世界を越えたい   作:厨二王子

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すいません、大変遅くなりました。ほんの少しずつ投稿していこうと思います。よろしくお願いします。


師匠の思い

 あの旅行から数日、学生たちが待ちに待ったリア充の祭典、清秀祭が近付いてきた。清秀祭ではパレードをやるのだが、それに参加するのには代表として多数決や推薦で決まる。さらに役に関してはくじ引きで決まるのだが。

 

 ……その結果

 

「ロミオか……」

 

 なんだかんだ、ロミオ役としてパレードに参加することが決まった。そしてお相手のジュリエットだがなんと原作とは違い近衛さんが勤まることになった。

 しかし、俺がロミオだと認められない佐藤の所為でカカシに突っ込まれそうだった。危なかったぜ。

 そして今は放課後でジュリエットに決まった近衛さんを中心にシャナ、キアラ、吉田さんが集まって教室から出ていくところが見える。どうやらあの旅行を得て仲が深まったようだ。

 

『いいのか、相棒』

 

「何がだ」

 

『例のことだ』

 

「シュドナイとのことか。問題ないよ」

 

 俺が一言告げるとアルビオンはそれ以上このことに追求してくることはなかった。

 俺は荷物をまとめて席を立つ。珍しく、今日は一人で帰路についた。

 

 

 

 

 俺は家に帰ると思わぬ顔ぶれに驚く。

 

「なんだ、父さん帰って来てたのか。……それに師匠も。驚いたよ」

 

「おう。おかえり」

 

「お邪魔してるよ」

 

 まさか、父さんはともかくサーレが帰ってきていたとは。さらにふと厨房の方を見ると家事を手伝っているヴィルヘルミナの姿が見える。彼女は俺たちが旅行に出掛けている途中、なにやら用事があると御崎市から離れていたが、彼女も帰ってきていたようだ。彼女に関しては原作より速く帰ってきたな。

 

「皆、ご飯が出来たわよ」

 

 そんな母さんの声と共に夕飯がテーブルに並べられる。すると二階かはシャナ、キアラ、吉田さん、近衛さんがずらずらと降りてきた。ほんと今日は大所帯だな。

 そして今回は人数も多いということで庭も使ってテーブルをおきバイキング形式となった。俺は肉を摘みながら口へ運んでいるとヴィルヘルミナが声を掛けてきた。

 

「明日、学校が終わった後、弔詞の詠み手の拠点で大事な話があるのであります」

 

『重要』

 

「了解。予定を開けておくよ」

 

 どうやら原作よりも速くフィレスの情報を掴んできたようだ。恐らくサーレも関係しているだろうな。この背景は分からないがこれも俺が介入した影響か。

 

「悠二、そのお肉よこしなさい!」

 

「なんだ……もうないのか」

 

 シャナがからんできたのでその原因である肉の皿を見るともうそこには何も残ってなかった。一体、こんな量誰が食べたというのだ。俺はシャナに肉を与え適当にあしらい、デザートを食べようとその皿の方を見る。しかしそこにもデザートはなく、満足そうな顔をしているキアラがそばにいるだけだった。

 

「……さすがだな」

 

 俺の口から自然とそんな言葉が漏れていた。

 

 

 

 

 

「悠二、隣いいか?」

 

「どうぞ」

 

 なにやら、庭の隅で父さんがシャナたちを集めて話している頃、俺の隣にサーレが座り込む。

 

「聞いたぞ。仮想舞踏会が来たんだってな」

 

「ああ」

 

「悪いな、駆けつけられなくて」

 

「大丈夫だよ。新しくシャナたちも戦力に加わったし」

 

「灼眼の打ち手か。しかしあの弔詞の詠み手とも手を組んでいたとは驚いたよ」

 

「……まぁ、色々あってね」

 

 サーレにこちらのことを話した後はこの世界の情勢について話しを進めていく。情勢に関しては特に大きな変化は起こってないようだ。ただ徒の方の動きを詳しく知ることが出来ていないのでそこが不安である。

 

「正直、俺は近々大きな戦いがあるような気がしてならないんだ」

 

「それは仮装舞踏会のことか?」

 

「あぁ、奴らがなぜ零時迷子を求めているかは分からないがこれから先もっと大きな動きを見せていくだろうと思ってる。これは長年の勘もあるんだがなぁ」

 

「なんにせよ、戦い勝ち続ければいいだけだ」

 

「まったく、師匠としてお前が強くなってきたことは認めるが調子に乗るなよ」

 

「……調子になんて乗ってないよ」

 

 俺は静かに飲み物に口をつける。この世界の敵はなかなかに強力な固有の能力を持ち、存在の力というものもある。たとえ神滅具を持ってようと危ない戦いが何度かあった。さらにその中で強者たちになるとさらなる理不尽が襲う。

 とても調子に乗ることなど出来ない。

 

「悠二。卒業後のことだが旅に出ないか?」

 

「……その話か」

 

「この町から離れるのは心苦しいとは思うが、なにも一生帰ってこられなくなる訳じゃない。この町も危険から遠ざかるはずだしな」

 

「すまない。卒業までには答えを出す」

 

「分かった。まぁのんびり待ってるとするよ」

 

「……」

 

 卒業後……か。前に思わぬシュドナイとの接触があったが流れは変わることなく進んでいる。この調子でいけば冬までに交渉までいけることは核心している。それまでにこちら側でやれることはやっておかなくてはならない。

 

 俺の目的は変わらない。たとえこの関係が壊れることになっても変わらないんだ。

 

 俺はサーレと話した後、時間はすっかり遅くななり静かに自分の部屋に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

『すまないな、鬼功の繰り手』

 

「まさか、天罰神直々に話があるなんてね。彼女は寝てるけどいいのかい?」

 

『構わん』

 

「それで話とは?」

 

『坂井悠二について知りたい』

 

「……」

 

『正直、あやつの力は異質すぎる』

 

「俺は数ヶ月、仮想舞踏会の情報を集めつつ別の情報も集めていた。白い龍の逸話、あの白い翼の宝具について。でもこちらの歴史で白い龍逸話はあれどそれに関する宝具についての情報は何一つ見つけられなかった」

 

『私も長くこちらの世界にいるがあのような宝具があるなど聞いたことがない』

 

「俺と初めて会ったとき零時迷子についても所有者だとしても詳し過ぎたしね」

 

『……それに』

 

 続く天罰神の言葉を聞き僕は驚き、同時に彼に関するピースが綺麗にはまった気がした。

 

「あいつに目的があればその時はその時さ」

 

『何もしないと』

 

「いや、あいつが道を誤れば正す。正しければ後押しする。ともかくしっかりと見届けるさ」

 

 覚悟はある。

 それはあいつを弟子にした瞬間から決意していたことだ。

 

 

 

「俺はあいつの師匠だからな」

 

 

 

 出来ればそんなことが起こらないことを願うばかりだけどね。


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