遊戯王が当たり前?→ならプロデュエリストになる!   作:v!sion

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おくれてすみません...やっと大学やらレポート終わって自由になりました

久しぶりの投稿ですので忘れてるかも知れませんがまたゆっくり再開しようと思います。

構内大会おわってカラオケオールしてショップに遊びに行ったあとの続きです!ドーゾ!


第三十二話 誤招待

構内大会終了後、カラオケ店で一夜を過ごした慎也達。しかし彼らに疲れは見えず、草薙と詩織が一戦交えた数時間後、まだそこにいた

 

慎也 手札:2枚 LP 1600

 

モンスター/ [ゲノム・ヘリター] ATK 2400

 

     / [ゴブリンドバーグ] ATK 1400

 

     / 裏守備

 

     / [ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン] ATK 2550

     

魔法・罠 / なし

 

 

西条 手札:5枚 LP 900

 

モンスター/ なし

 

魔法・罠 / [マドルチェ・チケット]

 

フィールド/ [マドルチェ・シャトー]

 

「とどめだ![ゲノム・ヘリター]でダイレクトアタック、”フラッシュ・インパクト”!」

 

閃光が西条を包み込むと、西条のライフは0を刻んだ

 

「うぅ...負けちゃった...」

 

「村上さんの勝ちですわね」

「おめでとうございます村上さん!」

『やるじゃねえか兄ちゃん!』

 

西条vs慎也の決闘(デュエル)が幕を閉じる。彼らの休日の連戦はあれからも続き、もう時計の短針が4に近づき始めていた。あたりを見渡せば決闘(デュエル)スペースもちらほらと空きが生まれ始めている。少し伸びをすると灰田が口を開いた

 

「なんかお腹すいたね、おやつとか食べに行こうよ!」

「確かにちょっと小腹すいてきたわね」

『俺もガウ!』

(お前の声は聞こえないよ...)

 

灰田と黒川と1匹の口は間食を求めている。シザー・タイガーは置いておき、若い女性陣も口々に賛同し始め、草薙がそこに提案する

 

「でしたら...丁度私のお家が近いので皆さんよろしかったら遊びにいらしてくれませんか?」

 

「行く行くー!」

「あら、今日はお邪魔してばかりね」

「村上さんのお家にいたのは昨日ですよ」

「日をまたいでたわね」

 

『...主人、俺の分は?』

(...すみません、後で用意するので今は我慢しててください...)

『分かったガウ!』

 

構内大会を終え、そのまま睡眠をとることなく彼らはディスクを構えていた。曜日感覚の機能は乏しさを増してきていた

 

「折角ですので是非いらしてください」

「じゃあ...お邪魔しちゃおうかな?」

「ええ!」

「社長令嬢の家とか初めてだ!」

 

再び楽しそうに談笑しながら歩き出す慎也たち、決闘者(デュエリスト)達の活気溢れる決闘(デュエル)を横目に出口へと歩を止めない。

 

 

 

 

 

 

...それを遠目で見送る人物が1人。

2階のイートインスペースから慎也達をじっと観察していた。

 

「”村上慎也”、データ通りなかなかの決闘力(デュエルエナジ-)のようだな...」

 

左手に持つカップを口元からテーブルへ、その者は左手の手袋を外すとスーツ内部のポケットから端末を取り出し、操作する

 

「次点で”皆木詩織”...いや量だけなら”灰田光明”も対象だな...」

 

端末に何かを打ち込み始める。しかしその刹那、画面は黒に染まった。移り変わり、最後に映るは通話画面

 

「...なんだ?」

《俺だ、報告がないがどうなっている?》

 

電話越しに舌打ちを一つ

 

「...お前が言う連中との接触は済ませた。今は正確な決闘力(デュエルエナジ-)の計測と精霊の捜索中だ」

《大会の好成績者だな...》

 

お互いしばし黙る

 

《...そうか、それでお前は誰を選ぶ?》

 

「...おい、本当に今やるのか?」

 

再び沈黙...小さなノイズだけが聞こえる。それに聞き飽きた頃に電話の相手は重い口を開く

 

《...今更何を言っている。報告をしなかったのはそれが理由か?》

「...」

《...お前の悪い癖だ。いいかこれは彼らの為でもあるんだ。その様子だともう目星は付けているんだな?》

 

もう冷めきってしまったコーヒーを流し込む...

