遊戯王が当たり前?→ならプロデュエリストになる!   作:v!sion

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もう秋です
秋らめました

最近台風やらで大変でしたけど私は元気です。それよりよ[サモン・ソーサレス]禁止によるデッキ調整の方が大変でした。ていうか[テンペスト]帰ってきちゃったよぉ...«цпкпошп»とか失彩の道化団(モノクロ・アクタ-ズ)の強みって何だよ...(困惑


第九十三話 Decisives on the Darknight

◑日本-聖帝大学 / 午前1時40分

 

 

「大神さんからの通信だ。我々は旧食堂下を通過し法律学部生徒支援棟を目指す。蛭谷君、頼んだぞ」

 

「了解っす」

 

「私達は14号館前から参ります。東野君」

 

「は、はい!」

 

 

同時刻、静寂と闇夜にの中に息を殺して潜む他のS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)らが居た

一先ず囮作戦は上手く機能した。後は当初の目的通りガルナファルナの部隊を早急に制圧する事が出来ればこの場は収めることが可能だろう

 

地の利のある聖帝生徒の道案内もさながら、S・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)の2グループは敵を求め深夜の大学を駆け巡りだした

 

 

「...あっちだな」

 

「うす、そこを曲がれば後は真っ直ぐです」

 

 

法学部である蛭谷にとっては見慣れた道筋だった

距離もさほど離れておらず、夜中であろうと問題無く目的地まで駆け抜ける事ができた

 

想像以上に早すぎた対面

案の定そこには黒いロングコート姿の敵らが漆黒の闇に溶け込んでいた

 

 

「随分早かったな」

 

「会いたくて仕方なかったんだよ」

 

 

その場のS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)は鬼禅に加え、刑事部の部下達数名と蛭谷。大半のプロ決闘者(デュエリスト)を月下に送ってしまった事からか、人数よりも戦闘力において多少の疑問が感じられる部隊

 

対して敵は30名程だろうか

お互い人海戦術等頭に無い、少人数による奇襲が作戦らしい

それは日本側にとっても有難い事だ

単純な人手不足も言えるが、何よりも深夜の大学で騒ぎは大きくしたくないのが本音だからか

 

 

「よぅし、A班戦闘開始だ!30分以内にこの場を制圧するぞ!」

 

「「「了解!!」」」

 

「我々も同じ事、S・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)を殲滅する!」

 

 

 

ーーー

ーー

 

 

 

「それで、我々はどうする?」

 

「あっちはS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)と戦闘を始めたらしい。...どうやらこっちにも来たようだ」

 

 

鬼禅らが戦いを始めた頃、別の黒服の集団らもまたS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)と直撃していた

あちらとは違い、嫌に落ち着気のある静かな対面とも言える。

 

それはA班よりも人数が少ないからかだろうか

答えはB班を指揮するS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)にあった。この場に似合わない、歳をとりすぎた老婆という表現が相応しくもある女性がS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)の精鋭達を先導し、闇の中から現れた

 

初老の女性を気遣っているのか、周りのS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)決闘者(デュエリスト)と東野もまたゆっくりと歩み寄ってきている

 

 

「随分とご老体が現れたものだな」

 

「お気になさらず」

 

 

これで2つの部隊がぶつかった

残るは戦闘と勝利だけ

 

囮としてS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)の幹部まで使った大胆且つ突飛なこの作戦は、何が何でも果たさなければならないそれなのだ

 

この場を指揮するのは本来であればS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)を引退した藍原だった。大神や鬼禅らと二次日食時に駆り出された決闘者(デュエリスト)だが、真夜中の三次日食にもまた参加するらしい

藍原は控えめな口調で他の決闘者(デュエリスト)に語りかけた

 

 

「迅速且つ確実に、お願いします」

 

「「「了解です」」」

 

 

ーーー

ーー

 

 

 

「「決闘(デュエル)!!」」

ジャヴィ LP 8000

大神 LP 8000

 

 

そして取り壊し中の校舎

幹部と囮の戦いが始まった

 

現在、失彩の道化団(モノクロ・アクタ-ズ)の幹部の力は測りしれないとされ、非常に危険視されている

たった4人の幹部を含めた部隊で月下は落とされ、日本の希望である慎也も敗北した。さらには一ノ宮ら4人のプロも瞬殺されたと報告を受けている

 

それに対して大神は戦えるのか

答えはまだ誰にもわからない

 

 

「先攻を頂きマス!私はフィールド魔法«цпкпошп»を発動、効果処理としてデッキから«цпкпошп»をサーチデス。そして手札から«цпкпошп»を通常召喚シます!」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「«цпкпошп»の召喚成功時に«цпкпошп»の効果を発動シマス。デッキから«цпкпошп»を装備させマス」

 

「...ほう」

 

 

数々の報告を含め、実際に経験済みのため案の定姿を見せた«цпкпошп»に大神は驚きを見せない

 

予想通りだ

後は«цпкпошп»の中身を推測出来れば対応も早いが、それもさほど難しくなさそうだ

 

 

「では手札から«цпкпошп»を発動シマス。«цпкпошп»をリリースし、デッキから«цпкпошп»を特殊召喚します!」

 

 

«цпкпошп» DEF ?

