

 

それは秋天堂も似ていた

[命削りの宝札]を活かすために伏せるカードは多めに採用しているのだが、出来れば長期戦は願いたくない

 

«цпкпошп»と言うだけで嫌な緊張感がある。可能であれば早急に決闘(デュエル)は終わらせたい。焦りとも言えるそれを抱いていた

 

 

「では...スタンバイに«цпкпошп»を発動しよう。墓地の«цпкпошп»を特殊召喚する!」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「2体...まさかその伏せカードは?」

 

「ふふふ...さぁ、どうだろうね」

 

 

1枚のカードで2体のモンスターを蘇生させる効果だった。それは単純なアドバンテージをとる効果であり、エクシーズテーマと分かっている今では恐ろしい効果と言えるだろう 

 

だが、今は秋天堂のターン。相手ターンにエクシーズ召喚など通常なら不可能のはずだ。

しかしスタンバイフェイズにわざわざ発動した所、残りのリバースカード1枚に意味があるようだ

 

 

「[神颪]を発動し、[右鎌神柱]と[左鎌神柱]をスケール2セットする。そのまま[右鎌神柱]の効果で自身のスケールを変更!そしてペンデュラム召喚、おいで[閻魔巳裂]、[右鎌神柱]、[左鎌神柱]!」

 

 

[妖仙獣 閻魔巳裂] ATK 2300

 

[妖仙獣 右鎌神柱] DEF 2100

 

[妖仙獣 左鎌神柱] DEF 2100

 

[修験の妖社] 妖仙カウンター 0→1

 

 

「効果を発動、その最後のリバースカードを破壊するよ」

 

「勿論チェーンさせてもらう。«цпкпошп»2体で«цпкпошп»を召喚!」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「カード名は忘れたけど...それを使うなんて珍しいね」

 

「ふふふ...別ブロックで«цпкпошп»の強制効果を発動する。[閻魔巳裂]には守備表示になってもらおう」

 

「また守備表示か」

 

 

使わせたと言ってもいいプレイングだ

しかし、[閻魔巳裂]が攻撃に参加出来なくなるまでは予想外らしく、秋天堂は少しだけ考える素振りを見せてから決闘(デュエル)を続行させた

 

 

「なら僕は[妖仙獣 鎌壱太刀]を通常召喚する」

 

 

[妖仙獣 鎌壱太刀] ATK 1600

 

[修験の妖社] 妖仙カウンター 1→2

 

 

「[鎌壱太刀]の効果を発動するよ」

 

「チェーンして«цпкпошп»の効果を発動する。守備表示に変更させ、効果を無効化する!」

 

 

後から現れたエクシーズモンスターが効果を主張した。またしても独特な効果だが、これにも秋天堂は動じることなくさらにチェーンを重ねた

 

既にどれがなんのモンスターか把握済みの様子だ

 

 

「さらにチェーンして[妖仙獣の秘技]を発動!その発動を無効にして破壊するよ!」

 

「カウンターなら仕方無い...通そう」

 

 

発動条件は比較的緩めの専用カウンター罠により、[鎌壱太刀]の効果が通ると同時に、相手モンスター一体の破壊も成功した

 

 

[妖仙獣 鎌参太刀] ATK 1500

 

[修験の妖社] 妖仙カウンター 2→3

 

 

 

「僕は[鎌壱太刀]の効果を発動、そのモンスターを手札に戻すよ」

 

「墓地の«цпкпошп»の効果を発動、その発動を無効にする!」

 

 

ここで初めて秋天堂は墓地の確認を怠ってい事に気がついたが、«цпкпошп»表記を見ると杞憂に終わった

 

初ターンにデッキから直接墓地に落ちていたため、今の様に効果を見なければ何のカードなのか検討も付かないからだ

 

しかし、その効果を受けた[鎌壱太刀]はフィールドに残っている。無効にするのみの処理らしく、秋天堂は自分のモンスターを失わずに済んだ

 

 

「これは...[プリズナー]の方かな」

 

「さあね、ふふふ...」

 

 

このままバトルフェイズに以降するか悩んだ

恐らく2度のランクアップを経たモンスターであり、攻撃可能な妖仙獣の中で1番攻撃力が高いのは[鎌壱太刀]の1600だ

 