 

「...今日尾行した奴らに精霊持ちがいた」

《ほう...ならそいつだ、準備を急げ。決行は変わらず7日後だ、いいな?》

 

返事を待たずに電話は沈黙する。乱暴に端末をテーブルに投げやると男はカップを傾ける。しかしそれに中身はなく、男は直ぐに元の場所に戻す。周りの楽しげな空気もその電話も、彼を苛立たせるだけだった

 

「...悪く思わないでくれ」

 

椅子にかけてあった上着に袖を通し、席を立つ。そして慎也達とは別の方向へ姿を消した...

 

 

 

*

 

 

 

午後17時、慎也達は見上げていた。正確には豪邸の名が相応しい草薙家を下から上へとゆっくりと観察していた

 

「...ドラマみたいな家だね」

「すげえでけえ!」

 

「そんな大したものでは...」

 

巨大な門前での会話だ。

 

「お帰りなさいませ、花音様」

「あら”蒼輔(そうすけ)”、わざわざ出迎えていただかなくてもいいのよ」

 

短く揃えられた水色の髪に整った顔立ちの落ち着いた男性が門の向う側から歩みよってくる。”蒼輔(そうすけ)”と呼ばれる彼は門のその隣に位置する扉の影に一度消えると慣れた手つきで解錠した。そのまま草薙達を中へと迎える

 

「花音様のお友達ですね、私は草薙家の執事長を勤めております”蒼輔慧(そうすけさとし)”と申します」

 

「初めまして、村上慎也です」

(蒼輔って苗字なんだ...)

 

「灰田光明です!」

(本物の執事だ!)

 

「私は皆木詩織です!」

(お若いですね...)

 

「黒川美姫です、宜しくお願いします」

(あらイケメン...)

 

「こんにちわ、蒼輔さん」

「ええ、お久し振りです麗華様。皆さん立ち話も何ですのでどうぞこちらへ」

 

蒼輔に連れられ豪邸の内部へと進む。庭に執事、玄関前に執事、スリッパを渡すのも執事、廊下にいるのはメイドと見慣れない風景に動揺しながらも客間までたどり着いた

 

「お飲み物をお持ちします、皆さんの好みをお聞きしてもよろしいですか?」

「あ、そんなお構いな「甘いカフェオレが欲しいです!」

 

蒼輔は優しい笑みで頷く。遠慮するわけにもいかず西条と灰田以外はコーヒーを頂くことになった

数分後、その蒼輔が一人のメイドと台車を連れ戻ってきた。灰田と西条にはカフェオレ、他の皆にはコーヒーとクリームの乗った容器を1人1人に丁寧に置いていく。金髪のメイドもあとから数種類のお菓子が乗った皿を置いていくと一礼して先に部屋を出た

 

「なにかありましたらお呼びください。それではごゆっくり御寛ぎください」

「ええ、ありがとう」

 

「どうも...」

(香りがすごい...おいしそう)

コーヒー好きの慎也はそちらに釘づけだ

 

「このクッキー美味しいね!」

バカはいきなりお菓子に手をつける

 

「本当にすごいお家ですね...」

(このクリームどうやって使うのでしょうか...?)

 

「いい香りね」

(このクリームってそのまま入れていいのかしら?)

 

「...」

(皆木さん...黒川さん...ごめんなさい、私も上手に出来ないからカフェオレに逃げてしまいました...)

 

誰かが入れるのを待つ女性2人。見慣れないクリームの存在が謎の心理戦をくり広げた事は割愛する

 

 

 

*

 

 

 

「全然関係ない話なんだけどさ」

「どうしたの?」

 

誰よりも早くお菓子を完食した灰田が話し出した

 

「草薙って聖帝地縛七人衆なんだよね?」

「名乗ることはありませんが...そうなっておりますね」

 

「他の七人衆とそういうの話し合ったりしたの?」

「そう言えばうまいこと誰もかぶってないわね」

 

綺麗に七種類分かれているため、七人衆は意図して結成されたものだと思われているようだ

 

「そうですわね...強いて言うなら...」

 

ーーー

ーー

 

〜二年前〜

 

時は草薙達がまだ1年生課程の頃。選択必修科目の遊戯王歴史学の講義において神のカードの歴史を学んでいた

 

「ーであるからしてここで特殊召喚の制約がない神が現れました。それが地縛神です」

「フィールド魔法がなければ維持できませんが、種族や効果がバラバラなため、様々なデッキに入ることが出来る神であると私は考えます。皆さんの中にも相性のいい地縛神がいるのではないでしょうか?」

