遊戯王が当たり前?→ならプロデュエリストになる!   作:v!sion

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分けたのに結局長くなっちゃいました


第百十三話 颯人 vs 颯希Ⅱ

◐月下-失彩の道化団(モノクロ・アクタ-ズ)本部内通路

 

 

颯希 手札:2枚 LP 8000

モンスター/ «цпкпошп» ATK ?

     / «цпкпошп» ATK ?

魔法・罠 / なし

 

颯人 手札:2枚 LP 2300

モンスター/ なし

魔法・罠 / リバース2枚

 

 

デッキに呪われていた

英世界や精霊の事を知っていなければまず理解出来ない言葉だが、前情報を持つ颯人でも訳の分からない台詞だった

 

デッキとの適合の事だろうか

本当に使用したいテーマを回せないという理由で他のテーマに行き着いたという話は聞いた事がある

それの事か

あの手札から捨てられる事により真価を発揮するデッキでは無く、他に使用したいテーマでもあるというのか

だとしても「呪い」という単語はふきつすぎて似つかない

 

 

決闘者(デュエリスト)は、人は自分が適合するデッキを選べないんだよ。どれにも適合しないから決闘(デュエル)そのものがままならない人だっているの」

 

「あぁ...それが呪いってやつか?」 

 

「うぅん...禁止と制限についても聞かされたでしょ?」

 

「人体に及ぼす影響が未知、誰にでも適合するんだが危ねぇってやつか」

 

「まぁ、そんな感じ」

 

 

突拍子も無い話だけに、兄の認知度が気になる颯希はゆっくりと語っている

傍らに座り細かな段階事に確認の指差しをするかのように、ゆっくりと湾曲に自らの苦しみを語っている

 

 

「中学生になった頃かな、好きな人の後を追うように決闘(デュエル)に手を伸ばしたの。難しいルールも、個性沢山のカードも手に取るのは大変だったけど楽しかったよ」

 

「...」

 

決闘(デュエル)ディスクはお兄ちゃんのこっそり借りてたなぁ、いっぱい勉強して何が自分に合ってるかなんて毎日考えてた」

 

「それは...知らなかったぜ」

 

「驚かせたかったもんお兄ちゃんに見つかったらその好きな人にもバレちゃうからコソコソ隠れてたんだよ」

 

 

今まで同じ屋根の下で行われていた秘密裏の甘酸っぱい事も、好きな人の事も初耳だった

だが今作った作り話で無いことは兄妹故にか感じ取っている

 

随分可愛らしいきっかけだが、実妹の想い人であろう人物の表情が脳裏の片隅から消え去らないで残っていた

そう言えば颯人が知樹と知り合ったのも、初めて家に呼び颯希に紹介したのも中学時代の出来事だ

朧気ながら見えてきた話の本筋に思わず身の毛が過っていた

 

 

「...あーぁ、好きな人バレちゃったんだね、恥ずかしい」

 

「.....そんな理由で知樹の味方になって日本と戦ってるってのかよ!?」

 

「好きなんだもん」

 

 

また笑顔になって明るく答えるが、今までのそれとは明らかに異なっていた

無理に笑っている

 

このまま攻め続ければいつか必ず崩壊してしまいそうな歪な笑みは見ていられなかったが、兄の立場として自らが語るに至るまで待つ姿勢は保った

 

やがて冗談では済ませないと諦めが着いたのか、颯希は表情を戻して放った

 

 

「...お兄ちゃんには分かる?決闘(デュエル)する度に頭の中で何かがずっと喋り続けるのも、やりたくもない事を無意識にやってるのも、ご飯の好みまで変わっていく怖さを?」

 

「...」

 

「精霊の存在は2年後に知ったよ、知樹さんが教えてくれた」

 

 

言葉以上の得体の知れない何かを2年も抱えていたらしい。家族として、兄として、近しい人間として、1人の決闘者(デュエリスト)として何か出来なかっただろうか

哀れみや同情よりも自分自身への怒りのようなものが勝った

 

だが、恐らくそれを支えたであろう人間が親友とも呼べる知樹だと言うのが唯一の救いでもあった

今でこそ国を背負い敵対しているが、やはり何処かで疑い切れないものがあったのだろう

 

