あ、いやごめんなさい調子に乗りました石投げないで←
バレンタインにマニアワナカッタ……それでもバレンタイン風味特別編←
「ーーえっ? ち、ちょっとママ、それ本当? えっ、うん、それはもちろんいいんだけど~……」
シンデレラプロダクションのオフィスビル。その中に置かれたアイドル部門の廊下にある休憩スペース。そこで一人の女の子が携帯電話を使っていた。
周りには何人かの姿もあり、その娘が慌てている様子を見て首を傾げている。いつもマイペースな娘のそんな姿は珍しいのだ。
「――うん、わかったぁ。それじゃあいつになるの~? ……え!? 明日!?」
一旦落ち着いたかと思えば、再びあわあわと携帯片手に自販機の前をうろうろと歩き出す。備え付けのソファで今まで娘――十時愛梨と話していた二人――川島瑞樹と輿水幸子はそろって首を傾げていた。
「珍しいわね、愛梨ちゃんがあんなに慌てるなんて……」
「そうですね。まぁ、大変そうならカワイイボクが助けてあげますよ!」
「ふふっ、幸子ちゃんは優しいのね」
「当然です! 何と言ってもボクはカワイイですからね!」
しばらく愛梨の様子を見続けていた二人だったが、ドリンクを飲み終えるとそれを話題にし出した。愛梨はまだ通話中であり、しばらくはそのままであろうことが見てとれる。
「うん……うん……わかったよぅ……はぁーい……」
その五分ほど後、愛梨は通話を終了させると同時に、彼女にしては珍しく深い溜め息を吐いた。
「珍しいですね、愛梨さんが溜め息吐くなんて」
「う~……幸子ちゃ~ん……」
「わ!? ちょ、急に抱きつかないでくださもがぁ!?」
言葉をかけたが最後、幸子は愛梨の豊満なおもちにその顔面を飲み込まれてしまう。何とか脱出しようと手足をバタつかせている幸子と、特に気にせずありったけの力で幸子にしがみつく愛梨を前にして、瑞樹はとりあえず苦笑いを浮かべることしかできなかった。
「それで愛梨ちゃん、何があったの? 本当に珍しく参ってるようだけど」
「もがが……」
「う~ん、参ってる、ってわけじゃないんですけど~」
「そうなの?」
「もがー!!」
「はい~。あんまり困る、ってことでもありませんしぃ……。あ、だからって平気ってことでもないんですけど~……」
「わからないわ……」
幸子を抱き込んだまま、頬に指を当てて首をこてんと傾げる愛梨。言っていることが全く具体性に欠けるせいで瑞樹は全く事態を飲み込めていない。
しかしまぁ、それはそれとして。瑞樹はとりあえず目の前の命を助けることにした。
「愛梨ちゃん、とりあえず……幸子ちゃんは解放してあげなさいね?」
「ふぇ? ……あ」
約数分ぶりに酸素を得た幸子は、小梅が喜びそうな顔色をしていたらしい。
ーーーーーーーー
「死ぬかと思いました……」
「ごめんねぇ~」
「ホントですよ! あんな死に方で喜ぶのは棟方さんくらいですからね! ボクはカワイイからなんとかなったものの! ボクがカワイイからなんとかなったものの!!」
「……カワイイって一体なんなのかしらね……?」
ぷんすかと怒りを表現する幸子をなんとか宥め、三人で向かい合うようにソファに座る。レッスンも終わり、もう今日は三人とも帰るだけなのだ。夕方近い時間ではあったが、のんびり話をする時間は十分にあった。
「それで、愛梨ちゃんはなんで溜め息なんて吐いていたのかしら?」
「えっと……言わなきゃダメですかぁ~?」
「カワイイボクが死にそうな目にあったんです! これはきりきり吐いてもらわないと! ……まぁ、どうしても言いたくないような悩みなら諦めますが」
「うぅ……恥ずかしいなぁ……」
顔が熱くなったのか、パタパタと手で扇ぎながらもじもじと身体をよじる愛梨。しかしながら二人の追求は止まず、やがて観念したのか苦笑いして話し出した。
「えっとぉ、実は……」
「「実は?」」
