ARIA 〜cavaliere storia〜   作:ソール

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第十ニ話 愛人はかけがえのない人

8:15分

 

エンジェル騎士団本部の朝礼がはじまっていた

アクトはみんなを集め、今日のスケジュールの説明をしている

 

「もう暑い季節に近づいている。水分補給をしっかり取る様にしてくれ?」

 

あと1ヶ月を過ぎれば、暑い夏がやってくる

エンジェル騎士団にとっては仕事をおろそかにしていけない時

理由は観光客が多く来る季節、トラブルが起きやすい季節

海の交通でも多くあるため、夏の彼ら騎士団は忙しい時期なのである

 

「ということだ。では今日もがんばるように?」

 

「あのすいません!質問してもよろしいでしょうか?」

 

「なんだい?」

 

部下が突然アクトに質問する

 

「ここに愛人くんがいないのですが?」

 

「そういえば!?」

 

「まさかマジでサボったか愛人!?」

 

そう、彼がここにいないのだ。初めはめんどいとかでサボりたいって言ってたから、本当にサボっていないのかと、騎士団員は騒いだ

 

だが

 

「ああ、彼はいいんだ」

 

「え?どういうことです?」

 

なんとアクトは愛人が朝礼には出なくていいと、許しが出ていた

その理由は

 

「実はみんなも知っていると思うが、愛人が使っている『スカイバード』を我々の分も作ってもらっている」

 

「え!?私たちの分の!?」

 

「我々もあの事件で愛人くんが使ったあの『スカイバード』を提供してくれるのですか?」

 

「ああ、我々が頼んだんだ。残念ながらドローンの方は無理だが、『スカイウイング』の方を我々の分を提供してくれるそうだ」

 

「すごく嬉しい話ですけど?我々が扱えるのですか?」

 

「愛人の言うことだと、訓練もいると言っている。彼の仕事が終わったら、一度我々四大天使騎士がテストする」

 

「私たちも飛べるのですか?」

 

「そうだ。我々にとっては最高の戦力になる。だから今日から彼は自分の事務所から、この1ヶ月は出てこない。彼に仕事は回さないでくれ?これを優先してもらっているんだ。かなりの数を彼一人に作ってもらっているからな、彼にしか作れない、苦労をかけてしまうが、彼だけに任せるようにした。みんなもわかってくれ?この1ヶ月間彼の仕事に邪魔をしないでくれ?それでは今日も頑張るように!!」

 

愛人は『スカイウイング』を騎士団員の全員分を作っていた

なんとか1ヶ月で終わらせるようにしているため

 

彼のいつもの仕事はやらず、『スカイウイング』の制作を優先にやっている

 

一応出勤はしている。この1ヶ月間は彼は自分の事務所に出る事は無い

だから住民の手伝いの依頼もすべて断っている

 

外に出ることはできないということは、この1ヶ月はアテナ以外のウンディーネには会うことは無いということだ

 

 

 

ガチャガチャガチャガチャ

 

カタカタカタカタカタカタ

 

事務所からトンカチの叩く音とネジの回す音とパソコンのキーボードが打つ音が聞こえる

愛人がもうさっそく制作に入っていた。アラエルも手伝ってもらっていて、プログラムを作ってもらっている。スカイバードのアームでキーボードを打っている

 

しかも驚くことに今日の朝初めているのにも関わらず、もう3機も早くできていた

 

頼まれた数は100機ほど、それを1ヶ月で終わらすことだった

一体なにをして制作すれば、こんなに早く3機が作れるのかは知らないが、愛人は機械制作も天才並みということだろう

 

この部屋には彼とアラエルしかいないから、音楽流しながら制作している

材料の方はもう朝に届いていて、今日の6時から制作している。彼にとって珍しいほどの時間だった。いつもならギリギリで出勤しているのに、今日は6時に出勤していたのだ。

それだけ忙しいということだ

 

「愛人?街の住民には言っておいたぞ?」

 

「ああ、さっそくもう3機できたぞ?」

 

「相変わらず君には驚かされるな?早すぎるぞ?」

 

アクトは机に置いてあった。『スカイウイング』と『スカイウイングのコントローラー時計』を見ていた。

 