 

 

「特殊召喚に成功しタ«цпкпошп»の効果と、墓地に送られた«цпкпошп»の効果をチェーン発動シます。デッキから«цпкпошп»と«цпкпошп»をサーチです」

 

「手札が減らないな」

 

 

大神の言う通りモンスターの特殊召喚やサーチを繰り返す事で手札は未だ初期の5枚を維持している

だがフィールドや墓地にカードを貯め、欲しいカードをサーチした事により確実にアドバンテージは獲得している。

 

無駄のない動きだ

 

 

「では今手札に加えタ«цпкпошп»を捨てて、コレまたサーチしたバカりの«цпкпошп»を特殊召喚します!」

 

 

«цпкпошп» DEF ?

 

 

「«цпкпошп»の効果はターン1デスノでサーチはありまセン」

 

「おいおい...折角の«цпкпошп»だと言うのに同名モンスターである事を自分から明かすのかね?」

 

「オット!イヤはやまだ慣れていナイもので...」

 

 

恐らく本音なのだろう

まだ出会ってそれほど経っていないが、このジャヴィと言う男に裏表が無い事は何となく大神にも分かっていた

 

話していて悪い気は無い

だがそれは戦わない理由にならない事もそれ以上に理解していた

 

故に大神はフィールドを睨んだ

失彩の道化団(モノクロ・アクタ-ズ)への、月下や別世界への怒りが自分自身の戦闘意欲なのだと自分自身に思い返さすために

 

 

「デハ、«цпкпошп»2体でオーバレイを!«цпкпошп»ヲエクシーズ召喚しましョウ!」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「まだ行きマス!さらに重ねて再びオーバレイしマす!«цпкпошп»をエクシーズ召喚!」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「最後に取ってオキです!墓地の«цпкпошп»ら3体をゲームから除外!」

 

 

ジャヴィは自らの墓地に眠る3体のモンスターを除外した。除外を召喚条件とするのは珍しくは無いが、3体という数は少しばかり多い

 

恐らく今までサーチをしてきたカード達だ

これから召喚されるであろうモンスターも含め、同じカテゴリーに属している事は間違いないだろう

 

 

「始めまショウ、この日の元を我らに!«цпкпошп»を融合召喚!」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「私はカードを1枚セット、ターンを終わりマス」

 

 

ジャヴィ 手札:2枚 LP 8000

 

モンスター/ «цпкпошп» ATK ?

 

     / «цпкпошп» ATK ?

 

魔法・罠 / リバース1枚

 

フィールド/ «цпкпошп»

 

 

 

文句ない初動だろう

手札も残しつつ、場に複数素材を要求するエクシーズと融合モンスターを慣れべ尚且つセットカードも置いている

 

大神は1枚多い手札でそれらを突破することが求められる。果たして彼はこの«цпкпошп»がどう見えているのだろうか

 

 

「私のターン、ドローしよう」

 

 

瞳に写っているものは言うまでもなく無地の«цпкпошп»のみ。それと自らのカード達だけだ。

 

後はこの恵まれた6枚をどう発散させるか、学園長の名に恥じないよう大神は記念すべき一手を打った

 

 

「私は手札から[増援]の魔法カードを発動する」

 

「貴方もサーチスタートでスカ、いいでしョウ」

 

「ではお言葉に甘んじてデッキから[天帝従騎イデア]を手札に持ってこよう」

 

「帝でしタカ!」

 

 

聖帝の学園長に相応しいかもしれない帝デッキ

彼の使用デッキはそれだった

 

アドバンス召喚とそれをサポートするギミックを主とし、エクストラデッキからの召喚を抑制する強みと事故の少なさが強みのデッキだ

 

 

「[カゲキ]か[キザン]かと思いまシタよ。報告では六武衆と聞いテいたのデ」

 

「そこまで情報が...恐ろしいことだ」

 

 

これこそが彼の本来適合するデッキ

六武衆はあくまで慎也の決闘力(デュエルエナジ-)を模倣するためのテストに過ぎなかったのだ

 

だがそれも制定の中でも個人的な行いだったはずだ。確かに帝は味方にも隠していた。だがこれによると自覚の無い洗脳は聖帝の内部にもあるのかもしれないと嫌な憶測も飛び交った

 

 

「...今はよしておこう。私手札から[イデア]を通常召喚する」

 

 

[天帝従騎イデア] ATK 800

 

 

「効果を発動する。デッキから帝の使いを特殊召喚したいのだが」

 

「それは許せませンネ!私は«цпкпошп»の効果でその発動と効果を無効にシテ破壊シマス!」

 

 

大神の記憶によると、その無効効果を発動したのはエクシーズモンスターの方だった。

ある程度の妨害は予想していたものの、要の[イデア]がとめられた事は大きい

 

だがエクシーズモンスターならではの発動コストはORUらしい。墓地の数が変化したからこそ理解出来た

 

そして強いていえば制圧力を具えたモンスターが特定できた。流石にターン1は予測でき、残る手札の使い方も自ずと見えてくる

 

 

«цпкпошп» ATK ?→?