「小さいときからの付き合いの、近所に住んでたお兄ちゃんにママが仕送り渡したから、明日届けにくるらしくてぇ……」
「「はい解散!」」
「えぇ~っ!?」
頬を上気させながら話す愛梨に何かを感じ取ったのか、二人は早めの離脱を試みる。しかし今度は愛梨がそれを引き止めた。
「ここまで話したんですから二人とも、お家の掃除手伝ってくださいよぉ~!」
「って、悩みごとって掃除だったんですか!? それくらい一人でやって下さいよ!?」
「だって……気付いたら掃除終わったら食べようと思って買ったスイーツ片手にテレビ見てるんだもん……」
「知りませんよ!?」
「お願い幸子ちゃん~! 川島さんも~!」
「嫌よ! ただでさえ最近美波ちゃんとか卯月ちゃんとかの恋愛がらみに巻き込まれて、若いっていいなーとか考えちゃってメンタルやられてるのに、更に自分から巻き込まれに行くなんて……!」
「何のことですかぁ~! 掃除手伝ってくれるくらいいいじゃないですか! けーくん厳しいんですよぅ!」
「知らないわ!」
「ふぇぇぇぇん!」
その後、何だかんだ言いながらも幸子はしっかり愛梨宅の掃除を手伝ったそうな。
ーーーーーーーー
「――それじゃ、日菜子。しっかり渡したからな?」
「はぁい、わかってますよぅお兄ちゃん。これでようやく……むふふ」
「……頼むから親父とお袋が泣くようなことはしてくれるなよ?」
「はーい。……むふふ」
両親から頼まれた妹への仕送りを渡し終え、美城プロダクションの寮から出ていく。妹には晩飯を食べていくように誘われたが、断った。立ち入り許可証こそ提げてはいるものの、流石にいつまでも女子寮に居座るのは外聞が悪い。
それに今回は別の用事もある。久し振りに帰郷したはいいものの、両親に加えて昔しばらく祖父母の家にいた時に仲の良かった幼馴染みの母親に、ついでとばかりにそれぞれの娘に対する仕送りを押し付けられたのだ。母親たちは「節約できてよかった」なんて言っていたが、こっちからすればたまったものではない。
……まぁ、たまには孝行しておくものだと自分を納得させて引き受けたのだが。決して妹やら幼馴染みの顔を見に行くためではない。決して。
配達の目的の片割れである妹には無事荷物を渡せたのだが、日菜子は日菜子で全く変わっていなかった。東京に出て、趣味でもあった絵の置き所がないと困り出したくらいだろうか。だからと言って兄を日曜大工扱いするのはどうかと思うが。
寮の入り口で許可証を返し、乗ってきた車に戻る。おばさんから聞いた幼馴染みのマンションはそう遠くはない。車で十数分と言ったところか。
ーーーーーーーー
そうこう言っている内に目的地に到着する。女の子の一人暮らしということもあってか、オートロックのセキュリティがかなりしっかりしているマンションだった。メモに書いてあった部屋番号を押し、インターホンを鳴らす。十秒と待たず、インターホンの先から声が聞こえてきた。
『はぁ~い』
「あ、喜多です」
『喜多? ……あ、けーくん! ちょっと待ってね~』
そんな会話の後、すぐに目の前の扉が開く。あの阿呆、その呼び方は止めろと何度も言い聞かせてきたのにまだ言うか。
多少の怒りを抱きながらも目的の部屋へと足を進める。これまた備え付けのインターホンを押せば、すぐさま扉が開いて見覚えのある面影を残した女性が出てきた。
「けーくん! ひさしぶり~!」
この阿呆、まだ言うか、と額に青筋が浮かびそうになったものの、しっかりと自重して対面にのぞむ。こいつの相手をするならば実年齢マイナス十歳くらいの接し方が丁度いいと考えている。
「ああ、久しぶりだな。ワンコ」
訂正。俺も言うほど大人ではなかったらしい。