「へえ?すごいな?軽いし、これなら動きやすそうだ」

 

リュックサックの少し小さいサイズだった。もうそれを操る時計も完成していた

 

だが

 

「なんでこいつだけ色が白なんだ?」

 

「それはあんた専用」

 

「僕専用!?」

 

なんと、スカイウイングにアクト専用のカラーも作ってあった。

 

「性能は変わらないが、四大天使騎士専用があったほうが、目印になるだろ?」

 

「ありがとう!頼んでもいないのに?」

 

「いいよ。それにみんな同じ色ってのも分かりづらい。四大天使騎士だけ、オリジナルのカラーをかけておく。そうすれば隊長としての目印になるだろ?」

 

「そうだな、ありがとうここまでしてくれて?礼は必ずするよ」

 

「だったら今それ使って、ここで飛べ?できてるか確かめたい」

 

「え?ここで!?」

 

「大丈夫だ。飛ぶ衝撃とか無いから」

 

「わかった。やるよ」

 

愛人の言われたとおり、背中に装着して、時計を動かして見る。

ボタンを押すと、ホログラムでできたメニュー欄が出て来た

 

「そこにカタカナで『ウイングモード』ってのがあるだろ?それ押せ?」

 

「これか?」

 

押すと、背中からナノマシンの白い翼が生えた

 

「おお!!」

 

「あとはメニューで『飛行』って書いてあるから?それで飛ぶぞ?」

 

「どれどれ?」

 

ボタンを押すと、その名の通り、地面から浮いた。翼はバサバサと羽ばたく。羽ばたく風の衝撃はなかったから。周りの物は風で飛ばされる事はなかった

 

「おお!!飛んだ!!」

 

「ちゃんと上昇しているな?もういいぞ?降りる時は『着陸』ってボタンな?」

 

言われたとおり、アクトはそのボタンを押すと、ゆっくり降りて行く。地面に足が付くと翼は消える。どうやら着地すると消えるようにできているらしい

 

「すごいな!!愛人!!これならどこでも飛べそうだ!」

 

「いちいちコントローラーで操作するのは面倒だがな、まあ飛行速度はアラエルと変わらないから大丈夫だからいいんだけど」

 

「ああ、ありがとう。テストはやらなくても大丈夫そうだな?」

 

「ああ、ただ他の連中にはちゃんと訓練させておけ?たぶんいきなりは慣れないから?」

 

「わかった!じゃあこの調子でお願い」

 

「ああ」

 

アクトは事務所から出た

引き続き愛人はスカイウイング量産の制作に入る

 

アクトは白

アレクシアには水色

アイナには緑

彩音にはピンクか赤と考えている

 

隊長であるあの4人には、隊長だとわかりやすくカラーをつけないと見分けがつかなかった

 

色をつけるぐらい問題ないが、

 

正直1ヶ月で100機作れるかわからない。できて50機だ

仮にも一人でやっているからでもある。さすがに他の奴らに教えても

難しくて失敗する可能性がある。材料は無駄にしたくなかった

 

彼は頼まれたとしても、数がそれまでにできるかは心配しながら制作に続いた

 

 

もうさすがに灯里たちに会う事は無い

さすがの灯里たちも本部まで用も無いのに来ないだろう

 

 

 

 

 

 

と、思っていたが

 

「愛人さん居ますか?」

 

「せっかくだから遊びに来たんだけど?」

 

「忙しかったですか?」

 

「ぷいにゅ?」

 

「にゃあ?」

 

「まあ?」

 

「・・・・・・・」

 

忙しかった?遊びに来た?

 

愛人はこの3人に呆れた

あれほどネットにも忙しいというのに、まさかの遊びに来たのだ灯里と藍華とアリスとアリアとヒメとまあは

邪魔しないで貰いたかったのに

 

ここに来ても用は無いはずなのに、なぜここに来たのだろうか

 

「なにしに来た?忙しいってネットに書いてあったろ?」

 

「なによ?久しぶりに会いに来たんだからいいじゃない?」

 

「よくねえよ!!なに軽々しく言ってんだ!?」

 

「ごめんなさい愛人さん。どうしても藍華ちゃんが愛人さんととこ行こうって言うから?」

 