 

 

「では[トレード・イン]を発動しよう。手札の[冥帝エレボス]を糧に2枚カードをドローする。そして今引いた[真源の帝王]を糧に[汎神の帝王]を発動。さらに2枚ドローする」

 

 

[イデア]で少しでもデッキを圧縮しておいてから行いたかったドローなのだろうが、結果的上手くカードを動かくことが出来ている

だが結果的に手札の枚数は変わらない

今のままではの話だが

 

 

「墓地の[汎神の帝王]の効果を発動しよう。デッキから[帝王の深怨]、[帝王の烈旋]、[帝王の開岩]を提示し、君が選んだカードを手札に加える」

 

「では...その[開岩]にしまショウ!」

 

「お目が高い事だ。では手札の[天帝アイテール]を提示し、[帝王の深怨]を発動する。デッキから[帝王の烈旋]を手札に持ってくる」

 

「オヤ」

 

 

これで6枚

相手の初ターンのように好きなカードをサーチした事ため、強いアクセスを見せつける事が出来た

だが召喚権は使用済み

そのためこのターンに出来る行動は限られていた

 

 

「手札から永続魔法[帝王の開岩]を発動。そしてカードを3枚セットして私はターンを終えるとする」

 

「3枚!多いコトですね」

 

 

[アイテール]を残して全て場に残した

そして1枚は[烈旋]だと相手にも知られている

 

大胆なセット量だが、それ故にとある帝カードの存在もまた伝わっているだろう

そしてエンドフェイズに移行し終えた大神に最早やることは無いが、相手にはまだあるようだ

 

 

「デハ、私は手札を1枚捨て、貴方の...[開岩]を対象に«цпкпошп»の効果を発動します。そのカードを除外しマス!」

 

「除外か...強いな」

 

「まだデス!私はさらに«цпкпошп»自身の効果をチェーンします!リリースし、除外されている«цпкпошп»ら3体を特殊召喚しマス!」

 

 

手札コストは求められるものの、フリーチェーンの除外。加えて自身を墓地へと逃がし後続を作る非常に協力なモンスター効果だ

 

大神から見れば永続魔法1枚と相手の手札で1:1交換

しかし相手はそのモンスター自体と手札1枚から、フィールドにモンスター3体並ぶ盤面に変化してある

 

ボードアドバンテージは優っているのだ

 

 

「さらに«цпкпошп»の効果発動デス。デッキから«цпкпошп»を装備しますヨ」

 

「私は何も無い。改めてターンエンドする」

 

 

大神 手札:2枚 LP 8000

 

モンスター/ なし

 

魔法・罠 / リバース3枚

 

 

 

「デハ私はカードを引きマスよ。メインフェイズに«цпкпошп»の効果で私の«цпкпошп»をORUに加えマス」

 

「そこにチェーンする。墓地の[真源の帝王]の効果を発動する。墓地の[帝王の深怨]を除外し、墓地より帰還する」

 

「フム、良いでスヨ」

 

 

ORUを糧に無効効果を発動するに加え、さらにフィールドのモンスターを自身のORUに加える効果も見えた

そのカード1枚でシナジーが組み込まれている。ジャヴィは先程増えた3体の«цпкпошп»の一体を新たに素材に加え、そのタイミングで大神はアドバンス召喚のためのリリース要因を確保した

 

 

「では墓地に送らレタ«цпкпошп»の効果です。デッキから«цпкпошп»をサーチしマス」

 

「ならまたチェーンしよう。永続罠[連撃の帝王]を発動。相手のメイン・バトルフェイズにアドバンス召喚が行える」

 

「ヤハリありましたか!」

 

 

自分と相手のメインかバトルフェイズにアドバンス召喚を行う永続罠カード。

公開情報の中には無かったものの、大胆なセット数と潔くターンを終えた事からジャヴィも何となくこのカードの存在を考えていたらしい

 

[開岩]と合わさるとチェーンでやり込むことが出来なくなる。故先程のターンでは確実に除去できる[開岩]が狙われたのだろう

 

そして問題はここから

ジャヴィには無効効果を持つモンスターがいる。大神のチェーンに迷っているあたり、恐らくそれはモンスター効果だけでなく魔法・罠にも通用する効果なのだろう

 

[烈旋]と[アイテール]も見えている。

[連撃]を無効にした所で既にリリース要因である[真源]が場に出ている以上ジャヴィのモンスターが除去されるのは目に見えていた

加えて大神の手札にあるもう1枚のカードが見えていない。それが上級帝だとすると[烈旋]を無効にしてもアドバンス召喚は止めることが出来ない

非常に悩まされるプレイングだ

そこまで考えた上で[アイテール]の提示を行ったのだろう

 

 

「貴方...随分イジワルなプレイングですね?」

 

「よく言われる。それでどうするのだね?」

 

「«цпкпошп»の効果をチェーンします![連撃]の発動を無効にシテ破壊です!」

 

 

どうせ除去が見えているのなら出し惜しみをしない選択を選んだ。1枚破壊出来れば役目も無駄にはならず、罠故の遅さも加味され期待値は低くない

 

無論大神にとっては想定内のプレイングだ

 

 

「ならさらにチェーンする。速攻魔法[帝王の烈旋]、このターンアドバンス召喚する場合君のモンスター1体もリリース出来る」

 

