「……起きなさい■■■■」
「うっ」
「まったく……」
見覚えのあるような、ないようなそんな顔をした女性が今俺がいる部屋から出ていった。俺は身を起こして周囲を確認する。
……いや、見覚えのないというのはありえない。あれは俺の母であり、ここは俺の部屋だ。
俺は時計を確認する……んっ。
「ヤバ、遅刻じゃん」
俺は読みかけのライトノベルをしまい、下の階に向かって走りだす。下の階に降りると既に母の姿はなく焼きたてのトーストが用意されているだけであった。
「仕事かな……。はぁ」
俺はトーストをかじりながら戸締まりを確認して家から離れる。俺は学校に向かって走りだした。
「やっと、終わった……」
学校に行くといつもつるむ友達、変わらない日常。
……でも、なにかが足りないような?
俺は大きな違和感を感じながらも、家に着いて扉を開ける。そしてその瞬間、俺の頭の中に欠けていたものが勢いよく流れ込んできた。
……ああ、そうだ。
普段ならリビングで暖かい笑顔で迎えてくれる母。しかし、今日はリビングに一枚の書き置き
が置いてあるだけ。
俺は冷めた視線のまま二階に上がる。分かりきっていたことだがそこにも母の姿はなかった。
気付けば時間は父が帰ってくる夜九時になっていた。しかし、それでも帰ってくることはない。俺はただ棒立ちをしていた。
そして俺はふと自分の部屋に飾られているカレンダーに視線を移す。今よりも三日前の日のところに赤い印が付いていた。なぜ、さっきまで忘れていたのだろう。付き合い始めたばかりだったが彼女も俺を置いて離れていった。
視線はそのまま下へいき、ハイスクールD×Dというライトノベルへ移る。
……羨ましい。
己の欲望を突き通し、誰にも裏切られることもなく戦い切る赤龍帝が。
そうか、俺も……。
気付けば俺の胸から黒い鎖が溢れ出す。その瞬間、俺は意識を失った。しかし、なにか鎖の他に黒いものが見えたような……。
「……はっ」
「がっ……これは!?」
「悠二!」
「目が覚めたんですね!」
『どうやら、僕の戒禁は破れなかったみたいだね』
『まったく、ひやひやしたぞ』
目の前にいる徒はピエロのような顔と姿をした少女。名を戯睡鏡メア。その能力は戒禁を破る夢を創り出すこと。それを利用して俺の中にある零時迷子を手に入れようとしたようだが、俺は彼女が俺に触れた瞬間に目を覚まし、彼女は俺の零時迷子に触れようとしたことで戒禁に引っ掛かり半分自滅した、そして俺は目を覚ます。
今回は原作と違い吉田さんという人質はいないがシャナやキアラは彼女が作り出したシュドナイとベルペオルの偽物と戦っていた。
「まぁ、そういうことだ。お前なんかにこれは手に入れられないよ」
「あきらめきれるかーーー!!」
「……」
メアは玉砕覚悟で数少ない存在の力を見に纏ってこちらに突っ込んでくる。
しかし、思い出したくもないことを思い出せて貰った礼だ。俺も思うことはあるんだよ。
「禁手」
《Vanishing Dragon Balance Breaker!!》
俺はお馴染みの白い鎧を見に纏い、複数の半減をメアに対して行う。
そして……
「縛れ契約の鎖」
俺の言葉と同時に地面から銀色の鎖が出てメアを両手、両足を縛りつける。彼女は必死に体を動かそうとするが鎖はびくともしない。
「何をした!」
「それは俺の自在法、契約の鎖。俺が相手より圧倒的に優位なって使うことが出来る鎖さ。能力は俺が決めた一方的な契約を守らない限り外れることはないということ」
そう、『坂井悠二』のではなく、『俺』の自在法。
「なっ、なんだと」
「契約の内容は『お前はこれ以上力を求めることをあきらめる』ということだ」
「……っ!」
「奴に近付こうとする君にはこの契約は辛いものだろ。しかしそれほどにまで思っているというのに、サブラクの言うことを無視してここに来るとは……」
「あぁ……」
「ビンゴか」
メアは涙を流しながらどこかに手を伸ばすような仕草を見せる。
殺しにくるということは殺される覚悟もなくてはならない。それが戦いだ。
「終わりだ」
俺はもがくこともなくなったメアの胸にブルートザオガーを突き刺し彼女は討滅させた。やがてこの空間であるゲマインデも崩れて現実世界に戻っていく。戻ればシャナとキアラはこの戦いを一夜の夢というくらいでしか記憶に残らないだろう。俺は記憶に自在法を掛けてしっかりと覚えておく。彼女の命を奪ったものとして。それにサブラクは最終的に協力は不可欠なので、シャナが止めを差したということにしなくてはいけないし。
「しかし、あの夢」
まさか、名前も思い出せないとは……でも、俺の思いと目的はしっかりと認識することが出来る。
今は坂井悠二だが、いずれ……。
こうして俺はメアの夢から覚めていった。
蓄積された力のところのギアスチェーンを契約の鎖に変更しました。