「は!!?灯里あんたも会いに行きたいって言ったじゃない!!?なに私だけのせいにしているのよ!!」

 

「ていうか、私も含め、愛人さんのところにでっかい久しぶりに会いに行きたいとお二人も進んでここに行きたいとここに来ました」

 

「お前らよくここに入れたな?」

 

「アクトさんが入っていいって言いました。『今日ぐらい会いに行っても大丈夫なはず』って言っていました」

 

「あいつ、団長のくせに俺の今の状況わかっているわけ?」

 

ただでさえ、一ヶ月で100機作って欲しいって言うから、邪魔をしないでって言っているのにも関わらず、もうさっそく言った言葉を無視して、灯里たちを連れてきているとは

 

さすがの愛人も、あのアホ団長に言葉をかける余裕もなかった

さすがにイライラしそうになった

 

「やっぱり迷惑でしたか?」

 

「悪かったわね?あんたの都合を考えずに来て?」

 

「でっかいごめんなさい。わがまま言ってしまって?」

 

「・・・・・・」

 

イライラしたことが顔に出ていたのだろうか

怒ってるのがよくわかったのか、空気よんで謝りだした

 

まあ、さすがに状況をわかってくれたらしい

 

このまま帰らせるのもかわいそうだと

 

愛人は

 

「わかった。喋るだけなら相手にしてやるから、ここで遊んで来な?何も無いけどな?」

 

「ありがとうございます!!」

 

「さすが愛人!!分かってる!!」

 

「でっかいありがとうございます!!」

 

仕方なく、せっかくここに来たのだから、おしゃべりしながら『スカイウイング』を制作していた

 

「アラエル?少し頼む?こいつらに紅茶を出すから?」

 

『了解』

 

せっかく来たのだから、茶ぐらい出そうと厨房の方へ行く

その間の仕事は少しアラエルに頼む

少し机の上を茶が置けるだけのスペースをつくり置いた

 

「ありがとうございます」

 

「それにしても?こんなにたくさんの機械?なにをするの?」

 

「ニュース見たろ?輸送船の火災事故?その時俺が使った『アラエル』って言う飛行装備を他の団員にも作っているんだよ?」

 

「あのさっきからパソコンのキーボードを打っている。ドローンみたいな物をですか?」

 

『はじめまして?灯里様?藍華様?アリス様?』

 

「喋った!?」

 

「すごいです!!どうなっているんですか!?」

 

「でっかい不思議です!!?」

 

「そいつはAIシステムていう人工知能のアラエルだ。簡単に言うとだな・・・」

 

灯里たちに説明中

 

「ということだ?」

 

「へえ〜、すごいです!!まるで愛人さんのパートナーです!!」

 

「恥ずかしいセリフ禁止!!」

 

「ええー!?」

 

「パートナーって言うよりも『相棒』だよ?アラエルとは?」

 

『はい、私はマスターの相棒です』

 

「相棒なのに、あんたに対してマスターって?相棒とは思えないんだけど?」

 

「こいつが勝手に呼んでいるだよ?こいつ意外に俺の言う事聞かないからな?」

 

「え?そうなの?」

 

「ああ、しかも意外とこいついたずら好きなんだよ?」

 

『はい、例えばこんなふうに?』

 

またアラエルはキーボードを打ちながら、勝手に愛人の頭を赤外線レーザーをスキャンする

 

『マスターの頭をスキャンし、今なにを考えているのか探る事ができます』

 

「ほらな?」

 

「あんた?なに?とんでもない物を作っているのよ?あんたエスパーみたいな機能を使って何する気?」

 

「俺はこんな機能は作った覚えはねえ」

 

これは勝手にアラエルが入れた機能だから、愛人は知らない。ていうか機械の性能でそんなエスパーみたいな機能は、普通不可能なのだが

 

アラエルはそれが可能なのだ

 

『で、今マスターが考えていることは『アテナに触れる虫は一人残らず、根絶やしにしてやる』や『アテナに好きな人など、俺は絶対に認めない』のと『藍華はあとで殺す』だそうです?』

 

「ちょっとおかしくない!?なんでアテナさんのことしか考えてないのよ!?あんた?今の仕事は!?今そこ考えるとこそこでしょう!?あんた結局アテナさんのお兄さんになってるじゃない!?ていうか最後!?今私を殺すってどういうことよ!?なんで私だけ扱いが違うわけ!?」

