遊戯王が当たり前?→ならプロデュエリストになる! 作:v!sion
◐月下-南側大通り / 午前7時42分
「カムイ...っ!」
「村上慎也、よく来たねっ!」
渡邉、永夜川そして慎也はそれぞれ猛者を前に異なる感情を抱いていた
渡邉は自らが担ぐ慎也の身を慮り不安を
永夜河は何が起こっているのか未だ理解が遅れている様子
そして慎也にはカムイの存在しか見えていなかった
慎也がここまでに至った諸悪の根源
やっと出逢えた両者には語るべき事が多すぎた
「カムイ...お前詩織ちゃんをどこに!」
「安心しなよっ、皆木さんは丁重におもてなししているよ」
「お前...もういい、その減らず口叩きのめしてやる!」
渡邉の腕を振りほどき、今にでも噛みつきそうな程に慎也は荒れ始めた
まるでいつもの慎也でもなかった
それは傷だらけの肉体や失った右目の事ではなく、感情を素肌にむき出しのまま吠える獣のようなその姿がだ
だがやはり怪我人
ここで
「落ち着け村上。ここは俺がやる、下がっていろ」
「...俺がやるんだよ、俺がやらなきゃ行けないんだよ!」
慎也へは何の言葉も届かないだろうか
渡邉の静止に耳を貸さず、彼の利き手はアンカー射出のトリガーから離れようとしていない。だがまだアンカーは打たないでいる
痛みによるものなのか頬に大粒の脂汗が滴った
彼の中で葛藤があるらしい
どうやらこれから成そうとしている事がどれだけ難しい事か、自分自身でも理解しているようだ
今のまま戦えば恐らく慎也は勝てない
まだ彼は己の弱さを知らないからだ
「俺が...俺が!」
《慎也君》
小さなボタン
それに添えられている震える慎也の手を包んだのはまた小さな掌
絹のような美しい白い肌
そして淡く眩く煌めいているのは緑髪の少女のものたった
[ダイガスタ・スフィアード]
慎也は一目見ただけでその正体を理解できた
「君は...スフィアード...?」
《はい!慎也君に宿る精霊さんですよ!》
「精霊...そうか」
慣れたものだ
初めて精霊を宿した時は酷く混乱した
戦地だからか、怪我の痛みからか、憎き相手を前にしているからか
今は自分の精霊だと言われると簡単に納得できた
「あの地盤沈下から助けてくれたのか?」
《私は手を伸ばしただけですよ。ここまで連れてきたのも応急手当をしたのも彼ですよ!》
「渡邉...さん」
「まぁな」
《そうだよ!もっとお礼して!》
「...それは?」
渡邉の頭に座っている精霊に慎也は気が付いた
彼の使用デッキを知る慎也には直ぐにその正体を理解したが、彼までが精霊を宿していた事など知らなかった
[アロマージ・ジャスミン]
そのモンスターのドロー効果を主軸に戦う渡邉にとっては異論のない精霊だ
《渡邉がここまで一生懸命に運んだんだからね!お礼して!》
「あ、ありがとう...ございます」
「気にするな」
「スフィアードも、ありがとう」
《いいえ!》
渡邉に精霊が宿ったことは分かった
自分自身にも新たな精霊が宿ったことも分かる
だが問題はどのデッキに宿ったという事
シンクロの
他に使用しているデッキがない以上疑う余地は無いが、やはり解せない
そこで思い出した
日本を経つ前
「デッキに適合していないお前が希望気取りか?」
「...どういう意味ですか?」
あの時の言葉
冷静さを欠いていた事もあり、今の今までその真意を理解しようともしていなかった
厳密には言葉通り
慎也は
それだけだった
「...そうか、やっぱり俺は
「やっと気づいたんだねっ!」
輝元の言葉を思いだし、己の力を再認識した所で我に返った
カムイの言葉だった
まるで初めから慎也の
だが強弱が適合と直結しない事は今までの経験から何となく分かっている
だからこそカムイの真意が気になった
「お前は知っていたのかよ」
「うんっ、君と初めてあった時からね。君は君自身の力も把握出来ていなんだってずっと思っていたよっ」
「...そうかよ」
今の慎也にはそれについて言い返す材料が足りていない
ヤケになって挑んだ輝元にも敗北し、ガスタの力を借りなければ一樹にも叶わなかったかもしれない
そう
彼が適合していたのはガスタのようだ
「おいで、真に適合したそのデッキでっ!」
「.....」
無論カムイとは戦うつもりだ
だが腰のホルダーから抜きだした
ガスタを尊重するならもはや[スピード・リバース]や
だがそれは非常にも思えた
《...慎也君、そのカードは》
「分かってるよ」
スフィアードが何か言い終える前にデッキの調整をおえた