勝るのは無理だろう

ここでイタズラにライフを消耗するわけにも行かず、貴重なモンスターを失うわけにもいかない

 

逸る気持ちを抑えると、静かにターンを終える事にした

 

 

「僕は[修験の妖社]の効果で...」

 

 

次にサーチ先に悩んだ

 

相手を牽制する[秘技]か

ペンデュラム召喚の為の[神颪]か

自身の切り札である[大刃禍是]か

 

現在サーチ先が[神颪]に半固定化されているため、変化を作る為にも他のカードをサーチするのも手だ

 

しかし残りライフを見ると[秘技]を使うまでもなく敗北も考えられる。[大刃禍是]でのバウンス後の猛攻もスケールが無ければ不可能

 

結局の所スケールが無ければ何も出来ない

今から残り1枚ずつ残っている神柱を集めるには些か遅く、[神颪]のサーチが無難で唯一に思えてきた

 

 

「...」

 

「どうしたんだい?早くサーチしたまえ」

 

 

次の[神颪]のデメリットで秋天堂はこの決闘(デュエル)でペンデュラム召喚は叶わなくなる

次で勝負を決められるか考えてみたがそれは難しい

 

未だライフを削れておらず、己の布陣も固まっていない

せめて[鎌参太刀]のサーチ効果が通っていたのならもう少し準備が整っていたかもしれない

 

 

「僕は...[神颪]をサーチする」

 

「それで最後だね...ふふふ」

 

 

最後の[神颪]をデッキから抜くと、秋天堂はより一層大事そうに手札に迎えた

 

その名に恥じぬ使い方が望まれる

無駄には出来ない

 

 

「僕はカードを1枚セット、エンドフェイズに...」

 

「そこに«цпкпошп»の効果を発動!君の[右鎌神柱]を破壊する!」

 

「何っ!」

 

 

妖仙獣の効果に相手の誘発効果が挟まれ、秋天堂の手元に戻るはずだった妖仙獣一体が姿を消した

 

エンドフェイズに入ってしまったため、[右鎌神柱]の破壊を見届ける形で残りの妖仙獣達は恐る恐る主の手中に帰って行った

 

突如身を散らした[右鎌神柱]を労る時間もなく、ただただ貴重な戦力を失ってしまった。しかし、[左鎌神柱]の効果により秋天堂の妖仙獣達は効果対象にならない耐性が付与されている

 

こちらのディスクには[左鎌神柱]の効果が無効にされたログは無い。という事はそもそもの対象を取らない効果か

 

フリーチェーンのそれは強力だ

 

 

秋天堂 手札:4枚 LP 3000

 

モンスター/ [妖仙獣 左鎌神柱] DEF 2100

 

魔法・罠 / [修験の妖社]

 

     / リバース1枚

 

スケール / [妖仙獣 右鎌神柱] (5)

 

     / [妖仙獣 左鎌神柱] (3)

 

 

「私のターンだ...ドロー」

 

 

ドローフェイズに引いたカードを確認すると、敵はそのカードをそのままディスクに通した

 

秋天堂を守るモンスターは[左鎌神柱]のみ

それでもすぐに攻撃を行わない所からあのモンスターでは攻撃力が足りないという事だろうか

 

 

「私は«цпкпошп»を召喚、効果で墓地の«цпкпошп»を特殊召喚する!」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

«цпкпошп» DEF ?

 

 

「墓地の«цпкпошп»の効果を発動。除外し、フィールドの«цпкпошп»のレベルを変更する!」

 

 

«цпкпошп» ☆?→?

 

«цпкпошп» ☆?→?