「仕方ありまセンね」

 

 

これで[アイテール]の召喚準備が整った

4つのチェーンの果ては再びジャヴィに優先権が回り、大神は時が来るまで待機し始める

 

 

「私は墓地の«цпкпошп»とフィールドにアル2体の«цпкпошп»を除外し、«цпкпошп»を融合召喚シマス!」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「バトルに入りマスよ。«цпкпошп»で[真源の帝王]に攻撃!」

 

「もうバトルフェイズか」

 

 

発動を強要されている気分だ

[烈旋]が適用中とは言え、[真源]が墓地に行けば[アイテール]のリリース要因が足りなくなってしまう

 

故の発動だった

 

 

「手札の[アイテール]のモンスター効果を発動する。墓地の[烈旋]をゲームから除外し、自身をアドバンス召喚する。[真源の帝王]と君のエクシーズモンスターをリリース、天を司る帝[天帝アイテール]をアドバンス召喚!」

 

 

[天帝アイテール] ATK 2800

 

 

「召喚に成功した[アイテール]の効果を発動する。デッキから[汎神の帝王]と[帝王の轟毅]を墓地に送り、デッキから[光帝クライス]を特殊召喚する」

 

 

[光帝クライス] ATK 2400

 

 

「さらに特殊召喚に成功した[クライス]の効果だ。そのモンスターとフィールド魔法を破壊しよう」

 

「私もチェーンしまス!«цпкпошп»の効果発動、自身をリリースして除外されている«цпкпошп»3体を特殊召喚します!」

 

 

«цпкпошп» DEF ?

 

«цпкпошп» DEF ?

 

«цпкпошп» DEF ?

 

 

「フィールド魔法が破壊サレたので1枚ドローします」

 

 

大神もまた確実な手に出た

セットカードを破壊する手もあったが、あの融合召喚の分離効果と特殊召喚成功時の装備効果は既に見ている

 

チェーンされるよりかはそのギミック自体を止める方を優先した結果だ。リリースされ逃げられる事は明確な以上、その後の展開を抑制した出来るのならそうした方が良い

[クライス]のドローにより手札は4枚となってしまったが、場を荒らすことは充分果たしただろう

 

 

「デハ、メインフェイズに移ります。手札から«цпкпошп»を発動しマス。墓地の«цпкпошп»を特殊召喚します!」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

 

「さらにフィールドにイル«цпкпошп»達の効果を発動!«цпкпошп»の装備カードになりマス!」

 

「やはり...ユニオンか」

 

 

モンスターが装備カードと化す事は珍しくない。だが起動効果で装備と化けるのはユニオンモンスターぐらいしか成せない効果

 

そして一体のモンスターに複数装備出来るようになったのは比較的最近のユニオンモンスターだ。

フィールドや融合モンスターの存在から最早それ以外に合致するテーマは無いだろう

 

 

「オヤ?どうやら私のデッキがバレてしまったのうデスね?」

 

「これだけ特徴的な動きをされてはね」

 

「いやハヤ、私は他の(フロ-)の皆さんとは違って大したデッキでは無いノデお恥ずかしい」

 

「どうせそのフィールド魔法やユニオンモンスター、3積みなのだろう?今更何を言うのかね」

 

「それが(フロ-)の強みデスよ!」

 

 

禁止・制限を無視する事が強みとは気が触れている。だがS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)の幹部である大神にはその発言の重みが理解出来た

 

今日ではディスクを改造し、禁止や制限カードを読み取らせた者も摘発されている

だが失彩の道化団(モノクロ・アクタ-ズ)は何の為の禁止・制限か理解した上での事らしい

 

 

「何の為の禁止・制限か」

 

「勿論分かっていマスよ。異端な決闘力(デュエルエナジ-)、使用者ヘの影響が計り知れナイ。S・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)が禁止・制限によっテそれを管理している事ハ」

 

「なら何故それを破る?その調子だと(フロ-)全員が無視しているようだが」

 

 

世間体的にはゲームバランスを整えるための所為を無視している事となる。だが大神やジャヴィのような人間はそれの真髄も熟知している

 

どのような副作用が起こるかなど分からない。それ故に日本と月下で共通している処置のはずだ

 

 

「”真の適合”とでモ言いましょうカ。一切のデメリットも無ク、禁止・制限に設定されたデッキに適合する決闘者(デュエリスト)がいルのです」

 

「それが君達だと言うのかね?」

 

「ハイ!国民の身を案ずるS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)では辿リ着けない人材デスよ」

 

 

皮肉な話だ

決闘者(デュエリスト)の身を守るための禁止・制限の処置を取ったS・D・T(スペシャル・デュエリスト・チ-ム)が、それを無視した先にある真の適合者によって脅かされている

 

やはりここで止めなければならない

月下が真の適合など聞こえのいいことは言っているが、今現在も誰かが犠牲になっているかもしれない

 

これは最早日本を守るだけの話では無い

同時に月下の国民らの危険も考えられる

 

 

「私は«цпкпошп»の効果で[クライス]を除外しておきマス」

 

「チェーンは無い」

 

 

[アイテール]の効果でこのエンドフェイズに[クライス]は手札に帰還する。ここでもセットカードでは無く、再利用を封じる事と確実な除去を優先した

 

お互いクレバーな戦術を取る決闘者(デュエリスト)なのだろうか

 

 

ジャヴィ 手札:3枚 LP 8000

 

モンスター/ «цпкпошп» ATK ?