 

「アテナ先輩・・・・しっかりして欲しいです」

 

「愛人さんが・・・・お兄さんか・・・」

 

愛人の今考えていることはほとんどアテナだった

そして若干、藍華を排除することを密かに計画していた

藍華はツッコミするが

アリスは恥ずかしかった。身内の恥とでも言っていいほど聞いて辛かった。

妹になって甘えている上司など、見たくなければ、想像もしたくなかった

 

灯里に関しては・・・・・・・・・・・愛人に甘えるアテナが羨ましかった

 

 

『せっかくですから?灯里様たちの頭の中を探りますか?マスター?』

 

「おうやれ?せっかくここに来たんだから楽しんでけ?」

 

「楽しんでるのあんただけだから!?プライバシーの侵害にも程があるわよ!?この機械!?」

 

「や、やめてください愛人さん!!?」

 

「人の頭の中見るだふなんて、でっかいプライバシーの侵害です!?」

 

「やれ!!」

 

「「「やめてええええええええ!!!???」」」

 

『了解!』

 

マスター愛人の容赦なしの命令にアラエルはノリノリに従う

赤外線レーザーで、この部屋から逃げようとする灯里達の頭をスキャンした

 

『スキャン完了です。まずは藍華様のを見ましょう!』

 

「やめて!!!私が悪かったから言わないで!!」

 

『藍華様は・・・・・『アル君大好き♡』や『アル君と結婚したら何人でも子供を生める♡』や『私はアルくんの花嫁だもん♡』と今頭の中で考えています』

 

「聞くの禁止!!!!違うのよ!!私はアルくんに好意があるわけじゃなくて!?私はその・・・・・・・」

 

「ツッコミする寸前で恥ずかしくなるなよ?お前が誤摩化そうが、みんな知っているって?お前がアルのことを好きだということくらい、な?」

 

「はい、当たり前と言いますか、でっかいわかりやすいです」

 

「藍華ちゃん。そこまで考えているんだ?やっぱり二人は愛しあっている証拠だよ!」

 

「はわわわわ!?禁止!!!恥ずかしいセリフ禁止!!!絶対に禁止!!!このことをみんなに言うのも禁止!!!!」

 

藍華は恥ずかしさのあまり、顔を手で塞いでしまった

恥ずかしいセリフ禁止なんて言われても。みんな知っていることだから、対して驚きはしなかった。晃もアリシアもアテナもグランマも暁もウッディーも郵便屋のおじさんも姫屋の従業員全員もはたまた藍華の父であるアーサーにも、そしてアル以外のノームの人間も、知っていることだった

 

「ちょっと!?なんでお父さんまで知っているの!?」

 

『では、そろそろ次は、アリス様の頭の中を言いましょう』

 

「やめてください!!でっかいプライバシーの侵害です!!」

 

アリスは止めようと立ち上がるが、藍華に止められた

 

「こうなったら後輩ちゃんも道連れよ!!いいわよアラエル言って」

 

「藍華先輩!?腹癒せのつもりですか!?」

 

『アリス様が今考えていることは・・・・・・・『アテナ先輩が愛人さんの妹で、でっかい羨ましいです』や『私も愛人さんにでっかい甘えたいです』や『私も愛人さんの妹になりたいです』だそうです』

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・は?」

 

意味不明だった

どういうこと?愛人の妹にうなりたいってどういうこと?

 

なんのメリットがあってのことだろうか、一体アリスは普段どんなこと考えているのだろうか、もしかしていつもアテナと愛人のやりとりを見て嫉妬したのだろうか

 

もしくは愛人に好意があるのだろうか

 

意味が分からないので、アリス以外は沈黙した

 

「ごめん?どういうこと?」

 

「後輩ちゃん?説明お願い?」

 

「えっとですね・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「これなんて言えばいいの?なに?お前も妹になりたいの?二人も妹ができるのはいいけど?」

 

「へ!?」

 

「いいの!?やっぱりあんた変態!!」

 

「別に妹が一人二人増えたところで問題ねえよ?」

 

「いいんですか?」

 