小中学生の頃、家が向かいにあったということもあって愛梨とは登下校が同じで、よく世話を焼いていたのだ。友達と別れたくなくて、両親にわがままを言って祖父母の家に中学卒業までいたのだが、それまで子犬のように後ろをちょこちょことついてきたので、冗談半分でワンコと呼んだことがある。それが大層不服だったらしく、終いには大泣きしてその呼び方を撤回させられたのだ。
「ああ!? ひど~い! 私犬じゃないもん! その呼び方止めてって言ったのにぃ~!」
「それをお前が言えた立場か! けーくん言うなと何度言えばわかるんだお前は!」
「けーくんはけーくんだもん!」
愛梨の言い分は昔から同じだ。何でも昔から『けーくん』だったから『けーくん』らしい。中学校の頃あたりから訂正するように言っているのだが、一向に改善する気配がない。半分諦めてはいるものの、多少の当て付けくらいは許してほしいものだ。
「まぁ、そんなことはいい。早く荷物を置かせてくれ」
何だかんだで今まで段ボールを抱えて話していたのだが、これが中々に重い。仕送りということで食料品が多いのだろう。そりゃあ重くなって当然というものだ。
「むぅ~……」
「? どうした?」
しかし愛梨は何故か頬を膨らませたまま扉の前から動こうとしない。どうしたのか、と首を傾げていると、突然両腕を組んで玄関で仁王立ちし始めた。
「私のこと、ちゃんと名前で呼ぶまで家に上げてあげないからね!」
「そうか、じゃあここに置いておくから自分で運び込んでくれ。じゃあな」
「えぇ~!?」
ガビーン、という擬音が付きそうな勢いで慌て出し、本当に帰ろうとしていた俺の手を、裸足のままで外に飛び出して掴んでくる。
「そこはごめんなさいって言ってから名前を呼ぶところだよ!」
「ドラマかアニメかマンガの見すぎだ。そりゃあ実質帰れと言われたら帰るだろう普通」
「帰れなんて言ってないよぉ~!」
「家に入れないと言ったのはお前だろうに……」
昔から変わらない奴だと思っていたが訂正しよう。こいつは昔から全く変化していない。前から年齢に比べて子どもっぽい質だったが、俺が世話を焼いて甘やかしていたのが悪かったのか、そのまま大人になってしまったようだ。……これが自業自得というものなのだろうか。
思わず溜め息を吐きそうになるが、何とか呑み込む。基本的にマイペースで鈍感かつ天然な阿呆ではあるが、人のマイナス感情やそれに近いものには人一倍敏感なのだ。
ふと愛梨の顔を見ると、もともと垂れ眉なのを更に下げてしまっている。そんな表情をするくらいなら初めからちゃんとしていればいいものを、と思いながらも、掴まれていない方の手を愛梨の頭に置いた。
「わかったわかった。帰らないから安心しろ」
「……ほんと?」
「ああ」
「えへへ~……けーくん大好き~!」
「は? ばっ、お前こんなところで抱きついてくるんじゃない!」
一瞬で表情をパアッと輝かせて、愛梨は俺に抱きついてきた。それを何とか引き剥がしてから、俺は彼女に引っ張られて部屋へと入っていくのだった。
ーーーーーーーー
「じゃ~ん! ここが愛梨の部屋で~す!」
玄関を通って正面のドアを愛梨が開く。学生にしては豪華な部屋で、広めのワンルームなのだが彼女の趣味の影響かしっかりとしたキッチンが用意されていた。
愛梨の部屋だからある程度散らかっていることは覚悟していた。雑誌とかキッチン周りとかコンビニスイーツとか。しかしこの部屋はそんなことはなく、流石に少しは成長していたのだと見直してしまった。今愛梨が軽く胸を張ってドヤ顔しているのもそういったことが関係しているのだろう。
まぁ、それはともかくとして。
「これはどこに置けばいいんだ?」
「…………」
食料品だろうし、恐らくキッチン周りだろうと当たりをつけてそちらへ進むが、一向に愛梨からの返事がない。目を向けると、いかにも私怒ってます! とでも言うように頬を膨らませていた。
「むぅ~……」
「どうした?」
「むぅ~!」
しばらく目を合わせ続けるが、むーむー唸ったまま何も言わない。何だこいつは。情緒不安定なのか。