 

「全部聞いたの、英世界や精霊と決闘力(デュエルエナジ-)、適合や余事象体質(アウトフェイト)。知らなかったでしょ?妹が例の余事象体質(アウトフェイト)を持ってたなんて?」

 

「...俺にはなかったからな」

 

「無くてよかったよ!耳を塞いでも目を瞑っても口を閉ざしても収まらない恐怖なんて!」

 

 

最早事の発端も思い出せない些細な兄妹喧嘩をした事があった。泣きじゃくって、言葉にならない悲痛な叫びを上げた事も浴びせられたこともあった

 

今の颯希の絶叫はその時のそれとは違う

涙は必死に堪え、感情に任せつつも鼓膜の奥まで響くような声で兄に叫んでいる

見たことの無い姿だった

 

 

「...グスッ、ごめん。知樹さんが言ってたの、精霊が宿っても認識出来ないこともあるって。特に私の場合は悪い精霊で...」

 

「.....キツかったよな」

 

「...うん」

 

「それで、知樹は...何をしたんだ?」

 

「”継承”、だよ」

 

 

颯希は語った

余事象体質(アウトフェイト)を含めた当人の決闘力(デュエルエナジ-)を他者へ移す力の事を

 

継承

知樹にはそれが可能なようだ

 

 

LL∵Huna=E-t0S0n(ルナイトサン)は手術で無理やり移してるけどね、知樹さんにはそれを安全に簡単にできる力があるの。それが継承」

 

「継承...でもこの決闘(デュエル)でもちゃんと回ってんじゃねぇか...?」

 

 

適合していない決闘者(デュエリスト)のプレイングではなかった。現に颯人は颯希の腕前に苦しめられ、語りながらも次の手の事で頭がいっぱいだった

 

 

「戻したの、適合だけを私に。これは”譲渡”の余事象体質(アウトフェイト)って言うんだって」

 

「そんな簡単に受け渡しが出来んのかよ...」

 

「やるのはね?でもまだ子供な私がこの戦いに参加させて貰うには大変だったよ。知樹さん、危ないからってお願いしてもずっと聞いてくれなかった」

 

「...そうだろうな」

 

「うん、結局お兄ちゃんと戦うならそれだけ許してくれたの。何かあっても直ぐに日本に戻れるように手配してくれたし」

 

「なら俺と戦う理由はなんだぁ?そこまでして、日本と敵対してまで」

 

 

颯希はただの女子高生であり、やはり戦争に参加するのは異常だった

自分自身も平凡な大学生活をおくっていただけなのだが、どうしても颯希は戦場に似合わないと思ってしまう

 

彼女の知られざる過去については分かった

だが、やはり戦争に至るまでの心情が理解できない

生まれ育った母国を敵視するには今までの話では納得出来ないのだ

 

 

「それは...まだ話せない」

 

「そうかよ」

 

 

目を逸らし代わりに見えた左頬を眺めると、何か理由があることは確かだと思われた

まだ話せない

それで済ませる事など出来ない彼にとって、その一言はターニングポイントにもなった

 

絶対に聞かなければならない

今まで彼女の苦しみなど何も知らずに兄の顔をしてきたことに対しての罪悪感だけではない

彼もまた得体の知れない感情に突き動かされているのだった

 

 

「.....これが終わったら聞かせててもらうからよぉ、覚悟しておけ!俺は[貪欲な壺]を発動する!」

 

 

たった2枚の手札の1枚を発動した

残る手札は前のターンに戻していた[ギタートル]であり、全ての手の内が露呈した

 

通常なら間違いなく止める一手だ

片方にのみスケールがあってもペンデュラム召喚は不可能であり、[ギタートル]の場合は効果も使用できない

[クェーサー・ドラゴン]もその魔法カードを睨んでいた。だが、現在は少しだけ悩まされる発動だった

 

 

「そのセットカード、何かあるの?」

 

「言う訳ないだろ」

 

「それもそうだね」

 

 

颯人には2枚のセットカードがある

モンスター効果を止めるものか、はたまた別の展開方法に繋がるのか

前のターンに反応を示さなかった事から、恐らく後者なのだろう

 

[貪欲な壺]スタートなのが実に怪しい

まるで縋るようにも見受けられる

 