「別にいいよ?」

 

「お兄さんって呼んでもですか?」

 

「毎日アテナからお兄ちゃんって言われてんだぞ?実の兄貴でもないのに?別にもう言われて慣れたから好きに呼べよ?」

 

「じゃあ兄さん・・・・」

 

「なんだよアリス?」

 

「//////」

 

「たく、恥ずかしくなりやがって?かわいい妹だ」

 

一度手を止めて、なでなでとアリスの頭を撫でる愛人

 

「でっかい兄さんのせいです」

 

「はいはい、兄さんが悪かったよ?」

 

「おかしくない!?なんで後輩ちゃんまで妹になるの!?なんでこうなるの!?意味がわからないから!?」

 

「いいなあ・・・・アリスちゃん」

 

なんでこうなったかは知らないが、アリスも愛人の妹になった

灯里が羨ましそうな顔しているが、愛人は気づかず

 

藍華は呆れたように、顔を片手で押さえ、やれやれと言わんばかり

 

『それでは最後に灯里様です』

 

「あわわわ!?やめてください!!恥ずかしいです!!」

 

「なにが恥ずかしいよ!?私たちの方がもの凄く恥ずかしいからね!?」

 

「結構でっかい恥ずかしかったですんよ?私たちも吐いたんです!灯里先輩も言ってもらいます!!」

 

「吐いたって言うか、アラエルが勝手に言ったんだけどね?」

 

『灯里様の今考えていることは!!!』

 

「やめてください!!」

 

『『愛人さんはぜひARIAカンパニーに入ってもらいたい』だそうです?』

 

「あれ?」

 

「え?嘘?」

 

「でっかいまともな考えです」

 

「俺が?」

 

なぜか、藍華とアリスの考えていることははプライバシーに関わることなのに

灯里に関してはプライバシーではなく、仕事の考えだった

 

まともていうか、常識すぎて、アリスの考えを聞くよりも驚いた

 

「え〜〜!それは困るな〜、そっちに転職してもいいけど。そんなことしたらアクトが泣いちゃうぜ?」

 

「い、いえ!!無理しないでいいですよ!!私はその・・・・・・・・愛人さんと一緒に仕事ができたらな〜〜〜って思って」

 

愛人は気づいてはいないが

藍華とアリスには、その言葉の意味深さに気づいた

 

たぶん、遠回しに愛人の事好きと言っているものだろう。

好きな人と仕事ができたらな〜とか、二人だけで一緒に仕事ができるという”二人だけの時間を作りたかったのだろう。恋人では一度は思うことだ

 

仕事するウチに段々と一緒にやっていけば、パートナーがいつか自分に恋してくれるのではないかと、狙ったのだろう

 

二人の時間に得になりやすい、ARIAカンパニーならそれも実現できるだろう

だが、そんな深い意味も遠回しというか、意味が深すぎて、たぶん気づかないだろう

 

というより分かりづらい

 

そんなこんなで話していると

 

愛人にまたお客がやってきた

 

「愛人くん居るかしら?」

 

「愛人?久しぶりに遊びに来たぞ?」

 

アリシアと晃がやってきた

忙しいって知らせで言っているのにも関わらず

もうあの知らせ、絶対意味がなかっただろう。

 

なんでこんな忙しい時にこの二人がやってきたのだろう

 

その理由は

 

「ごめん、お兄ちゃん、アリシアちゃんと晃ちゃんがどうしても会いたいって言うから」

 

どうやらアテナが二人のお願いを叶えたくて連れて来てしまったらしい

 

「ごめんね?ダメだったよね?忙しいって朝から言っていたのに」

 

アテナが悪気がある訳じゃないことぐらい愛人はわかっている

 

だから

 

「別にいいよ?偉いなアテナは?お前は友達想いで?お兄ちゃん嬉しいぞ?」

 

「そう?えへへへへ」

 

愛人はアテナに怒る事は無い。なぜなら愛人は妹であるアテナを愛してるのだから

 

「おいおい、仕事場でも熱いぞ?この兄妹?」

 

「アテナちゃん、もう違和感無しに妹になっているのね?」

 

二人はこの愛人とアテナのやりとりあんま見てないのか、二人のやりとり見て驚く

こんなやりとりは本物の兄妹のやりとりだ

 