と、そんなことを思ったが、愛梨がチラチラと部屋に目を向けていることに気付く。ああ、これはあれだ。飼い犬が褒めて褒めてと寄ってきたのに褒めてもらえなくて拗ねているのと同じだ。
「……愛梨」
「むぅ~……」
「成長したな。見直した」
「……えへへ~! あ、けーくんそれは冷蔵庫の近くに置いといてほしいなぁ」
「了解」
あっと言う間に機嫌を直してしまった幼馴染みを見て、こいつ色々と大丈夫か、という不安を募らせながらも冷蔵庫の横に段ボールを置く。置いた後に「飲み物淹れるから座ってて」と言われたため、キッチンの向かいに背を向けるように置かれたソファに座った。
「はい、どうぞ~」
「ありがとう」
「いえいえ~」
愛梨がマグカップを二つ、テーブルの上に置いた。それに礼を言ってから口をつける。甘い。見た目からコーヒーかココアだと思っていたのだが、ホットチョコレートだった。甘いものが好きなところも相変わらずらしい。
「よい、しょっと……」
「……いや、何で隣に来る?」
「? ダメ?」
「いや、ダメとまでは言わんが……」
中身が熱かったため、ちびちびと飲んでいると、愛梨は俺の横に腰掛ける。ソファがそれほど大きくないせいもあり、少し窮屈だ。近くに同じソファがあるのだからそちらに座ればいいものを、愛梨はわざわざ俺と同じところに来て機嫌良さそうにしている。……これを許してしまうのは、惚れた弱みとでも言うのだろうか。
そのままこれまでの話や他愛ない世間話に勤しんだ。愛梨がシンデレラガールとかいうアイドルの賞の初代に輝いたことはテレビや妹経由で知っていたため、先に祝っておくと、照れくさそうにはにかんでいた。それ以外にも愛梨がコンパに参加したという話を聞いて、よく五体満足に帰ってこれたなと言えば膨れてしまったり、つまらないと言っているのに俺の近況を聞きたがったりと中々に濃い時間を過ごしていた。
気付けば十一時を越していた。かなり長いこと話し込んでいたようだ。明日は日曜日とは言え、流石にそろそろ引き上げないとならないだろう。
「愛梨」
「ん~?」
いつの間にか右腕にしがみつかれており、しかもそれを気に入ったのか放さないのでそのままにしている。……俺も一応男なので羞恥心が半端ではないのだが、相手が愛梨なので諦めた。
「時間が時間だし、そろそろ帰るわ」
「えぇ~!?」
帰ると告げると、オーバーではないかというくらいに驚かれた。
「いや、お前は明日仕事があるんじゃないか?」
「明日はお休みだよぅ。けーくんも日曜日だし休みでしょ~?」
「それはそうだが」
「ならいいでしょ~? お泊まりしようよぅ~!」
「あー……俺男、お前女。オーケー?」
「? それがどうかした~?」
ダメだこいつ。純粋とかそういうレベルじゃない。もっと根本的な危機感というものが欠如してしまっている。……本当によくこいつ今まで無事だったな。
右腕に放すまいとばかりにしがみつきながら、アップルパイ焼いてあげるから~、などとほざいているが、俺は小学生か。そんなものにつられるわけがないだろう……。
駄々をこねる愛梨を見ながらどうしたものかと頭を悩ませる。立ち上がろうにも愛梨が全力で俺にしがみついている今、立つことができない。流石に愛梨に怪我をさせるわけにはいかないだろう。かと言って泊まらないと言えばこうなった愛梨が腕を放すわけがない。あ、ダメだ。詰んだ。
「……わかったわかった。帰らないからとりあえず腕を放せ」
「……ほんと?」
「ああ」
「やったぁ~!」
手放しで喜ぶ愛梨を見ると、こいつが子どもすぎるのか、それとも俺が汚れすぎただけなのかわからなくなってしまう。
先ほど愛梨が淹れ直してきたココアに口を付け、とりあえず毛布はあるのか聞こうと彼女に目を向ける。そこで目に入ったのは、躊躇なく服を脱ごうとする愛梨の姿だった。