 

「...いいよ、発動して」

 

「なら墓地の[エーリアン・ソルジャー]2体と[エーリアン・ウォリアー]、[キングレムリン]、[ワーム・クィーン]をデッキに戻して2枚ドローするぜ」

 

 

エクストラデッキに2枚、メインデッキに3枚のカードが戻っていくと颯人は3枚の手札を握った

そして彼のデッキにたった1枚だけ存在する最強のドローカードを引く事ができた

 

だが、今回に限っては非常に使いづらい1枚だった

発動自体は可能

しかし悩んでいても手札はそれを行うためのもので染っており、他にもやることも無かった

 

 

「...モンスターをセットするぜ」

 

「おっ、もうエンド?」

 

「いや、俺は[太陽の書]を発動する。今セットしたやつを表にする」

 

「リバース効果だね、いいよ」

 

 

エーリアンやワームに共通してリバースモンスターも存在する。初めて«цпкпошп»と相対した際にも使用したギミックだが、やはりリバース故に遅い手となるのがネックだ

 

表にするだけならリバース効果を止めればいい

[クェーサー]故の余裕からか颯希は悩むこと無く[太陽の書]を許した

そして姿を表したモンスターは、制限カードに設定されているモンスターだった

 

 

「[メタモルポット]だぁ、手札を全て捨てて5枚ドローしようぜ」

 

「えぇっ!本気?手札から捨てられると私のモンスターほ効果発動するんだよ?」

 

「そんな事より手札がねぇんだ、しかたねぇ」

 

 

スケール6の[ギタートル]

颯人の唯一の手札はそれであり、本人の言う通り窮屈なままの発動なのだ

 

これを止めれば彼には2枚のセットカードしか残らないが、[メタモルポット]の発動は颯希側にも利点がある

 

 

「...いいよ、一緒に捨てようか」

 

「おう、5枚ドローするぜ」

 

 

颯人は1枚、颯希は2枚のカードを捨ててお互い同じ枚数まで手札を回復させた

通常なら相手に手札を回復させても手札誘発があるか否かの問題で済むが、あの捨てるという処理によって颯希は効果を発動させる

 

 

「じゃあ捨てられた«цпкпошп»と«цпкпошп»の効果ね、お兄ちゃんのセットカードを破壊して、墓地の«цпкпошп»を特殊召喚するよ」

 

「仕方ねぇな」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「だが破壊された[やぶ蛇]の効果を発動するぜ?デッキかエクストラデッキから好きなモンスターを特殊召喚する効果だ」

 

「むぅ...«цпкпошп»の効果で無効だよっ」

 

 

蛇と名の着くだけで採用した訳では無いが、発動する事が可能ならやはり強力な1枚だ

それも破壊の対象になっていた事と、[クェーサー・ドラゴン]の効果を使わせた事と相まって無駄のない処理だと言える

 

だが墓地より蘇生されたあのモンスターには注意が必要だ。恐らくだが同じ手札枚数の時に無効効果を持つあのモンスターだ

 

 

「さぁ、これで邪魔はねぇな?俺は[ヴァイパー・リボーン]を発動するぜ、墓地の[毒蛇王ヴェノミノン]を特殊召喚する!」

 

 

[毒蛇王ヴェノミノン] ATK 0→1000

 

 

「あぁ、ヴェノムも入ってるんだったね」

 

「まぁな、俺はフィールド魔法を発動する」

 

 

颯希が相手の使用テーマについて思い出すと同時に、颯人はフィールド魔法を手に取った

誰もが[ヴェノム・スワンプ]だと身構える

 

ヴェノムのカード火入っているのならそう思っても自然だ。だが、彼のデッキはヴェノムデッキでは無い

爬虫類やそれをサポートするためのカード達が共存しているのだ

 

 

「[天空の虹彩]を発動するぜ」

 

「...オッドアイズ!?」

 

「あぁ、効果発動だ。フィールドの[ヴェノミノン]を破壊して、デッキから[オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン]を手札に加えるぜ!」

 

 

ただスケールを集めるだけなら他にも相応しいカードはある。だが、わざわざオッドアイズと[天空の虹彩]を選んだのはその効果にあった

 