「いつもこんな感じで話しているの?あんた?」

 

「まあな、アテナは俺と同い年だけどな、どうしてもこいつが年下に見えるんだよな?」

 

「それはアテナ先輩がドジ子だからです」

 

「ていうか、なんでお前らも俺に会いに来てどうしたんだよ?」

 

愛人は忙しい身である。その忙しさはこの3人が一番わかっているはず

ウンディーネだって、今愛人がやっていることと同じ忙しさ。

それがわかっているはずなのに、なぜ来たのだろうか

ただでさえプリマである3人。それだけでなく、水の三大妖精である3人が仕事もしてないでここに何か用でもあるのだろうか

 

「久しぶりに会いに来ちゃ・・・・ダメ?」

 

アリシアが可愛げにおねだりするが

 

「お前あろう者が?エンジェル騎士団のお知らせ見てないわけじゃないだろ?」

 

愛人はアリシアがそんな単純なことがわかってないはずと、アリシアのおねだりは通用しなかった

 

「うん見てたけど・・・・・つまり1ヶ月は外に出られないってことじゃない?」

 

「そうだけど?」

 

「もうあの事件以来君は忙しいじゃないか?もうあれから2週間も会ってないから、久々に会いたくなったんだ」

 

「お前ら?俺と会わなきゃ気が済まないわけ?」

 

「私は別に1ヶ月後でも構わないが、アリシアはな・・・・」

 

「こいつがなに?」

 

「晃ちゃん?それ以上なにか言ったら?わかるわよね?」

 

「あ、ああ、わかっているとも・・・」

 

「脅した!?今アリシアさん!?晃さんを脅しましたよね!?」

 

「お前いつからそんな不吉な事を言うようになったわけ?最近秋乃と会ってから変なんだけど?お前?」

 

アリシアとは思えないほど、みんなは驚く。あの優しいアリシアが晃を脅したのだ

以前の彼女ならそんなことはしないはず

 

だが

 

あのグランマに会って以来、愛人のことに関して、アリシアに言うと

まるで別人のような性格に変わって行く

もしくは、これが彼女の皆に知る事の無かった。本性なのだろうか

 

どのみち、彼女は性格や本性もすべてが謎すぎる女性だ

 

 

「で?忙しい割には、藍華たちとなにか楽しいことしているじゃないか?仕事をもうさっそくサボっているじゃないか?」

 

「こいつらが遊びに来なかったら、仕事を続けていたさ?なのにこいつら、俺が忙しいというのわかっているのにも関わらず、遊びに来たんだぞ?ついでにお前らもだ?」

 

「それについては謝るわ。でも、どうしても久しぶりに会いたくなったの」

 

「別に俺と会っても面白いことなんて無いだろ?」

 

愛人は理解できなかった。いつもサボりたいって言っているこんなアホと、会ってなんのメリットがあるのだろうかと

 

自分はそこまで魅力になるようなものや、楽しませるようなものも無いというのに

 

彼女たちの会いたいというのが理解できない

 

「そんなことはありませんよ?愛人さんは私たちには見せてくれないような、想像もしてないようなものを見せてくれるんですから?」

 

「それは・・・なんだ?」

 

灯里が愛人に突然言って来た

彼女が言いたいのは、彼がそれだけの雄大な存在だと、なくてならない存在だと言った

 

どうしてそんなことを言うのだろうか

 

「愛人さんは奇跡をいつでも起こしてくれるような、私たちに楽しいこといっぱいくれるような、まるで神様のような人なんです!」

 

「神様って?・・・俺?お前らになにかしたっけ?」

 

「はい!私たちにいろんな笑顔や楽しい事をくれました!愛人さんは私たちにとってかけがえのない人です」

 

「恥ずかしいセリフ禁止!!!」

 

「ええーー!?」

 

「・・・・・・」

 

 

かけがえのない人

 

そんなことまで言ってくれるのは予想外だと

愛人は思った

 

只居るだけでも価値があるとでも言いたいのか

それだけ自分が大事な存在なのだろうか、彼は不思議な気持ちになった

 

仕事をするのが嫌だっただけのただのクソ野郎なのに

だだをこねるほどガキみたいな男の

 