「お前は何をしているんだ……?」
「ふぇ? 暑いから脱ごうって……あ」
「五年前に言ったな? その癖だけは何としても直せと……!」
「ご、ごめんなさぁ~い!」
中学生の頃、こいつが家から出てくるのを待っていたときに下着で出てきたことを忘れたとは言わせない。何故か俺が白い目で見られたことも。
この後、一時間近く説教した。
ーーーーーーーー
「愛梨さん」
「ん~?」
昨日の話だ。何だかんだで幸子ちゃんに部屋の掃除を手伝ってもらった後、お礼に作ったガトーショコラを一緒に食べていた時の。初めはいつものような何でもない会話だったけど、それが一段落して、少し周りを見渡した後に幸子ちゃんが口を開いた。
「愛梨さんはその……明日来る幼馴染みの人のこと、好きなんですか?」
「好きだよ~」
私にとっては当たり前のことを伝えると、幸子ちゃんはポカーンとしてしまう。そんなに変なこと言ったかなぁ?
「えっとそれは……」
「もちろん、恋愛の方だよ~。小学生から一緒だったからぁ、けーくんが高校に行って会えなくなってから気付いたんだけどね~」
いくら私が鈍いからって、質問の意味まで間違えて受け取ってる、って思われるのはひどいんじゃないかな。そんなことを考えながらガトーショコラの最後の一口を味わう。うん、美味しい。
「幸子ちゃん? 口が思いっきり開いちゃってるよ?」
「……はっ!? カワイイボクとしたことが!?」
幸子ちゃんは慌てて両手で口を抑える。この辺りが幸子ちゃんが幸子ちゃんたる所以なのかな。ふとした動作が可愛らしい。
「でも、意外です……。愛梨さんのことだからてっきり異性として認識してないものだと……」
「あぁっ、ひど~い!」
「あ、ち、違いますよ!? カワイイボクとしてはもし愛梨さんがそうだったら男の人と二人って危ないんじゃないかなと……」
幸子ちゃんの言葉に思わず苦笑いしてしまう。私はどうにも、危機感がないと周りに思われてるみたいだ。これでももう大学生だし、それなりにしっかりしてると思うんだけどなぁ。大学でもみんなに『一人で行動したり、男の人と二人になっちゃダメ』って、毎日言われてるし。
「まぁそれはそれとして、愛梨さんはその人のどこを好きになったんです?」
話を変えたいのか、突然幸子ちゃんがそんなことを聞いてくる。やっぱり興味津々なのか、若干前のめりになっていて鼻息も荒い。なにより目がキラキラしている。
えっと……それを話すのは流石に恥ずかしいかなぁ、と考えていると、幸子ちゃんは何かを思い出したように頭を抑えだした。
「うっ、何か急に目眩が……」
「えっ?」
「今日誰かさんにカワイイボクが窒息死させられかけたせいですかね~」
「うっ……」
「愛梨さんの話聞かせてくれたらボクはカワイイから体調も治るかもしれませんね~」
「うぅ~! わかったよぅ……」
それを引き合いに出すのはズルいよ幸子ちゃん……。
やったぁ、と両手離しで喜ぶ幸子ちゃんに、渋々私は話し出した。
「えっと……きっかけは確か中学二年の時のバレンタインだったかなぁ」
「ほうほう?」
あの時は確か、けーくんが高校に入るのと同時に両親のところに戻るから、これからは簡単に会えなくなる、って聞いて、いつもより頑張ってチョコレート作ってたんだっけ。
それで、口で言うのは恥ずかしいからメッセージカードを入れようと考えて。『ありがとう』だけじゃちょっとシンプルすぎるしなぁ、どうしようかなぁ、って悩んでたんだけど、素直なのが一番だよね! って結論が出てとりあえず書いてみたんだよね~。
『今までありがとう! これからもよろしくね!』
う~ん、何か違うなぁ。
『今まで助けてくれてありがとう! これからも私を助けてね!』
子どもか、って怒られそうだなぁ。それに『今まで』っていうのもちょっと違う気がするんだよなぁ。