自身のモンスターの破壊

これはデメリットにも効果のトリガーにもなりうるコストだった

 

 

「そして破壊された時、俺は最後のセットカード[蛇神降臨]を発動!デッキから[毒蛇神ヴェノミナーガ]を特殊召喚する!」

 

 

[毒蛇神ヴェノミナーガ] ATK 0→1500

 

 

「ここで俺は手札の[妖刀竹光]をコストに[スネーク・レイン]を発動するぜ。デッキから[エーリアン・ソルジャー]3体と[エーリアン・ウォリアー]を墓地に送るぜ」

 

 

[毒蛇神ヴェノミナーガ] ATK 1500→3500

 

 

「竹光のギミックもあったんだね」

 

「手札が欲しいからよ、墓地に行った[妖刀竹光]の効果も発動する。デッキから竹光カードの[燃え竹光]を手札に加えるぜ。んで[強欲で貪欲な壺]も使う、必要なのは持ってきたからなぁ」

 

 

裏側除外の中には片割れのペンデュラムスケールもあった。だが本当に必要なカードはまだメインデッキにある様子だ

 

絶対に負けられない戦いではあるのだが、やはり新たなギミックが上手くいきそうだと嬉しくも感じる

ドロー力が明らかに足りなかった故の竹光も、今では手札に揃っていた

 

 

「永続魔法[燃え竹光]を発動し、お前のモンスターに[妖刀竹光]を装備してやるよ。[燃え竹光]の効果でお前の次のメインフェイズ1はスキップされるぜ」

 

「スタンバイが終わったらバトルになるんでしょ?」

 

 

メインフェイズ1のスキップは強力な効果だが、それだけでは完全に決闘(デュエル)を抑制できない

ドローフェイズもスタンバイフェイズも残り、バトルやメイン2も存在するからだ

 

バトルフェイズとメイン1さえスキップする事が出来ればそのままエンドフェイズに投入し、かなり制限出来るのだが、無いものは強請ることが出来ない

 

 

「さらに[黄金の竹光]を発動する。竹光の装備魔法がある時に2枚ドローするぜ。[ファンタズマ・ドラゴン]を捨てて[トレード・イン]も発動...お、もう1枚[黄金の竹光]だ、さらに引くぜ」

 

「急に引くじゃん」

 

 

[ファンタズマ・ドラゴン]を入れ替えて手札は4枚になった

かなり無理をしたドローにも見えるが、潤った事には代わりない。そして全てが非公開の内に潜んでいる

そして颯人はこの決闘(デュエル)初のバトルフェイズに突入した

[ヴェノミナーガ]の存在が戦闘を欲している事を伝えるが、先陣を切ったのは別のモンスターだった

 

 

「バトルだ、[メタモルポット]でそのモンスターに攻撃だ!」

 

「え?」

 

 

颯人 LP 2300→700

 

 

「悪ぃな、だがこれで準備は整ったぜ![毒蛇神ヴェノミナーガ]でそのモンスターに攻撃!”アブソリュート・ヴェノム”!」

 

「通すよ...!」

 

 

颯希 LP 8000→6800

 

 

「戦闘ダメージを与えた時、効果を発動!ハイパーヴェノムカウンターを1つ乗せるぜ」

 

 

[毒蛇神ヴェノミナーガ]

 ハイパーヴェノムカウンター0→1

 

 

「...お兄ちゃんまさか」

 

 

3つのカウンターが乗った瞬間に相手を敗北へと誘う驚くべき効果の事だ

あと2回の戦闘ダメージにより揃うが、颯希のフィールドにはそれを超えるモンスターがいる

 

次のターン手札6枚からの展開よりも恐ろしい事だ。要の[ヴェノミナーガ]が突破されることは間違いない

 

 

「カードを3枚セットする。俺はターンエンドだ」

 

 

颯人 手札:1枚 LP 700

 

モンスター/ [毒蛇神ヴェノミナーガ] ATK 3500

 

魔法・罠 / [燃え竹光]

 

     / [妖刀竹光]

 

     / リバース3枚

 

 

「...私のターン!」

 

 

手札を捨てる故に消費は荒いデッキだが、兄の餞別により今は6枚もある

捨て放題だ

 