 

あまり戦略やデッキ構築について話さない講義だが少し脱線させた。教授はそのまま話を進める

 

「ちょっと聞いてもいいですかね?皆さんの中にも既に地縛神をデッキに入れているという人はどのくらいいるのでしょうか?」

 

手を上げる生徒ば少ないがチラホラといる。教授は好奇心を隠さず1人1人聞いていく

 

「意外にも多いのですね!ちなみに君はどの地縛神を?」

 

「俺は[ヴェノミナーガ]を中心とした爬虫類デッキなんで[ヴァイパー・リボーン]を共有できる[Ccaryhua(コカライア)]です」

金髪の青年が流暢に答える。用意しておいたのだろう

 

「なるほどおもしろいですね、君は?」

 

「僕は獣族の恩恵が受けられる[Cusillu(クシル)]です」

茶髪の青年は優しい笑顔で答えた

 

「たしか君のデッキは...なるほど面白そうだね。君は?」

 

「俺はロックパーツとして[Chacu Challhua(チャクチャルア)]を入れてみました!」

グレーのパーカーが似合う彼もスムーズに答えた。教授の期待値も上がっていく

 

「これはもしかしたら七種類...君はどれを?」

 

「私は[wiraqoch Rasca(ウィラコチャラスカ)]です」

草薙は教授が求めていた答えを発した

 

「素晴らしい!後は[Aslla Piscu《アスラピスク》]と[Uru(ウル)]ですね...聖帝地縛七人衆が完成しますね!他にはいませんか?」

 

生徒達は困惑する。

 

「あの...教授、5人しか手を挙げていませんでしたわ...」

「あぁ...そうでしたね、私としたことがお恥ずかしい...」

 

冷静になる教授、テンションの上がり下がりについていけていない生徒達だが、雰囲気は良さげだ

 

「...きっとこの講義を受けていない生徒達の中にもいますよ」

「そうですね...失礼しました。講義を続けますね」

 

ーーー

ーー

 

「...ということがありまして、その教授の発言から生徒の間で”聖帝地縛七人衆”とよく呼ばれるようになりました」

 

「へぇー、でも本当に偶然だよね。古賀がたまたま[Aslla Pisc(アスラピスク)]選んでよかったね」

「そういえば蛭谷さんも地縛七人衆に入るんだったね」

 

西条が忘れがちな情報を提供したところで灰田が誇らしげに語り出した

 

「俺は今日の草薙戦で地縛七人衆全員と戦った事になるよ!」

「全員とですか!...そういえば私蛭谷さんと草薙さんぐらいしかお会いした事ないです...古賀さんはAブロックで見ましたけど」

「私もだわ、灰田君、残りは誰なの?」

「皆木は[Chacu Challhua(チャクチャルア)]使いと戦ったことあるよ?」

「え!?...誰だったんでしょうか?」

「慎也も[Uru(ウル)]使いと戦ってたよ!?」

「俺も!?...誰なの?」

 

灰田が楽しそうに勿体ぶる。告げられた意外な人物に全員驚いた

 

「色嶋!」

「えっ!?あのスピリットデッキに!?」

「意外ですね...あの人が地縛神使うなんて...」

「あら...じゃあ村上君は構内大会で地縛七人衆の3人も相手にしてたのね...」

 

色嶋、古賀、草薙の3人だ。もしかするともっと地縛神に苦しんでいたかもしれなかった

 

「では[Challhua(チャクチャルア)]使いは誰だったんですか?」

「えとね...」

 

ノックが会話を遮る。草薙がどうぞと一言やると扉の向から威厳溢れる男性が顔を出した

 

「花音、友人を連れてきていると聞いたのでね、私も挨拶ぐらいしようと思ったのだが...今いいかね?」

 

「ええお父様。皆さん私の父ですわ。」

「あ、初めまして。こんにちわ」

 

つい背筋が伸びてしまいながらも慎也は立ち上がり一礼と自己紹介をする

蒼輔の時を含めると2度目の自己紹介だ。それを済ませると再び丁寧に草薙の父親は挨拶する

 

「わざわざ来てくれて悪いのだけれどもね、私も友人が来ていて相手できないんだ。私は隣の客間にいるがどうかゆっくりくつろいでいってくれ」

 

「いえいえ、突然おじゃましている身ですので。ありがとうございます」

 

満足そうに微笑む草薙父の背後から聞き覚えのある声が聞こえた

 