なにがかけがえのないのか理解できなかった

 

「たく、なんて女だ」

 

「愛人?」

 

「かけがえのないとかは関係なしに、俺はお前には勝てないとわかったよ?灯里?」

 

「へ?」

 

「俺さ?お前のことが好きだわ?」

 

「へ!?」

 

「なに!?」

 

「え!?兄さん!?」

 

「愛人くん!?」

 

「おいおい!?ここでなんてタイミングでプロポーズしているんだ!?愛人!?」

 

「お兄ちゃん?」

 

愛人はなんとみんなが居る前で灯里に告白した

まさかの衝撃に発言に

 

みんなが驚く。アリシアも含め

 

なぜこんなタイミングで言ったのだろうか

 

「あ、愛人さん?好きってどういうことですか?」

 

「ん?お前みたいな能天気な女は好きだって言ったんだが?」

 

「どういうことですか?」

 

「わかりづらいよな?わかりやすく言うと、お前は優しすぎて、どんな宝石よりも輝いて美しいほど、俺はお前が好きだよ?」

 

「へ!?」

 

「変なことは言ったつもりはないんだけどな?」

 

「なに!?なんた灯里に告白しているのよ!?」

 

「告白?俺は恋愛のつもりで言った覚えは無いぞ?」

 

「でも!!そうしか聞こえないわよ!!」

 

「そうか?・・・・・・なるほどな、そういうことか」

 

「は?」

 

愛人は納得したような顔をした

 

なぜ納得したようなことを言うと

 

「俺の言い方は、友人のつもりで言ったはずだが、どうやら違うみたいだ」

 

「は?何言っているの?」

 

藍華は理解できなかった

無論他のみんなもだ。彼はなにが言いたくて告白したのか、それすら言った本人でも理解してなかったようだ。灯里に『好きだ』と言っておきながら、なんで言ったのかも理解してなかったようだ

 

「俺は初恋したのかも?灯里に?」

 

「「「「「「え!?」」」」」」

 

みんなが言葉がハモるほど、驚いた

今まで初恋してなかったから、無自覚に言ってしまったのかもしれないが

心の奥では、本気で相手に恋してみたかったのかもしれない

 

今でもかすかだけであって、本音ではないはず

 

でも、本気で好きになったとは言えない

 

まだ自分の心を理解してないからだ。自分の心なのに、自分でも理解してなかった

それだけ初めての想いだったのだろうか

 

彼女の優しさが好きになったのだろうか、

 

彼にもわからない

 

「でも、気にするなよ灯里?俺が勝手に口走ったことだから、本気に思わなくていいから?」

 

「え・・・・・」

 

これだけ変な期待させといて、自分から言っといて、断るようなマネをしたのだ

なんと自分勝手なのだろうか、だと思うが

 

こうする以外なかったのだ

 

まだはっきりしてもない状態で、灯里を欲しがることはできなかった

理由は

彼女はプリマになる夢をぶち壊さないためだ

男なんてできたら、ウンディーネをやめなくてはならない

それだけは避けるために、自分の想いを壊してでも、彼女を欲しがるようなマネはしなかった

 

「・・・・いです」

 

「ん?」

 

「ずるいです。愛人さんって?」

 

「そうか・・・・ずるいか、それはごめんな?」

 

灯里にとっては嬉しい事なのに

少し怒ってしまった

 

自分だって愛人のことを思っていたのだ。その相手が自分を好きなってくれたのにも関わらず、冗談で終わらされたのでは、納得いかなかった

 

ずるいというのは

 

愛人だけが、自分のことすべてわかっていたこと

自分はまだ愛人のことなにも知らないのに、わかりきったような言い方されて、ほんの少しだけ怒ってしまった

 

でも、彼は謝った

 

彼はどこまでわかってて、どこまでがわかってないのか自分にはわからない

灯里の想いはたぶん、愛人でいっぱいなはず、でも、ウンディーネのこともある

自分の想いを愛人が理解できてはいないが

 

愛人はその自分の想いも潰してでも、自分のためにしていることが灯里にはわかった

 

だからこそ、余計ずるい

 