もう余計な事を考えるのにも疲れ始めたところ
「...村上」
「止めないでください」
渡邉にもそれは伝わっていた
怪我人だから、適合していないからなどの言葉は彼を止めるには力が足りない事を
「...あの眼鏡の女性は任せろ」
「助かります...っ!」
渡邉がグラスの前に
慎也がカムイの前に
そして溢れた永夜川は何となく空気を掴んで同じく余っているシッドの前へ進んだ
現状
渡邉 vs グラス
「お話は終わったかしら?」
「あぁ、待たせたな」
《待たせたな!》
律儀にも渡邉達の意見が会うまで沈黙のまま待機していたグラスも、1歩前に踏み出した
だがジャスミンの声には反応しない
まるで聞こえていない様子だ
「あんたには見えないのか?」
「精霊の事かしら?えぇ、私には見えないわ」
《ガーン!》
不似合いなリアクションをとったジャスミンを程々に相手すると、渡邉に1つ懸念が生まれた
精霊が見える者と見えない者の違いについて
グラスは渡邉のジャスミンが見えておらず、恐らく慎也のスフィアードも見えない
カムイは渡邉のジャスミンだけでなく慎也の精霊も当たり前のように認識している
そして慎也も同じくそうだ
ただカムイがそういう体質、いわゆる
だとすれば自分自身にも同じことが言える
「どうかしたの?」
「...いや」
彼自身が自らの精霊を認識し始めたのはこの地、月下へ降りてからしばらく経った後のこと
北側の大通りへ突撃し、ある程度敵を相手した後にその時は突然訪れた
突如現れたジャスミンの導きに従うとそこに慎也がいただけ。つまりは精霊についても
今その事を考えるだけ無駄にも思えた
「まぁいい、全てが終わったら村上達にご教授願うとするか」
《そうしよ!》
ーーー
ーー
ー
シッド vs 永夜川
「悪いな、あと少しで吸い終わるからよ、待っててくれや嬢ちゃん」
「私には永夜川文佳と言う名前があります」
「そうかい」
シッドは吸いかけの煙草をその場に捨てると、右足で執拗にそれを踏みつぶした
一ノ宮らを屠った
この
のらりくらりとしているが、ここで自分が負けるわけにいかないとシッドなりに固い意識があった
「永夜川...の嬢ちゃん。待たせたな、そろそろ始めるとするか」
「いいえ、それは違います」
永夜川はデッキをシッドに向けると、その発言を短く否定した
臨戦態勢に入った後の否定の言葉に対し、シッドは何か違うのか理解が遅れてしまった
「終わらせるのです、この戦争を」
「...そうかい」
ーーー
ーー
ー
慎也 vs カムイ
「「
カムイ LP 8000
慎也 LP 8000
「僕は手札の«цпкпошп»を捨てて、«цпкпошп»の効果を発動!デッキから«цпкпошп»を特殊召喚するよっ!」
その
2度目の邂逅に
復讐の炎に燃える青年に
待ちわびた戦いを前にした強者達にそれは不要なのだ
先行はカムイ
新たになったらしい慎也のデッキへの期待を朧気に抱きつつも、彼は彼の
「手札の«цпкпошп»を捨てて«цпкпошп»を発動っ!デッキの«цпкпошп»を特殊召喚するよっ!」
«цпкпошп» DEF ?
「墓地の«цпкпошп»と«цпкпошп»を除外して、墓地から«цпкпошп»を特殊召喚っ!」
«цпкпошп» DEF ?
「除外された«цпкпошп»の効果っ、デッキから«цпкпошп»をサーチするよ」
「相変わらずの動きだな」
「まだまだっ!僕は«цпкпошп»と«цпкпошп»でオーバレイッ、«цпкпошп»をエクシーズ召喚!」
«цпкпошп» ATK ?
「«цпкпошп»の効果っ、2体のトークンを特殊召喚するよっ!」
???トークン DEF ?
???トークン DEF ?
「そして次は«цпкпошп»に«цпкпошп»をチューニングっ、«цпкпошп»をシンクロ召喚っ!」
«цпкпошп» DEF ?
「墓地の«цпкпошп»の効果っ!デッキトップを墓地に送って特殊召喚するよっ!」
«цпкпошп» DEF ?
「さらにさっき墓地に行った«цпкпошп»の効果っ!墓地の«цпкпошп»と«цпкпошп»を除外して特殊召喚っ!」
«цпкпошп» DEF ?
「除外された«цпкпошп»の効果で«цпкпошп»をサーチ。«цпкпошп»を発動、フィールドの«цпкпошп»を除外して2枚ドローするよ。そして«цпкпошп»を通常召喚、さらに手札の«цпкпошп»も特殊召喚だ!」
«цпкпошп» ATK ?