「なんだね?私にも挨拶ぐらいさせてくれないのかい?」

「あぁそうか、君の生徒にあたるのか。村上君、君はここの所よく会っているんじゃないかい?」

「え?俺ですか?」

 

2人のスーツ姿の男性が現れた、後の1人は慎也達がよく知る存在

 

「私だよ」

「学園長!?」

 

そこには構内大会で長い話をしていた...プロへの紹介をかけ決闘(デュエル)した男性。大神がいた

 

「学園長がなぜここに...?」

「学生時代からの友人なのだよ、草薙君の父親と彼とはね」

「そうなんですか...そちらの方は?」

「はは、急に無関係なおじさんが出てきて悪いね僕は”鷲崎貴文(わしざきたかふみ)”よろしくね」

「よ、よろしくお願いします」

 

簡潔な会話を少しするとそれではと一言残し、大人3人は部屋を出て隣の部屋に移動していった

 

「突然の事で驚きましたわよね?お父様はどうも私の友好関係に興味がおありのようで...」

「いいお父さんじゃん!」

「まさか学園長と知り合いだなんてね...」

「そうですよ!」 

「ええ...ところで皆さん。ずっと客間にいるのなんですし、後で我が家のデュエルスペースにでも行きましょう。他にもいろいろと案内したいところがございますし」

「今日は決闘(デュエル)漬けだねー」

 

ーーー

ーー

 

その頃、聖帝大学では休日にも関わらず決闘棟(デュエルパ-ク)にはちらほらと生徒がいた。その中に高城の姿もあった

 

「およ?斎藤先輩〜こんにちわ〜」

 

決闘棟(デュエルパ-ク)内でバイト先、兼大学の先輩にあたる斎藤を見つけた。高城にきづくと斎藤も手をふり返し、お互い近寄る

 

「やぁ、珍しいね休日のしかもこんな時間に」

「あや〜[ユニコーンちゃん]のことを考えると今のうちに色々やりたくて...」

「そうだね...メタルフォーゼのせいだとは言いたくないけど残念だったね」

 

リミットレギュレーションの事だ。[ユニコーン]を切り札としていた高城には相当痛手の様子だ

 

「はい〜というわけで色々変えてみたんで良かったら相手してくれません〜?」

「いいよ!オレの花札衛(カーディアン)も新規のお陰で随分変わったからね!」

「いいですね〜やりましょ〜!」

 

空いているスペースにお互い位置どる。デッキの準備をすると掛け声と共に怒声が響き渡った...

 

「オラァァア!!!どけぇぇええ!!」

「グワァ!!」

 

警備員姿の男性がドアを押しのけ中へとなだれ込んできた。ゾロゾロと穏やかでない集団が聖帝生徒を威圧しながら展開する

 

「およ?なんですかね??」

「...なんだあいつら?」

 

生徒達もざわつき始める。警備員のディスクの照明の色が敗北を示唆していた。決闘(デュエル)の腕は確かなようだ。

 

「キミ達何しに来たんだい?」

 

リーダー核の男に歩み寄る斎藤。その男もニヤニヤと詰め寄り目的を語る

 

「俺らは暴れてーだけだ。あとは俺の改造ディスクの贄になってもらえればそれだけだぜ!」

 

「なるほど、でも勝手に大学入って警備員まで倒しちゃうのはいささかどうかと思うけど?」

 

「正論だなー?だからそーですかいって帰らねえけどな!」

 

話は通じそうにない。そう判断すると妥協案を提示した

 

「...ならオレが相手になるよ。だからオレが勝ったら大人しく帰ってくれるかな?」

「てめぇいい度胸じゃねーか?いいぜ気に入ったやろうぜ」

 

「斎藤先輩気をつけて」

「ああ、下がってて」

 

自分たちの大学のはずが居心地が悪そうな生徒達は不安な表情で斎藤を見送る。

 

「俺から送るぜ、ディスクを向けな」

「ああ」

 

ディスクをお互い向け合う。ワイヤレスでお互いに情報を交換し、最新データが片方に無いと相手側のアップデート情報に合わせて更新される。今回は対戦ルールの確認と承諾の一任のみを斎藤は行った

 

「...ん?」

「さぁ始めるぞ!!」

 

ディスクの不協和音と共に決闘(デュエル)は始まった。先攻のランプは相手に灯った。

 

「俺は後攻デッキだからな、てめえにやるよ」

「...何を言っているんだい?」

 