 

 

「またエクシーズ召喚か...」

 

「ふふふ...2体の«цпкпошп»で«цпкпошп»を召喚!」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「そして«цпкпошп»のORUを2つ取り除いて«цпкпошп»を召喚!」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「さぁ、バトルだ!«цпкпошп»の効果で君の[左鎌神柱]を破壊する!」

 

「させないよ、[デモンズ・チェーン]をチェーン発動する!その効果を無効にするよ」

 

「簡単には行かせてくれないか」

 

 

最後の壁モンスターを失う訳には行かない

苦し紛れの一手に見えるが、攻撃も抑制するためこれ以上にない防御と化すことができた

 

だがまだもう一体の攻撃宣言が残っている

相手は少しだけ考える素振りを見せると攻撃命令を行った

 

 

「«цпкпошп»で[左鎌神柱]に攻撃!」

 

「うっ...うわ!」

 

 

秋天堂 LP 3000→2500

 

 

「«цпкпошп»には貫通効果がある...そしてモンスターを戦闘破壊したことにより、デッキからカードをドローする事が出来る!」

 

「ドロー効果まであるのか...まずいね」

 

「ふふふ...やっと顔色を変えてくれたね。カードを1枚セットしてターンエンドだ...」

 

 

«цпкпошп» 手札:1枚 LP 8000

 

モンスター/ «цпкпошп» ATK ?

 

     / «цпкпошп» ATK ?

 

魔法・罠 / リバース1枚

 

 

「僕の...ターン!」

 

 

何が突破口となる1枚を

強く願い引いたカードは紛れもない妖仙獣のカードだった

 

しかし、それは引きたくない部類のものと言える

[神颪]でサーチするはずだった、スケールの片割れだった

 

 

(うっ...このタイミングで[左鎌神柱]...)

 

 

[修験の妖社]でもう片方をサーチすれば破壊されるデメリットも回避しつつスケールが揃う

しかし、それには手札の妖仙獣全てを召喚する必要があり、相手の破壊効果の事を考えると安定とは程遠いプレイングに繋がってしまう

 

初ターンなら問題ないかもしれないが、既に秋天堂のライフは少なく相手はモンスターを展開し終えている。[デモンズ・チェーン]で片方を縛っているとはいえ、対象を取らない破壊の前では少しずつ剥がされていくのは目に見えている

 

ではどうするべきか

神柱を2体ずつ並べてターンを返すのが無難だろうか

魔法・罠なら破壊されないという訳でもない。今は[サイクロン]1枚でも立て直しが難しくなってしまうほど張り詰めている状況だ

 

 

「...」

 

 

ふと視界に入った聖帝が掲げる巨大な時計の針は、既に待ち合わせ時間を30分も過ぎた時を示していた

そして不意にその待ち合わせ相手の顔が浮かんだ

 

こんな時、彼ならどういう行動をとるのだろうか

 

 

「...そうか」

 

「ん?」

 

 

恐らく彼ならそうするだろうという1つのプレイングが思いついた。普段の自分ならあまりしない、少し突飛な戦い方だ

 

 

「考えても仕方ない」

 

 

後先考えるのを辞めた

それは勝利を諦めた訳ではなく、延命の為に自暴自棄になった訳でもない

 

出来ることを

己がしたいと思う事をするだけの事だ

彼ならこんな状況でも間違いなくそうするだろう

 

いつだって難しい事では無く、やりたい事、楽しい事、勝つ事を考える青年だった

今はそれに倣おう

 

 

「僕は[鎌壱太刀]を通常召喚!」

 

 

[妖仙獣 鎌壱太刀] ATK 1600

 

[修験の妖社] 妖仙カウンター 0→1

 

 

「効果で[鎌参太刀]を召喚!」

 

 

[妖仙獣 鎌参太刀] ATK 1500

 

[修験の妖社] 妖仙カウンター 1→2

 

 

「そして効果で[鎌参太刀]をリリースし、[閻魔巳裂]をアドバンス召喚!」

 

「ふふふ...カウンターを乗せるために必死だね...」

 

 

[妖仙獣 閻魔巳裂] ATK 2300

 

[修験の妖社] 妖仙カウンター 2→3

 

 

ここまでは考えていた動きだ

問題はその後行動

 

[閻魔巳裂]をアドバンス召喚したためセットカードの破壊は出来ない。そして次は[修験の妖社]のサーチ効果を使うしかない。当然サーチ先は片割れの[右鎌神柱]だ

 

 

「[修験の妖社]の効果でデッキから[右鎌神柱]をサーチするよ」

 