«цпкпошп» DEF ?
「«цпкпошп»の効果で自身のレベルを変更するよっ、僕は«цпкпошп»と«цпкпошп»でオーバレイ、«цпкпошп»をエクシーズ召喚っ!」
«цпкпошп» ATK ?
「さらにオーバレイを再構築っ、«цпкпошп»をエクシーズ召喚っ!」
«цпкпошп» ATK ?
「効果を発動っ、僕はコストとしてデッキの«цпкпошп»達3枚を墓地に送って、君はデッキのモンスター3枚を除外するんだっ!」
「俺は[ガスタの巫女 ウィンダ]、[疾風 リーズ]、[ガスタ・コドル]を除外する」
「おや...?」
打って変わった慎也のデッキに思わずカムイは
そして感情に微かな変化が見られた
(...愚かだ)
それは怒り
彼だけがその理由を知る些細な怒りだった
敗北を経験した
(......やはり君は自分の力を理解していない)
彼にとって期待はずれの選択だった
「...僕は墓地に送られた«цпкпошп»の効果でデッキから«цпкпошп»を除外する。墓地の«цпкпошп»と«цпкпошп»を除外して«цпкпошп»を特殊召喚、除外された2体の«цпкпошп»の効果でデッキから«цпкпошп»、除外されている«цпкпошп»を手札に加えて、カードを1枚セットする」
抑揚無く順序よく続けると、カムイのエンドフェイズが訪れた
このターン手札から捨てられたカードは3枚
それだけでカムイがエンドフェイズに何かカードを発動する事がよめる
自分が相手した際と、詩織の
「エンドフェイズに«цпкпошп»を発動するよ。3枚ドローする」
「...」
除外・特殊召喚・サーチ・ドロー
そしてエクシーズとシンクロ召喚を通じてたどり着いた最終盤面は凄まじいものだった
カムイ 手札:4枚 LP 8000
モンスター/«цпкпошп» ATK ?
/«цпкпошп» DEF ?
/«цпкпошп» DEF ?
/«цпкпошп» ATK ?
/«цпкпошп» DEF ?
魔法・罠 /リバース1枚
実質手札消費を1枚により5体のモンスターを並べセットカードも残した
更にモンスター5分の4はエクストラデッキに身を置く、2体以上の素材を要求するもの達
やはり一筋縄では行きそうにない
「俺のターン!」
征竜は把握済み
だが前回は慎也が先攻だった事もあり、カムイの先攻を眺めるのは初めてだった
故に展開が大きく異なっている
トークン精製のランク7
自己蘇生効果を持つチューナー
それだけ分かっていれば自ずとあのシンクロモンスターの正体も見えてきた
「速攻魔法[緊急テレポート]を発動!デッキからサイキック族モンスターを特殊召喚する!」
「させないよっ«цпкпошп»の効果発動っ!リリースしてその発動を無効にして破壊するよっ!」
慎也はデッキリクルートが通らなかった事よりも、無効効果を持つモンスターが居ると咀嚼した
モンスターゾーンの位置からあのシンクロモンスターがそれを秘めているという事も同時に理解できる
「そして墓地に送られた«цпкпошп»の効果で、デッキから«цпкпошп»を手札にくわえるよっ!」
そして墓地に送られた際にもサーチ効果を持つ
コストである自身のリリースも損としない強力なモンスター効果だ
それがもう1回飛び交うのだ
「なら...[ガスタの神官 ムスト]を通常召喚!」
[ガスタの神官 ムスト] ATK 1800
「バトル、[ムスト]でそのシンクロモンスターに攻撃!」
「もう2体ともやられたねっ」
レベル4のモンスターにしては高い攻撃力を持つ[ムスト]だが、シンクロモンスターの守備力を確実に上回る数値ではない
だがその特徴的な効果から早くも«цпкпошп»を推測し終えた慎也には[ムスト]がその守備力を突破できる事を疑わなかった
バトルフェイズと魔法カードを失ったが、厄介なモンスターの処理は済んだ
«цпкпошп»を諸共しない落ち着いたプレイングだろう
「墓地へ送られた«цпкпошп»の効果だよ、«цпкпошп»をサーチする」
「構わない、俺はメインフェイズ2に入る」
カムイは慎也が何の障害もないこのフェイズに突入するやいなや新たにカードを握る様を見て、初めから効果無効が露呈していた事に気付いた
«цпкпошп»ももはや彼にはあまり意味が無いようだ
しかしそれは評価に値したと判断した訳では無い