その手札の差に加えてライフも勝っている。さらには攻撃力4000の[クェーサー・ドラゴン]も健在であり、攻撃宣言をするだけで颯人のエースモンスターは撃破可能

 

だがその颯人は準備が整ったと言っていた

なんのことを指しているのかは分からないが、さっさとバトルフェイズに入ろうとディスクを操作した瞬間の出来事だった

 

 

「スタンバイフェイズに俺はこのカードを発動するぜ」

 

「そ、それは...っ!?」

 

 

ドローフェイズでもメインフェイズでも無いスタンバイフェイズに割り込んだ

それは1枚の罠カード

ワームでもエーリアンでもヴェノムでも無く、そもそも爬虫類のサポートカードでも無い1枚

シナジーなど、彼のデッキに入っているたった1枚のモンスターとしか繋がらないそれだった

 

 

「[バトルマニア]、お前のモンスターは全員俺のモンスターを殴らなきゃえけねぇ」

 

「そ、そのためにメインフェイズを...っ!で、でも私には[クェーサー・ドラゴン]がいるんだよ!その発動を無効にして...」

 

「今、発動って言ったな?さらにチェーンして[ブレイクスルー・スキル]だ、さらに効果を無効にするぜ!」

 

「うぅ...?」

 

 

お株を奪うかのようにチェーン3へ颯人は重ねた

これにより[クェーサー・ドラゴン]の効果のみが無効化され、颯人のカード達は適用される。が、颯人のフィールドには[ヴェノミナーガ]しか存在せず、攻撃対象は自ずと限られている

そして颯希のモンスターは残り2体。そのモンスター達が[ヴェノミナーガ]へと攻撃し、戦闘ダメージを受ければハイパーヴェノムカウンターは2つ乗り颯人は勝利する

 

メインフェイズがスキップされているため、[バトルマニア]の効果を受けたモンスターを処理する事も出来ない

完全に特殊勝利までの道のりが完成している

...ように見えた

 

 

「...お兄ちゃんの[ヴェノミナーガ]、私の[クェーサー・ドラゴン]より攻撃力低いじゃん」

 

「おう、墓地に爬虫類があと2体は必要だなぁ」

 

 

[ヴェノミナーガ]が3500、[クェーサー・ドラゴン]は4000。相打ちではなく相手に戦闘で打ち勝ち、ダメージを与える必要があるため、攻撃力は足りていない

 

 

「何があるの?」

 

「攻撃して来い」

 

「...でもバトルフェイズに入るしか無いよね、バトルフェイズ!」

 

 

どこか余力を見せる颯人のフィールドには1枚セットカードが残っている

 

 

「«цпкпошп»で...[ヴェノミナーガ]に攻撃するよ!」

 

 

恐る恐るの攻撃命令

足りない攻撃力を補うためのカードだろうが、[ヴェノミナーガ]は自らの効果も受け付けない

つまりいわゆるサポートカードの恩恵は与えられない

 

この状況を凌ぐカードなど、颯希には直ぐには思いつかなかった。何があるというのだ

疑心暗鬼の先にはまたも罠カード

 

 

「[針虫の巣窟]、デッキの上から5枚のカードを墓地に送るぜ」

 

「...何それ」

 

 

[ヴェノミナーガ]の攻撃力を上げるための方法は1つしか存在しない。自身の効果だ

墓地の爬虫類モンスターの数×500ポイントアップする効果でしか颯希の[クェーサー・ドラゴン]を越えることは出来ない

 

しかしそれはあまりにも不確定要素だった

竹光のギミックも、オッドアイズとフィールド魔法も繋がって来たというのに、最後の最後は見えざるデッキトップへ託すらしい

新ギミックも爬虫類テーマも、結局の所最後は運任せのようだ

 

 

「お兄ちゃん、そんな良い顔して運任せなの?」

 

「...まぁな?」

 

「変...変だよ♪」

 

「何言ってんだよ、5枚も落とすんだぜ?2,3枚ぐらい落ちてもおかしくねぇ。慎也だってやばい時に[七皇の剣(ザ・セブンス・ワン)]を引いて見せたしよ、俺もやってやるんだ」

 

 