 

魔法・罠 / リバース1枚

 

     / «цпкпошп»

 

     / «цпкпошп»

 

     / «цпкпошп»

 

 

「私のターン、カードをドローする」

 

 

相手ターンに手札を使い切ってしまったため、このドローフェイズに手にしたのが唯一の手札だ

 

だが帝は起動している

カードが見えていない以上遅れは取れない

 

 

「墓地の[汎神]の効果を発動する。選ぶのは[帝王の烈旋]、[帝王の開岩]、[帝王の深怨]だ」

 

「[深怨]を選びマス」

 

 

通常ならランダムのサーチを確定に変えることが出来る[深怨]は選ばれない

だが大神の残り手札を加味すると、発動自体が出来ない可能性もある

もし帝を持っていたとしても、情報が得られる。あまり考える素振りを見せなかったが、実に極められた選択だ

 

 

「手慣れているな。私は[アドバンスドロー]を発動する。[アイテール]を糧に2枚ドローする」

 

「オット!そちらを除外スルべきでしたカ?」

 

 

帝は無かった

そしてジャヴィがあの除外効果を温存する事を見越したようなプレイングだ。

 

早くも相手の癖のようなものを見抜きあっている幹部らの決闘者(デュエリスト)は非常に心理戦

綻びが生まれるのは単純なデッキパワーだろうか

 

 

「手札から[帝王の深怨]を発動する。手札の[邪帝ガイウス]を提示し、デッキから[帝王の烈旋]を手札に加えよう」

 

 

手札の内3分の1が公開された

アドバンス召喚のためのリリース要因を相手から奪うカードとそれによりアドバンス召喚する上級モンスター。

 

あの«цпкпошп»はリリースをコストとしている。だがその後に除外されているモンスターを特殊召喚する効果があった。恐らくそれらは今装備カードとしてフィールドに存在している

 

若しかすると現在リリースは不可能なのかもしれない

いずれにせよそろそろダメージを与えたい大神にとっては[ガイウス]の効果を試さずには居られなかった

 

 

「墓地の[深怨]を除外し、[真源]を特殊召喚する。さらに[真源の帝王]をリリース、[邪帝ガイウス]をアドバンス召喚する」

 

 

[邪帝ガイウス] ATK 2400

 

 

「効果を...」

 

 

ここで大神に戦慄が走った

あの唯一存在するモンスターが対処に取れないのだ

 

対象に取られない効果を持っているのか

だが大神の予想はそれとは違う。恐らくその効果を与えているのはユニオンモンスターの方だと

それらが何らかの永続効果を与えているのだろう

 

ではその装備カードとなっているモンスターを除去するべきか?それは考えられない

3体の内どのモンスターがどういった効果を与えているのか分からない

大神の戦術に乗っ取るのならセットカードしか選択肢は無い

 

 

「...君のセットカードを除外しよう」

 

「チェーンしマス!«цпкпошп»、墓地の«цпкпошп»を特殊召喚します!」

 

 

«цпкпошп» DEF ?

 

 

案の定チェーンによる回避が行われる

そこまで大きな痛手では無いが、これがターニングポイントとなる事も考えられる

 

カードの無駄使いは出来ない

 

 

「私はセットしていた[戦線復帰]を発動する。墓地より[イデア]を特殊召喚する」

 

 

[天帝従騎イデア] DEF 1000

 

 

「効果でデッキから帝の使いを特殊召喚したい」

 

「今度はイイでしょう」

 

「では[冥帝従騎エイドス]を特殊召喚する」

 

 

[冥帝従騎エイドス] DEF 1000

 

 

「[エイドス]の効果を発動し、アドバンス召喚権を増やす」

 

「デハここで«цпкпошп»の効果を発動します。貴方の[イデア]を除外シマスよ」

 

 

遅れて現れた[エイドス]により、2度目の召喚権を獲得した。だがこの従騎の内[イデア]は除外されてしまう

 

召喚権は増やしてあるが、この次ターンから使い回しが不可能となってしまった。だがこれらの発動は手札に上級モンスターがあると言う顕れだ

何か現状を打破するモンスターを召喚するつもりなのだろう

 

 

「手札から速攻魔法[帝王の烈旋]を発動する...なるほどな」

 

 

試しに先程対処に取れなかったモンスターをディスク越しに確認してみた。すると[烈旋]によるリリースも行えなかった。

これは対処への耐性では無く、効果そのものへの耐性だ

 

モンスター・魔法の効果を受けない

3枚装備されていることから、それぞれが耐性を与えていると予想出来る。恐らく罠への耐性もあるのだろう

 

 

「強力なモンスターだな、君のもう片方のモンスターと私の[冥帝従騎エイドス]...」

 

 

手札コストと対象にとる除外効果を発動していたため、蘇生させたモンスターもいまフィールドに居るモンスターと同名だと分かる

[烈旋]でリリースさせることを予想したのか効果を受けない方の効果を温存している。

 