「おや?...片方を素引してしまったようだね」

 

 

誰でも分かる手順だろう

連続して[神颪]をサーチしておきながらわざわざスケールをサーチするにのには他に考えられない

 

だがバレしまった所で秋天堂に何の問題は無い

いずれにしても発動するつもりだ

 

 

「まぁね、僕は[左鎌神柱]と[右鎌神柱]をスケールにセット」

 

 

[神颪]にはもう1つのサーチ効果がある

それはレベル5以上の妖仙獣モンスターのサーチだ。スケールが揃った今こそ切り札である[大刃禍是]をサーチし、バウンス効果に繋げる手筈は済んでいる

 

妖仙獣を知っている者なら誰しもそう考える

しかし秋天堂はここで己のスタイルでは無く、その模倣すらしている”彼”に倣った

 

 

「僕は[神颪]を発動。もう1つの効果でデッキから[大幽谷響]をサーチする」

 

「ん?...なんだい、随分消極的じゃないか」

 

 

«цпкпошп»の技術を持たない秋天堂のカード達は相手に効果の確認がされる。相手は自分のディスクに映った秋天堂のカードテキストを確認するとその効果を知った

 

直接攻撃宣言時に自身を特殊召喚する、守り気味の効果だ。戦闘面にも強く、戦闘破壊されるとサーチ効果を発揮する

 

今の状況には具合のいい効果たが、結局攻めの手にはならない。しかし、このその場しのぎがその”彼”のスタイルでは無い

 

 

「僕はペンデュラム召喚を行う!」

 

「なんだと...スケールを上げずに?」

 

 

[右鎌神柱]の自身のスケールを上げる効果には、デメリットとして妖仙獣モンスター以外の特殊召喚を封じる処理を含む

 

つまり、このターンはレベル4モンスターのみのペンデュラム召喚に限るが、その後召喚するモンスターにはなんの制約がないという事だ

 

 

「おいで、[右鎌神柱]、[左鎌神柱]!」

 

[妖仙獣 右鎌神柱] DEF 2100

 

[妖仙獣 左鎌神柱] DEF 2100

 

[妖仙獣 左鎌神柱] DEF 2100

 

 

「そしてレベル4の[妖仙獣 左鎌神柱]2体でオーバレイ!」

 

「エクシーズ...君もか」

 

 

秋天堂が模倣したのは

単純な心理とも言える「新しいものを試したい」だった

 

あれからエクストラデッキを見直した彼女のデッキには多くのエクシーズモンスターが用意されている。レベル4・6・8と選び抜かれたそれらは強力なものだが、妖仙獣の性質上出番は限られている

 

だからこそ選んだエクストラデッキだ

己に合ったデッキだか、たまには他の召喚方法も試したい。たったそれだけの理由でこのプレイングを選んだだけだった

 

 

「吹き荒ぶは疾風の如く、雷穿つは迅雷の如し。光鳥よその身に刻み、現れよ!エクシーズ召喚、おいで[電光千鳥]!」

 

 

[電光千鳥] DEF 1600

 

 

「[電光千鳥]のエクシーズ召喚成功時の効果発動だよ、その伏せカードをデッキボトムに沈める!」

 

「これか...」

 

 

苦い顔で悩みだした

発動自体は可能なようだが、このタイミングでのそれは悩ましい様子だ

 

少し考え続けたと思うと、それほどの時間をかけずに答えを出した。チェーン発動だった

 

 

「チェーンしよう、«цпкпошп»を発動。«цпкпошп»を召喚する!」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「これは...なるほど、さっきのランクアップを僕の[デモンズ・チェーン]を受けている方に使ったのか」

 

 

秋天堂のディスクには対象を失ったことを示すマークが[デモンズ・チェーン]と重なって映っている

 

モンスターの数が変わっていない事からランクアップだと言うことはすぐに導き出せた

 

 

「そして[電光千鳥]の効果発動だよ、そっちの«цпкпошп»をデッキトップにバウンスする!」

 

「ぐぅ...チェーン発動だ」

 

 

フリーチェーンの対象を取らない破壊効果を持つ«цпкпошп»を対象に発動した。しかし、敵はその効果に対してチェーンを重ねてきた

 