向かってくるガスタへはやはり虫酸が走っている
「スケールに[音響戦士 ギータス]をセット!」
「...おや」
音響戦士
風属性機械族のテーマであり、その中でもペンデュラムスケールを持つそれが姿を現した
「[ギータス]の効果発動!手札の[ガスタ・グリフ]を捨てて、デッキから[音響戦士 マイクス]を特殊召喚する!」
[音響戦士 マイクス] ATK 2400
「さらに手札から墓地に送られた[グリフ]の効果発動、デッキから[ガスタ・ファルコ]を特殊召喚する!」
[ガスタ・ファルコ] DEF 400
《慎也君!》
「行くよ、俺はレベル4の[ガスタの神官 ムスト]にレベル2の[ガスタ・ファルコ]をチューニング!新たな風は力を拒む。我、追い風を纏いし主を穿とう。強者よ、神風はやまぬ。凪を求めて媚びるがいい!シンクロ召喚、現れろ[ダイガスタ・スフィアード]!」
[ダイガスタ・スフィアード] ATK 2000
「召喚に成功した[スフィアード]と戦闘破壊以外の方法で墓地に送られた[ファルコ]の効果をチェーン発動。墓地の[グリフ]を手札に加え、デッキから[ガスタ・ガルド]を裏側で特殊召喚する」
「おっ、これは...」
裏側故に後の効果は続かないように思えるが、[マイクス]により増えた召喚権の為のリリース要因にはなる
加えてガスタ特有の強い繋がりも合わさる
「俺は増えた召喚権を使う。裏側の[ガルド]をリリースして[ガスタの疾風 リーズ]をアドバンス召喚する!」
[ガスタの疾風 リーズ] ATK 1900
「そしてフィールドから墓地に送られた[ガルド]の効果発動!デッキから[ガスタ・イグル]を特殊召喚する!」
[ガスタ・イグル] DEF 400
「俺はレベル5の[音響戦士 マイクス]にレベル1の[ガスタ・イグル]をチューニング、[スターダスト・チャージ・ウォリアー]をシンクロ召喚!」
[スターダスト・チャージ・ウォリアー] ATK 2000
「効果で1枚ドローする。俺はカードを1枚セットしてターンエンドだ」
慎也 手札:2枚 LP 8000
モンスター/ [ダイガスタ・スフィアード] ATK 2000
/ [ガスタの疾風 リーズ] ATK 1900
/ [スターダスト・チャージ・ウォリアー] ATK 2000
魔法・罠 / リバース1枚
スケール / [音響戦士 ギータス](7)
「...もうすっかりガスタの
まるで新しいデッキかのようなフィールドを創り、慎也はカムイへターンを返した
以前の
無論効果無効が邪魔をしたのもある
だがやはりカムイは慎也らしくないと何処か不満げに感じていた
「まぁいいさ、僕は手札の«цпкпошп»と«цпкпошп»を捨てて«цпкпошп»の効果を発動。君の精霊にはご退場願おうかっ」
《し、慎也君!》
「させないよ、リバースカードオープン、[追走の翼]!俺のスフィアードは戦闘・効果で破壊されないよ」
《お、”俺の”だなんてそんな//》
恐らく破壊効果にガスタの切り札が狙われるが、唯一のセットカードが死守する
スフィアードの効果によりガスタの戦闘によるダメージを反射するため、これは実質[リーズ]とスフィアード、そして自分自身のライフポイントも守ることに繋がると言えるだろうか
「なら«цпкпошп»の効果発動、トークンを2体特殊召喚する。そしてもう1つの効果だよっ、トークンをリリースして[追走の翼]を破壊するよっ!」
「必死だな」
「じゃないと勝てないよ、«цпкпошп»の効果発動!ORUを取り除き、このターン2回攻撃が出来るよ。そして墓地の«цпкпошп»と«цпкпошп»を除外して«цпкпошп»を特殊召喚!」
«цпкпошп» ATK ?
「効果で«цпкпошп»2枚をサーチして、今度は«цпкпошп»2体をリリース!«цпкпошп»をアドバンス召喚!」
«цпкпошп» ATK ?
「バトル!まずは«цпкпошп»で[チャージ・ウォリアー]に攻撃!」
「通す...ぐぅっ!」
慎也 LP 8000→6000
「続けて«цпкпошп»で[リーズ]に攻撃!」
「くっ...っ!」
慎也 LP 6000→3900
「おっと、君は戦闘ダメージを反射するんだったねっ。僕はターンエンドだよ」
カムイ 手札:4枚 LP 8000
モンスター/«цпкпошп» ATK ?
/«цпкпошп» ATK ?
/«цпкпошп» ATK ?