謎の一言を残し、ランプは隣にいた男のディスクに移った

 

「なっ!?」

「言ったろ、改造ディスクだって!」

「1体1じゃなかったのか!」

「よく見な!俺ら全員と相手してもらうぜ!」

 

先攻後攻の操作以前にいつの間にか多勢対1にルールは変わっていた。正確には4vs1だ

 

「お、おい!ずるいぞそんな違法改造!!」

「だったら乱入してこいや!ライフ削ってよ!!」

 

萎縮してしまう生徒達。ライフ半分のデメリットを負い、なおかつ対戦中の決闘者(デュエリスト)たちの許可を得ることが出来れば途中参加できる。しかし誰もディスクを構えようとしない。赤髪の少女を除いて

 

「斎藤くん、私もやるよ〜!」

「高城くん...!」

 

ライフハンデはあるものの、少しでも斎藤の負担を減らそうと頭数を増やしに行った。後は彼らの承認が必要になるが、意外にも相手はそれを認めるようだ

 

「...いいぜ、他にいねえか?」

 

「俺もやるよ!」

「ぼ、僕も!」

 

「古賀くんに東野くんまで...」

 

人混みをかき分け、斎藤に力を貸すべく新たな戦力が加わった。対する相手は相変わらずニヤニヤとしながら承諾ボタンを押す。それはペナルティのトリガーとなり、彼らにダメージが入る

 

高城 LP 8000→100

古賀 LP 8000→100

東野 LP 8000→100

 

見慣れぬ以上な数値に一同は目を疑う

 

「...はっ?」

「ギャハハハハハ!!随分すくねえなー!」

 

本来のペナルティはライフ半分。明らかは違法改造に古賀らの表情は硬い。1枚のバーンカードで斎藤以外は簡単に葬れる。すぐそこに迫っている敗北への恐怖と、違法改造に対する嫌悪感を込めて彼らはただ敵を睨むことしか出来ない

 

「キミ達...どこまでも腐ってるな」

「ずるいぞ...!」

「あやや〜...」

 

「なんとでもいいな!ほら行け!」

「はい!...俺のターンだ、フィールド魔法[歯車街(ギア・タウン)]を発動!」

 

「効果で古代の機械の召喚コストをひとつ少なくするぜ!俺は[古代(アンティ-ク)(ギア)機械合成獣(ガジェルキメラ)]を召喚!」

 

「カードを1枚セットしてターンエンドだ!」

 

集団A 手札:2枚 LP 8000

 

モンスター/ [古代(アンティ-ク)(ギア)機械合成獣(ガジェルキメラ)] ATK 2300

 

魔法・罠 / リバース1枚

 

フィールド/ [歯車街(ギア・タウン)]

 

「...拓郎、もしかして」

「うん、多分素人だな」

 

小声で会話する2人。違法改造に似合わないデッキから、特に残しておきたいものでないモンスターからのターンエンド。次にランプか灯った古賀が手札を確認する。ドローも攻撃も許されていないが、どうやらもう違法な操作は出来ないようだ。黙って古賀のプレイを待っている。数は多いため、初心者だろうと油断はできない。

 

「...」

([死皇帝の陵墓]には頼れないな...)

 

限られたライフの中で出来ることは制限させる。ルールを再確認すると八つ巴になっていた。

 

「...俺のターン、永続魔法[黒い旋風]を発動するよ!」

「そして[BF(ブラックフェザ-)残夜のクリス]を通常召喚するよ![旋風]の効果でデッキから[砂塵のハルマッタン]を手札に加えるよ〜!」

 

「そして手札から[突風のオロシ]を特殊召喚するよ!」

 

  [BF(ブラックフェザ-)-突風のオロシ] DEF 600

 

「[A(アサルト)BF(ブラックフェザ-)-砂塵のハルマッタン]を特殊召喚!効果で[オロシ]のレベルを貰うよ!」

 

 [BF(ブラックフェザ-)-砂塵のハルマッタン] ☆2→3

 

「レベル4の[BF(ブラックフェザ-)-残夜のクリス]にレベル1の[BF(ブラックフェザ-)-突風のオロシ]をチューニング、シンクロ召喚!現れてよ[TG(テッグ・ジ-ナス) ハイパー・ライブラリアン]!」

 

 [TG(テッグジ-ナス) ハイパー・ライブラリアン] ATK 2400

 

「[疾風のゲイル]を特殊召喚!そして俺はレベル3の...っ」

 