そのため効果を無効にしないため、[電光千鳥]のバウンス効果は通ってしまう。バウンスを拒むためには、その起動効果を発動する前の、ランクアップ後の召喚成功時に発動すれば避けられたはずだ

 

そして破壊された秋天堂のモンスターは[右鎌神柱]だった。この事が秋天堂の中にあった推測を裏付ける結果に繋がったらしく、秋天堂は子供のように口角を上げ微笑んだ

 

 

「やっぱり対象を取らないじゃなくて”対象を選べないい”んだね」

 

「くっ...小癪な!」

 

 

遠回しな肯定とも取れる反応が見えると、秋天堂は笑を崩し、真剣な面持ちに変えた

 

既に大まかな情報を得ることが出来た。後はこの決闘(デュエル)に負けないこと、勝つ事に集中するだけだ

 

2体目のランク4は叶いそうに無いが、このターンは仕方の無いことかもしれない

 

 

「そのモンスターの攻撃力は気になるけど僕はエンドフェイズに[鎌壱太刀]を手札に戻してターンを終了するよ」

 

 

秋天堂 手札:2枚 LP 2500

 

モンスター/ [妖仙獣 閻魔巳裂] ATK 2300

 

     / [電光千鳥] DEF 1600

 

魔法・罠 / [修験の妖社]

 

     / [デモンズ・チェーン]

 

スケール / [妖仙獣 右鎌神柱] (5)

 

     / [妖仙獣 左鎌神柱] (3)

 

 

「くっ...私のターンだ!」

 

 

あまりいいカードが引けなかったのか、その男はそのカードを見ると舌打ちを放った

 

しかし次にディスクを確認すると、短い笑が聞こえた。恐らく秋天堂の残りライフだろう。すぐにバトルフェイズに以降した事からライフを削れば問題ないと判断したようだ

 

 

「バトルだ!«цпкпошп»は他にモンスターが居なければダイレクトアタックが可能!ダイレクトアタックだ!」

 

「...手札の[鎌壱太刀]を捨てて[大幽谷響]の効果発動!自身を特殊召喚する!」

 

 

[妖仙獣 大幽谷響] ATK 0

 

[修験の妖社] 妖仙カウンター 0→1

 

 

「チッ...言ったはずだ、他にモンスターが居なければ可能だと!«цпкпошп»で引き続きダイレクトアタック!」

 

「ううっ!」

 

 

秋天堂 LP 2500→100

 

 

モンスターの数が変化したため、攻撃対象の再選択が可能になる。しかし、相手モンスターのダイレクトアタック可能な条件にはそれは関係無く、改めて宣言するだけで秋天堂のライフを直接狙うことが可能だ

 

それは秋天堂も分かっている。戦闘には強い[山幽谷響]をわざわざ狙う必要性など皆無であり、結果的にこれ以上にないくらいライフは追い込まれた

 

前のターンで[閻魔巳裂]に攻撃の命を与えていたら丁度ライフが0を刻んでいた所だった。

 

危なかった

焦りもあったが、今自分は生きている

そう考えると自然と冷や汗も乾いてしまう

 

これも彼の事を考えているからだろうか

 

 

「カードを2枚セットしてターンエンドだ!」

 

 

«цпкпошп» 手札:0枚 LP 8000

 

モンスター/ «цпкпошп» ATK ?

 

魔法・罠 / リバース2枚

 

 

「...」

 

「...どうした、早くカードを引け」

 

 

敵は自ターンを終えると、未だディスクを構えないで何かを考える素振りをしている

 

腕を組み、左手でディスクに差し込まれているデッキのトップをトントンと音を鳴らして叩いている

 

そのカードの感触から敵の苛立ちも感じる気がした

だが、もう済んだ

 

 

「[金満]はダメで、[貪欲]も...[強貪]か、いや一番いいのは[マジック・プランター]だね」

 

「...何を言っている?」

 

「手札が無いからドローカードが欲しいんだ」

 

 

秋天堂の手札は0枚

次のドローフェイズにカードを迎えたとしても1枚

ダイレクトアタックが可能なモンスターが見えているため、何かしらの対処は必死であり、それをするにはなるべく多くの手数基手札が必要とされる

 