依然として苦しい状況だが、目当てのアドバンス召喚は行う事が出来る

大神はリリースするモンスターの宣言を続けた

 

 

「そして[邪帝ガイウス]、合計3体をリリースする」

 

「...3体?」

 

 

最後の手札だ

それは最上級モンスターである事に代わりないが、帝には到底見えない1枚

 

 

「神々しき碑、古代より遡りてこの地を踏み鳴らさん。巨なる神平、神撃せよ![オベリスクの巨神兵]をアドバンス召喚!」

 

 

[オベリスクの巨神兵] ATK 4000

 

 

「このカードの召喚成功時にはあらゆる発動が不可能。加えて対象に取ることも出来ない」

 

「これは...イヤはや、驚きましタ」

 

 

効果自体を受けないあちらのモンスターと比べると目劣りしてしまうが、[オベリスク]もまた優秀なステータスを持つモンスター()

 

攻撃力に関してはこちらが優っている

お互い召喚のために3体のモンスターを糧にしている。奇しくも大神とジャヴィ重なるものが多く、こそばゆい感情すら浮かび始めていた

 

 

「バトルフェイズに移行する。私は[オベリスクの巨神兵]で君のモンスターに攻撃!」

 

「受けまスがっ、装備カードの«цпкпошп»の効果で身代わりにナリます!」

 

「だがダメージは受けてもらおう」

 

 

ジャヴィ LP 8000→7000

 

 

先制ダメージを果たしたのは大神

そして手札すべて使い切ったものの、得た情報は大きかった

 

1つは攻撃力

[オベリスク]との差から攻撃力3000と分かる

 

2つ目はユニオンらしい破壊耐性

3体のユニオンがモンスターや魔法・罠への耐性を与えているのは大体分かっていた。加えて身代わり効果も見え、最低でもあと3回破壊しなければならないのは正直苦しい

 

だが、あくまで身代わり。モンスター・魔法・罠の内いずれかの効果を受けるようになった事は恐らく間違いない。突破は不可能では無い、何度蘇生やリリースを繰り替えされようとどこかのタイミングで必ず穿つと見据え始めた

 

 

大神 手札:0枚 LP 8000

 

モンスター/ [オベリスクの巨神兵]

 

魔法・罠 / なし

 

 

「私のターンです!」

 

 

先程からあのユニオンモンスターが墓地へ行くたびにサーチを行っている。効果と破壊への体制に加えて墓地へ送られた時の効果も持つとは些か手数が多すぎる

 

厄介だ

大神に一切の油断は無いのだが、彼相手にはより一層緊張しなければならないようだ

 

 

「私は«цпкпошп»を通常召喚、効果デ手札カラ«цпкпошп»を特殊召喚します!」

 

 

«цпкпошп» ATK ?

 

«цпкпошп» ATK

 

 

「2体の«цпкпошп»でオーバレイを、«цпкпошп»をエクシーズ召喚!」

 

 

«цпкпошп» DEF ?

 

 

「効果を発動シマス。デッキから«цпкпошп»をサーチしマス」

 

「アクセスが多いようだね」

 

 

再びサーチを経て手札を3枚に安定させる。恐らくあの«цпкпошп»のコストに使用するのだろうが、生憎大神の場には対象に取れるモンスターは存在しない

 

逆に言ってしまえば大神は何か効果を挟むことも出来ない。硬直状態が生まれ始めているのだ

 

 

「フム...«цпкпошп»ヲ守備表示ニ変更してターンを終えます」

 

 

ジャヴィ 手札:3枚 LP 7000

 

モンスター/ «цпкпошп» DEF ?

 

     / «цпкпошп» DEF ?

 

魔法・罠 / «цпкпошп»

 

     / «цпкпошп»

 

 

「私のターンだ」

 

 

硬直状態と言えど大神の劣勢と見える

手札の数だけ見てもそうだが、何よりも余力を失っている

今までは敢えて選択肢を複数与えどれかを確実に通す戦術を用いてきた

だがそれは手札がある程度なければ成立しない

 

 

「...墓地の[烈旋]を除外し、墓地から[真源の帝王]を特殊召喚する」

 

 

[真源の帝王] DEF 2400

 

 

「ヤハリ、貴方はイジワルな方デスよ」

 

「何がだね?」

 

 

大神がリリースの為の罠モンスターを特殊召喚したタイミングでジャヴィは優先権をどう使うか悩みだした

 

そして口にした言葉はまたしても「イジワル」

そんな言葉を使う程若くも見えず、皮肉の意でも込めているのか疑ってしまう言動だ

 

だがジャヴィにとっては本音のそれらしい

 

 

「その1枚ノ手札。帝ナラ私はここで除外しなケレば成りませんガ、もしブラフだとしタラこのターンはモウ除外効果を使えまセン」

 

「君なら迷う事無く通すと思ったが?帝だとしても後からそれを除外すれば済む話なのだからね」

 

「マッタク...お上手です」

 

 

余力を生むためか、ここで大神はまたしても心理戦に出た。正確にはジャヴィの深読みが原因なのだが、兎に角選択を悩ませる事には成功した

 