[ノートゥング]のシンクロ召喚が頭をよぎった。あれからも決闘(デュエル)を続け、BF(ブラックフェザ-)の動きは頭に入っている古賀だが、今回は異例だ。[ノートゥング]の登場は東野と高城の退場を意味する

 

「た、拓郎![ノートゥング]は強制効果だよっ!」

「あや〜...」

「わ、分かってるよ!...」

 

黒羽の要、[ノートゥング]を召喚する前提でサーチやレベル変動を行っていたためこの盤面では出来ることはかなり限られてしまった。

大量展開は不可能に近い、シンクロ召喚を覚えたが今回の決闘(デュエル)では自粛せざる得ない。エクストラデッキの自分のモンスター達への申し訳ないと言う気持ちを持ちながらも、古賀はこんな状況下でも負けたくないと闘士に燃えていた。だが、自らが置かれた状況を再確認した高城達にもそれは言える

 

(...頑張って、拓郎!)

(ファイトだよ〜)

 

「...手札から[BF(ブラックフェザー)-黒槍のブラスト]を特殊召喚!」

 

  [BF(ブラックフェザ-)-黒槍のブラスト] ATK 1700

 

「レベル4の[BF(ブラックフェザ-)-黒槍のブラスト]にレベル3の[BF(ブラックフェザ-)-疾風のゲイル]をチューニング、シンクロ召喚!現れてよ[A(アサルト)BF(ブラックフェザ-)-涙雨のチドリ]!」

 

 [A(アサルト)BF(ブラックフェザ-)-涙雨のチドリ] ATK 2400→3900

 

「[ラリアン]の効果で1枚ドローするよ」

「...レベル3の[BF(ブラックフェザ-)-砂塵のハルマッタン]にレベル7の [A(アサルト)BF(ブラックフェザ-)-涙雨のチドリ]をチューニング、シンクロ召喚!現れてよ[神樹の守護獣-牙王]!」

 

    [神樹の守護獣-牙王] ATK 3100

 

「[ラリアン]でドローするよ」

「BFじゃねえのかよ!」

「なんだ、おまえ?初心者か?」

 

[ハルマッタン]を処理するためにシンクロ召喚した[牙王]。[スワローズ・ネスト]で地縛神を呼ぶ古賀のデッキを理解している聖帝の生徒らは納得出来る。対する初見の相手達は古賀の行動に疑問を抱いていた。古賀自身も[クリスタルウイング]など制圧力のあるモンスターを残してターンを終えたかったと少し悔やみ、ターンを終えようとする

 

「カードを1枚セットして俺はターンエンドだよ!」

 

古賀 手札:1枚 LP 100

 

モンスター/ [神樹の守護獣-牙王] ATK 3100

 

     / [TG(テッグシ-ナス) ハイパー・ライブラリアン] ATK 2400

 

魔法・罠 / リバース1枚

 

「俺のターンだな...」

 

また人相の悪い男にターンが回った。

 

「[ブリキンギョ]を通常召喚!効果で手札から[サイバー・ドラゴン・ツヴァイ]を特殊召喚する!」

 

   [ブリキンギョ] ATK 800

 

   [サイバー・ドラゴン・ツヴァイ] ATK 1500

 

「俺はこいつら2体でオーバレイネットワークを構築する!エクシーズ召喚!行け[ギアギガントX]!」

 

   [ギアギガントX] ATK 2300

 

「こいつの効果でデッキから[古代(アンティ-ク)(ギア)機械箱(ボックス)]を手札に加えるぜ」

 

次の取り巻きはエクシーズ召喚を行った。機械族の万能サーチから準備を続ける

 

「ドロー以外の方法で手札に加わった[古代(アンティ-ク)(ギア)機械箱(ボックス)]の効果でデッキから地属性・機械族・攻撃力か、守備力が500以下のモンスターをさらに手札に加える!俺は[ギアギアーセナル]を手札に加え、ターンエンドだ!」

 

集団B 手札:5枚 LP 8000

 

モンスター/ [ギアギガントX] ATK 2300

 

魔法・罠 / なし

 

「次は僕だね...」

 

先程から順番にこちらにターンが回ってきている。下手にロックなどされないうちに動きたいと東野が手札を確認するが...

 

(...[おジャマキング]や[おジャマナイト]は拓郎達のフィールドも圧迫させるのか...)