魔法・罠 /リバース1枚
「俺のターン...っ!」
ドローによる3枚目のカードはやはりガスタ
幸い相手フィールドには攻撃力の高いモンスターが並んでおり、ガスタの真骨頂が活かせる場面だ
手数は潤っているとは言い難いにしろ、兆しはまだある
2ターン目にして踏ん張り所が現れたのだ
「[ギータス]の効果発動!手札の[ガスタ・グリフ]を捨てて...」
「«цпкпошп»の効果発動!その発動を無効にするよっ」
「くっ...また効果無効か...」
フィールドの«цпкпошп»により[ギータス]のリクルート効果が封じられるが、まだ[グリフ]の効果が待機している
唐突な無効化に戸惑いはあったがまだ挽回できる範囲
別のチェーンブロックに入った時、その考えに陰りが生まれた
「なら墓地に送られた[グリフ]で...」
「それも許せないね、«цпкпошп»の効果で無効だ」
「何...っ」
«цпкпошп»は同じ場所から無効効果を放っていた
故に同じモンスターであり、ターン1の制限が無いことも分かる
«цпкпошп» ATK ?→?
そしてその処理後攻撃力に変動があった
「...[
「ご名答っ!さぁどうするっ?」
先の戦闘で攻撃力が2800と分かっている事もあり、コストも制限もない無効効果となると他に思い当たらなかった
攻撃力が下がる処理も後押ししている
「でも...2回使ったな、バトル。スフィアードで攻撃だ!」
《行きますよ!》
「賢明だねっ」
スフィアードはレベル6の中では比較的低い攻撃力を持つが、2度効果を使用した[ライダー]は撃破可能
慎也の記憶が正しければ今の攻撃力は1800
少しだけ不安も残っていたが、ディスクの戦闘破壊完了のエフェクトを確認すれば杞憂に終わる
カムイ LP 8000→7800
「破壊された«цпкпошп»の効果で僕は全てのカードを破壊する。でも墓地の«цпкпошп»は特殊召喚するよ」
«цпкпошп» ATK ?
「またバトルフェイズを使わされた...メイン2。[貪欲な壺]を発動!墓地の[チャージ・ウォリアー]、[イグル]、[ガルド]、[グリフ]、[ファルコ]をデッキに戻して2枚ドロー!」
少ない手札を眺めると、[ギータス]の無効化がやはり厳しかった
同時にこのターンに出来る事も自然と無くなっている
消極的な
このままではカムイの強いアドには適わない
「...モンスターとカードをセット。ターンエンドだ」
慎也 手札:1枚 LP 3900
モンスター/[ダイガスタ・スフィアード] ATK 2000
/裏側守備
魔法・罠 /リバース1枚
スケール /[音響戦士ギータス](7)
「僕のターンっ!」
慎也の5倍の手札を持つカムイが不敵な笑みを浮かべる
フィールドにはモンスターが一体存在するのみだが、その正体を慎也が案じているのを理解した上での笑みだろうか
[ライダー]の効果で特殊召喚された«цпкпошп»のため何か推測するための材料は墓地にいたということのみ
有力なのはエクシーズモンスターだろうか
「僕は«цпкпошп»でオーバレイを再構築!2体目の«цпкпошп»をエクシーズ召喚!」
«цпкпошп» ATK ?
「[タキオン]だったか...」
「本当に君はよく見てるよ。効果発動だよ、僕は«цпкпошп»3体を墓地に、君は3枚のカードを除外するんだ」
「このカードを除外する」
「...おっ」
慎也が2度目の除外で選択したのは[ベーシス]と[ドラムス]
そして3枚目のカードはカムイもよく知る1枚
まさか採用していたとは素直に驚く以外できなかった
「[征竜テンペスト]を除外する」
「あれ、いつの間に戻ってきてたんだいっ!」
「さぁね、効果でデッキから[デブリ・ドラゴン]を手札に加える」
「不思議な感覚だ、僕は墓地に送られた«цпкпошп»の効果でデッキの«цпкпошп»を除外するよ」
唯一許された征竜のカードはガスタと同じく風属性のそれ。若干の噛み合わない会話もあったが、相手の効果を利用して少ない手札に有難いサーチ効果を挟むことが出来た
だがそのカードが使用できるのは次のターン
2度目の踏ん張り所だろうか
「まぁいいさ、墓地の«цпкпошп»の効果だ。君も征竜を使うのなら、僕も全力でお見せするよっ!」
«цпкпошп» ATK ?
«цпкпошп» ATK ?
«цпкпошп» ATK ?
「さすがに墓地が肥えてたか...」
「効果で«цпкпошп»2枚をサーチするよ」
征竜のサーチ効果と特殊召喚効果はいずれかの効果。サーチが1枚のみである事と、特殊召喚された3体のモンスターの存在から一気に征竜4体の効果を使用したとわかる
墓地が充分に超えているからこそ出来る技だ。カムイがここで勝負を決めに来ている事も嫌になるほど伝わった
「ふふ...懐かしいねっ、«цпкпошп»を除外して手札から«цпкпошп»を特殊召喚!」
«цпкпошп» ATK ?