ジャヴィの言う通り[真源]を除外するか否かは非常に重要だ。

仮に[真源]を除外した場合

1.手札に帝若しくはモンスターが無ければ何らかの蘇生カードかサポートカードとなる。[クライス]や[イデア]を除外している為、蘇生効果で恐ろしい物はない。

2.そもそもモンスターでは無く魔法・罠を持ち、[真源]がブラフだった場合、その後は黙って見ているしかやる事がなくなってしまう

 

逆に[真源]を除外しない場合

3.アドバンス召喚するモンスターが居なければそれでいい。その後の展開の末で除外効果を使うか否かを決めればいいのだ

4.上級モンスターを持っている場合は帝の性質故に召喚時効果は許さざるを得ない。このターンで終わらされる程のパワーを持つモンスターは考えられないが、これも未知数

 

いずれらの可能性と選択肢を考えた末

ジャヴィは決断した

 

 

「たった1枚の手札デ何処まで展開スルか分かりまセンが、[真源]の除外ヲ目当テとして«цпкпошп»の効果を発動しまス!」

 

「ほう」

 

 

リリース要因が消滅した

これによりこの瞬間から[真源]に頼る事は不可能となり、手札次第ではより苦しくなる一方だ

 

そして肝心の大神の手札

それはモンスターでは無く、2.のパターンだった

 

 

「[強欲で貪欲な壺]を発動する。デッキトップ10枚を糧に2枚ドローする」

 

「オォ!帝はモット堅実なデッキかと思ってイマしたよ」

 

 

単純な1枚手札が増えるドローカード

2.のパターンとは言ったが、その中でも不安定なそれだ

 

だがそこは流石決闘者(デュエリスト)。目当てのカードは確実に手にする事が出来たようだ

 

 

「墓地の[エレボス]の効果を発動する。手札の[汎神の帝王]を糧に墓地より帝、[天帝アイテール]を手札に加える」

 

「オット...コレはこれハ」

 

「もう説明は要らないかね?墓地の[汎神の帝王]の効果を発動する。[帝王の烈旋]、[帝王の深怨]、[真帝王領域]、さぁ選び給え」

 

 

有無を言わさない3枚

前者2枚は[烈旋]となり、それを避けて後者を選択すれば融合召喚を封じられてしまう

 

これにはあまり悩まなかった

ジャヴィのデッキの性質上前者が寧ろ望ましいのだ

 

 

「[深怨]デ」

 

「なら[アイテール]を提示して発動する。デッキから[烈旋]を手札に持ってこよう」

 

 

[烈旋]と[アイテール]

これだけであればお得意のアドバンス召喚は予想できる。後は残るもう1枚のカードだ

[アイテール]は些か重すぎる上に[オベリスク]

はリリース出来ない。

 

何を召喚するつもりなのだろうか

大神の行動は予想外のそれだった

 

 

「バトルフェイズだ、[オベリスク]でその融合モンスターに攻撃」

 

「ナンの!«цпкпошп»の効果で身代わりニなりマス!さらに墓地ニ送られた«цпкпошп»の効果でデッキから«цпкпошп»を手札に加えマスよ」

 

 

残るユニオンは1枚

大神の予想が正しければ魔法・モンスター・罠の内、何れか1つの効果は反映されるようになったはずだ

 

罠は考えられにくい

魔法かモンスターだが、大神は魔法への体制が残るとほぼ確信していたようま

 

 

「メインフェイズ2に移行する。私は手札から速攻魔法[帝王の烈旋]を発動する」

 

「ドウぞ」

 

「君のエクシーズモンスターの方をリリースし、手札から[光帝クライス]をアドバンス召喚する」

 

 

[光帝クライス] ATK 2400

 

 

「効果を発動する。君のそのモンスターと[クライス]自身を破壊の対象とするが」

 

「フム...いえ、チェーンはありマセん」

 

 

[烈旋]でリリースが行えなかったため、必然的に魔法への耐性を残していたと分かる

モンスター効果への耐性を付与したところで[烈旋]でリリースされてしまうため意味の無い効果となってしまう

 

そのため魔法耐性は必須だ

それは[烈旋]を見せてから攻撃を行った大神が強要したとも言えるプレイングなのだ

 

 

「ではお互い1枚ドローしよう」

 

「私は墓地ニ送られタ«цпкпошп»の効果で墓地の«цпкпошп»も手札に加えマス」

 

 

大神の優勢かにも思えたが、ジャヴィの手札は気がつけば6枚までに増えていた。次の通常ドローと合わせると実に7枚と破格の数

 

[オベリスク]が対象に取られないとは言えど、それだけ手札があれば幾らでも対応が聞くだろう

だが手札が増える効果は全て大神自身も把握済みのそれらだった。

 

 

「私は[貪欲な壺]を発動する。墓地の[クライス]、[エイドス]、[ガイウス]、[アイテール]、[エレボス]をデッキに戻し2枚ドローしたいが」

 

「構いマセンよ」

 

 

相手の手札と比べると苦しいそれだ

肥えているとは言えない墓地のカードと引替えに、やっと2枚になった手札

 

だがセットカードが除外されないと分かっているため、変化と言えば各所にある

故にセットとエンド宣言は比較的それから早く済んだ

 

 