 

まだターンが回っていない斎藤と高城がいるため、おジャマ融合モンスターを召喚してしまえば困るのは相手だけでない。ならばと古賀に視線を向ける

 

「拓郎、譲ってもらっていいかな?」

「いいよ!」

 

何をかは分からないが何かを古賀から譲って貰った東野。再び手札を確認し、手順をシミュレーションしだした。

 

「僕は手札から[手札抹殺]を発動!僕は4枚捨てて4枚ドローする!」

 

まだターンが回ってないプレイヤーや、先程のサーチで手札を潤っていた取り巻き達は5枚、古賀は1枚手札を入れ替えた。

 

「あや〜大事なの落ちちゃった〜」

「うっ、ごめんね...」

「いや、このリセットはオレ達にいい結果になったようだよ」

 

お互いの墓地を確認した斎藤がつげた。相手のキーカードや、味方の墓地発動を意味している

 

「ありがとうございます...では、フィールド魔法[おジャマ・カントリー]を発動!」

 

おジャマのフィールド魔法に斎藤の表情が曇った。花札衛(カーディアン)切り札の守備力は0だ。それに対し、東野は口角を上げ頷いた

 

「大丈夫ですよ、[おジャマ・レッド]を通常召喚!効果で手札から[おジャマ・イエロー]を特殊召喚!」

 

     [おジャマ・レッド] ATK 1000

 

     [おジャマ・イエロー] ATK 1000

 

「僕はレベル2の[おジャマ・レッド]と[おジャマ・イエロー]でオーバレイ、エクシーズ召喚!お願いするね、[No.64 古狸三太夫]!」

 

     [No.64 古狸三太夫] DEF 1000

 

「手札から[エアーズロック・サンライズ]を発動!墓地の獣族モンスター、[地縛神Cusillu(クシル)]を特殊召喚!」

 

  [地縛神 Cusillu(クシル)] ATK 2800

 

「[古狸三太夫]の効果発動!ORUを一つ取り除き、影武者狸トークンをフィールド上のモンスターで一番攻撃力が高いモンスターと同じ攻撃力で特殊召喚する!」

 

    [影武者狸トークン] ATK 2800

 

「カードを1枚セットしてターンエンド!」

 

東野 手札:0枚 LP 100

 

モンスター/ [No.64 古狸三太夫] DEF 1000

 

     / [地縛神 Cusillu(クシル)] ATK 2800

 

     / [影武者狸トークン] ATK 2800

 

魔法・罠 / リバース1枚

 

「俺のターンだな...ククク」

「いいじゃねえか、やってやれ!」

「へい!俺は[古代の(アンティ-ク)機械(ギア)猟犬(ハウンドドック)]を召喚!」

 

 [古代の(アンティ-ク)機械(ギア)猟犬(ハウンドドック)] ATK 1000

 

「なっ!」

「やばいよ!」

 

某アニメでも有名なバーンカード?だ。たった600のダメージも致命傷を通し越して即死に繋がる

 

「効果発動だ!相手に600ポイントのダメージを与える!」

 

宣言後、赤髪をゆらしながら凛とカードを使う少女が1人。高城が効果を発動した

 

「まかせて〜!手札から[エフェクト・ヴェーラー]の効果を発動〜その子の効果を無効化するよ〜!」

 

「なんだと!」

 

1枚のカードが3人の命を救った。煌めく羽を翻し、猟犬を沈めると役目は終わり、墓地に行った

 

「チッ...ならカードを1枚セットしてターンエンドだ」

 

集団C 手札:3枚 LP 8000

 

モンスター/ [古代の(アンティ-ク)機械(ギア)猟犬(ハウンドドック)] ATK 1000

 

魔法・罠 / リバース1枚

 

「私のターンだね〜」

 

次は高城のターン。[ヴェーラー]を使用したため手札は4枚スタートとなる。

 

(私の場合は[揺れる眼差し]とかが使えないんだね〜...)