わかっているからこその発言が、愛人の想いだけでなく、自分の想いも潰しているからだ

これではまるで愛人にふられたような言い方だった

 

 

「この詫びは、お前のお願いを聞いて詫びるよ?」

 

「!」

 

そういえば、なんでもお願いを聞いてくれるという約束があることを、灯里は忘れていた

 

この何でも言う事を聞くという約束があれば

 

少しは彼が、自分の想いに気づいてくれるのではないかと思った

まだ、この想いは終わってない

まだ逆転するチャンスはあるのだ

 

「じゃあ、私のお願いちゃんと聞いてくださいね?」

 

「ああ、約束する」

 

彼はその約束はちゃんと果たしてくれる

そこまで根は腐ってはいない

ただ、彼が灯里の気持ちに気づくか、それ次第で、愛人と灯里の関係が変わる

すべてはこれから次第というわけだ

まだふられたわけでは無いのだ

 

「って私たち、だんまりと聞いていたけど!?あんたどうかしているわよ!?」

 

「そうかい?そういうお前はアルに告白すらもされないじゃん?アルの想いはお前に届いてないんじゃない?」

 

「どういう意味よコラ!!!」

 

「兄さん?」

 

「なに?アリス?」

 

「え!?いつからアリスちゃんは愛人のお兄さんになったんだ!?」

 

事情の知らない水の三大妖精はおいといて

アリスが見た事の無い表情で愛人を見た

 

というより睨んだ

 

「でっかい認めませんから?」

 

「は?」

 

「私はでっかい認めません。灯里先輩に兄さんはでっかい渡しません」

 

「どうしたお前?いつものお前じゃないぞ?」

 

「でっかいスズメバチですから」

 

「いや、理由になってないからな?」

 

「でっかいでっかいでっかでっかいでっかいでっかいでっかいでっかいでっかいでっかいでっかいでっかいでっかでっかいでっかいでっかいでっかいでっかいでっかいでっかーーーーーーい!!私は認めません!!」

 

「何回でっかい言っているつもりだ?お前ブラコンだっけ?」

 

明らかにアリスがアリスではないことがわかった

愛人の無自覚のセリフを聞いて、大人しくいられなかったらしい

いつも冷静に周りを見通す彼女が、今日だけは冷静ではいられなかった

 

「お兄ちゃん?」

 

「ん?どうしたアテナ?」

 

「私も認めないから」

 

「は?」

 

「私も灯里ちゃんにお兄ちゃんは渡さないから?」

 

「お前までどうした?オレンジプラネット二人がめちゃくちゃ変なんだけど?」

 

お前のせいだと、晃と藍華は心の中でツッコミした

このどろどろの空気にツッコミしたら、絶対に巻き込まれると判断したからだ

 

「うふふふふふ」

 

「アリシア?どうした?さっきから喋りもしないで?」

 

「あらあらうふふふふじょうじ、あらあらうふふふふじょうじ」

 

「ねえ?なんでテラフォーマーの鳴き声?」

 

「じょうじ、じょーじ、じょうじじきじょうじきジョージじょう」

 

「ねえ?本当にどうしたの?それ言語なの?もしかしてそれでみんなが通じるって思っている?」

 

もうアリシアはなんか・・・・・・・・・怒ってるのだろうか

部下を取られそうになって怒ってるのだろうか

なんかそんな感じがした愛人だった

 

「心配するなアリシア?まさ先はあるから?」

 

「え?わかるの晃?今アリシアが言った言葉がわかるの?あんんでわかるの!?」

 

「じょいうじじょいうじじょーじアリシア」

 

「ねえ?何語?それ何語なの藍華?なにお前もアリシアみたいなわけのわからない言語で話しているの?俺だけなの?俺だけがこの言語が理解できないの?」

 

アリシアがなにを言っているのかさっぱりだが

晃と藍華はなにを言っているかわかっている

 

ていうか藍華に関してはもうそのアリシアの言語で話している

 

 

結局アリシアがなんで怒ってるかも、なにを言っているのかも分からずじまいだった

 

まあ、なんだかんだで楽しい時間は取れたが

 

 

 

 

愛人の仕事が進まなかったのは言うまでもない

 

 

 

「これ一ヶ月で終わらない気がしてきた」

 


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