慎也との2度目の決闘(デュエル)では強運によって敗れたと言っても過言ではない。正確には[バック・ジャック]のデッキトップ操作によるものだが、その3枚の中にはあったのには代わりない

肝心な場面において運に縋る

受ける身としては驚くし、自らがその立場にあると緊張が内蔵の隅々まで走り回る

 

気持ちのいいものではないが、何処か悪くないように感じていた

 

 

「だったら2枚じゃ済まさせないよ!チェーンして速攻魔法«цпкпошп»を発動!お兄ちゃんの墓地の[ヴェノミノン]を除外する!」

 

「おっとぉ...」

 

 

[毒蛇神ヴェノミナーガ] ATK 3500→3000

 

 

「じゃあ...5枚落とすぜ?」

 

「いいよ、やってみなよ!」

 

 

デッキトップは[超電磁タートル]

最強の墓地効果とも呼べるだろうか

だが今は止める必要も無い

無論爬虫類族でも無い

 

 

「...次だぁ!」

 

 

次のカードは[「A」細胞組み換え装置]

結局メインデッキのエーリアンを糧にAカウンターを乗せる効果は使用できなかった。3枚とも墓地に落ちてしまったため、使えたとしても墓地効果のみだ

だが次のターンなど回って来る必要は無い

 

このまま[ヴェノミナーガ]が[クェーサー・ドラゴン]を上回れば勝利出来るのだから

 

 

「3枚目ぇ...っ!」

 

 

3枚目にあった[地縛神ccaryhua(コカライア)]が見えた

爬虫類の地縛神

彼が聖帝地縛七人衆とも呼ばれる所以のカードだ

 

 

[毒蛇神ヴェノミナーガ] ATK 3000→3500

 

 

「よし、4枚目だぁ!」

 

 

4枚目は[蛇龍アナンタ]

レベル8の[ヴェノミナーガ]すらも超える可能性を秘めた爬虫類モンスターだ

 

 

[毒蛇神ヴェノミナーガ] ATK 3500→4000

 

 

「これで並んだぜ...最後の1枚だぁ!」

 

「まさか...っ!」

 

 

最後の1枚

[針虫の巣窟]発動時から見れば上から5枚目のカード

そして颯人の命運をかけた1枚

ゆっくりと引き抜き、そのまま墓地へ預けるとディスクの画面にその正体が浮かび上がった

 

 

 

 

 

[蛇神ゲー]

 

 

「これで[ヴェノミナーガ]の攻撃力は4500だぁ...っ!」

 

「届いた...」

 

 

[毒蛇神ヴェノミナーガ] ATK 4000→4500

 

 

遂にたどり着いた4000を上回る地位

当然[クェーサー・ドラゴン]の攻撃力を超えており、戦闘での返り討ちも反射ダメージも与える

 

 

 

颯希 LP 6800→6500

 

[毒蛇神ヴェノミナーガ]

 ハイパーヴェノムカウンター1→2

 

 

「...«цпкпошп»でも攻撃しなきゃいけないんだもんね」

 

「そうだぜ、来な」

 

 

今思えば[メタモルポット]の自爆特攻から颯人の狙いは読み取ることが出来たのかもしれない

攻撃対象を制限するためだったのだ。

 

つまり、[ヴェノミナーガ]を残して[バトルマニア]を発動し、尚且つ他の攻撃対象を残さずさらに[針虫の巣窟]で3枚以上の爬虫類族モンスターを落とさなければならないコンボだった

 

非常に不安定で突飛な作戦だ

だが見返りは凄まじく、それだけで勝利出来るもの

 

 

「行け、«цпкпошп»!お兄ちゃんの[ヴェノミナーガ]に攻撃!」

 

「返り討ちにしろ、[ヴェノミナーガ]!」

 

 

そう言えばあの残るモンスターの攻撃力はまだ«цпкпошп»の中にあった

だがこのバトルの勝敗においては杞憂だろう。[ヴェノミナーガ]の攻撃力は4500、それを超えるモンスターなんて多くはない

 

それに颯希のライフを毛すりきる必要も無い

戦闘ダメージを1でも与えることが出来ればそれでいいのだ

 

 

颯希 LP6500→4900

 

 

「この瞬間、[ヴェノミナーガ]の効果発動だ...3つ目のハイパーヴェノムカウンターを乗せる!」

 