そんな感じで、何度書いてもこれだ! って思うものが出来なくて。それでも頑張って書いてたら、ある時にこんな風に出来たんだ。
『私と出会ってくれてありがとう! これからもずっと一緒にいてください。大好きです!』
今まで悩んでいたのが何だったんだろう、って思っちゃうくらい、その言葉がしっくりきちゃったの。それからは、もうその言葉しか出てこなくなっちゃった。
「そこからは早かったなぁ~。一度好きだ、って思ったらどんどん気持ちが大きくなっちゃって~。どんな男の子と話してても『けーくんなら』って考えちゃったり~……って幸子ちゃん?」
「ああ、はい。ごめんなさい。もう勘弁してください……!」
「ふぇ?」
それからは『甘い……! ただ胸と口と心が甘くて死にそう……!』しか言わなくなっちゃった幸子ちゃんを撫でて介抱(?)する。
結局あの時、メッセージカードは渡さなかった。同じ言うなら、もっとちゃんと一生懸命考えた言葉で想いを伝えたかったから。
ーーーーーーーー
「じゃあ、また今度な」
「うん。次はけーくんのお家に行くね~」
「頼むから来る前に連絡は入れろよ……?」
結局、夜はお説教をされただけで他に何もなかった。強いて言うなら寝ぼけてカーペットで寝ていたけーくんに抱きついて二度寝して、けーくんに朝ごはん作ってもらっちゃってたくらいかなぁ。
そんなことより、もう玄関だ。けーくんも靴を履いて、もう一分もしない内に行ってしまう。その前に、私には昨日覚悟を決めたすることがあった。
これを見たら、けーくんはどんな風になるんだろう。いつもみたいに困った風に鼻を掻くのかな? それとも、照れてそっぽを向いちゃうのかな? でも……
「ねぇ、けーくん」
私の想いを知った後に
「今日、何の日か知ってる?」
笑顔でギュッとしてくれたら、嬉しいな。
・喜多慧悟
19才。珍しく公式認定設定の兄。設定には忠実に堅苦しくない程度には真面目にしてみた。……あれ? これ真面目ってか女の子に免疫ないだけじゃ……←
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・輿水幸子
キュート。作者の中でネタやら芸人枠。ぶっちゃけめっちゃ使いやすい。メインでやれと言われると多分むりだが←
・川島瑞樹
クール。楓編、美波編、卯月編に続いての登場。ぶっちゃけ登場回数だけなら一番多いんじゃなかろうか←
試しに話を考えてみたら切ないビターエンドが見えてきた。まぁ川島さんだし……(震え
・『けーくん』
?「…………」(ピクッ
?「ミナミ? どうしましたか?」
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愛梨Pなら恐らく本望←
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やったね日菜子ちゃん! 収納が増えるよ!←
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作者がロリぃとときんを想像した結果。犬耳と尻尾を幻視したぜ……!
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みずきは ききかいひを おぼえた!
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決して積んでたメタルギアVやったら3→PW→4ってやっちゃったわけじゃないよ? ホントダヨ?←
・おまけ
ぴんぽーん
「はーい……って愛梨?」
「えへへ……来ちゃった~」
「……はぁ。全くお前は……」
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「……彼女が来て迷惑なわけがないだろう。入らないのか?」
「えへへ……お邪魔しまぁす!」