 

各々自身の使用出来ないカードを確認してからスタートするようだ。高城の場合は新しくなったデッキをこのような異端な初陣でどう活かせるかが重要になる

 

「まずは[EM(エンタメイト)ドクロバット・ジョーカー]を通常召喚〜!」

 

    [EM(エンタメイト)ドクロバット・ジョーカー] ATK 1800

 

「効果でデッキから[オッドアイズ・ペンデュラムドラゴン]をサーチするよ〜」

 

「そして私は[慧眼の魔術師]と[黒牙の魔術師]をスケールにセッティング![慧眼の魔術師]のペンデュラム効果発動!この子自身を破壊してデッキから[曲芸の魔術師]をスケールにセッティングするよ!」

 

「そして私は3体のペンデュラム召喚を宣言するよ!皆集合〜!」

 

 [オッドアイズ・ペンデュラムドラゴン] ATK 2500

 

 [慧眼の魔術師] ATK 1500

 

 [マジェスペクター・フロッグ] DEF 500

 

「[フロッグちゃん]の効果でデッキから[マジェスペクター・テンペスト]をセットするよ〜」

 

「そして私はレベル4の[慧眼の魔術師]と[EM(エンタメイト)ドクロバット・ジョーカー]2体でオーバレイネットワークを構築〜エクシーズ召喚!おいで〜[昇竜剣士マジェスターP(パラディン)]!」

 

 [昇竜剣士マジェスターP(パラディン)] DEF 2000

 

「墓地の[貴竜の魔術師]の効果を発動〜![オッドアイズ・ペンデュラムドラゴン]のレベルを3つ下げて特殊召喚するよ〜!」

 

 [オッドアイズ・ペンデュラムドラゴン] ☆7→4

 

 [貴竜の魔術師] ATK 700

 

「レベル4の[オッドアイズ・ペンデュラムドラゴン]にレベル3の[貴竜の魔術師]をチューニング!シンクロ召喚、おいで〜[クリアウイング・シンクロ・ドラゴン]!」

 

 [クリアウイング・シンクロ・ドラゴン] ATK 2500

 

「エンドフェイズに[マジェスターP(パラディン)]の効果でデッキから[マジェスペクター・キャット]をサーチしてターンエンドだよ〜」

 

高城 手札:1枚 LP 100

 

モンスター/ [昇竜剣士マジェスターP(パラディン)] DEF 2000

 

     / [クリアウイング・シンクロ・ドラゴン] ATK 2500

 

     / [マジェスペクター・フロッグ] DEF 500

 

魔法・罠 / リバース1枚

 

次に行動が許されたのは何故か斎藤だった。相手のリーダ格の男は八つ巴のトリを望みこの順序を設定したようだ

 

「...オレのターンだね」

([雨四光]はダメ、なら...新規の出番だな!)

 

ライフ100の博打が始まろうとしている




聖帝地縛七人衆は残りひとりですね

〜おまけ〜

「そーすけっ!」
金髪のメイド姿の女性がキッチンに顔を出した

「...なんですか?今花音様のご友人にお出しするお飲み物の用意で忙しいのですが」
少し間を置いて蒼輔が返答するが意識は目の前のコーヒーメーカーに向けられている

「私も手伝うよ、でさ、花音様が殿方を連れてくるなんて珍しいわよねー?どう思う??」
やけに親しそうにそばに近寄ると語り出す。一つため息を吐くと蒼輔も口を開いた

「あの白黒髪型の青年、彼に興味があるのでしょうね」
「あら!分かるの?」

「何となくですがね、あの茶髪の元気な青年には他に想い人がいるよう見えましたね」

「あなたよく見るだけで分かるわよね、じゃあさ!」
「私の想い人はー?」

不意を突かれた蒼輔はポーカーフェイスを崩した。頬を赤らめながらもそのメイドも執事長も目を離さない

「...」
「...」

カチカチと時計の針の音。コーヒーメーカーの仕事も終わりに近づいているようで様々な音が室内に響いている

「...それは婚約者に聞くことですか?」
「んー?再確認!」

「...」
「...」

1秒1秒が長く感じる

「いえ、あの...」
「...」

「おやおや...ブラックコーヒーが甘くなってしまうぞ?」

廊下からこの家の主の花音の父親が顔を覗かせた。メイドも執事長も距離をとり同時に主を見据えた

「も、申し訳ありません草薙様!」
「申し訳ありません!!」

「ハハハ、仲が良くていいじゃないか。そういえば大神君と鷲崎君をこれから招待するのだが.....こちらの準備も頼めるかね?」

「はい、直ちに!」
「わ、私も直ちにご用意いたします!」

「では頼むよ」

草薙様は廊下を進み友人を迎える準備に向かった。残された蒼輔とその婚約者は静かに客人へのもてなしを再開した

「...今度ゆっくり話そう」
「...うん」

ぶっちゃけどうですか?

  • 読みたいからやめて欲しくない
  • 読みたいけど無くなったら読まない
  • 普通
  • 無くてもいい
  • 読むのが億劫

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