ではどうするべきか

 

それはカードを引くしかない

引くべきカード、引かなければならないカードを再確認し終えると、秋天堂は力強くデッキトップを引き抜いた

 

 

「ドロー!」

 

「...そんな都合良く引けるはずが」

 

 

敵が自身の感想を呟くように放ち終えるよりも早く、秋天堂はディスクにカードを通した

 

先程上げたカード名にもあった1枚だった

 

 

「引けたよ、[マジック・プランター]を発動!」

 

「ば、馬鹿な!」

 

「魔法・罠ゾーンを開けるためにピン刺しだったんだけどね、引けてよかった。[デモンズ・チェーン]を墓地に送り2枚ドロー!」

 

 

敵は唖然としている

実際に引けた事よりも、秋天堂が新たに提示したピン刺しという情報が彼をそうさせたのか

 

しかし秋天堂は止まろうとしない

1枚増えた2枚の手札を軽く確認し終えると、すぐにまたそれをディスクに通した

 

 

「いいね、[強欲で貪欲な壺]を発動!デッキトップ10枚除外して2枚ドロー!」

 

「馬鹿な...こんな..」

 

 

3枚まで増えた手札を見ると、思ったように動いたカード達にまた秋天堂は笑みを浮かべた

 

状況は最悪だが、妙に清々しい気分だった

 

 

「さぁ、お楽しみはここからだよ」

 

「なんだと...ふざけるな!」

 

「おや...そうか、そうだったね」

 

 

秋天堂は1人何かに納得すると、決闘(デュエル)に戻った。まずはあの攻撃力2400のモンスターを除去するようだ

 

 

「まずは[電光千鳥]の効果を発動、その最後のモンスターをバウンスするよ!」

 

「くっ...」

 

 

デッキトップへのバウンスはカードに依存する効果と言えるだろう。強力なモンスターなら次のターンに引ける事からあまり意味を成さない場合もあり、逆に次のドローを固定化するという意味ではロックの要素も併せ持つ

 

今回はエクストラデッキのモンスターだったため、完全なバウンス効果となった。そして相手には守るモンスターが存在しない

 

秋天堂のフィールドに存在するモンスター達だけでは攻撃力が足りないが、手札は3枚ある。またも秋天堂は新たにエクストラデッキに加えたモンスターを思い浮かべていた

 

 

「僕は[電光千鳥]をリリースし、[妖仙獣 凶旋乱(マガツランセン)]をアドバンス召喚!」

 

 

[妖仙獣 凶旋乱(マガツランセン)] ATK 2000

 

[修験の妖社] 妖仙カウンター 1→2

 

 

「[凶旋乱]の効果を発動。召喚成功時にデッキから妖仙獣モンスターを特殊召喚する。おいで、[妖仙獣 閻魔巳裂(ヤマミサキ)]!」

 

 

[妖仙獣 閻魔巳裂(ヤマミサキ)] ATK 2300

 

[修験の妖社] 妖仙カウンター 2→3

 

 

「そして僕はレベル6の[妖仙獣 大幽谷響]と[妖仙獣 凶旋乱]でオーバレイ、エクシーズ召喚!おいで[フォトン・ストリーク・バウンサー]!」

 

 

[フォトン・ストリーク・バウンサー] ATK 2700

 

 

「そして[右鎌神柱]の効果を発動し、自身のスケールを11にするよ」

 

 

スケール変動効果に含まれる、妖仙獣以外の特殊召喚を封じる効果はその後にのみ適用される

 

つまり先に召喚されている場合は問題無い

ペンデュラム召喚以外の方法でモンスターを展開する必要はあるが、どちらにせよエクストラデッキには余りの枠が存在している。ならば入れて置いて損は無いとの考えらしい

 

 

「僕は[修験の妖社]の効果を発動するよ。デッキから[大刃禍是]をサーチする。そしてペンデュラム召喚を行うよ...おいで、[大刃禍是]!」

 

 

[妖仙獣 大刃禍是] ATK 3000

 

[妖仙獣 大刃禍是] ATK 3000

 

 

「なっ...2体だと!?」

 

「[大刃禍是]の効果を発動するよ。その2枚のリバースカードを手札に戻してもらう!」

 

「ぬぅ...!チェーン発動だ、«цпкпошп»!墓地の«цпкпошп»を特殊召喚する!」

 

 

«цпкпошп» DEF ?