「効果発動!墓地の«цпкпошп»を特殊召喚!さらに«цпкпошп»でオーバレイを再構築、3体目の«цпкпошп»をエクシーズ召喚!」
«цпкпошп» ATK ?
「3度目の効果発動だ、あと3枚除外するんだ」
「...[イグル]、[ファルコ]、[リーズ]を除外する」
「まだまだ行くよっ!«цпкпошп»2体でオーバレイ、«цпкпошп»をエクシーズ召喚!」
«цпкпошп» ATK ?
「効果発動!君の精霊、今度は欲しいなっ!」
「[ビッグ・アイ]か...っ!」
《し、慎也君ー!》
前にも見た事のあるプレイングだった
除外と蘇生から相手のデッキ3枚を削り、ランク7がコントロールを奪う
悲痛な叫びと共に相手フィールドへと移ったスフィアードが不安な表情で慎也を見つめるが、何も出来ないのはお互い分かっていた
美しい髪の緑も赤も、衣服の淡い色も全てがモノクロに染まると、次第に肉体を失って行った
「スフィアードっ!」
《し...慎也君...》
[ダイガスタ・スフィアード]
[ダ?イガ??≒ス??ア-?]
«цпкпошп»
«цпкпошп»と化す
モンスターのコントロールを奪われた痛みではない何かが慎也の心内を抉った
「んと...僕のフィールドにいる限りは反射ダメージは発生しないんだねっ。なら僕のフィールドに置いておくよ」
「カムイ...っ!」
「まるで恋人でも奪われたみたいな反応だね...いや、そう言えば君は本当に恋人を奪われていたね」
「どこまでも...っ!」
慎也は忌々しい敗北の記憶から目を逸らすつもりでカムイを睨むが、次に現れた«цпкпошп»もその記憶に繋がるものだった
失ったスフィアードはガスタだけでなく慎也の要。それに追い打ちをかけるかのようにカムイは
「«цпкпошп»を発動!墓地の«цпкпошп»とフィールドの«цпкпошп»を除外して«цпкпошп»を融合召喚!さぁっ、この日の元を我らに!」
«цпкпошп» ATK ?
「それは...あの時のっ!」
「今回はこれも使おう、手札とフィールドの«цпкпошп»2体をリリースして、手札から«цпкпошп»を特殊召喚っ!」
«цпкпошп» ATK ?→?
「詩織ちゃんの時の...っ!」
「そうだよっ!本当によく覚えているねっ!」
慎也のドラゴン達を奪った5体融合
詩織を苦しめたリリースによる特殊召喚モンスター
前者は身をもって体験済みであり、後者は何も出来ないまま眺めていただけ
だがどちらの恐ろしさも理解している
「«цпкпошп»の効果で2回攻撃を可能にするよ。そして終わらせよう、«цпкпошп»で裏守備に攻撃っ!」
「くっ...っ!」
裏側の壁モンスターが穿たれると、カムイは次の攻撃宣言に移ろうとした
だが慎也のカードは«цпкпошп»では無い
故に戦闘時にはその姿を現す
[ガスタの希望 カムイ]
「[カムイ]のリバース効果発動!デッキからガスタチューナーを特殊召喚できる!」
「ガスタの...”希望”、”カムイ”...面白いカードだ」
「...別に面白くもない。俺は[ガスタ・イグル]を特殊召喚!」
[ガスタ・イグル] DEF 400
奇しくも双方の名を冠したモンスターが慎也の糧となり後続を呼んだ
深い意味も理由も何も無くただ面白いと率直な感想をカムイは上げるが、不機嫌そうに慎也はそれを否定するだけだった
まだ安心できない
2回攻撃も含めまだ攻撃可能なモンスターは5体残っているのだ
「[イグル]に攻撃だっ!」
「戦闘破壊された[イグル]の効果発動!デッキから[ガスタ・ガルド]を特殊召喚!」
「なら[ガルド]に攻撃だよっ!」
「フィールドから墓地に送られた[ガルド]の効果発動!デッキから[ガスタ・ファルコ]を特殊召喚!」
「«цпкпошп»で[ファルコ]に攻撃!」
「[ファルコ]は...戦闘破壊では効果が発動できない」
[カムイ]から始まったガスタの連携も、度重なる攻撃によって等々後続尽きてしまった
そしてカムイにはまだ攻撃可能なモンスターが残っている
慎也のライフは3900
それを一撃で沈めるほどの攻撃力を持つモンスターは決して多くは無いが、カムイが温存しているモンスターは攻撃力が上がる処理を行っていた
試しに受けて見るなど愚かな行為だ
「«цпкпошп»でダイレクトアタック...これはどうするっ!?」
「通すわけない、リバースカードオープン![カウンター・ゲード]!直接攻撃を無効にして1枚ドローする!」
「...知っているよ、それがモンスターなら通常召喚できるんだろっ?やってみな」
「言われなくても...ドロー!」
カムイはこのダイレクトアタックが通らない事を
慎也はデッキトップに一任する事にあまりいい顔をせずその処理に突入した
攻撃を止めた後はドローのみ
簡潔で明確なドローだ
「...その後の処理は行わない」
「そう、なら«цпкпошп»でダイレクトアタックだっ!」
迫り来る«цпкпошп»の向う側でカムイが不敵に笑っている
決して楽しさ故のものでは無く、勝利を確信したからでもない
期待の意味も少しだけ存在する。が、何よりも無意識によるものだった
慎也ならここでは終わらないはずという曖昧で未知数な希望なのだった
「終わりかい?恋人を助けるんじゃなかったのかいっ!?」
「当たり前だ...っ!」
まだ何も成してない
詩織を助けるのも
スフィアードを取り返す事もこの
[カウンター・ゲート]で引いたカードを慎也はディスクに通した
状況全てを成すために必要な一手だ
「[
「なに...