「私はカードを2枚セットしてターンを終えよう」

 

 

ターン終了宣言の次はいよいよ潤っているジャヴィのターンがやってくる。サーチを経ているため幾つかは狙ったカードてあり、随分長い間悩まさせられている除外効果のコストにも充分回せる

 

いい加減[オベリスク]に頼るのも心持たないが、大神は依然として屹立していた

 




〜おまけ〜

聖帝大学にはシャワー室が設置されている
学生証を持つ者なら誰でも利用可能なその施設だが、そもそも存在を知らない生徒も少なくない

教員用の物は別途に設置されているため、主に部活動に勤しむ生徒が使用するかどうかの若干持て余している施設だ


Case of 灰田


「あれ、灰田じゃん」

「よう慎也!」


少し人通りの少ないその道に、慎也と灰田が出会った。知るものは知るその建物から現れた灰田を見るや否や慎也は何をしていたのか直ぐに理解できた

首に巻かれたタオルとまだ少し濡れた頭髪が物語るようにシャワーを利用したのだろう


「珍しいね、シャワー使ったの?」

「いやー!汗かいちゃってさ!気持ちよかった!」

「何かスポーツでも?講義?」

「いや!誘われてラクロス一緒にやってた!」

「へぇ、それも珍しい。ルール分かるの?」

「あんまり!」

「だよね」


ーーー
ーー



Case of 古賀


「あれ、古賀じゃん」

「村上ちゃーん、おっはー」


別の日、その道をよく利用する慎也はその日古賀と出会った。灰田とは違いしっかりと髪の毛を乾かし、セットまで成してあるがこの建物から現れたのはやはりシャワー利用後だろう

整髪料の香りに混じってシャンプーの香りも感じられる


「ラクロスでもやってたの?」

「違うよ~俺運動ダメだし。さっきまで呑んでてね、今来たばっかで講義前にさっぱりしたくてさ!」

「さっきまでって...」

「昨日の夜から5次会しちゃったよ!」


嬉々と語る古賀
右脇に挟むカバンに今日の教科書が入っているのかどうかや、寝不足は大丈夫なのか色々と過ぎるが、それ以上疑問に感じる事が慎也にあった


「...もう3限だけど」

「カラオケやら転々としたよ!」


ーーー
ーー



Case of 早乙女


「あ、早乙女さん」

「おう村上か、おはようさん!」


野暮用があり一限が始まるよりも少し早く登校してきた慎也は生活リズムが超朝型である早乙女と珍しく邂逅した
重々しいカバンを背負い、慎也を見つけると呵呵と笑いながら笑顔を見せた。彼もまたしっかりと水気を拭っているが、肌が赤らめいているためシャワー帰りとすぐ分かる
それにしてもどれほどの熱湯を浴びたのだろうか、まだ湯気がたちこめている


「早乙女飲み会帰りですか?」

「いんや?俺は毎朝自宅から走り、授業の前に汗を流すのが日課なだけじゃ!」

「そ、そうですか...健康的ですね」


ーーー
ーー



Case of 慎也


「ちょっと気になるな...」


特別その施設を使用する理由も必要も無い慎也だが、友人らは思いの他利用している事から興味が生まれていた

朝風呂として試しにやってきた
自宅で朝食を済ませタオルだけを持ってきた
シャンプー等の備品は揃っていると聞いている
恐る恐る自動ドアを抜けると直ぐにコインロッカーや自動販売機が目に入った
 

「...至れり尽くせりって感じ」


外から見ても大きな建物だった
一般的な物や紙コップの自動販売機、中にはアイスクリームのそれもある
マッサージ機やレトロなコインゲームに至っては流石に必要性を疑うが、兎に角充実している


「学生証かざすだけで入れるんだ」


基本的に無人だ
カードリーダーに自身の学生証をかざすと2つの鍵が現れた。1つはコインロッカー用の、もう1つはシャワー室へはあるために通るゲートに認証させるためのそれだ

使い方に困ること無く侵入すると、ようやく更衣室が現れた
そしてここもまた広い


「...」


洗面所にはカミソリやオイル、ドライヤーも勿論常備され、ニュースを流しっぱなしのテレビまである
さっさと着替えて奥へ進むと、慎也葉言葉を失った

シャワー室と聞いていたからだ


「...湯船あるじゃん」


シャワーボックスが頭に浮かんでいたため、まさか大浴場があるとは考えもしなかった
無論シャワーのコーナーもあるのだが、さらに奥にサウナ室間でもあるのは目の錯覚では無いはずだ

試しにシャワーを浴び、1番近い湯船に浸かると一息ついた。温泉では無く入浴剤が混ざっている、心地いい温度の風呂だ


「...」

「あれ?村上ちゃんじゃん!」
「ほんとだ、慎也!」
「おう、村上も来たんか!」

「あ、おはよう」


常連の生徒が順々に姿を見せた
慣れた様子で各々好きなように過ごし始めた様を見ると、いい加減我慢していた言葉がこみあげていた


「...銭湯じゃん!!」

ぶっちゃけどうですか?

  • 読みたいからやめて欲しくない
  • 読みたいけど無くなったら読まない
  • 普通
  • 無くてもいい
  • 読むのが億劫

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