 

 

残りの1枚はバウンスに成功した

またもフィールドに残り続ける必要の無いカードらしく、加えて今度は守備表示で召喚された

 

対象をとる効果のため、2体の[大刃禍是]が効果を発動しようと後から現れたモンスターには対応出来ない。そのためチェーン発動により一体のモンスターが残ってしまった

 

しかし、秋天堂の脳内では既に計算が終わっているようだ。守備表示だろうと一体なら足りると

 

 

「バトルフェイズだ、[大刃禍是]でそのモンスターに攻撃!」

 

「くっ...!?」

 

 

ここで敵は少し遅れて気が付いた

秋天堂の残り攻撃可能なモンスター達の合計攻撃力は丁度8000だと言うことに

 

最も攻撃力が高い[大刃禍是]で守備表示モンスターを攻撃したのは反射ダメージを警戒したクレバーな選択にも思えたが、どうやら秋天堂の言い放ったお楽しみとはこれの事らしい

 

敵が驚いた様子で顔を上げると、秋天堂のどうだと言わんばかりのしたり顔が見えた

 

 

「き、貴様...」

 

「[フォトン・ストリーク・バウンサー]でダイレクトアタック!」

 

「ぬおっ!」

 

 

«цпкпошп» LP 8000→5300

 

 

「続けて[閻魔巳裂]でダイレクトアタック!」

 

「ぐうっ!」

 

 

«цпкпошп» LP 5300→3000

 

 

「こ.....こんな馬鹿な事が!」

 

「とどめだよ、[大刃禍是]でダイレクトアタック。”失爆暴風(ロスト・トルネード)”!」

 

「ぐぅっ!!」

 

 

秋天堂の宣言後、ソリッドヴイジョンが天空から[大刃禍是]に目掛けて落ちる一閃の光を演出した

 

その紅い光が[大刃禍是]まで辿り着くと、低く重い叫び声が轟き出し、[大刃禍是]が辺りに爆風を散らし出した

そのまま思い思いに暴れるが、最後は秋天堂の命令通り敵のライフを狙い突進する

 

秋天堂が狙った通り、誤差なくの残りライフを無に帰した

 

 

LP 3000→0

 

 

 

「ぐうぅっ...?」

 

「手加減したんだよ、僕の決闘力(デュエルエナジ-)でね」

 

「な、何だと...?」

 

 

秋天堂はたった今倒した敵の元まで歩いていくと、そう告げた。黒服の男は意味が分からないと言った様子で狼狽えている

 

何故自分は無事なのか

他の仲間は今も尚意識を失っているはずだと

 

しかし、吐き気のするような頭痛や手足の痺れを感じると、無事とは言い難いとも思えた

そうこう考えていると、すぐ目の前に秋天堂が辿り着いた

 

 

「くっ...く、来るな!」

 

「そうはいかないよ。お楽しみはこれからだって言ったよね」

 

 

黒服の男はもはや狩られる側に回っていたようだ

秋天堂が構えている決闘(デュエル)ディスクに灯る淡い光が彼をそう錯覚させていた

 

それは先程から彼らが使っている技術、決闘(デュエル)を強制開始させるためのものだ

 

彼には見覚えがあった

 

 

「そ...それは”シャフト”!?なぜ貴様が!?」

 

「へぇ、そっちではそう呼ぶんだね」

 

 

秋天堂は背中越しに同級生達の安否を確認した

斎藤はこちらに背を向け決闘(デュエル)に集中している。早乙女は横顔が見えるが、こちらには気づいていないようすだ

 

離れた所からの確認だが、双方優勢を保っているようだ

ひとまず安心すると、また黒服の男を見下ろした

 

見下すとも言える立場で

彼女は低く、無慈悲に問いだした

 

 

 

「君達の...いや、月下の目的について話してもらうよ」

 

 

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