「はは...まさか特殊勝利されちゃうなんて...ね?」

 

「実際俺も初めてだぁ、いつも殴り殺すか突破されるからだからよぉ...行くぜ、[ヴェノミナーガ]の効果!」

 

 

その高打点と耐性、特殊勝利の4文字から対戦相手は何らかの処置に逃げるか突破口を見出す

例えばモンスターを守備表示にしたり、颯希のように墓地の爬虫類に触るなど

 

前に早乙女と戦った際にも[針虫の巣窟]でパンプアップを狙った事もあったが、攻撃力9600と強化された[グレート・マグナス]に返り討ちにあったのも懐かしい

慎也には[ヌメロン・ドラゴン]と[バリアン]のコンボで攻撃力を10000まで上げられ、突破されていた

 

それらは苦い経験

自らの召喚までの手順が多いエースカードが、尽く破られるのは見ていて気持ちのいいものでは無いが、それでも様々な突破手段は鮮やかなものだった

今度こそ成功できた

達成感は凄まじいものだ

 

 

「ハイパーヴェノムカウンターが3つ乗った瞬間、俺は決闘(デュエル)に勝利する!食い殺せ[ヴェノミナーガ]!”アブソリュート・ハイパー・ヴェノム”!!」

 

 

宣言後

[ヴェノミナーガ]の腕や頭髪の蛇達が一斉に颯希に牙を剥いた

その蛇の毒液(ヴェノム)はまるで腹を空かせた獣が獲物を吟味する際に垂らす唾液のように牙から滴っている

 

ソリッドヴィジョンの演出は些か手が混みすぎている。あまり見ることの出来ない特殊演出からか、作り手の信念までも浮き出ているように感じられるが、颯人自身も初めての光景を眺めるだけだった

 

 

「うわ...怖」

 

 

受ける颯希の感想は単純なものだった

その一言を皮切りに襲いかかった毒蛇の口内は、酷く暗く闇だった

 

 

颯希 LP4900

  颯人 Special Win

 

 

 

ーーーR D Cーーー

 

ーーー城外ーーー

 

○医療班駐屯地  

→大神忍 (負傷中)  

→鬼禅義文(負傷中)  

▷黒川美姫(勝利)   →オキナ(敗北)

▷近藤虎鉄 

S・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)医療班20名

 

〇医療班駐屯地→北大通り

▷草薙花音(移動中)

▷西条麗華(移動中)

▷古賀拓郎(移動中)

▷海堂一樹(移動中)

▷東野圭介(移動中)

 

◐北大通り

→齋藤健太(負傷中)  →ジャヴィ(負傷中)

→早乙女哲夫(負傷中) ▶黒服残り16名

▷???(交戦中)   

▷皇崇人

▷劉毅透織

▷永夜川文佳

S・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)部下残り16名 

 

◐南大通り

→山本薫(負傷中)   ▶︎カムイ(勝利)

▷南結衣(交戦中)   ▶︎黒服残り3名

▷新田優介(交戦中)

▷新妻友奈(交戦中)

▷島崎春磨(交戦中)

 

ーーー城内ーーー

 

失彩の道化団(モノクロ・アクタ-ズ)本部内通路

→秋天堂光(負傷中)  →ガンリ(負傷中)

▷灰田光明

 

失彩の道化団(モノクロ・アクタ-ズ)本部内通路

▷蛭谷颯人(勝利)   ▶︎蛭谷楓希(敗北)

 

〇メインコンピューター室

→灰田輝元(負傷中) 

→須藤余彦(負傷中)  

 

〇???

▶知樹

▶シッド(喫煙中)

▶グラス(移動中)

 

S・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)

▷戦闘可能 : 32名

▷精鋭   : 18名

→負傷中  : 6名

→非戦闘員 : 20名

→消息不明 : 5名 

 

失彩の道化団(モノクロ・アクタ-ズ)

▷戦闘可能 : 45名

(フロ-)    : 4名

→負傷中  : 103名

→捕虜   : 93名

 

◐ガルナファルナ

▷戦闘可能  : 0名

▷天禍五邪鬼 : 1名

→負傷中   : 30名

→捕虜    : 104名

 

ぶっちゃけどうですか?

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