効果は攻撃を止めるのではなく、攻撃出来ない表示形式を無理強いするもの
慎也にとって使い慣れた1枚なのだが、それと相対した経験のあるカムイは何故か驚愕の表情を浮かべている
[
「
「何故って」
まるでディスクを操作する気配も見せずにただ立ち尽くしカムイは疑問を放った
カムイにとっては大きなものだが、慎也にとっては至極当たり前な事
「俺は
「でも、君はガスタに適合したんだろ?」
「違う」
カムイの
何も操作しなければまもなくメイン2に移ってしまうが、元よりこのバトルフェイズに行える事は無く、それよりも慎也の言葉が気になって仕方なかった
「俺が適合しているのは
「...そうか」
明確な答えとは言い難い
だが、カムイはそれを否定したりはしない
フェイズが移り変わり、自らのターンを終えてしまい時間が無いからか、カムイはそれ以来言葉を発せず慎也にターンを返した
カムイ 手札:3枚 LP 7800
モンスター/«цпкпошп» DEF ?
/«цпкпошп» DEF ?
/«цпкпошп» DEF ?
/«цпкпошп» DEF ?
/«цпкпошп» DEF ?
魔法・罠 /なし
「俺の...ターン!」
ガスタと
実に優秀かつ求めていた1枚であり、何の躊躇も無く発動に至る
ガスタが墓地に貯まりやすい事も考慮したドローカードだ
「2枚目の[貪欲な壺]を発動!墓地の[イグル]、[カムイ]、[ファルコ]、[ガルド]、[ムスト]をデッキに戻して2枚ドローする!」
「ガン積みなんだろうね」
「当たり前だ。[ギータス]の効果発動!手札の[
「ならチェーンだ、手札の«цпкпошп»の効果を発動!」
[音響戦士 ドラムス] DEF 1300
カムイ LP 7800→8700
「ライフが回復した...?」
「«цпкпошп»の効果で君がモンスターを特殊召喚する度にその攻撃力分僕はライフが回復するよ...っ!」
「面倒な効果を...」
特殊召喚を繰り返す慎也にとって非常に痛手な手札誘発だ。こちらに与える影響がではなく、相手を追い詰めるはずのモンスター達の攻撃力はカムイの命を後押ししてしまうからだ
大型のシンクロモンスターなど召喚してしまえばその分ダイレクトアタックでもしない限り追いつかない程ライフが回復し続けてしまう
「...手札の[デブリ・ドラゴン]を捨てて[カード・フリッパー]を発動!相手フィールド上全てのモンスターの表示形式を変更する!」
「.....なんだいそのカードは、一体何が目的だい」
「時期に分かる。墓地の[
[
カムイ LP 8700→8800
「しょっぱい攻撃力だね」
「言ってろ、[赤目のダイス]の効果で俺は[メンコート]のレベルを3に変更する。そしてレベル3となった[
[古神ハストール] ATK 2300
カムイ LP 8800→11100
「ふふ...ご馳走様っ!」
「さらに俺はレベル4の[古神ハストール]にレベル2の[音響戦士ドラムス]をチューニング、シンクロ召喚!現れろ[スターダスト・チャージ・ウォリアー]!」
[スターダスト・チャージ・ウォリアー] ATK 2000
カムイ LP 11100→13100
「[チャージ・ウォリアー]と墓地に送られた[ハストール]の効果をチェーン発動!1枚ドローし、相手モンスター一体の装備カードになる。[ハストール]をその«цпкпошп»に装備だ!」
「なに...」
[ハストール]が装備カードになった後、再び墓地に送られる事によって装備していたモンスターのコントロールを奪う効果がある
実際にコントロールを会得するまで随分紆余曲折があるのだが、完全コントロール奪取は強力でありカムイからモンスターのフィールドには高い攻撃力を持つモンスターが林立している
それが慎也の狙いだとカムイは理解しかけた
だが慎也が選択した«цпкпошп»は最も攻撃力の低いモンスターだった
「...まさか」
「俺は[ガスタ・ガルド]を通常召喚!」
[ガスタ・ガルド] ATK 500
「行くぞ、俺はレベル6の[スターダスト・チャージ・ウォリアー]にレベル3の[ガスタ・ガルド]をチューニング、シンクロ召喚!現れろ[
[
カムイ LP 13100→15800
「フィールドから墓地に送られた[ガルド]の効果発動!デッキから[ガスタ・イグル]を特殊召喚する!」
[ガスタ・イグル] ATK 200
カムイ LP 15800→16000
「そして[
「村上...っ!」
相手モンスターに装備されているとはいえ[ハストール]は慎也のカード
所有者を問わない広い選択肢が取れる[
だがそのためにカムイのライフを回復させすぎてしまった
初期ライフの実に2倍の数値を削り切る事なと到底不可能だ。だが、それでよかった
[ダイガスタ・スフィアード] ATK 2000
《慎也君!ただいま!信じてたよ!》
「あぁ、良く帰ってきてくれたね」
「その精霊を取り返すのが目的だったという事か...それに」
カムイには自身の«цпкпошп»が見えている
そのため[ハストール]の効果対象の時点で慎也の目的がコントロールの奪取だと言うことは読めていた
だがその先の狙いに気がついたのは今この瞬間
慎也はあの多大なライフポイントを削りきるつもりなのだ
「戻ってきていきなりで申し訳ないけど、働いてもらうよ、スフィアード!」
《任せてください!》
「行くよ...バトル![ガスタ・イグル]でそのモンスターへ攻撃!」
7000DAMAGE!!
両者の
それは[ガスタ・イグル]の攻撃力と相手の«цпкпошп»の攻撃力との差を表しているのだが、見慣れないダメージだ
そして戦闘で敗北した慎也が受けるダメージでは無い
ここで取り戻したスフィアードの真骨頂が活かされるのだ
「スフィアードの効果により、ガスタモンスターの戦闘で受けるダメージは俺の代わりにお前が受ける!喰らえ、”ダイガスタ・アンチウィンド”!」
《今までのお返しですよ!》
「ぐうぅ...うわぁっ!!」
カムイ LP 16000→9000
「破壊された[イグル]の効果発動だ、デッキから[ガスタ・ファルコ]を特殊召喚する!」
「特殊召喚するのなら僕はその攻撃力分回復するよっ!」
[ガスタ・ファルコ] ATK 600
カムイ LP 9000→9600
「くっ...攻撃力が低すぎるね...っ!」
「それがどうした、[ファルコ]で«цпкпошп»に攻撃!」
《”ダイガスタ・アンチウィンド”!》
「うぅわぁぁぁっ!」
カムイ LP 9600→3000
「[ファルコ]は戦闘破壊ではリクルート出来ない。だがスフィアードの攻撃が残っている!」
「くっ...ふふふ...おめでとうっ!これでやっとリベンジが果たせたねっ!」
「...」
初めは嫌味のつもりで放った言葉かと思えた
だが、慎也にはそれが全てではなくとも本心である事を心のどこかで理解している
理由は分からない
カムイのその感情も、自然のままカムイへ返した言葉も
「...ありがとう」
「は?」
「君は君自身の力も把握出来ていなんだってずっと思っていたよっ」
カムイの言葉
あの言葉も今思えば嫌味ではなく指摘
慎也自身が気づいていなかった彼の力を示唆していたのだ
「お前がいなかったら...俺には何も出来なかった」
「適合の事かな...」
「それだけじゃない」
スフィアードに攻撃命令を与えると、長くは語るつもりのない事を行動で示した
礼の言葉の意味はカムイの言う適合の事
それに加えて、この
「お前が強いから俺がここまで来れた。お前が強いからこそ俺のガスタは、俺のこのシンクロデッキは勝てた」
「...本当に面白いやつだねっ!」
LP 3000→0
カムイ LOSE
16000のライフポイントを削り切るという事は、この
初期ライフの2倍
そして同じ対戦相手
これは前の敗北へのリベンジと共に、前の
二人分のライフを削り切った慎也は本当の勝利、本当のリベンジを果たしたのだった
ぶっちゃけどうですか?
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読みたいからやめて欲しくない
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読みたいけど無くなったら読まない
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普通
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無くてもいい
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読むのが億劫